祠で出会った千尋
私はある日、不思議な人と出会った。その男と出会ったのは、もう何年も前のことだ。ちょうど私が16になった日のこと
私は、峰本千尋。今日で16歳。ただいま絶賛恋人募集中のJKだ。今日が誕生日のため、浮かれながらいつもより早く学校へ行った。そこでは、友達が私の席にお菓子を山盛りに積んでいる途中だった。私が来たことで友達は少し驚いたようだが、すぐさまみな一斉に
「誕生日おめでとう!」
と声を揃えて言われた。私は少し照れながら
「みんなありがとう!」
と言った。いままでこんなこともなく、家でもなかったから、本当に嬉しかった。そこから私は山盛りに積んであるお菓子を写真にとり、バッグに入れた。数分後、登校してきた他の友達からも「誕生日おめでとう!」など、言われ嬉しくなり、その日の授業はとても調子がよかった。あっという間に放課後になり、友達はみな部活動へ行った。私は帰宅部だったので、いつもどおり1人で帰り道を歩って行った。だが、今日は気分もよかったためいつもと違う道を通り、遠回りをした。そこは、小さな鳥居があって祠もあった。もう、辺りは少しずつ夕焼けに染まろうとしていた。私は、今日幸せな日だったと祠の前でしゃがみ話した。自分でも、「何言ってんだろ。バカだな〜」など思いながらも話し続けた。気付けば辺りは夜に染まろうとしていた。「さすがに居続けすぎたな」と思い、立ち上がり後ろを振り向くと不思議な人はそこにいた。「今の聞かれてたかな」と少し不安になったが、その人は
「すまない、話聞いてしまって。今日誕生日なんだな。おめでとう。」
と言われ反射的に
「ありがとうございます」
と答えてしまった。知らない人に。しかもよく見れば若い男の人で、優しそうな目をしていた。悪い人ではないと女の直感で分かった。
「また、明日ここに来てくれるか?もっと学校のことなど聞いてみたい。」
と言われ、暇なので
「いいですよ!では、また明日。」
と笑顔で返し、家路をたどった。…それから毎日のように、学校帰りに祠に寄り男の人話すようになっていった。学校でのことだけでなく、テレビやドラマ、アニメのことなど話す話題は様々だった。次第に、男の人も一緒になって話すようになってきた。男の人は加賀谷莉人、20歳で独り身。彼はよく笑い、私の小さな悩みも真剣に聞いてくれた。喋り方は相変わらず顔と合わないくらい少し上から目線。でも、私はそんな彼と話していくうちに段々と、惹かれていった。




