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何も起きてない、だけど、それをいえばまたいい争いになる。
だから僕は適当に話を合わせる。
「わ、わーすごいねー。いったいどんな仕組みなんだろー。気になるなー」
「柳士! 柳士! もしかしたらほんとにいろはちゃんは異世界の人なのかも!」
「わーほんとだねー。僕もそう思うー」
ひどいカタコトだ。
だけど誰も突っ込まない。
「二人は私の運命性を感じとることができるのですね! あ~よかった! てっきり見えてないものかと思っちゃってて、これをどう説明したらいいのかなあと悩んでたの! だけど、これなら信じてもらえるよね!?」
「うん、信じる信じる!」
奈海は前のめりになっていろはの手をとる。
きらきらとした奈海の目に、微笑むいろはが映っていた。
「さあ! そしたら柳士さん。……今から柳士さんを転生させます。心の準備はいいですか?」
「……ああ」
準備も何も、お遊びにそんな前置きはいらないだろう。
まさか……転生って生まれ変わるってことだろ?
こいつの手によって僕は一度死ぬことに……いやいやさすがにそれはないか!
……ないよな?
……そんな展開はありませんように。
「転生にはこの石を使います。柳士さん、この石を強く握ってください!」
真っ白な石を受けとると、僕はいわれたとおりに強く握った。
くしゅっと。
石は意外にももろく崩れた。
すると、石を握りしめた手のすきまから、目をおおいたくなる程のまぶしい光があふれだす――。
「何!? この光は……!?」
奈海は目をふせる。
な、何だ!?
何が起きた!?
石の光は強まっていく。
光が僕の手を突きぬけるように輝きだすと、部屋は白一色となった。
眩しい!
目を開けてられねえ!
なんだ!?
なんなんだこれは!?
目を閉じても、光かまぶたを突き抜ける。
とっさに後ろを振り向くも意味はなかった。
まるで身体全体を透過するかのように光は僕を貫く。
「この光の先に私の世界があります! 柳士さん……私たちを、救って――」
透過する光は僕を、部屋を、そして奈海やいろはをも包み込み、やがてその光は――音をものみ込んだ。
――そういうことか。
僕は何もかもがいろはの妄想だと思ってた。
僕が異世界に行く?
そんなものはいろはの作った設定に過ぎないと思ってた。
でも違った。
ガチだった。
今の僕にはわかる。
今までに感じたことのないこの全身をも貫く光。
これが僕の疑心を晴れとばす。
とぎすまされたこの感覚が、文字通り光の速度で自分自身にいろはの話が真実であると告げる。
ああ、これで僕は異世界に転生される。
異世界かあ。
どんなとこなんだろ。
食べ物は美味いかなあ。
というか向こうの人にコキ使われたりとかしないよなあ。
ああ、想像つかねえなあ――。
この時の僕は、走馬灯のように思考をめぐらせていた。
◇◇◇
やがて光は弱まっていき、最後には完全に消えた。
目を開ける。
どうやら光は収まったようだ。すると、ここが異世界……?
だけど。
目の前の景色は変わっていなかった。
さっきまでいた奈海の部屋。
いろはいっていた。
光の先に私の世界がある、と。
「これは……転生されてるのか?」
声に出すと、ふと違和感を覚える。
ん?
今のは……自分の声?
その疑問に対する答えがないまま、奈海がいた場所に目を向ける。
しかし、そこに奈海はいなかった。
奈海の代わりに、そこには別の人物がいたからだ。
「何で――」
僕がよく知ってる人物。
毎日の生活で必ず一度は目に入る、僕にとって一番馴染みのあるその人物。
「何で――」
その人物と目があう。
だんだんと見開かれていくその目を見ながら――。
「何で隣に僕がいるんだよ!?」
◇◇◇
ストック分はなくなりました。
以降は不定期更新ですლ(╹◡╹ლ)
たまーにのぞいてもらえると嬉しいです!




