09 ミヤケ食堂
ミヤケ食堂に通い続けて4日後の早朝、冒険者ギルドのギルド長室に行った。
「おはようございます」
「おはよう」
「早速だが、順番はオークロード、メデューサ、バジリスクロード、キングトータスの順に討伐して貰いたい」
「それぞれの討伐証明個所はどこですか?」
「それぞれの町の村長に聞いてくれ」
ちょー面倒臭い。俺は今晩、ミヤケ食堂で野菜クリームシチューが食いたいんだぞ。
「裏庭を借りていいですか?」
「何に使う?」
「対象の魔物を召喚し、氷漬けにし、窒息死させます。村長に来てもらい、確認して下さい。それが嫌なら、今回の依頼はしません」
冒険者には依頼を断る事も出来る。と、ルールブックには書いてある。
「わ、分かった」
「後は、宜しくお願いします」
キングトータスは首を刎ね、それ以外は氷漬けにしてお終いにした。キングトータスは冬眠する事が出来、呼吸を浅くして生きる事が出来る為、早々に殺した。
野菜クリームシチュー。今から行くよ~。
現在、ここを拠点としようか迷っているのだ。理由は1つミヤケ食堂だ。
冬になると、湯豆腐が出ると言うじゃないか。これは1年中いないと行けなくなった。
後は、温泉があれば最高なんだが、今、調査中だ。温泉に入り、温泉上がりに湯豆腐で熱燗を飲む。か~~~っ! 最高じゃん。
本格始動しよう。まず、ラステリア王国の首都にある雑貨屋を解約。レースン皇国の皇都の住民権と家を買う。先日の魔物4体を倒した報酬で賄える金額だ。今後、足りない分は何かしらの依頼を受けよう、別の国の依頼でもいいのだ。
家を買う迄、なんやかんや手続きがあり、1週間程掛かった。
温泉も見つかったが遠くの国なので、それは後回しにする。
各国の冒険者ギルドに行き依頼を受ける積りだ。高い家を買ってしまい、金欠気味なのだ。
ランクSSSに小さい家は駄目なのだとか。ランクSSSがいるだけで他国を牽制出来るので……、と。口車に乗った感じではあるが、しょうがない。
その晩、教会本部から暗殺依頼が届いた。
無料で回復魔法を使っている女がいるので殺せと言う指示だ。
回復魔法は教会の専売特許であり、それが無料になると、教会の収益に関わる。
この依頼は近くに、たまたまいた俺に来た直接命令だ
この女、少女は大通りで『無料で回復します』と看板を立てて、堂々とボランティア活動をしていた。
『全鑑定』を行うと、前世【人】、前前世【聖女】になっている事から、このような行動を取っているようだ。前世【人】は、地球の転生者なのだろう。
俺は、少女を無理矢理引っ張って、食堂屋に連れて来た。
人の迷惑になるから止めろと注意をし、誰が迷惑か、回復しない場合、どう責任を取るのかを説明した。
少女は納得したようだが、問題はこの少女を殺さないといけない事だ。
ボランティアと言う言葉を知っている事から、前世の記憶があるのだろう。
少女は貴族らしい。しかも公爵らしいのだ。護衛も付かなく良くこんな事をするなと思ったが……。どうするかだな。
取り合えず、この少女の親に会って説明をする事だな。公爵が俺と話しをしてくれるかが問題だが。
んっ! 近衛兵が探しに来たか。
「皇女様。御怪我はありませんか」
『転移』
城壁門前に転移した。
皇女……皇王の娘を殺していいのだろうか? 教会に聞くしかないな。
夜更け、教会の大司祭の寝室。
「起きてらっしゃいますか?」
「何用だ」
「暗殺依頼の件で参りました。皇女暗殺で宜しいのでしょうか?」