破壊
手違いで投稿ができていませんでしたので、一気にふたつあげておきます。
ペンデュラムの召喚騎士が戦っている間に俺達は別の場所まで一気に移動。ノルゴルによる不可視の結界とシールド魔法が張られ、態勢をたて直す為に作戦の構築から始まった。
「時間が少ない。作戦は短時間で練るぞ!」
「まず奴のコアを貫通・破壊しない限り止まらない。これだけは変わらないわ」
「俺の召喚可能な中にはそんな器用な奴はいないっす。とりあえず、アイツの目を引きつけることに徹するつもりっす」
「俺も貫通できるような体術を会得はしていない…ペンデュラムと同じ役割だな」
「私は鳥を使って貴方達の援護をするわ。それしかできないもの」
「私も戦闘に参加はできん。強化防御魔法の付与に徹するつもりだ。つまり…」
「俺…?」
「そうなるっすね」
「最初は勘違いしたが、よく見てみると君の力は支援系ではなさそうだな?」
「まあな。詳しくは言えないが、俺のメインになるスキルの説明としては、とある類ならば何でも作れるってとこか」
「例えば何が作れるっすか?」
「君らが全然知らない未知の武器なら基本なんでも」
「その中に奴のコアを破壊できるようなものは?」
「鉱石の硬さにもよるからどうにも…」
「いいえ。鉱石は硬くても一点に力を集中すれば割れるはずよ。靭性は小さいから」
「つまりマジな一撃を加える必要がある…」
そういう武器ならば、それこそAPFSDSが有効だろう。だがわざわざ戦車を持ち出してまでやることではない。というか、さすがに動いてる目標に当てるのは難しい。
となると欲しいのは手持ち型かつ一点に確実に一撃を加えられるもの。しかも俺のスキルのデメリットに抵触しない兵器。架空の兵器で言うなれば金属製の杭を発射する銃、火薬射出式のペネトレイターがあるが流石に出力不足だろうな…。
パイルバンカーの設計図を作って直接打ち込むタイプではなくペネトレイターのように発射するシステムをつける。射出機構はソレノイド機関。杭はAPFSDSの技術をそのまま流用。金属は粘りのある別の合金を使用する。これならなんとか行けるか…?
「何とかしてはみる。だが、条件がある。俺が作る時間を確保すること。確実に一撃を入れる為に、アイツの真後ろか土手っ腹を俺に見せること。この二つだ」
「わかったっす。時間はどれくらい必要っすか?」
「最速で作る。3分だ」
「奴のコアを狙うにはどうする?」
「私が囮の影を作るわ。諜報戦の中に生きてるのよ。そのくらいの誘導はしてみせる。あとは彼が私の影に向かって思い切り攻撃すればいいだけよ」
「作戦は決まったな。ハインドが武器を完成させ次第、ベリアの影を囮とし、奴にぶつける」
「シンプルかつ難しいっす…」
「闇騎士もそろそろ限界が近いようだ!行くぞ!」
ノルゴルが不可視の結界を解除し、それに続いてギルドーザーが突撃。ベリアは分身らしきものを作り出して撹乱を始め、ペンデュラムは何体もの騎士を更に召喚して時間稼ぎを始めた。
インサート・ドライバーの効果で魔力は無限供給に近い状態とはいえ、少しでも気を抜けば死ぬかもしれないこの状況。ノルゴルは腕組みをして冷静になっているが、俺以外の全員に防御系強化魔法の付与にムラがないかを常に集中して監視している。他3人は奴の目に見つかって俺に攻撃がいかないよう、かつ自分が食らわないように戦っている。
さて、と。パイルバンカーの設計図自体は簡単だ。未来に割とガチで作った学者がいたみたいだからな。それを流用させてもらう。ソレノイドは強力な大型タイプをつけるか。新規開発したいが、今は既製品を無理矢理繋げるしかない。金属はAPFSDSでは価格の関係上諦めざるを得なかったタンタルを使おう。劣化ウランにも匹敵する侵徹力がある。こいつなら侵徹しなくとも鉱石を破砕するには十分なはずだ。緊急用で5発分は搭載して自動装填装置で装填させて…発射装置はトリガー式で行くか。出力は俺から取ればいい。そこにコンバーターをつけて調整する。
「よし。設計は終わった。あとは生成か…」
2分で設計を完了させていざ生成してみたはいいが、これが予想以上に大型化してしまった。持てない重さではないのだが、既製品の工業用大型ソレノイドがでかすぎた。タンタルAPFSDSカートリッジは自動装填だから良しとしても…
いや、もう時間はない。俺は3分と言ってしまった。約束を守らないわけにはいかないだろう。
「完成した!今からそっちに向かう!」
「ベリア!」
「分かってるわよ」
「ペンデュラム!行くぞ!」
「分かったっす!奴のど真ん中をハインドさんに向けてやるっす!」
ペンデュラムとギルドーザーが奴の攻撃を上手く回避し、攻撃を微弱な嫌がらせ程度へと弱める。更にベリアが囮となる影を作成して俺へと方向を誘導する。
そして俺の真正面と奴の真正面が同じ位置になった瞬間、俺は足元で衝撃波装甲を点火。一気に加速した。
「喰らえェェッ!」
拳を打ち込む形で突き出し、引き金を引いてタンタルAPFSDSを撃ち込む。確実にやったと感じた。俺の目にも確かにタンタルAPFSDSが奴に突き刺さっているのが見えた。
しかし…
「こいつ…⁈頭部にタンタルAPFSDSを…!」
回避できないと知った上での回避法だったのだろう。同じ色ではあるが、比較的丸見えとなっているコアだ。既に弱点が見破られてるのも既に分かっている、ということか!
だがこいつを撃ち込んだ時の反動が大きい!今奴は硬直状態!
「グレネード!」
スモークグレネードを投げ、俺は真後ろに回り込む。そして第2射を装填。
「でゃぁぁぁ!」
第二射を撃ち込んだ。しかし、またしても別の場所で回避されてしまった。
「自分の腕を犠牲にした⁈岩石野郎…!」
「ハインド!俺達に任せろ!」
ギルドーザーとペンデュラムの召喚した騎士がスモークグレネードで作り出した煙幕の中に突撃。何撃が攻撃を与えて奴の真正面を引きずり出した。
「第3射装填!これでどうだぁッ!」
確実な一撃。今度こそ真正面に入った。だが、またしても回避しやがった…!それもコアスレスレの場所で攻撃を受けただと…!
「いつまでもその回避で続くと思うなよ!」
一気に第4射を装填。完全に硬直してしまった奴のコア目掛けて撃ち込む。が、コアを貫通したにも関わらずそれでもまだ動き続け、制止させていた召喚騎士とギルドーザーを振りほどいて硬直状態にも関わらず強引にこちらに向かってきた。
「このデタラメ野郎がッ…‼︎」
最後の第5射を装填。何も考えず、目の前にあるただ一つの目標に向かって撃ち込む。
瞬間、金属音が鳴り響く。一撃が決まったかどうかなど分からなかった。ただ一つ分かったのは、奴が完全に動きを止めたということだけだ。
「動きが…止まった…?」
「終わった…っすか?」
「分からん…」
「魔力反応無し。完全に停止したわね」
「ギルドーザー。奴は完全に止まった。ハインドの作り出した空間はまだ維持されているが、直ぐに後処理を考えなくては。どうする?」
「うぅむ…取り敢えず不可視結界で隠蔽しつつ、フォリエトの兵士に運んでもらう、くらいしか考えられんなぁ」
「妥当だな。私も同意見だ」
「ならそれで…待って?魔力反応⁈再起動したというの⁈」
「ハインド!」
今まで冷静になっていたノルゴルの声が、落ち着きのないヤバイ感じで伝わってきた。緊張がプツリと切れていた俺は完全に手遅れだった。奴の鉱石の腕が俺に触れた瞬間、とてつもない速度で俺を侵食し始めたのだ。
「ギルドーザー!ハインドの腕を切りおとせ!」
「無理だ!侵食速度が速すぎる!」
「流石にアレはやばいっす!」
「何これ…何が起きてんの…⁈」
「ベリアさん!何が見えるっすか⁈」
「アイツの魔力反応がハインドに切り替わっていってるのよ!」
「ハインドを取り込む気か⁈」
為すすべなく取り込まれていく俺。最後に聞こえた会話はこれが最後だった。それ以降、俺の意識はなかった。
気づいた時には俺は別の場所にいた。ウラルに再び会うのかと思ったが、そういう場所ではなかった。よくウラルに出会っていた場所の浮いた感覚があるのではなく、むしろ安心感を感じる場所。俺が最も当たり前になっていた場所。前世の俺の住んでいたアパートにいた。
「ここは俺のいたアパート…?何でここに?まさか夢落ちか?いや、それはない…」
ふと目をやると、机の上に一つのプラモデルが見えた。ガンプラだ。それもファーストガ◯ダム。俺が一人暮らしを始めてから初のガンプラ。何故ここに…?
「何か…めっちゃガンプラがこっち見てくる気がしてならないんだけど…」
そう言った瞬間、なんとガンプラが動き出した。何やら手を開いたり閉じたりしたり何度か歩行をしたりと訳が分からないことになっている。俺の頭もとうとういかれたか?
「なんなんだオイ…しかも何か意思表示してるし」
何かしらのジェスチャーを始めるガンプラ。だがはっきりとは分からないし何を言いたいのかも全く分からない。取り敢えず、部屋の中にあった小さくなった鉛筆とA4用紙を目の前に起き、鉛筆が書けることを示してみる。するとガンプラが鉛筆を持って何やらガリガリと書き始めた。
「なんだこれ…人…?」
ガンプラが書いた内容はメチャクチャで、取り敢えずなんとなく理解できたのはこいつは俺が先程まで戦っていた岩石野郎だということ。それと今は戦う意思はないということだけ。
しかしそれだけではよく分からない。多分俺の言葉も分からないだろうから、こちらも絵だけで会話を試みた。内容的には、何故俺を取り込んだのか、と書いて見た。
ガンプラは返事をするためか鉛筆を持って再び描き始める。そこには不思議な返答が書かれていた。
「えぇと…?沢山の人…これは研究施設か…で?これは人の喜怒哀楽か?次のは岩石野郎…で、俺と同じことをした人が死んだような絵…」
俺の頭がおかしくないのであれば、この岩石野郎は人の感情をなんとか読み取り、それを真似しているだけ。更によく分からないが人間と接触したらしい。が、殆どが失敗。その人間がどうなったか知らんが。
その後は人に追われている絵や戦う絵が見受けられた。だが、一つだけ確定的に分かったことがある。それは融合に成功したのは俺だけということだ。何でかは知らない。
「だが何で俺と融合したんだ…?」
「ソ…ソレハ…キャ…キャパシティガ…オオ…キイカラ…ダ…」
「おま…しゃべれんのかよ⁈しかも言葉も理解できるのか⁈」
「ア…アナタノ…キオク…タヨリニ…サイゲン…シタ…」
「融合したからか…で?これからお前はどうすんだ?悪いが俺の体をお前にやるつもりは一切ないんだが」
「マリョク…イロ…ナイモノ…イロ…モトメル…アナタ…ワタシ…ウケイレ…ラレタ…ワタシ…アナタノ…イチブ…ナル…」
「お前が…?」
「オレ…は…オレに…なるだけ…さ…」
言葉が流暢になってきている…しかも声も機械音声のような腑抜けたものじゃなくて、俺に近づいている。いや…正しくは俺になってきているのだろう。
「俺になるのか。じゃあお前は俺だ。これから俺の一部になって活躍してくれるわけだ。よろしく頼んだぜ『俺』」
「ああ。よろしくな。『俺』」
目の前に前世の俺がいて笑って今の後世のハインドとしての俺と握手した。側から見ればおかしいのかもしれない。もしかしたら俺がおかしいのかもしれない。だが、俺には何の違和感も感じなかった。




