告白 その2
彼女は何もかも知っていて、なお黙っているのかもしれない。
そんな思いは何度も過ぎった。でもそれを確認することはなかった。それは無意味なことだったから。
彼女がそう遠くない未来に死んでしまうことは、出会ったときには決まっていたこと。覆しようのない将来に期待することなど私には出来なかった。ただ命が尽きるその時までは安らかにいてくれれば、いつからか私はそんな風に思っていた。
彼女は成長していくにつれて物わかり良さそうに微笑むことが増えた。
賢い君なら、きっと私の考えなど見抜いていてもおかしくないなと思ったりもした。
でも、それ以上踏み込むことは、互いの望むところでは無かった。ただそれだけで、私たちのついた嘘は暴かれずに消えていった。一瞬の花火のように咲くことすらせずに散っていった。
だって、私たちが私たちであり得なかったら出会うことすら無かっただろう。
だから私たちはこのままで良かったのだ。あるべき正解を、互いの一線をいつの間にか決めてしまっていたから。
「本当のことを話さなくて良いのかい?」
「言ってどうするの。今更君の親の敵だと言えって?」
最後の悪あがきで、私はこの嘘を守り通そうとした。本当のことなど言ったところで、もう彼女を壊すことにしかならない。
「本当のこととは、それじゃないよ」
彼は昔のように優しげな目元を細めて言った。かつて私がまだ子どもだった頃に何度も私を諭した瞳だった。
「君はずっと彼女のことだけを思って、毎日のように会いに来た。それだけじゃない。養育費も生活費も出し続けるなんて並大抵の想いでは出来ない」
私は思わず顔を背けた。無様で、惨めだった。私の独りよがりで彼女を振り回したことを、私は誰に詫びたら良いのだろう。彼女にかけたお金の重さが、そのまま想いの大きさだとしたらなんて陳腐なことだろう。
「君からもらったお金には手を付けていないよ。気が向いたら取りにおいで」
「…なんで」
だというのに私は、君を守り続けようとした。届かないと、届かせまいとしていたのに。
苦しかったねなどと優しい言葉をかけてもらう資格すらないのに。
「もう知ってるだろうけど、僕からも言うよ…彼女は不幸のままではなかった」
さよならと言えるほど、死を嘆かないほど、彼女は私より死を覚悟していた。そしてそれを受け入れていった。まるでそういうものだという風に何の疑いもなく死んでいった。
ただ出会ったことを後悔することはない。きっと彼女もそうであることを願っている。ずっとずっとそれだけは違えたことが無かった。
そうしないと、いつか必ず来てしまう別れに耐えられそうに無かったから。
最後まで読んでいただきありがとうございました。




