第一章 境界の森と子どもたち 第一話
続きが全く書けていないので、不定期更新です。
拙い文章、曖昧な設定だと思います。
それでも、好き勝手やろうと思ってますので、悪しからず。
この世界は魔力の量によって寿命が決まる。
その身に宿す魔力が多ければ多いほど、寿命は長くなる。
なら、私はあとどのくらい生きられるんだろう。
魔力を一切持たない私が、どうして生まれてすぐ死ぬことなく、今日まで生きてこれたのだろう。
成人と言われる15歳を優に超え23年も生きた訳だが、一体どれほどの時間が残されているんだろう。
わからない。
でもこうも思う。残された時間なんてのはきっと誰にだって分からないと。
今この瞬間に病気や怪我で死んでしまうかもしれないし、誰かに殺されてしまうかもしれない。
きっと悩んでも仕方ないのだろう。いつ死んでもいいようにしておくしかないのだ。
では、どうして。
どうして、生きとし生けるものが持つ魔力が、私にはないんだろうか。
どうしてここまで仲間外れなんだろう。
ああ。やっぱり。
どうしたって私はーーー
家事を終え一息つく。
外はしとしとと雨が降っている。
雨の日は地面がぬかるむから外には出たくない。
薬草も食料も十分な備蓄があるからわざわざ外に出る理由もないし、うん、今日は読書をしよう。
美味しいお茶とお菓子を準備する。
雨のにおい、というか土のにおいは好きだから窓は開ける。
本棚から宗教関連の本を数冊持ってきて、ソファに座り、行ったことのある国の本から読んでいく。
20年以上生きてきたから宗教に関して多少のことは知っている。
この世界の人達のほとんどが、たくさんの神がいる多神教の宗教を信仰していること。
それこそ裏の世界に生きているような人達ですら熱心にお祈りをするのだ。
日本人としての記憶がある私としてはいまいち宗教というものが分からない。
だからこそ、そこまで浸透し、人々の生活に根付いているものについてもっと知りたかった。
何杯かお茶を飲みお菓子をつまみながら黙々と読み進めていくと、以前から感じていた疑問がより深くなった。
いくつか読んでみたが、どの国の本を読んでも出てくる神たちが同じだ。
前の世界みたいに何種類もの宗教はないようで、どの国でも、どの地域でも同じ宗教を信仰している。
どの神様にお祈りをするかは自分の好きにしていいようで、一人の神様でもいいし、数人の神様に祈ってもいいらしい。ただし、数人の神様に祈る場合は、神様同士の仲の良さや好き嫌いなど相性があるみたい。
どの神様に祈るのかによって、この魔法が使いやすくなるだとか、このスキルが手に入りやすいだとか、生きる上で大切なことを左右するため、どの神様に祈るのかは意外と重要。
この世界の宗教に関する本をすべて読んだわけではないから、全てを知れたわけではではないけれど、同じ宗教しかないということはほぼ確実だろう。新興宗教とかがあれば別だけど。
私は神様に敬意は払ってるしつもりだし、感謝もしているつもりだ。でも、こう、信じてるけど信じてないというか、感謝してるけど熱心に祈るほどじゃないというか……この感覚、考え方って、日本人独特な気がする。この世界の人には理解できないだろうな。
それにしても、この世界には神様が本当にいるのかも。みんなが熱心に祈るのはその分の恩恵があるということだもんね。
ま、こんな疑問を抱いたところで私には関係ないか。
さて、そろそろお昼ご飯を作ろう。今日は少し寒いからあったかいスープがいいかな。野菜たっぷりにしよう。
キッチンに立つとレモンが緑色のスライムボディをプルンプルンと動かしながら近付いてくる。その動きはいつ見ても癒しだ。ほっこりしながらも手を動かし、レモンにいつも通り生ごみを処理してもらう。
そうして、料理を作り終わっていざ食べようと座ったところで、朝より強くなった雨の中から足音が聞こえた。
窓からは虎の巨体と狼のすらりとした体躯が見える。ヒューとリュークのようだ。仲の良くない2匹が一緒とはどうしたのだろう。
何か用かとドアを開けると、ヒューとリュークはちょこんと座って居た。
「……その子たちどうしたの?」
居たが、二匹は子供を咥えていた。
どういうこと……?
なんで、こんなところに子どもが…しかも2人……
私が住んでいるこの場所は、境界の森と呼ばれている。
この世界で一番大きな大陸の真ん中辺りに存在する広大な森だ。
ここには珍しい植物、生態系の解明されてないたくさんの生き物、手に入りにくい高価な薬草の群生地がある。
強い魔物もたくさんいるから、倒せば食料や素材だって手に入る。
だがこの地に入ろうという人は自殺志願者以外に今はもういないはずだ。
長い歴史のなかで人々は恩恵に与ろうとこの地に入ってきた。だが、どんなに強いと謳われた人でも、どんな万全の準備をした人でも一度森の奥に入れば誰一人として帰ってこなかった。
もちろんこの広い世界で森の奥地に入れる人物がいないわけではない。だが、それは何十億人といるであろう人口の中でたったの数名しかいない上、その者たちですら精霊の助けがなければ、この森の魔力に数時間しか身体が耐えられないのだ。
だから人々はこの先からは生きていけない、立ち入ってはいけないという意味を込めて、この地を境界の森と呼んでいる。
そんな場所に子どもがいる。それに意識がなく相当弱っているようだが、生きている。
たくさんの魔物がいるこの森でここまでたどり着いたということは、魔物たちが生かしたということ。森の魔力の影響を受けていないところを見るに精霊絡みのようだ。
「とりあえず預かればいいのかな? 今は力をあまり使いたくないんだよね。詳しい説明はあとでそっちに行くから、まとめて聞くってことでいい?」
私が声をかけると2匹は頷くように首を振った。ヒューもリュ-クも体が大きくてこの家には入れないため、入り口で一人ずつ預かる。
子どもたちを家に入れると同時に覆っていた何かが剥がれたようだ。
とりあえず床に寝かせ、膝をついて観察する。パッとみた感じ5歳前後かな。
それに、顔立ちが似ているから多分双子なんだと思う。……生きづらかっただろうな。よく頑張ったと思いながら頭をなでる。
この二人に必要なのは、よく食べてよく眠ることだろう。
でもまずは、ベッドに寝かせる前にお風呂だな。体を触った感じ、熱はないようだけど、結構大きな怪我をしてるし、感染のリスクがある。もし熱が出れば、ただでさえ体力が落ちているこの子達では命に関わりそうだ。清潔にする必要があるだろう。お風呂も体力を消費するから、体を拭いた方がいいんだろうけど、拭いてどうにかなるような汚れ方じゃないし。髪もすごく汚れていて色も分からないほどだ。うん、お風呂必須。
お風呂、服、傷薬、寝かせるところを準備する。
さてどうやってこの子たちをお風呂に入れようか。
子どもたちのことが気になるのかレモンが周りをうろちょろしているが、放置だ。
きっとこの子たちで床が汚れたから気になっているのだろう。
女の子の方が大きい傷が多いから先にお風呂だな。抱き上げて連れていく。
呼吸は少し浅いけど規則正しく聞こえるし、腕で脈もとれる。体は雨のせいで冷えているけど、温めるしかない。お湯で温まってもらおう。
今は日本でいえば、夏が終わって秋になりかけているような気候だ。
まだ寒くはないけど、雨の日は少しひんやりとした空気になる。
この家は過ごしやすい室温が保たれているけど、男の子も冷えているだろうし急がなければ。
お風呂場に着き、子どもを寝かせて、まずは自分の服を脱ぐ。
女の子はボロボロのワンピース1枚だけだったため、すぐに脱がせ終わった。
もう一度体全体を観察するが、大きい怪我は右足の骨折のみのようだ。
これは力を使って癒す必要があるだろう。回復に時間がかかれば、弱ってるこの子の状態では死の危険がある。
両手を祈るように組み、目を閉じる。
『癒し』
力が抜けていくのを感じ、目を開け足を確認する。今の私では骨をくっつける程度しかできず、腫れは完全には引かなかった。それでも数週間早く治るだろうから、あとは自然治癒力に任せるしかない。
女の子を抱き上げお風呂場に入り、シャワーをぬるめの温度で調整する。
うん、いい温度かな。シャワーは出したまま、女の子の体にかけておく。
まずは髪を洗おう。
私は背中を壁につけて床に足を伸ばして座る。その上に頭を私の足側にした子どもを足を開かせて仰向けで寝かせる。そして、イスに私の足を乗せ子どもの頭を少し持ち上げて、L字型のような状態になる。
この体は柔らかいし、一応鍛えているから、この態勢でも苦しくはない。それに思ったより洗いやすかった。結果オーライ。
女の子の頭の傾きを調整し、目、鼻、耳に水や泡が入らないように気を付けながら洗っていく。
3回洗ってやっときれいになったため、次は普通にイスに座って子どもを抱えて体を洗っていく。
顔は濡れたタオルで何度か拭く。
あとは泡で体を隅々まで洗う。もちろん、傷口は慎重に。
女の子は右足のほかに両腕の大きな切り傷や全身のかすり傷が目立つ。痛そうだ。
キレイになった全身をもう一度確認したけど、命に関わるような傷は見つからなかった。
よく食べて、よく寝て、よく動けば治るだろう。
うん、きれいになったし、体もさっきよりは温かい。
次が詰まっているので、洗い終わったらすぐにお風呂場を出る。
体を拭いて、傷薬を塗り、必要な場所には上から清潔な布を巻き、新しい服を着せて、髪は風邪をひかない程度に乾かす。
私は次も裸になる必要があるから、軽く体を拭いて、バスタオルだけ巻いてお風呂場を出る。
階段を上がり、私の寝室のベッドに寝かせて、とりあえず女の子は終了。
あとは、同じ要領で男の子もキレイに洗った。
男の子は両腕、両足に大きな切り傷があり、かすり傷も全身にあったけど、骨折はしていなかった。右足に打撲があったけど、良く効く薬を塗って手当したし大丈夫だろう。
レモンは子どもたちがいたところに落ちた土や泥、私が落とした水滴なんかをキレイに食べたあと子どもたちのところに行ってしまった。気に入ったのか、警戒しているのか。
お風呂や服の片づけをして、部屋に様子を見に行く。
「ぐっすりみたいだね」
イスに乗って双子の様子を見ているレモンに声をかけ、双子の傍に行く。レモンは動く気がないようだ。
二人は綺麗な銀色の髪でとてもサラサラしている。
十分な栄養が取れてないであろう貧相な体なのに髪はサラサラ。謎だ。
ベッドの端に座り、それぞれの頭をなでていると、女の子の瞼がかすかに動いた。
お? 声をかければ起きるかな?
「おーい、わかる?」
「ぅ……」
女の子が身じろぎすると男の子も頭が動く。二人とも起きそうだ。
ほっぺをつついていると、二人の目が私をとらえたので、手を引っ込めて声をかける。女の子はアメジストのような紫色の瞳で、男の子のほうはラピスラズリのような青色の瞳。例の双子とまるきり一緒だ。
「おはよ。目が覚めたようで安心した」
二人は私を認識するととても驚いたようで目を見開き、体を起こして逃げようとする。
でも動ける体力はないし、怪我をしているから全然逃げれていない。
お互いがお互いを守るように身を寄せ合って、こちらをにらんでくる。
「二人とも痛みはどうかな」
「「………」」
反応なし。うむ。
「ちょっと待っててね。今、食べ物を持ってくるから」
立ち上がると、レモンもついてくるので一緒に部屋を出る。
目が覚めてよかった。
食べてさらに回復してもらいたい。急いで持って行こう。
さっき準備していたお昼ご飯用のスープを温め直し、二人分よそう。それに朝作ったパンと冷たい水を持ち、双子のいる部屋に行く。レモンはついてこなかった。
「入るよ」
腕で何とかドアを開け、部屋に入る。
ベッドを見ると、さっきとは違いなんとか双子は体を起こしたらしい。
ベッドの上の隅っこで壁に寄り添うように二人で背中とおしりを見せて丸まっていた。
………隠れているつもりなんだろうか。
ん゛ふ、……笑っちゃいそう。いや、ダメだ。我慢、がまん、がま……
ふっ、やっぱムリ。
「ふふ……ふははは、はははは」
私が近づいてこないし、笑っているから気になったのか、二人とも顔を見合わせ、同じタイミングでそろーっとこちらを窺う。
それがまた笑いを誘う。
あ、やめて。もっと笑っちゃう。
「ふっ、はははははははは……ふは…あはははははははははは…」
私は笑いが収まるまで、ひとしきり笑った。二人の格好が私の笑いのツボだった。
お盆を落とさず、スープもこぼさなかった私を誉めてほしい。
……はあ、笑った、笑った。
こんなに笑ったのは初めてかも。
「はーあ。ごはん、食べようか」
そう言って二人に近づく。だが、二人は逃げなかった。にらんでもない。
笑ったのがよかったのか、今は観察されているような視線を感じる。
私がベッドの傍のテーブルにお盆を置くと二人のお腹が盛大に鳴る。
お腹が減っているようで何よりだ。
これだけ動けたんだから自分で食べれそう。腕には大きい怪我はなかったしね。
ベッドの近くにしゃがみ、子どもたちより目線を下げて、膝に頬杖をつき声をかける。
「自分達で食べられる?」
すると、二人とも頷いてくれた。おお、反応あり。進歩だ。
それに言葉は分かってるみたい。
「じゃあ、ここに置いておくよ。食べ終わって眠くなったらここで寝てね」
私がいたら食べなそうなので、それだけ言って部屋を出る。
部屋を出るまで観察するような視線を感じた。私がどういう人間かあの子達なりに考えているのだろう。
部屋を出て、自分もお昼ご飯を食べる。
これからヒュー達のところに行く必要がある。その間に子どもたちが出ていかないように家にお願いしておかなければ。
「これから出かけてくるから、子どもたちを家の中から出さないようにしてもらってもいい?」
すると玄関脇の壁にある透明な掲示板に光る文字が浮かび上がる。
『いいですよ。対価はお願いしますね』
「了解。いつもより長めにするよ」
ご飯を食べ終わり、二人の様子を見に行く。テーブルには空のお皿が並んでいる。口元も服もベッドも汚れていないということは綺麗に食べれたようだ。食べ方が分かるということは育ててくれた人はいたのかな?
二人はベッドで寝ている。お腹いっぱいで眠くなったようだ。一応、声はかけておこう。
「この家から出ないでね。外は強い魔物がたくさんいて危険だから。私は少し出かけてくる。ゆっくり休んで」
お皿をもって部屋から出る。
家事を溜めることをレモンは許しくれないから、自分の分もまとめてお皿を洗って片づける。
サボるとレモンがお皿やら服やらを食べてしまい、結局は私が困ることになるのだ。何度かやって身に染みた。
「じゃあ、出かけてくるね」
『いってらっしゃい。気を付けて』
掲示板とプルプルと体を動かすレモンの返事を確認し、フード付きのローブを付けて家から出る。
できるだけ雨には打たれたくないから、走っていこう。
私のスピードで15分くらい。
もう少し走ると、樹のじいちゃんが見えてくる。
ここに来れば私と関わりのある魔物や聖獣たちの誰かしら居るし、そこに居合わせた誰かから伝わるのか暇であればみんなが来てくれる。気まぐれだから、基本的にみんな集まることはないんだけど、どうやら今日は亀の先生以外みんないる。
珍しい……。珍しいからこそ嫌な予感がする。
ヒューもリュークもあの中にいる。
集まっている理由はどう考えてもあの双子に関係するものだろう。
あの子たちはそんなに重要な人物なんだろうか。
それにさっきから結構当たる私の勘が告げているのだ。
これからはこの森にばかり居られない。森から出る機会が増えると。
誰とも深く関わりたくないからこんな森に住んでいるのに…
世界の理から外れている私に何をさせようというのだろうか。




