ファミリアバース 33 極悪人を捕まえにきたのに悪者の鉱山へ殴り込みしたと思ったら怪獣退治になった
絶望の暴君。そうつぶやいた俺に、仮面男爵が聞いてくる。
「シント少年、あれを知ってるのか?」
知っているとは言えないだろう。本で読んだだけだ。
「図鑑で見たことがあるだけです! それよりも早く避難を! あれではもう」
トカゲを二足歩行にして巨大にした姿。
まさに圧倒的存在。見る者を絶望させる怪物だ。
戦士たちも、働いていた人たちも、唖然としている。
このままではまずい。
「うわあああああああ!」
一番近くにいた戦士の一人が頭から丸呑みされた。
ごりごりと嫌な音が響く。
人間が嚙み砕かれる音を聞いて、大きな悲鳴が上がった。
「いやああああああ!」
「に、逃げろ! 逃げるんだーーーーーー!」
一気に混乱が広がっていく。
こうなってはもはや立場なんて関係ない。働かされていた人々も、それを監督していた戦士達も、一斉に逃げ出した。
「GYUWAAAAAAAAAAAAAA!」
振り回した太すぎる尻尾が、施設をいとも簡単に破壊する。
砕け散った建造物の残骸がこっちに吹っ飛んできた。
「ああっ!」
「危ない!!」
残骸が、働かされていた女性に降り注ぐ。
それを見て、カサンドラと名乗った女戦士が飛び出した。
彼女はその女性を抱きしめ、身を挺してかばおうとする。
「間に合え! ≪魔衝撃≫!」
特大の魔力弾が、ぎりぎりのところで残骸を吹き飛ばした。
「早く逃げて!」
「ありがとうございます!」
女性は逃がした。だが――
「鉱山はこれで終わりだな」
仮面男爵の言う通り、戦士たちは哀れにも食われ、設備と器具はバラバラ。
いや、話をしている場合じゃない。みんなを逃がさないと。
「カサンドラさん、みんなの避難誘導を。仮面男爵も」
敵対している彼女にもお願いする。
カサンドラさんはたぶん、聞いてくれる気がした。
「坊や、しかし」
「決着をつけたいならあとで!」
「そうじゃない! 坊やはどうするのかって聞いてるのさ!」
心配してくれているのか。
さっきは女性を庇っていたし、思った通り悪い人じゃないのかも。
「倒す」
「なんだって!?」
「シント少年、本気か?」
本気だ。
倒さないと、人が大勢死ぬ。
「ばか言うんじゃないよ! あんなの……勝てるわけないだろ!」
勝てるわけない、か。
だったらそれを覆す。
地面を蹴り、絶望の暴君に向かって走った。
これ以上、好きにはさせない。
「待て、シント少年!」
「坊や!」
「いいから早く避難してください!」
あの巨体、生半可なものでは通じないだろう。
一撃だ。それでカタをつける。
「≪魔衝撃≫」
魔力弾をぶつけて、意識をこちらに向ける。
「GYOWAAAAAAAAAAAAAAAA!」
凄まじい雄叫びだった。まともに聞いたら耳が潰れる。
しかし、ヤツは地響きとともにこちらへ向かって来た。
挑発は成功。
これならやれる。
ギリギリまで引きつけて――
「坊や! 危ない!」
「≪衝波≫!」
絶望の暴君ではなく、足元に向かって撃つ。
ヤツの巨大な顎は空振りに終わった。
衝撃波を利用して天高く跳ぶ。
俺が急に消えたように見えたのか、絶望の暴君はきょろきょろと辺りを見回していた。
これで詰みだ。
今から、鋭く尖った大きなものをぶつける。
狙うのは体の中心。
そこを狙い撃つ。
「≪巨人之土岩≫」
生み出したのは、巨大な岩塊。そして。
「≪錐棘≫!」
魔法によって加工した巨大な土の槍を落とす。ついでに俺の体も預けて加速させた。
空を切り裂いて落ちる大岩槍≪巨人之土岩・錐棘≫は、絶望の暴君を真上から貫き、串刺しにする。
「AGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!?」
叫べ、そして死ね。
おまえがこれまで食った人々の無念に囚われて地獄に落ちるがいい。
赤黒い血が宙に跳び散る。
体の中心を貫かれ、それでもなお、絶望の暴君はじたばたともがく。
「終わりだああああああああああああ!」
≪土岩炸裂≫
撃ち込んだ大岩槍を炸裂させ、体内から破壊する。
絶望の暴君は倒れた。もはやぴくりとも動かない。
空から降り立ち、息を吐く。
「ふう……」
倒せたか。
外したらどうなっていたか。
「ん?」
着地した俺を出迎えたのは、沈黙だった。
みんな同じように大口を開けてるけど、どうしたのだろうか?
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