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光の翼  作者: シリウス
第3章 戦乱の翼

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解放条件

 光の球に捕まっていながらも、ルドルスを見る大輝君の目は鋭い。


 大輝君に混ざっているのと同じ魄力を発しているのを見ても、奴が大輝君を操っている犯人で間違いないようだ。


「あなたね…弟に操魄術なんかかけたの!!」


 僕は模造刀を抜いて飛び出しそうになったが、それより先に舞がルドルスに詰め寄ったおかげで踏み止まれた。


 そうだ。今優先すべきは、大輝君の救出だった。


「その通り。…で、それがどうかしたか?」


「今すぐ、弟を解放しなさい!!」


「ククク…そうだな…。」


 右手を拳にしながら叫ぶ舞にも、ルドルスは余裕の笑いを崩さない。


「お断りだ…と拒否するのは簡単だが、それじゃありきたり過ぎるな。…どうだ、テメエら。ちょっとばかり取り決めをしねえか?」


「取り決めだと?何だッてンだ。」


「ミズカワマイがこのオレと1対1で戦うなら、の話だが…。」


 ルドルスが咳払いをひとつして、続ける。


「ミズカワタイキを今すぐここで解放しても構わねえぜ。もちろん、操魄術も間違いなく解除した上でな。」


「…何、それ?」


「…誘拐しといて、あっさり解放しますってか?どういうつもりよ。」


「ククク…もちろん、楽しむつもりさ。」


 戸惑う氷華君と紅炎に、ルドルスの唇が下卑た笑いに歪む。


「せっかく取った人質を『解放しろ』って言われて『はいわかりました』って放り出す誘拐犯なんざ、なかなかいねえだろ?だからこそ、そうするんだよ。オリジナリティーがあって面白えからな。」


「…そんな理由で、うちの弟をさらったの!しかも、そんなに傷だらけに…!」


「おいおい、ミズカワマイ。テメエがミズカワタイキと一緒にオレ達の取った人質をかっさらったこと、まさか忘れた訳じゃねえだろう?」


 ルドルスが性悪な笑みを保ったまま、両目は冷たく細める。


「正義の味方気取りの封殺者…しかも師範代とその弟が、不意打ちでそんなマネしやがったんだ。この程度の報いは食らって当然だろ。」


「最低…!!」


「何が報いだ、このクズが!!元々、誘拐なんかやってるお前等が悪いだろうが!!」


「ハハハハハ!そうキレるんじゃねえよ、ヘボ共!封殺者らしく、ミズカワマイがオレを半殺しにすれば済むことじゃねえか!」


 舞と僕の怒声も意に介さず、ルドルスが呵呵大笑する。


「こんなに単純で美味い話も珍しいぜ、ミズカワマイよ。オレ程のワルをぶちのめせばテメエや封殺者一門の評判はまた上がるし、ミズカワタイキも助かるし、ヤツを痛めつけられた仕返しにもなる。要するに一石三鳥だ。尻尾巻いて逃げる理由なんざ、どこにもねえだろ?…テメエが臆病風に吹かれる以外にはな。」


「上等…!望み通り、半殺しにしてあげる!!」


 嘲笑うルドルスに左手で指され、舞が一切の迷いなく進み出た。


「ククク…戦意満々で結構。念を押しておくが、オレとテメエの1対1の勝負だからな。お互い、連れの手助けを受けるのは禁止だぜ。もしこっちの3匹が横入りしたら、そんなバカは即刻オレがぶっ殺してやる。」


 槍を持つ黒髪の青年が、無表情で。


 右腰にレイピアをした茶髪の長身男性が、同意とも皮肉とも読めない笑顔で。


 そして白く大きなテディベアを抱いた金髪の女が不快感を露わに細めた両目で、ルドルスを見やる。


 いずれも油断できない使い手の気配を感じるが、そんな彼らを殺すと簡単に宣言するルドルスは大見得を切っているだけなのか、実際にそれ程までの力があるのか。


「…だが、ミズカワマイよ。テメエがオレに負けた場合や、テメエの仲間共とミズカワタイキ、計6匹のどいつかが手を出しやがった場合は…テメエらを放置して、このスクムルトのカス共を皆殺しにしてやる!こっちの3匹も存分に働かせてな!」


「何だと、テメエ!!」


「関係ねえ人らを巻き込むんじゃねえよ!」


「おいおい。テメエらこそ、そんなありきたりな文句を垂れるんじゃねえよ。どんなことにも限度ってもんがある。いくら楽しみのためでも、手間とリスクを押し切ってかっさらった人質を解放するなんざ、簡単にできやしねえよ。相手にも少々のリスクを背負わせでもしねえことにはな。」


 駆君と紅炎の抗議を、ルドルスはすました顔で受け流した。


「それでも戦うって言わなきゃ、こっちはミズカワタイキの解放を撤回するだけだ。…で、最終確認だが、逃げずにやり合うか?弟大好きなお姉サマよ。」


「当たり前…!絶対、あなたになんか負けない…!」


「ククク、良い返事だ。それじゃ…。」


 構えを取った舞を、ルドルスが手で制する。


「待てよ。まず、ミズカワタイキの解放からだ。前提を守らなきゃ、取り決めした意味がねえからな。」


 くすんだ紫色の杖を突き立てると、宝玉に両手をかざした。


「さて、ミズカワタイキよ。愛しのお姉サマのところに戻りたけりゃ、精々気合いでこらえるんだな。…はああああ…!」


「…うっ!ぐああああ…!」


 ルドルスが杖に魄力を込めると、大輝君がうつ伏せに倒れ、苦しみ出した。


「大輝!?…あなた、大輝に何を!」


「騒ぐな。オレの操魄術は、ちょっとばかり手を加えてあるだけだ。術をかける時も解く時も、頭の割れそうな痛みがするようにな。へボい奴ならこの痛みで気絶…最悪、ショック死するぜ。」


「ぬけぬけと何言ってるのさ!それじゃ、約束とちがうじゃない!」


「バカ言え。操魄術を解いて解放するって取り決めは今守ってるところだろうが。これで殺す予定じゃねえが、痛みに負けてくたばった分はそいつの勝手…そこまでは責任持てねえよ。」


「ルドルス!!」


「よせ、舞!!」


 舞はルドルスに突っ込みそうになったが、紅炎の鋭い声での呼び捨てに足を止めた。


「操魄術を完全に解かせなかったら、後で何があるか分かったもんじゃねえ!ここは弟君を信じて堪えろ!」


「がああああ…!!」


 光の球に捕らわれたままの大輝君は、頭を押さえる事もできない。


 だが、魄力が酷く落ちている訳でもない。


 紅炎の言う通り、僕達は大輝君が生き延びる事に望みを掛け、黙って見ているしかなかった。


「…フッ。」


 やがてルドルスが嘲笑を浮かべ、突き立てた杖を回収した。


 大輝君の身体からは、ルドルスの魄力が跡形もなく消え去っている。


「しぶとく長らえたか。つくづく根性だけは立派な野朗だ。…だがまあ、悪くねえ。ここであっさりくたばったんじゃ、面白くなかったからな。」


「う…ぐ…。」


「大輝!!」


 舞と麗奈が、真っ先に大輝君に駆け寄る。


 他の面々はルドルス達の攻撃を警戒し、自然と3人を庇うように立った。


「…大丈夫。魄力はそれほど弱っていません。亡くなられる事はないでしょう。」


「…大輝…よかった…!」


 舞は涙声になり、大輝君を強く抱きしめた。


「さあ、こっちは取り決めを守ったぜ。今度はテメエが守る番だ、ミズカワマイよ。」


 ルドルスに急かされると、舞は唇を尖らせ、立ち上がる。


「…麗奈ちゃん…弟の治療…お願い…。」


「はい。」


「…あっ!でも、弟を寝取ったりしたら絶交だからね!」


「…は、はい…。」


 青ざめる麗奈に大輝君を託すと、舞は改めて構えを取った。


 息遣いは相変わらず静かだが普段よりは確実に荒くなっており、大輝君を無事に取り戻したからといって気が収まっていないのは一目瞭然だった。


「ククク。愛しい弟との時間を邪魔されて、ご機嫌斜めか?だったら、後でじっくり感動の再会をやり直すがいいさ。…テメエら姉弟が生きてここから帰れれば、だがな。」


「言ってなさい!大輝も私も、あなたなんかに殺されたりしない!」


 舞が猛然と突っ込み、手刀を打ち込みに行く。


 ルドルスは構えを取ることもなく無防備に立っていながら、余裕たっぷりの嘲笑を崩さなかった。






 ものの30分程で、カイとミラの鬼ごっこに5回連続で付き合わせられた。


 ユナはずっと満面の笑みのまま相手をしているが、こちらはやかましく騒ぎながら走り回るカイとミラに3回目でうんざりしてしまった。


 小休止の時間となり、次は何をして遊ぶかとの話し合いは一応されるが。


「よーし!じゃ、またオニごっこなー!」


 やんちゃさと勢いで意見を押し通すカイの結論は、またしても同じだった。


「またかよ…せめてそろそろ違う事やれよ…もう、6回目だぞ…。」


「フウジンさん、がんばって!これくらいで疲れてたら、ホントにおじさんだよ!」


「誰がオッサンじゃ、この野郎ー!!」


「きゃーっ、ごめんなさーい♡」


 怒鳴りながら木刀を振り上げたが、ユナは逃げ出す事なく、何とも軽い詫びを入れながら困ったような笑顔で頭を庇うだけだった。


 声色と表情から、俺が本気で当てるつもりがないのを見透かされているらしい。


 余裕ぶりに少し腹が立ったので、せめて寸止めするのは予定よりもう少しだけ後、ユナが真っ二つになる直前のタイミングにしてやろうと考えた。


 だが丁度、最初に考えていた頃合いで木刀を止めることになった。


「…あれ、どうしたのフウジンさん…ん?」


 不思議そうにしたユナも、俺と同じく黄金の女神像のある方角を見やる。


「…舞さんの弟と、あのムカっ腹の立つ魄力が離れてる。」


「あ、本当!弟さん、助かったんだ!」


 我が事のように喜ぶユナだが、すぐに表情が曇った。


「…でも…マイさんの魄力が強まってて、すぐ近くにあの嫌な魄力がある…。」


「舞さんが、弟を操ってた野郎と戦う気なんだろうな…。」


「…あら?この魄力…。」


「ヒーラさん?」


 首を傾げるヒーラさんに、ユナが振り向く。


「何だか、覚えがある魄力のような気がします…記憶違いかもしれませんが…。」


「ねえねえ、おじさん!おねえちゃん!オニごっこしよー!」


「そうだよー!もう十分休んだだろー!」


 飽きもせず鬼ごっこをせがむミラとカイにまとわりつかれていながら、俺もユナもそちらには反応せず、黄金の女神像の方角を見つめていた。

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