九十六夜、叔母さん家の日々 26 新しい世界 12
今日は、じいじの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「・・・・・・」
そうだねえ、じゃあ、じいじが子供の頃のお話をしようかねえ。
まだ、小学校の頃のことだけれど・・・
さて、前回は夜の追跡ハイクに出発したところまでだったかね。じゃあ、その続きだね。
お兄さんたちの居るところの明かりが見えなくなって、分かれ道のところに来たよ。これどうやってどっちに行くか決めるの?見たところ、なんにも見えないし、道にも何も落ちてなさそうだし、目印になりそうなものはないよねえ。
見てると先輩が二人別々の道に入っていったよ。そうしたら、そんなにいかないうちに一人の先輩が手招きしてる。あれ!真っ暗じゃないのか?
じいじは初めて気が付いたんだけれど、結構明るいんだよ。月は木の陰に隠れて見えないけれど目が慣れてくると割合はっきり周りが見えてくる。
見てると、入団するときに揃えた装備のホイッスルを音がしないように二度吹いたよ。音のするところを押さえてふっと吹くとなんだか割合遠いところまで合図が届くみたいだった。もう片方の道に入っていった先輩がすぐに帰ってきて、そろって手招きされたほうの道に入っていったよ。
そこで気が付いたんだけど、道の草むらから強い匂いがしてきたよ。ハッカの匂いかな。じいじもそこで気が付いたよ、暗い夜の追跡は迷う場所には匂いが残してあるんだってことにね。たぶんだけど、迷いそうもない所で匂いが残ってるときには道の真ん中ではこのまま道なりに、右側の草むらだったらそこから右に入っていく。左側の草むらだったらそこから左に入っていく。匂いがそういう合図になっているんだね。
じいじもかなり目が慣れてきて、こころも落ち着いてきたので周りが見えてきたよ。よく見れば、地面には割とはっきり木の影が差しているし、林の中もぼんやりと見えてきていたよ。さすがに木がたくさん生えているところは影になって光が入ってこないのか真っ暗で見えなかった。
それともう一つ分かったのは、明るい所にいると暗い所が見えにくくなり、暗い所に入ると明るい所がはっきり見えるようになり、その暗い所も見やすくなるってこと。
ついさっきまで怖かったけれど、今はそれほど怖くなくなってきたよ。
今まで夜の暗い所は怖くて、嫌いだったけど、慣れてみるとそれほどではなくて、これ、月が出てるとお散歩が出来そうだよね。満月なら、昼間みたいになんでも見えるんではないだろうか。草の色や、
咲いている花の色さえも見えそうだったよ。こんど満月の夜に近くの街灯のない所を散歩してみるのもいいかもしれないって思ったくらいだよ。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
この続きはしばらく続きます。




