ロザリア・グレタ
「フリージア様の傍仕えか……」
フリージア様に着任の挨拶を終えて数日後。今日からフリージア様の護衛の任につく。
扉の前に立ち尽くし下を向く。
どうして私なんだろう。母が傍仕えをしていたからと言う理由ならいい迷惑だ。
私はお姫様を守るために頑張ってきたわけじゃないのに……。辞退できるならしたい、だけど女王様やカイゼル様に直接お願いされて断れるエルフなどいるはずもない。
「なんで私が使用人のような事をしないといけないの……」
母から引継書や口頭での引継ぎはすべて頭に入れてある。だけど。
朝にフリージア様を起こして、髪を梳かして、服を着せる。
王女としてそれが当たり前なのだろうか?王族の私生活など知らない私には判断が出来ない。
もしかしたら王女様も使用人にそれをやってもらってるのだろうか?
正直な話フリージア様の事は好きでも嫌いでもない。だけど思う事がないわけじゃない。
「やめよう……考えても意味なんてないんだから」
引継ぎの内容を頭で反芻する。
扉をノックして数秒待ってから入室する。フリージア様は朝は弱いから返事がなくても部屋に入っていいらしい。
よし!
コンコンコン
数秒って結局何秒なんだろう。母のこのいい加減さはどうにかして欲しいな……。
「どうぞ」
「……え?」
起きてる?
驚いて少しだけ思考が止まってしまうがすぐに持ち直し入室の挨拶をして部屋に入る。
ベット。ではなく扉の前に微笑を浮かべたフリージア様がいた。
髪も服もすでに着替え終えていた。
ちらりと机の上に視線が向く。本が乱雑に広がってる光景に目が見開いてしまう。
(こんな早朝から……)
フリージア様に視線を向けると穏やかな笑みを浮かべていた。
直ぐに頭を切り替えて着任の挨拶をする。
エルフの国では身分が低い方が先に挨拶をするのが礼儀だ。待たせてしまった事を少しだけ恥る。
「今日からよろしくね?私の命は貴方に託します」
「ハ!命に代えてお守りします!」
「う~ん。やり直し!」
「え?」
やり直し?どこが至らなかったのか全然分からず目が泳いでしまう。
「命に代えてもって私は職務放棄だと思うんだよね!」
「は、はぁ」
微笑を浮かべたままのフリージア様のいう事がよく分からない。
私を見て真剣な表情に変わるフリージア様。
「命なんて賭けなくていい。その代わり必ず生きて私を守り続けなさい。これは命令です」
呆気に取られ私は答えることが出来ない。
直ぐに微笑を浮かべたフリージア様に戻り手招きをされ椅子を勧められ、向かい合う形で座る。
(え?え?なんだこれは?)
困惑する私を落ち着けるようにハーブ入りのお茶まで用意してもらう。
手伝おうとするが座ってていいと言われ落ち着かないまま椅子の上でソワソワしてしまう。
「ありがとう、ございます」
「どういたしまして。早速だけどあなたの事を教えて?あなたがどんな日常を過ごしてたのか。どんな目標があるのかを」
それがフリージア様との初めての会話。生涯をかけて守り続けると誓った主との運命の出会い。
私達が初めて心から膝を折った相手だった。




