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天国から追い出されて不老不死  作者: ラムネ便
その敵は…
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帰宅

かなり時間がかかってしまいました。


 スーパーハインドでギルドーザーのゲートへ飛び込んだ俺含む公爵一同は無事にアルスへ帰還。城に全員を置いてきたあと、その足で屋敷へと帰ることにした俺はとりあえずマリに対してどう言えばいいのかだけがずっと頭によぎっていた。が、結局言い訳を考える暇もなく屋敷に到着してしまった。

 これは仕方ないな。もう普通に仕事でした、と言うしかあるまい…。


「ただいま帰りましたー…」


「お早い御帰りでしたね。ハインド公爵様」


 1人の接客対応係の執事が話しかけてくる。見た感じ、俺が出て行ったのは知っているようだ。ペンデュラムも流石に黙って俺を連れ出したわけじゃなかったみたいだな。良かった。


「その呼び方は…まあいいや。マリーはどこに?」


「外の訓練所にいます」


「訓練所?それまたなぜ?」


「さぁ…マグノリア様といらっしゃいますよ」


「マグノリアと一緒…?分かった。ありがとう」


 屋敷の中庭を通り過ぎて外のグラウンドに出てみると訓練用のいくつかの的に小さな穴がポツポツと空いている。更に近くから銃声も何発か聞こえてきた。

 音のする方へ行ってみると、そこではマグノリアがマリに対して銃の講習を行っていた。


「マリーさんも分かったと思うけど女性でもしっかりとしたフォームで撃てば、こんな大きなデザートイーグルも使えるんだよ」


「すごい…」


「ご主人のはトーラス・レイジングブル。回転式拳銃だね。リボルバーっていうのは機構が簡単なんだけどその分衝撃がダイレクトに伝わるんだ。警察用のはともかく、大型のはリコイルの衝撃を肘を曲げて吸収する癖がある人には向いてるかもね」


「じゃあ私のはどんな感じなの?」


「デザートイーグルはオートマチック。50AE弾バージョンだね。上手く当てれば熊だって一撃で殺せる護身用拳銃だよ」


「マグノリアちゃんはどうやって使うの?」


「ボクは基本的に自分の感覚だからね…自分の手で撃ったことはないんだけど、分からないわけじゃないんだ」


「さすがマグノリアだ。俺と繋がってるだけはある」


「ご主人⁈いや、これは…大丈夫だからね⁈ちゃんとボクは弱い銃からしっかり…」


「言わずともいい。いつかはやってもらわないといけなかったんだ。マリ。今更かもしれないが…俺は日本でいう、いわば自衛隊に近い立場についている。それにこんな世界だ。何が起こるか分からない。だから自衛手段だけでも」


「知ってるよ。ケイ君がこの国を守ってるのも、この世界を守ってるのも」


「…そうか。知ってたか…」


「でもねケイ君。私は同じ役目に選ばれてるの。私だけ後ろに隠れてるなんて…そんな任せっきりなこともできない。私は戦わなきゃいけない。弱い自分は…もういらないの」


「…弱いマリは残しておいてくれ。俺が困る」


「ふふっ。そうだね。ケイ君に甘えないとケイ君が困っちゃうもんね」


「その通りでございまする」


 少し笑うと再び銃の練習を始めるマリ。デザートイーグル、しかも50AE弾を扱うタイプともなると本来ならかなりの膂力が必要となるはずなのだが彼女はそれを軽々と、それも下手したら必要はないがダブルタップも可能であろうスピードでだ。まだ動きは米兵の新兵訓練動画以上にぎこちないが、鍛えれば強くなれる。近接戦もできることを考慮すれば恐らく俺以上に強いだろう。

 よくよく考えてみれば俺も近接戦…どういう基準かはともかく、殴ったりとかはできない代わりに早撃ちや木に撃ち込むだけで意識せずとも跳弾できたりするのは凄みがある。

 だが俺が愛用しているのはトーラス・レイジングブルModel500。拳銃としての弾薬としては世界最強の実包弾薬であり強力すぎるストッピングパワーを誇る500S&Wマグナム。更に二丁持ちでそれを計10発。50AE弾オートマチックですら扱いが難しいというのに、オートマチックより強力かつ強いリコイルを簡単に耐えおまけにそれを早撃ちする。普通の人なら10発撃っただけで文字が書けなくなるらしいが、俺が全弾早撃ちしてもその兆候は見られなかった。


「ご主人。せっかくだから見せてよ!早撃ち!記憶では見たことあるけど、実際に見たことないから!」


「二丁持ちでか?」


「諸君。ボクはご主人の早撃ちが大好きだ」


「よろしいならば早撃ちだ!」


 腰にさしていたレイジングブルの弾倉を確認し全弾入っていることを確認して的に向かって構える。そしてダブルアクションで自分の出来うる最高の速度で撃ち込んだ。おまけにウェスタン風の早撃ちもやってみせた。

 訓練所に響く轟音。同時に発射されるマグナム。これらを撃ってなお、俺の耳も手もなんともない。だがマグノリアは完全に放心状態。マリはリロードしている途中で腰を抜かしたのかへたり込んでしまった。

 で、このどデカイ射撃音に驚いて何かあったのかと使用人とコレンやリリス、キーファと現段階でハインド騎士団に所属している3人まで来てしまった。とにかく訳を話して銃の轟音だということを伝えたら納得して帰ってくれた。銃は俺が開発した武器で俺やマグノリアとかの一部の人にしか使えない、と前に説明していたのが効いていたようだ。良かった。まあこんなものを使おうと思う奴は使用人の中にはいなかったが。

 しかしリリスは前々から気になっていたようで、いつか教えてもらうか、などとポツリと言っていたのが聞こえた。これはマジで銃の初期訓練とか技術の拡散対策やら色々しなきゃならない時が迫っているみたいだな…。


「で、どうだった?マグノリア」


「ただのバケモノじゃないんですかね」


「今思うと俺バケモノだな」


「どう考えてもおかしいって。ご主人…それmodel500なんでしょ?アモは実包マグナム…」


「50AE弾とほぼ同威力、あるいはそれ以上の弾だな。まあトーラスは銃身長がM500に比べて短いから威力は低いかも知れんが。チタニウムを使った新フレームだ。悪くはないさ。この銀色もいい味を出してる」


「まあ…ロマンの域だよねぇ…」


「それを早撃ち。しかもガンプレイしながらでも撃てるんだぜ?」


「だけど殴ったりはできないから完全なガン=カタはできないという哀しみを背負っているんだよね」


「リベリオンな。っておい。さりげなく俺の好きな映画シーンを読み込むんじゃない」


「仕方ないよ。ボクの中に勝手に書き込まれてるんだから。そう。例えば…SAYONARA YOSHITOとか」


「機龍ぅぅぅ!最期の沈む瞬間だけ鳴き声ゴジラに戻るとか演出卑怯すぎんよぉぉぉ!」


  自分の記憶を共有できているマグノリアとだけ話せる馬鹿話。言ってしまえば、もう一人の俺みたいな存在だしな。

 その後、話に混ぜてと頬を膨らませながら俺に近づいてきたマリ。だが流石に銃を放ったらかしにするわけにはいかなかったので、マグノリアと一緒に全ての片付けをさせた。それから屋敷に入って俺の自室にて俺が見てきた映画やアニメ、他にも修学旅行の話をすると、マリは小学生のように羨ましがっていた。

 …やはり不憫に思ってしまう。旅をしたことがないマリにとって、今この屋敷内だけが彼女の知る世界だ。俺は国家転覆させたりゾンビ倒したりと色々とまわっていたからある程度はどんな世界なのかをそれなりに知ることはできている。前の世界もいいけどレーヴェリーアも悪くないんだ。それに結婚したというのにハネムーンも行ってない。問題ですよコレは…。いつかじゃなくて近い内に必ずどこか予定組んで旅行行かないと…。


 しかしその瞬間は割と早く来た。


「ハインド君!帰っていたのか!」


「ウェスター伯爵!」


「君宛に手紙を預かっているのだが…」


「これは…アルス王国からの書簡?外交室からか…」


 手紙を開いてみるとそこに書かれていたのは、約一ヶ月後に同盟国であるトシュメロ連邦に交流会を開催する為に行け、という出張命令だった。

 主催は向こう側らしく俺はアルスの代表兼手伝いとして2ヶ月近く滞在することになるらしい。毎年恒例のイベントで過去に公爵達も当番制で行っていると解説メモが同封してあった。更に難しい任務ではないので新婚は楽しくやってこいと王の直筆らしき手紙まで入っていた。トシュメロ連邦の入国許可証と思わしき紙にはハインド御家族一同とまで丁寧に書かれている。なんというホワイト企業なんだこの国は。ということは、だ…。マリとのハネムーン決定じゃねぇか!仕事はついで感覚でやりゃいいくらいの気分で行くしかねぇ!


「マリ!一ヶ月後になるけど、新婚旅行に行くぞ!」


「え?お仕事じゃないの?」


「いや仕事っちゃあ仕事なんだけどな?そこはウチの王様が許してくれるそうで。どんなところかは分からないけど」


「でも…大丈夫なの?お仕事だったら私邪魔になっちゃわない?」


「大丈夫大丈夫。むしろ手伝ってくれたほうが助かる」


「あ、ボクはパスで。折角なんだから二人で楽しんできてよ」


「ではハインド君が出かけている間は私が代理人になろう。マグノリア。私の手伝いをしてくれるかね?」


「もちろん。伯爵の仕事も覚えたいんだ。それに今は兵器より魔法について学んでみたいからね」


「流石に飽きたか」


「いやいや…ご主人がボクに必要以上に教えてくるからでしょ…」


「ま、それもそうか。ああそうだ。マグノリア。今のうちに緊急時用の弾薬を渡しておくわ。どのくらいがいい?」


「ジオンがあと10年戦えるくらいの弾薬を」


 最近、マグノリアも更にノリが分かってきたようだ。マジで自立し出している娘を見た父親の気分なんだが…。つーかジオンがあと10年は戦える弾薬量は明らかに過剰だ。何をする気なんだ。マグノリアよ。星の屑作戦でもやるつもりなのか?いくら俺でもその答えは出さないぞ。

 だがそこはやはり俺であって、ジオンが15年は戦えるほどの弾薬を手渡してしまった。故にその弾薬箱はとんでもない数になった。アサルトライフルだけの弾薬だとしても量的に考えて毎日89式を100丁分、摩耗を一切考慮しないにしても24時間365日撃ち続けてもまず20年以上は撃てる。これに各種アモを用意した。どう考えたところで明らかに多い。

 だが過剰戦力は大切だ。敵が襲ってくるなら根元まで全て叩き潰す勢いで行かないといけない。また襲ってくるかもしれないからな。


「それとラボを作って欲しいんだ」


「ラボ…?」


「ボク専用のラボだよ。どこでも使えるようなコンパクトな機材でもいいから。ご主人なら作れるでしょ?」


 ラボか。うぅむ…ラボと言われると昔秘密基地に憧れてた俺にとってラボとは地下施設にあって大量の精密機材にかこまれて新型HUDを使うようなところだからなぁ。例えるならまさにケロロ軍曹のクルルラボみたいなイメージがある。あれほどカッコいいものは無かった。

 ただコンパクトな機材と言われれば作るのは不可能じゃない。様々な道具を単にダウンサイジングして生成すれば良いだけの話だ。ただし加工する材料が無ければ意味は無い。無難なのはタブレット端末みたいな感じか…


「良かったらマルチモニターを所望したいんだけど…」


 おっとマルチモニターの希望がきたか。タブレット端末は嫌いなわけじゃないが、俺が使ってたところを見たからか?


「仕方ないな。俺の机のマルチモニターとか一式やるよ。それでどうだ?」


「それじゃ意味がないんだよね」


「注文が多いな…」


「もうちょっとこう…どこでも見れるようなやつ!」


「…あぁ。はいはいはい。あんな感じか?」


 俺が目を向けたのはマグノリア用に開発した妖精専用パワードスーツ試作1号機。武装などはまだ開発段階で作ってはないが、マウント部は試験的にとはいえ存在している。何よりパワードスーツだ。重い物を軽々と持てる。精密機材を守る意味でも装甲の追加にも耐えられる。これ以上にない素晴らしいものだ。 こいつになら機材を載せて情報戦特化ユニットとして扱うこともできるな。

 しかしユニットごとに装備を変えるというのも悪くないな。ユニット式にすれば換装作業も楽になる。マウント部の規格を考えておくか。


「もしパワードスーツにするならフルフェイス型にしてくれない?」


「フルフェイス?暑いぞアレ」


「いや、HUDをヘッドマウントディスプレイに表示して欲しいんだよ」


「そういうことか」


「対応OSはご主人に任せる。機能としては戦闘に必要なものを一式。あと良かったら戦闘用の補助AIなんかあると嬉しいんだけど…」


「分かった分かった。あと体調管理AIも入れといてやる。メモリーは10TBくらいでいいか?」


「perfect!」


「よし。何もなきゃ1週間の突貫工事で作ってやる。期待してろ!」


「マリ…お母さんとの新婚旅行があるんだから、そっち優先だよ?忘れないでね?」


「大丈夫だって。な?」


「…お母さん。ちゃーんと見張らないとダメだよ?ごしゅ…お父さんは一度没頭すると帰ってこなくなるから」


「はーい」


 設計図は試作1号機のものを規格品として扱えばいい。あとは専用CPUを確立させてやればマウントするだけで終わる。ただ、戦闘時に備えて装甲の増加も考えておかなければならない。そこをなんとかしなけりゃならんな。

 フルフェイス型のヘッドマウントディスプレイならマルチモニター式の表示を作るのは簡単だ。単にそうプログラムしてやればいい。パワードスーツの手に反応するようにすれば誰かに邪魔されることもない。戦闘用のHUDも作っておくか。マグノリアと弾薬・体調管理情報を直結する必要があるが…何とかしてみせよう。


「となるとマウントするんじゃなくてそもそも内部にCPUを組み込んで仕舞えば…」


「あー…自分の世界入っちゃった」


「ケイ君らしい性格だね…」


「あぁそうだマグノリア!お前に頼みたいことがある!」


「頼みたいこと?」


「今日から俺が出張から帰ってくるまでに要塞都市の開発計画を立ててくれないか?」


「よ…」


「「要塞都市ィィィ⁈」」


「どうしたんだ。二人ともそんなでかい声出して」


「いやっ…ちょっ…ケイ君⁈本気なの⁈」


「ハインド君。君が土地を貰い受けたのは確かに知っている。だが要塞都市など…」


「マグノリア。重機の大量投入。それと西暦6000年代の施工技術を導入したらどうなる?無論そこらの自然災害に負けない程度にだ」


「重機を1000機以上投入して基礎構造を作って、あとはご主人が想像通りにやれば1週間もかかんないじゃないんかな?ジオフロントも作るなら2週間はかかるかもしれないけど」


「すごい…」


「…はは。すっかり忘れていたな。君は…《規格外》だったな」


「男なら夢見るでしょお⁈規格外だからじゃないですって!」


「否定はせんよ。なら私の案も織り交ぜてだな…」


「ケイ君!私にも考えさせて!」


 と、いつのまにか4人で要塞都市開発計画の発案会が始まってしまった。

 伯爵の案は古風ではあったが悪くない。面制圧戦にはもってこいだった。一方でマリは割と現実的で、専門用語こそ使えないもののトラップやら配置率やらと何も知らない子供のまま大きくなったとは思えないほどの発言を繰り返した。普通に生きてたら素で頭良かったんじゃないか?マグノリアは完全に俺と同じことしか考えていなかった。色んな意味で任せても大丈夫だろう。

明日、一話投稿予定です。

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