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天国から追い出されて不老不死  作者: ラムネ便
7人の姫達
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警戒されて


 色々考えたり思い出したりしていたらいつのまにか寝てしまっていたらしく、揺さぶられて気づいた時には既に到着していた。マリは既に降りる支度を終わらせており、俺は焦りながら直ぐに馬車を降りて再び大地に立った。

 地面から地平線がある方向へと目線を戻す。そこには、トサエル国よりも施設に特化したと言っても過言ではないレベルの城がそびえ立っていた。いや、城というより要塞に近いイメージがある。とにかく機能性を考えたのだろう。余計な装飾などない。しかしこの形、どこかで見たような気がするな…。どこだったけか…?


「お待ちしておりましたわ。ウォッカ御夫妻様」


「ルンレイ…だっけか?」


「はい。名前を覚えて頂き幸いですわ」


「長旅お疲れ様です」


「アヴァロンさんもいたの?気づかなかった…」


「まあ仕事柄、気付かれる訳には行きませんので」


「ご案内致しますわ。どうぞこちらへ」


 案内されて要塞内部に入ると、そこでは兵士よりも学者らしき人達がより多く見えた。それもただの学者ではなく、魔法使いのような格好をした者から深緑色をして様々な地図を持った者まで明らかに階級、もしくは役職分けがしっかりとなされている。おそらくここは本当に国防総省と同じ扱いなのだろう。故に必要なのは最小限の兵員。本丸はまた別にいる。勉強になるな。

 それから騎士団設立に役に立ちそうなところをいくつか確認していると他よりも少しばかり重めな扉の前にまで案内された。ルンレイが何の予備動作もなくあっさりと開けたその先には…葉巻をくわえ、シュワルツェネッガー張りの筋肉と強面さを出した男が円卓の座席の一番向こう側に座って笑っていた。


「お父様。ウォッカ御夫妻をお連れいたしましたわ」


「ご苦労だったなルンレイよ!どうだアヴァロン!偶には姉とぶつかりあってきてはどうだ?」


「お父様。私はお父様をぶちのめしたいのですが」


「ハッハッハ!思い上がるなよ。貴様如きが俺を倒せると思っているのならば、それは愚かなことだ」


「104戦中99戦は私が勝利しています」


「…」


「アヴァロン。行きますわよ。お父様。御客人の前ですわ。葉巻はお控えになった方がよろしいかと」


 そういうと二人は扉を静かに閉めてどこかへ行ってしまった。正面を向くと、何故か暗い顔をして円卓の先に座っているクラセフト国の王が黄昏た姿でそこにいた。


「えー…」


「名前は知っている。構うことはない。椅子に座ってくれ」


 円卓に用意されていた座席に座る俺達。とりあえず何か話しをしなければと思ったので自己紹介から始めることにした。


「では改めてご紹介します。私はアルス国公爵第六席。ハインド・ウォッカです。彼女は私の妻のマリーです」


「よろしくお願いします」


「…ハインド公爵」


「はい。何でしょうか」


「なぜ…鳥は巣立つ時が来るのだろうな…」


「なぜ、でしょうかね…?」


「昔は可愛かったのだよあの二人は!」


 顔を上げた王の顔は完全に泣いていた。


「昔は二人一緒に『父上〜抱っこして〜』なんて言ってくれたのに…!あんなに可愛かったのに!今となっては妻のように地味に痛いところを突いてくる毎日!アヴァロンに至っては私より強くなってしまった…!」


「子はいつか親から離れるものですから…」


「しかしながらだ!私を超えてゆくところを見る度に感慨深いものがあるのも事実ッ!私も所詮は親なのだな…」


 うん。なんだこの親バカは。そろそろうるさくなってきた。だがこんな父親からあの二人が出てくるのか。と、なると母親似なのだろうか?もしくは今は2人ともいわゆる武装モードで通常の素の性格はとても優しいものなのかもしれない。

 特にルンレイは着飾ってるように見えるが一切そういうことはない。しっかりしてるし言葉遣いは少し扱いづらそうな様子をしているが、行きすぎるアヴァロンを止めている。少し見ただけなので買いかぶり過ぎなのかもしれないが、俺の中の評価ではこんなもんだ。葉巻をやめろというのも、父親の健康を気にしての言動かもしれない。

 落ち着いたのか、クラセフト王国の王は円卓の椅子から立ち上がってこちらに近づいてきた。慌てて俺も椅子から立ち上がった。


「取り乱してすまなかった。改めてようこそ!我がクラセフト王国へ!私はここの現皇帝のサイサリスだ!よろしく頼むぞ。ハインド公爵!」


「よろしくお願いします」


 差し出された大きな手に対し、俺もその手を出して握手を交わした。とても暖かく、その手にはいくつもの傷やシワがついていた。まるで職人のような手だ。


「そちらの女性の話も聞いている。君の妻であるマリー・ウォッカだな?」


「はい。よろしくお願いします」


 マリも手を出して握手を交わす。しかし王は握手の後にずっとマリの手を見つめていた。


「…良い手だ」


「えっ…?」


「夫の為に公爵夫人という立場に甘えず、しっかり妻として働いている証だ。その傷は女性や男性に関わらず勲章だ。大事にするといい」


「あ、ありがとうございます」


「…おっと!すまんすまん。いつもの癖が…ハッハッハ」


「癖、ですか?」


「クラセフト王国の皇帝とは言うが、我々王族の出は武器職人。故にこの国には人間以外にもドワーフ、鬼神族と言った熟練職人が多い。かくいう私も鬼神族と人間のハーフだ。皇帝になる前、私も武器を作って修行していた時期があったものだ」


「あの2人も武器を?」


「ハインド公爵は流れの掴みが良いな!その通り。アヴァロンとルンレイの2人が使っている武器は2人がそれぞれで作り出した創作武器。この世に二つと無い専用の武器だ」


 アヴァロンの十字架はアヴァロンオリジナルの武器ってことか…。すごいなあの2人。

 だがルンレイの武器は見えなかった。しかし皇帝の話し方からするとルンレイもオリジナルの武器を持っていてもおかしくない。彼女はあの時、装備していなかったかのか?だが殺気丸出しシスターズが武器を携帯しないわけがない。実際、アヴァロンは背中に十字架の武器を背負っていた。じゃあルンレイはなんなんだ…?


「さて。今回の件の説明は私に任されているからな。簡潔に説明しよう。座ってくれ」


 円卓の椅子に再び座ると、プレゼンテーションで配られるような資料らしき紙が部下らしき人から机に出される。そこには連邦どころか大陸レベルで行われる祭りの詳細が書かれていた。だが驚くのはまだ早い。なんとその祭りの名前。守護龍祭なのだ。


「守護龍伝説…はあまりトルクスタン大陸には馴染みが薄いかもしれんが、我々がいるアレモル大陸には馴染み深い伝説でな。かつてこの世界にいた守護龍達が自分達の命と引き換えにとある魔物を封印したってところから来ている」


 います。ここに。雷の守護龍と暫定的な闇の守護龍がいるんだよ。なんて馬鹿なことを言えるわけがない。祭りは好きだが祀られるのは好きじゃない。

 そして俺が何も言わずにいたらマリがいつのまにかどんどん質問をしていた。


「それで…この守護龍祭というのはどういうものなんですか?」


「まあ要するに守護龍様達の活躍に感謝するってことだな。ハインド公爵夫妻には、私の娘達が行っている学校に行き、他の国の姫様達と共に祭りを多いに盛り上げていただきたい!」


「それでいいんですか…?」


「まあ国際的交流とは言うが、実際のところ小難しい話は無し。この祭りに参加、交流し視察してもらう。それだけだ!迷惑にならない範囲なら楽しんでもらって大いに結構!そしてこの祭りや伝説を他の国に伝えてもらえるなら是非そうしていただきたい!」


「なんというか…楽しめそうですね」


「うむ。是非とも楽しんでほしい。だが参加については条件がある。私のルンレイやアヴァロン、他の国々にいる姫達は一つの学校に通っている。その学校内で、姫達と共に行動し、祭りについて紹介してもらうことだ!」


「あぁ…表面上ってやつですか」


「あまりはっちゃけすぎると問題があるのでな。仕方ないことだ。…おっともうこんな時間か。では今日はここで失礼するとしよう。まだもう一人用があるらしいのでな」


 王は用意していた封筒に資料を入れて俺に手渡してくれた。これは有り難い。分からないことがあればこれで確認できる。紙があるとないとじゃ、やっぱり情報の質が違う。

 椅子から立ち上がって準備し、扉の前まで一緒に来てもらう時、俺は一つの疑問が浮いた。なぜ姫だけがいて皇子がいないのか。何か理由があるのかもしれないが…。思い切って聞いてみると


「ああ。よく言われるのだが実はトシュメロ連邦では女性が強いなんてのが当たり前でな。というか女性の出生率が高いのだよ。私も皇子扱いはされたが、それは一人息子だったからな。基本的に女王か、もしくは男が平民などから選ばれる」


 と返ってきた。なるほど。女性の方がめっぽう強いねぇ。そんな世界もあるだろう。そうなると男性は大変だな。かなり個性的な姫様が多いから中々ついていくのは難しいだろう。


「ありがとうございます。では…」


「頑張りたまえよ!時間があればまた会いに来て構わんからな!」


 笑いながら部屋から送り出され、案内役である使用人にまた別の部屋に案内される。使用人がノックすると、入れ、と少しばかり威厳のある声が部屋から聞こえてきた。そこにはルンレイとアヴァロン、そしてひとりの女性が座っていた。目つきは鋭く、なんだか冷たそうなイメージだ。だが執政者たるものこうでなくては、といった感覚すらある。


「おはようございます。私はクラセフト王国、皇帝の正室。アンジェラです。以後、見知りおきを」


「アルス王国第6席、ハインド・ウォッカ公爵であります」


「妻のマリー・ウォッカです!よ、よろしくお願いします…!」


 マリがいつになく緊張して噛みかけ、深々の頭を下げた。俺はただその場でしっかりと立つしかない。しかしアンジェラ女王は冷たい表情とは裏腹にニコニコと笑うと俺たちにゆっくりと話しかけてきた。


「話に聞いた通り、とても良い人柄ですね。安心しました。祭りの際には私の娘達がお世話になると思いますが、ご容赦ください」


「いえ。こちらこそよろしくお願いします」


「理解しておいでではあると思いますが、不審な行動は謹んでくださいね」


「ええ。分かっています…」


「ルンレイ。アヴァロン。席を外しなさい。少し話があります」


「はい。母様。行きますわよ。アヴァ」


「ん」


 二人はそういうとあっさり部屋から出て行ってしまった。そうして残されたのは俺とマリの二人のみ。近くにいた使用人が俺らに椅子を持ってきてくれたので二人で座らせてもらった。

 正面を改めて向くと、彼女の顔は明らかに先程のものとは違う冷徹な目をしていた。俺だってそんな目で見られれば動けなくもなる。魔法だとかそういうもんじゃなくて、いわゆる威圧感。人が本来持っている殺気というもの。あの娘2人は互いに相手に向けて殺気を出していたがこの人は全く違う。虎の戯れなんてレベルじゃない。外敵を見ているかのような目。この場で俺を殺したっておかしくはない。


「…私から質問する。君は、本当にアルス王国の者か?」


「はい」


「国王からは何と聞いている?」


「国際交流がある、とだけ」


「本当にそれだけか?」


「…はい」


「では次の質問だ…。仮面をつけた男が、ある国を転覆させたと聞いた。どう思う?」


「…結果的に国民が納得するのであれば、良いのでは?」


 結構早めに来たな。だがまだだ。ここでボロを出すわけには行かない。まだまだ…


「そうか。そうだな。なぁ…『ビッグサル』」


「ッ⁈」


 笑いながらキツイ視線をこちらに向けてくるアンジェラ女王。まさか気づかれた⁈いや待て。ビッグサルの名前が知られてるだけだ。俺と断定されたわけじゃない。まだ負けちゃいないぜ俺ぁ!


「…一体なんのことでしょうか」


「ビッグサル。私とて何も知らんわけではない。エヴィロイドには我が国が派遣した商団が出国できないと報告があり抗議していたからな。それが先日、急に帰還してきた。反乱軍が勝利したことも全て聞いている」


「…それとこれは話が噛み合いません」


「商団の人間は皆こう証言している。銀髪で、不思議な物を使い、あっという間に騎士団を制圧。そのまま反乱軍が勝利し、あっけなく我々は出国を許可されたとな」


 ちょっとずつだ。まだバレちゃいない。隠し通せるはずだ。…いやこれもうバレてるんじゃない?もう無理だぞ。これ以上。だってここで証人が出たら全部終わ…


「そこで、この部屋にその商談の人間を呼んである。して、どうだ?その者の声や姿。そして言動は」


 後ろを振り向くと、いつのまにかふくよかな商人がそこに立っていた。


「覚えていますとも。流した髪型。砕けた口調。不思議な声質。あの壁に張り付けられた幻影は明らかにこの方です」


「…だ、そうだ。どうかな?ビッグサル。もといハインド・ウォッカ第六席」


「…仮に俺がビッグサルであったとして、その時はどうするつもりです?」


「いやなに。私とて危険因子は可能な限り排除したい。貴殿がどのような人物なのかを知りたかっただけだ。もし危険ならば…ここで幽閉することも止む無し。と…言いたいところだが、我が商団が帰還できたのは間接的とはいえビッグサル。貴殿のおかげでもある。それに、貴殿の安全性はすでに確認している」


 彼女がひらひらと出したその紙にはエヴィロイドの印鑑がデカデカと押され、細かな文字は分からなかったが国主と書かれたサイン欄にはしっかりとファローズ・エヴィロイドの名前が書かれていた。つまり女王様は最初から俺の存在を知っており、今回来るに当たって俺がどのような人物なのかを知りたいがために尋問のようなことをしてきたというわけか。頼むから普通に話をさせてくれよ…。

 だがファローズに自分が何者だったのかを名乗っておいたのは良かった。本来ならあまり言わない方がいいのだが、マリの件もあったからな。というかこんなにあっさりバレて良かったのか?一応国の重要人物が他国の政治に干渉し、国家を転覆したことに間違いはないのだ。警戒されて当然っちゃあ当然のはず。


「警戒はされないのか、なんて顔をしてるな。安心してくれていい。事の顛末やかつてのエヴィロイドの強固すぎた政治方針の謎。それら全てを教えてもらっている」


「な、なら大丈夫ですね…ははは…」


 その後、部屋から出た後は商人に握手を求められたので対応。あとは基本的に顔合わせだけだったので迎賓館があるトサエルへ帰還することとなった。姫達に見送られて馬車に揺られながらトサエルへと向かう最中、うたた寝してしまったのか、何故かマリに起こされた。どうも寝ている時にうなされていたらしい。なぜかあの目を思い出す…。大丈夫だと信じたい…大丈夫、だよな?


でき次第投稿予定です。本年もよろしくお願いします。

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