二千四百九十二夜、じいじの高校生生活 1175 三年生 130 二学期から 112
今日は、じいじの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「…………。」
そうだねえ、じゃあ、じいじが子供の頃のお話をしようかねえ。
まだ、高校生の頃のことだけれど……。
──じいじは、何の底意もなく返事をしたつもりだった……。
けれど、H君にとっては何か気になるようなことがあったみたいで、ちょっとだけ嫌そうな表情が現れたような気がした……。
じいじは、これ以上の用事がなかったので、H君たちの前からはさっさと辞することにした……。
「……僕は、美術科の展示が少し気になるので、それを見た後で、他の展示の様子を見てくるかもしれないから……。
そのあと、終了時間くらいにはもう一度ここへ来て、後片付けくらいなら手伝えると思うよ……。
それじゃあ、その時にまたね……。」
じいじは、なんとなくだけれど、この場には留まりたくはないような気がした。
教室を出て、階段をトントンと降りていく……。
この棟の出入り口を出て左に進んでいくと美術科の教室棟になる。
大きなクスノキが枝を広げている広い中庭を過ぎると、以前はじいじたちがいつも使っていた美術科棟の出入り口があった。
じいじの印象としては、ここは静かなのだけれどなんとなく暗い感じがしていた。
今では、選択教科が音楽になってしまっていたので、ほとんど美術科の教室には来たことがなかった。
じいじは、出入り口の前で足を止めて扉の奥を覗いてみた……。
……今では、じいじが習っていた頃のおじいちゃん先生から、中年のステキ先生に(じいじのクラスの女子生徒たちの噂では……ということなのだけれど……。)美術科の担当教諭が変わってしまったということらしい……。
だから、美術科教室の雰囲気が少しは変わったのかなあ……って、じいじは、すこしだけだけれど期待をしていた……。
けれど……なんとなく足を止めたくなるほどには、じいじが受ける感じは変わっていなかった……。
……なぜかはわからない……。
けれど、じいじにとっての美術科教室は、近寄りがたいところとなってしまっていたようなのだ……。
じいじは、美術科自体については嫌いではなかった。……というよりも、中学校を卒業する頃までは、本気で美術の専門学校なり、大学に進学したいと考えていたのだけれど……。
でも、いつの間にかその夢?は形を変えてしまっていたのかもしれない……。
この頃は、一生を自己表現に費やす気持ちが、急速にしぼんでしまっていたような気がする……。
これは、じいじ自身が、無邪気な子供のような考え方から、自分が置かれている現実や状況が少しは理解ができるようになってきたからなのだ……ということなのかもしれない……。
「……こんにちは~~~。
……失礼します……。」
なんだか……人気がないように見える美術科教室へと、じいじは足を進めることにした……。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
良い夢に恵まれますように、おやすみなさい。また次の夜に……。




