十一夜、あまり良くない思い出
今日はじいじの出番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「・・・・・・」
そうだねえ、じゃあ、じいじが子供の頃のお話をしようかねえ。
まだ、小学校にも行ってない頃のことだけれど・・・
じいじがそんなに体が強くないことは話したかね。特に、小学校入学前から、低学年にかけては特にそんなことが多かったように思うよ。特にひどい病気をしたってことはなかったんだけどすっきりしなかったって言うのか、はっきりしなかったって言うのか。
この頃、じいじは、夏を迎えるころになると胎毒が出て、ひどいことになってたよ。胎毒ってのは、バイ菌や、体質によって、顔や頭におできができてとてもひどく化膿してね。お医者さんに行って、一つ、二つ、三つって数を数えながら化膿したおできにメスを入れて、そのあとは、包帯をぐるぐる巻いていた。頭の髪の毛の中や顔や首筋にばかりできるので、隠しておくことができずに、学校にもそんな状態で通ってたよ。
だから、他の人からは気味悪がられるし、包帯の下はどうなってるんだ、って言われて、はずしてみせたり・・・。そうしたら、ひどく嫌な顔されて、みんな逃げだすし、こっちに来るなって言われるし、そんなことなら見せろっていうなよってことだけれどね。
その頃は、じいじは気が付かなかったけど、学校の先生もいろいろ気を使ってくれてたのかもしれないね。そんなことが毎年繰り返せば、友達も少なくなるし、じいじ自身も、あまり楽しく遊ぶことができなくなっていって、一人でいることが多くなっていったのかもしれないね。
だからじいじが、一人でボーっとしているのが好きだったり、たくさんの人とわいわい騒ぐのが苦手なのはその頃のことが原因なのかもしれないよ。
入学前や、もっと小さいころにも毎年出たり引っ込んだり、胎毒はあったんだけど、その頃は、出ている間は外に出歩かなかったし、保育園もおやすみしていたから、何ともなかったんだけれどね。さすがに小学校は、長期間お休みするわけにはいかなかったしね。仕方がなかったとはいえ、ちょっとはショックだったよ。と言っても、はっきり覚えていないのだけどね。嫌なことは忘れるのかね。
それでも、三年生頃かなあ、四年生頃かなあ、体力がついてきたからなのか、でなくなってね。それ以来胎毒が出て、それに悩まされることは無くなったよ。それまでは、包帯ぐるぐる巻きの、ミイラ男が、ぎゃあぎゃあ逃げまわる男の子を追いかけまわしたりしてたし。ミイラ男ならぬ、ひどい時にはつぶれたおできの膿?が包帯の上まで染み出てたから、それはそれは、他人にとってみれば怖かっただろうね。感染はしないって言われていても、何もわからない人には、うつったら嫌だでは済まないだろうからね。
これはいい思い出でした、ってことにはならない、苦い苦い思い出になってしまったよ。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
んんーん、知らなかったこととはいえ、最初に聞いた時は、眠くなるどころではなかったような。寝物語にしては、ちょっと刺激が・・・