↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森の家  作者: 森野露葉
2/2

第二話 ワカのちから

これからのんびり更新していこうと思います。


さて、どんな話があるのやら。

じいちゃんの枝の下で雨宿りをしているみんなの傍まで行き、フードをとりながら声をかける。


「お待たせ。あの子たちのことを聞きに来たんだけど、あまり長い時間は使えないからまとめて話してもらってもいい?」


今の状態じゃみんなと会話はできないから、とりあえず伝えるだけ伝えて力(・)を使う。

両手を合わせて握り、祈るように顔の前まで持っていき、目を閉じる。


『結(むす)び』


力が抜けていく。ここにいるみんなとつながる感覚を感じながら目を開けた。これでみんなの声が直接頭に響くようになるはずだ。

さっき癒しを使ったときはそれほどでもなかったけど、結構体が辛いかも。

話を聴く体を装い、盛り上がっているいい感じの根っこに座る。


『ワカ、聞こえるか?』


ヒューから一番最初に声がかかる。


「うん、聞こえる。最近使ってないから不安だったけど、大丈夫みたいだね。で? どういうこと?」


『私から説明するよ』


私の近くの枝まで移動したグラウの声が響く。

精霊絡みのようだし、梟の聖獣であるグラウは確かに説明に適任だと思うから頷くとグラウが話し始めた。


『あの子ども達はね。この森に捨てられたんだ』


「そう…。どこの国の人たちだった?」


双子は精霊に気に入られているようだから大丈夫なんだろうけど、捨てに来た者たちは危険な目に合うはずだ。

この森は、木が高いせいで空が見えないうえに磁場が狂っているため一度入れば迷ってしまう。さらに、魔物がうじゃうじゃいるのに、森の魔力の性質により魔法を上手く使えなくなる。魔力が暴走すると魔力の器が壊れて死んでしまうみたいだから、森に近づこうとする者はいないはずだ。

もし境界の森に入っても引き返せる技術が確立されたのだとしたら警戒する必要がある。私の生活に関わるから、情報はいくらあっても足りない。


『リセンブリック神聖国だよ』


「あそこか……」


思わず顔をしかめると、グラウが苦笑いするのが分かった。

私は神聖国が苦手だ。国の雰囲気が独特で私は居心地の悪さしか感じなかったのを覚えている。少なくとも、もう行きたいとは思わない。


『あの子たちは森のかなり手前で捨てられて、追われながら自分たちで森の中に入ってきたらしい。あの双子は例の双子と同じ髪と瞳の色だろう? 神聖国は末のお姫様と王子様でも王家にこの色があるのは問題だと殺そうとしたけど、上手くいかなかった。それに下の方でも王位継承権があって、あの年であの魔力量だから脅威だったんだろうね』


手前から追われて森に入ったということは森に入る技術はなさそうだ。それはよかった。でもほかに気になること言ってなかったかな。


「…あの双子はお姫様と王子様なの? よりによって神聖国の……なんだかとてつもなく面倒な問題に関わらせようとしていない?」


『神聖国にいたらいずれ死んでしまう、ワカに鍛えてほしい、と精霊が連れてきたみたいだ』


「あの双子は国が脅威を感じる程の魔力を持ってるんだよね? 鍛えるにしても私はあの二人に魔力の扱いや魔法については教えられないよ?」


精霊の考えを代弁しているグラウに反発していると、聞いているだけだったヤフ・コフ兄弟が話に混ざってくる。


『亀の先生が言ってた。知識は力になるって』

『それにワカは強いよ。俺たち勝てない』


さらには魔物である、サーピス、ヒュー、リュークまで口を出してくる。


『ワカ、強い』

『魔法に限らなくても、鍛えることはできるぞ』

『体術や武器の扱いなら教えられるのではないですか?』


「サーピスたちまで……精霊の言うことに賛同するなんて何か他に理由でもある?」


魔物と精霊は互いに不干渉だったはずだし、私が精霊を好きじゃないことをみんなは知っているはず。なのに魔物のみんなまで精霊側につくのはちょっと嫌な気分だ。


精霊(あいつら)は姿を見せずに私を監視している。バレないと思っているのかも知れないが、なんとなく精霊がいることを感じられる私としては姿が見えようと見えまいと気に食わない。

それが今回精霊(むこう)から面倒事を持ってきた。しかもこの期に及んでまだ姿を見せず、グラウたちを経由するとは。

やっぱり私は精霊を好きにはなれない。


……キツイ。みんなに多少なりとも不快感を持ってしまったからか結びが不安定で、力の減りが普通より早い気がする。

とりあえず、感情を落ち着けなければ。私はみんなとつながりを切りたいわけじゃない。そう言い聞かせる。

冷や汗をかき出した私にグラウが気付いて声をかける。


『ワカ? 大丈夫かい?』


目を閉じて深く息を吸い、感情を落ち着けるように息を吐く。


「ごめん、大丈夫。精霊絡みだったからつい。で、他に理由はあるの?」


『大樹様がその双子は生かして欲しいとおっしゃったんだ』


じんちゃんが………なるほど。それであれば、みんなが賛同するのは納得だ。じいちゃんは精霊の中でも特別だし、この森では別格の存在だから。


『それに子育てしてみたらどうかともおっしゃっておられた。その年だと子どもを育てていてもおかしくはないのだろう? と』


「子育てって……」


じいちゃんが子育てを言及するとは思わなかったよ。


「それよりじいちゃん、いつ起きてたの?」


『今日の朝早くにほんの少しだけ。私たちと話したらまた眠ってしまわれた』


「そっか。じゃあ今度こそ当分起きないだろうね」


寂しさを感じながら座っているじいちゃんの根をなでる。少し、ううん、かなり寂しいけど、仕方ない。じいちゃんはこの森の主だ。魔力を整える役目があるし、精霊として他にもやることがあるのだろう。

そんなじいちゃんが生かして欲しいということは、魔力を整えることに何か関係でもあるのかもしれない。そして生かすために子育てと鍛えるに繋がるわけね。

私もみんなと同じでじいちゃんが言うことであれば否やはない。精霊は気に入らないが。


それに私が子どもたちを見捨てられないっていうことをじいちゃんはお見通しだったんだろう。幼い双子には何の罪もないことはわかってる。

そしてこの世界とは違う、日本という国で大人に守られながら育った子ども時代の記憶がある私は、子どもがひどい目にあっていたら見過ごせない。

だからこそ今まで、孤児なんかに関わったことはなかった。見つけてしまえば良い気はしないし、見て見ぬふりができない可能性が高かったから。

この世界は、弱いものは死んでいく。死がすぐそこにある。それが普通で、捨てられる子や奴隷だって当たり前にいて、気にしてたら自分が生きていけない。


でも、私はあの子たちの存在を知ってしまった。それもこの世界では生きにくい色を持ってしまったあの二人を。

…このまま見過ごすことなんて出来ないじゃないか。

あの子達は帰る場所がないし、どこかの孤児院に預けたとしてもあの色を持つ限りどこに行っても殺されるリスクは変わらない。それくらい大陸に広く伝わっているのが例の双子の話だ。

精霊たちにも決まり事があるとじいちゃんから聞いたことがあるし、精霊たちだけじゃ双子を守りきることはできないのだろう。つまり私が見捨てたら、あの子達は長くは生きられないということ。


『ワカは大樹様に言われなくてもきっと見捨てられないと思うけどね』


観念しながらグラウの言葉に応える。


「はあ、分かったよ。双子が嫌がらない限り私が面倒をみる。精霊たち(やつら)の思惑通りに動くのは癪だけど、みんなに負けないくらい強くしてやろうじゃない!」


意気込んでみたものの、やっぱり問題なのは私に魔力がないことだ。双子にとっては魔力や魔法が大きな力になるはずだが、私には説明くらいしかできない。


鍛えることに関しては大丈夫だろうと思っている。戦闘の強さで言えばまあまあ強い方だし、魔力の代わりに力(・)が使えるから負けることはそうないと思う。


力に関しては鋭意研究中だから絶対大丈夫かと訊かれると首をかしげざるを得ないが、力の回復については分かっていることがある。

どうやら私の力は人と関わりを持つことで回復するのだ。データ不足で数値としてははっきりとはしていないのだが、この森で極力人と関わらないで過ごすようになり分かったことだ。

そして、回復しないうちに力を使えば命に関わることも分かった。さっき感じたように身体に不調をきたすし、以前随分とひどい目に遭った。



力を使わないで人と関わらずにこの森で生きるということも考えたが、みんな以外の森の生き物たちに怯えず、自由に生きるにはどうしてもこの力が必要になる。

境界の森に人が来ないとは言っても、来ないだけで入って来れる者は数名いるし、実際に双子はこの森の奥にいる。私に害意を持った者が来れないとは限らない。


逆に森から出て魔力があるかのように見せながら生活するということも出来なくはないが、些細な違和感を隠すために常に気を張る必要があるし、魔法や魔力に詳しい者であれば気づくだろう。何より以前の仕事仲間に生きていることがバレれば非常に面倒なことになるため森からはなるべく離れたくない。


それにどこにいようと油断すれば、不測の事態が起こった時に対処できずに死ぬことは変わらない。死ぬだけならまだいいかもしれない。魔力のない私は場合によって研究や実験の対象になり、死んだほうがマシだという目に遭わされるかもしれない。

そういったことに対抗するには、使い勝手がの悪いこの力を使いこなせるようになっている必要があると思う。楽観視はできない世界だ。



それにしても難儀だと思う。人と関わらずに力を使えば命を削り、人と関われば力を使えても様々なリスクが増すなんて。かなりハードモード過ぎないかな…


でもそういう事情も含めて考えると、この森で双子と一緒に暮らせれば自分の力を回復させながら力を使いこなすための研究ができるだろう。滞りがちな研究が進むのはありがたい。あの双子は精霊のお気に入りな訳だから精霊に恩を売ることもできる。


まあこっちで話が進んだとしても、これからどうするのかを決めるのは二人だ。とりあえずは双子の意思を確認することが必要だろう。


「じゃあ事情は分かったし、そろそろ帰るね。力を切るよ?」


みんなが頷くのを確認し、右腕を体の前で横に振って力を切る。


「またね」


雨はもう止んでいる。

ぬかるんだ道に気を付けながら私は走り出した。


誤字脱字を見つけてしまったらこっそり教えてくださると助かります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。