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5.ホントの気持ち






「あら、意外と驚かないのね? もしかして、そんな短くなかったかしら」

「そうでもないさ。でも、やっぱり知ってたんだな」

「うふふ……」


 ミレイを背に、俺はダースと言葉を交わす。

 互いに感情のこもらない声。こちらはあえてそうしているのだが、相手方は果たしてどうか。笑っているようで、笑っていないそれと表情。不気味にも思えたが、これから相手にする男は狂人なのだ。

 その程度の違和感、今回は無視した方が良いのかもしれない。


 だが、これだけは訊いておこう。


「どこで、気付いたんだ?」


 そう思って、問いかけた。

 いったいどこで、俺の力の存在に気付いたのか。

 するとダースはふっと微笑み、銃口を向けてこう答えた。


「おかしいって思ったのは、初めて会った時よ。だっていくらレーザーに気付いたとして、即座に狙撃があると判断した上で、あんな行動を取れる者はいない」


 ――ましてや、一般人ならなおさら、と。

 彼はそう言った。そして、


「2つ目に、コスチューム店での行動。この辺りから確信に変わってきたわ――ミコトちゃん。貴方、御堂の家での時もそうだけど、鏡でなにかを確認したわよね」


 そう続ける。

 そこまで言われれば、最後の判断はいつか、俺にも分かった。


「それで、体育館裏でのあの行動か。もし俺が止めなかったら、本気で――」

「えぇ、死んでいたわ。その可能性に目を瞑って、自殺しようとしたのだから」

「狂ってるな。まさか自分の命を投げ出してまで確認を取るなんて、思いもしなかったよ。お陰様で、俺の推測はどれも後手に回ることになった」


 こちらの言葉に、ダースは目を細める。


「あら、狂ってるのはミコトちゃんもそうじゃない?」

「それほどでもないさ。あいにく、俺はそこまで大物じゃない」


 そう言って俺は笑った。

 自分の寿命は残り10分未満だと、その事実を胸に。


「そうね、貴方はそんな大物ではない。だって――」


 そして、ダースは俺の胸中を見透かすかのようにこう告げた。





「いっつも、震えていたものね? この家にきてからはずっと、まるで赤ん坊のように。夜一人きりになると、ベッドで泣いていた」――と。





 彼は凶悪な笑みを浮かべて言うのだ。

 それこそ、弱者を見下すように。


「いまだって、逃げたくて逃げたくて仕方ないのでしょう? ――本職を舐めないでね。それくらい一目見れば分かるの。きっと、アレンもね」

「……………………」


 なにも、言い返せなかった。

 だってそれは、覆しようのない真実だったから。


「ここまでよく頑張ったわね――ミコトちゃん? 今からでも遅くはないわ、この一件から手を引きなさい。そうすれば、もう少しだけ生きれるわよ」


 俺の呼吸が、微かに乱れているのを察知したのだろう。

 最後にダースはそう口にした。


 でも、俺は首をゆっくりと左右に振り――。



「そうじゃねぇよ、ダース。お前は勘違いしている」



 そう言った。

 ほんの微かにだが、彼は眉をひそめる。

 その姿を見て、俺はしっかりと銃を向けてこう伝えた。



「俺はな、ここで引いたら――それこそ、死んじまうんだよ」



 それは、決意の言葉。



「ミレイのために捧げたこの命。ここで臆病風に吹かれちまったら、それまでの想い、すべてを否定することになる。それは、俺の『魂の死』だ」――と。




 俺はミレイが好きだから、ここまでやってこれた。

 こんなに誰かを好きになるなんて、思いもしなかった。

 情けなかった俺を男にしてくれたミレイに、感謝しかなかった。だから、ここで引くという選択肢はまず、あり得ない。たとえそれで――。


「ミコト、くん……?」

「あぁ、ミレイは心配するなって。すぐに終わることだ」


 事情が読み取れないのだろう。

 ミレイは、目を見開いて戦況を見つめるだけだった。

 そんな彼女に俺は初めて――。









「愛してるよ、ミレイ」









 この胸の想いを伝えた。

 言葉にした直後に、感情の奔流が俺を襲う。

 目頭が熱くなり、涙がこぼれ落ちた。ダースに向けていた銃口は揺れ、膝には力が入らない。今まで無視を決め込んできた恐怖に対する怯えが、顔を出した。




 それでも、言葉にして良かったと。




 もしかしたら、ミレイにとっては呪いとなるかもしれないけど。




 それでも俺は最後の最後に、この胸に秘めた純粋な気持ちに向き合った。




「さぁ、ダース。そろそろ終わりにしようか……!」




 ふっと、息をつく。

 鏡で確認するまでもない。

 きっと、今の俺はとてつもなく不細工だ。




 そんな俺でも。

 なんの取り柄もない俺でも。

 誰かのためになら、こんなに強くなれるのだ。




「えぇ、いらっしゃい。ミコトちゃん?」




 彼の言葉を合図に始まる。

 俺は一直線に、ダースの懐へと向かって駆けだした。



 

 背中に、愛しい女の子の悲鳴を受けながら……。


 


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