二千六百三十七夜、ばあばの社会人生活 178 ばあば就職する 178 印刷会社 151
今日は、ばあばの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「…………。」
そうだねえ、じゃあ、ばあばがまだ若かった頃のお話をしようかねえ。
ばあばが就職をした頃のことだけれど……。
──ばあば一人を写植部門へと増員するだけでも、こんなに大変な状態なのに、今ある会社中の設備を大幅に切り替えることになるというのは大変なことなのではないだろうかと思う……。
たとえば、写植だけに限って考えてみても、かなり厳しいのではないだろうか……。
今の状態では、活版部門の文選を担当している組版の経験者だという人を移動させるのが一番可能性としては簡単そうに感じられる……。
でも……それにしても、覚えることはたくさんあるのに違いない……。
若い人はともかくとしても、活版の文選に慣れきっている人たちを移動させるのは、本人を含めてかなりの努力が必要になるのではないだろうかと思う……。
写植の機械の操作だけを覚えるのはまだいいとしても、文字版の中の文字の配列を覚えるだけでも時間が掛かってしまうだろうし……。
その間の生産効率が落ちてしまう間をどうするのかを考えると、おいそれという具合にはいかないのではないだろうか……。
移行期間中に受注した急な仕事などをどうするのか……という問題もあるのだろうし……。
ちょっと考えれば、外注をすることになるのだろうけれど……。それでなくても、競争が激しいだろう受注競争の中、利益を上げるためには、外注費を抑えるほかにはなさそうだ……。
それに、人の配置における全体のバランスを考えないと、いきなり仕事の流れが滞ってしまう……ということになりかねないだろうしねえ……。
いろいろなことを考えると難しいことが多いのかもしれないよねえ……。
でも、こうして一歩づつでも前に進んでいこうとしている会社で働けるということは、愉しみなことだとばあばは感じていた……。
もちろん、どこの会社でも同じような努力がされているのだろうとは思う。
しかし、こじんまりとした会社だからこそ見える景色というものがあるようにも思う……。
こうして、真剣に会社の行く末を考えられるということは、ばあばのやる気にもつながってくるのではないのだろうか……。
そうしてばあばの日々の努力が、会社のなにがしかの改善や発展に結びついていくのだ……。
そんなことが感じられるということは、ばあばにとって非常に嬉しいことなのだとも思えた……。
いま、ばあばにとっては、ただ単に給料がもらえるお仕事ということだけではなくなってきているような気がする……。
前の会社と比べれば、この小さな会社では、会社の発展などの「変化」に対して、自分自身が多少は関われることになるのかもしれない……。
そう思うとばあばは、なんだかじんわりと心が温かくなってくるような気がしていた。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
良い夢に恵まれますように、おやすみなさい。また次の夜に……。




