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エピローグ

 





「10年は、長かったな。」


 ぽつり、と私がこぼすと、あら、とヴィオレッタ……ヴィオは目を開く。


「あっという間でしたわよ。」


「そう?」


「ええ。実は今回お伺いしたのは、レティに懇願されたからなんです。もう10年もたつのに、いつまでもあの婚約破棄のことをいじいじいじいじといじけで鬱陶しいから、会ってやってくれって。」


「ええっ!?レティと君は、会ってたの!?そして、レティは相変わらず私に厳しいな!」


「そうですよ。国外に出て一年も立たないうちに、彼女が訪ねてきてくれましたの。お父様が私の居場所を教えたようですわね。」


「私が何度聞いても教えてくれなかったのに……カーベリー公爵……。」


「レティに直接、謝罪ができてよかったですわ。レティには怖い思いをさせて、ずっと申し訳なく思っていたから。」


「……ねぇ、あのとき、なんでヴィオはレティを突き飛ばしたの?」


「私が悪役令嬢だったからですわ。」


「悪役令嬢。前も君はそう言っていたね。」


「ふふ。実はね、こんなこと言っても信じてもらえませんけど、私、実はローシェ様とレティが恋に落ちるの、幼い頃から知っていたの。」


 今度は私が目を見開く。


「知っていた?それは、予知的なこと?」


「ええ、そう、ね。予知だと思ってもらって構わない。幼い頃見たのはね、愛し合う貴方とレティ、そしてそんな二人の仲を引き裂こうとする悪役な私だったの。

 幼い頃から、ずっと貴方との婚約話があったのは知っていた。国王陛下も王妃様も、是非にと仰ってくださっていた。でも、私は渋っていた。

 どうせ叶わぬ恋だと知っていたから。

 でも、もしかしたら貴方と添い遂げられるかもなんて夢を見てしまったの。もしかしたら、私が幼い頃に見たのは単なる夢で、レティシアなんてご令嬢は現れず、二人仲良くやっていけるんじゃないかって。」



 そこで、ヴィオは一息ついて、紅茶に口をつけた。


「美味しい!久しぶりにアルが淹れてくださったお茶をいただきましたけど、ますます腕をあげましたね。すごく美味しいわ。」


 ヴィオは側で控えていたアルに、とびきりの笑顔を向ける。


「勿体無いお言葉です、ヴィオレッタ様。」


 アルも、今まで見たことがないようなとろけるような笑顔をヴィオに返す。



「……でも。結果は、レティは現れて、貴方とレティは惹かれ合った。」


「ヴィオ、本当にす、」


「謝らないでくださいね、ローシェ様。」


 遮られて、謝罪は空に浮いた。


「レティと仲良くなったわ。貴方が惹かれるのもよくわかる。朗らかで、優しくて、隣にいると元気がもらえる。ローシェ様もレティも、本当に好きだったの。だから、私のために二人が身を引くのが嫌だったの。」


「だから、僕に嫌われるように、仕組んだの?」


「……そう。幼い頃のその予知なようなもので、あったの。私がレティを突き落として、ローシェ様が彼女を助けてくれる。他にも、幼い頃にみたものはほぼ現実に起こったからきっと、レティは貴方が助けてくれるって思ったけど、やっぱり怖かった。レティがもし怪我したらって。本当に、ローシェ様が助けてくれて、良かった。お礼を言うのが遅くなったわ、あの時は、ありがとうございました。」


「なんと言ってよいのか……。」


「ねぇ、ローシェ様。あの婚約破棄の件で、貴方は廃嫡され国王への道は絶たれてしまった。後悔は、ありますか……?」


 しばらく考えて、私は首を振る。


「いや、ないな。本音を言うと、国王へは優秀な弟の方が向いていると、ずっと思っていたんだ。そして、私は廃嫡されたからこそ、レティと一緒になれた。今の暮らしに不満もなく、私は、幸せだ。」




 ヴィオは、眉をへにゃりとまげ、柔らかく、笑った。





 *******




 お暇しますわ、とヴィオは言った。


「そんな!まだいいじゃないか。まだ、聞きたいことも話したいことも山ほどあるのに!」


「ふふ、申し訳ございませんが、今の旦那様がヤキモチやきなの。今日だって、貴方のところに行くって言ったら、渋ってなかなか離してもらえなかったの。」



「あ、ああ、そうか。そうだよね、結婚、してるよね。」


「もちろん!貴方よりよっぽど素敵な方でしてよ!」


 なにやら、複雑な気持ちになる。アルを見ると、それはそれは珍しく、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。今まで付き合ってきた中で見たことなかったようなアルの表情を、今日は色々見れたな。



「……また、会える?」


 その質問に、ヴィオは大きく頷く。


「もちろん!今度は、レティと、貴方の子どもたちも一緒に、会いましょう。アルも、今日は美味しいお茶をありがとう!また、会いましょうね。」 


「……はい!」



 馬車に乗り込むと、ヴィオは私に笑いかける。


「ねぇ、ローシェ様?もう、あの婚約破棄の件を引きずってはだめよ?」





「私が悪役令嬢だった頃のお話は、もうお終い。」






 Fin.


無理矢理の完結です。

一番の被害者は実は、話にまったく出てこなかった第二王子。兄貴がいるからまぁ適当にねぇ~とふらふらしていたら、まさかの廃嫡。ぶふぅ、と飲んでいた紅茶を吐いて、国王陛下に廃嫡取り消しをお願いに行くももちろん拒否。その日から急に厳しくなった周りの目と環境に、今でも兄であるローシェを恨んでいるとかないとか。

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