童話:星のしっぽにのった夜
窓の外を見上げると、冬の夜空が広がっていました。
遠くできらきらとまたたくのは、きっとオリオン座です。
あまりにもきれいだったので、
わたしはそっと、窓の向こうへ手を伸ばしてみました。
そのときです。
夜空をすべるように、ひとすじの流れ星がやってきました。
「やあ、こんばんは。ずっと、ぼくのことを見ていたね」
鈴を転がしたような、やさしい声がしました。
「ええ……。とても、きれいだったから」
すると流れ星は、くすっと笑って言ったのです。
「ぼくも、いつも君のことを見ていたよ。
よかったら、ぼくのしっぽにのってみる?」
わたしは、光り輝く流れ星のしっぽにつかまりました。
夜空の旅のはじまりです。
そこは、宝石箱をひっくり返したような世界でした。
ふたご座が楽しげに手を振り、
おうし座が、やさしくほほえんでいます。
星たちはみんな、あたたかい光につつまれていました。
その光の中にいると、不思議なことが起こりました。
いままでつらかったことや、かなしかったことが、
星屑に洗われて、すうっと消えていく気がしました。
――なんて、しあわせなんだろう。
星たちのまたたきが、歌のように心に響きます。
『あなたは、ここにいていいんだよ』
『あなたは、とても大切なんだよ』
そんなふうに言ってもらえたのは、
はじめてのことでした。
ずっと、この旅を続けていたかったけれど、
夜はもうすぐ終わってしまいます。
胸が、きゅっと切なくなったとき、
流れ星が、やさしく言いました。
「だいじょうぶ。
もう一緒にはいられないけれど、
ぼくは、ずっと空から君を見ているよ。
君が大きくなっても、
ずっとずっと、だ。
あたたかな光を、
ぼくは空から送りつづける。
だから、心配しなくていいんだよ」
流れ星はそう言って、
夜空のかなたへ消えていきました。
わたしは、あたたかな布団のなかで、
そっと目をとじます。
まぶたの裏には、
まだ、あの光が残っています。
――きっと、あしたは、いい日になる。
わたしは、すやすやと幸せな眠りにつきました。




