事態収束
これで最後です。
「ここは…なんだ…?」
目が覚めると目の前には屈折した景色が広がっていた。水晶のようなものに囲まれている…いや、固められていると言った方が正しいな。これは。タンタルAPFSDSは…あぁ、そうか。全弾使い切ったんだっけか…。
「脱出不可能か…いや力づくでいけそうだなコレ」
思い切り腕を振り回すと水晶はあっさりと砕けて外へと脱出することができた。と、ここまでなら一切の問題はない。生きてるだけで儲けもんだ。死なないけどな。
だがそうもいかないのが世の中。公爵達が完全に俺を殺す気で色々と用意していたのがよくわかる。だって魔力やら殺気やらダダ漏れだもの。
「よぉし。みんな。まだ慌てるような時間じゃない」
「…証明できるっすか?」
「えぇ…困るんだが…」
「まぁ確かに証明は難しいかもね。でもアンタがあの鉱石の奴だったら、私達はアンタを殺す必要がある」
「いや…問題はないだろうよ」
「ギルドーザーさん⁈本気で言ってるっすか⁈」
「ああ本気だとも!何せ、奴には色がなかったからな。色を欲していたんだろうな」
「ああ…そういうことね。魔力を生み出せる鉱石ならおかしくはないわ」
「?どういうことっすか?」
「問題はない。ハインドに少しばかり力が備わっただけだということだ」
「いやノルゴルさん普通に言ってるっすけど大変なことっすからね⁈」
結局、ノルゴルに色々と見られて異常無しと言われてからは次元データの消去の為に新たに作り出したインサート・レンチを使って空間を完全に消去した。
この後、フォリエト本国まで向かうことになっているのだが俺に万一のことがあっても不安なので小一時間ほど、草原に座って休憩することにしてもらった。
「ハインド。大丈夫か?」
「まあ一応…」
「それにしても追加の魔力ねぇ…そんなもの操れるなら苦労しないのだけれど」
「あったところで迷惑にしかならないっすからね」
「案外使えんじゃないのか?例えば同時に右手に攻撃魔法、左手に防御魔法を付与して相手に打ち込むとか」
「いやそれ自分の腕も犠牲になるっす。よくそんなえぐいこと考えつくっすね…」
ふむ。今考えれば、かの勇者王を考えた脚本家もそんなエグい技をよく思いついたものだ。流石の俺も考えつかない。
そういえば俺と融合した鉱石…いや、ここはあえてフォリエトリウムとでも呼んでおこう。こいつはどういう性質を持ってるんだ?鑑定スキル起動。解析機関。コイツの解析よろしく。
《了解。解析完了まで3.2.1…解析終了》
早すぎやしませんかね解析機関様。さて、どんな感じかな…と。
・名称 フォリエトリウム
モース硬度は7〜6。莫大な魔力を精製可能なエメラルドに酷似した透明感のある緑色鉱石。内部は特殊な魔術回路となっている。魔力を生み出すには鉱石同士を近づける必要がある。但し体内では意識しなくとも必要に応じて魔力を精製可能。意識すれば高い魔力を得られるが暴発に注意。また、体内から体外へのフォリエトリウム生成が可能。
現在、魔術原基による最適化を実施中。
魔術原基…確か俺の魔力を最適化して少ない魔力でも色々できるようにしてくれるやつだったか?すっかり忘れていた。そんなのもあったな。そういや。
「そういやフォリエト本国までどのくらいあるんだ?」
「歩きだと5時間はかかるっすね」
「普通に腹減ったな。これは軽食くらい用意しておくべきだったか。こりゃ失敗」
ギルドーザーは笑いながらそう言った。軽食の一つや二つ、用意してきても良かったかもしれない。ただし、用意できるような余裕がしっかりあった場合に限る。仕方がなかったとはいえ、こちとら拉致られてるんだ。できるわけがない。それから色々と公爵達と話して騎士団の話も聞くこともできた。
ペンデュラムの騎士団は約200人。ギルドーザーとノルゴルの騎士団は約800人、ユキの騎士団は約700人、ベリアの騎士団は約40人しか所属していないという。確かに沢山いるが、広大な領土を持ちながら自衛隊よりも人が少ないのが気になった。なので何故そんなに少ないないのかをノルゴルに聞いてみると、当たり前な返答が返ってきた。
今はどの国も戦争する余裕などなく、むしろ貿易による経済の発展に力を注いでいるからなのだ。自国の兵を失ってまで得るものは100年ほど前よりも少なくなり、おまけに社会発展の影響下にあるためかどこもかしこも軍縮の憂き目にあっている。
かつて軍事大国とまで呼ばれていたらしいアルスでさえ、昔は軍部は軍部で分かれていたらしいが、もはや軍部で分けているのにも金がかかり金の流れも不安定だった為に軍部という組織自体を廃止。王直属の騎士団という形になって現在に至っている。
更に冒険者組合、つまるところのギルドが大型化・多方面事業に乗り出したことにより軍に入らない方が儲かりやすくなった点もある。騎士団は冒険者さえいればモンスターを倒さなくてもいいのだから、領土防衛はさほど難しくない。
だが軍としての騎士団は絶対に必要なものだ。亜人だろうが人間だろうが関係ない。この世に平和が来ることはない。必ず、どこかの人間がほくそ笑んでいる。自分の身を守るための武器は必要なのだ。
それと各騎士団には別々に本拠地が与えられており、更にそこからいくつかの小規模な基地があって決められた範囲内の防衛を基本任務にしているらしい。
ちなみにシラルの街は解雇された前職の公爵が守るはずだったのだが、伯爵の一件により実力ではなく改竄・捏造された事実によって公爵になっていたことが判明した為に騎士団は解散。それぞれが別の各騎士団に吸収された。500人ほどいたらしく、3割ほどは汎用的に任務を遂行するユキの騎士団に吸収されたという。
規則なので仕方ないのだが、吸収された人員は別の騎士団でガッチガチに人員調整されている為に連れ戻しはできない。つまり…俺が自分で再び募集しなくてはならない。なんて厄介な規則なんだ…。
しかしものは考えようだ。実は吸収された分、人員をシラルの街方面にまでノルゴルやギルドーザーの騎士団が防衛範囲に入れる計画がすでに実行されており、俺の騎士団は比較的手薄な海側の山付近に場所を本拠地に設定された。魔力に限界がなくなった今、大量の重機や工業用の高性能ダイナマイトを使って対使徒要塞決戦都市や軍港を作るのは容易い。
いやはや…楽しくなってきたぞこれは…!伯爵の家じゃ大々的にできなかったこともできるということだからな!宇宙開発だって夢じゃない!仕事が終わったら、まずは何からつくろうか…
「へへへ…たまんねぇぜ…」
「ハインドさん。顔。顔がやばいっす。完全に犯罪者っすよ。何考えてるんすか」
「おっと失礼。ちょっと楽しいことを…な」
フォリエトリウム…それは夢のエネルギー。俺の妄想を現実に変えてくれる、まさに最高なプレゼントだ。
「さぁて。ハインドよ。そろそろ行こうじゃないか。あまり長居しても仕方ない」
「そうね。とっとと本国まで行って謁見しないと」
「ハインドの体調の変化もない。問題はないな」
「じゃあドラゴン召喚するっす」
「いや待て。折角だから俺に任せてくれないか?俺に付き合ってもらった礼だ。道案内さえしてもらえればドラゴンより早く着くぜ!多分」
「ほう…」
興味を示し出すノルゴルを後ろに、俺はMi-35.Mk-Ⅲことスーパーハインドを生成。離陸に少しばかり時間を要するので、予めコックピットに入ってメインエンジンを起動。ローターを回転させて離陸スタンバイさせる。
「はいはいこっちですよー」
「なんなんだ…その形容しがたい乗り物は」
「金属でできた空飛ぶ乗り物だ!速さは…確か時速262kmだったか?まあとにかく速い!とりあえず乗った乗った!」
疑問が残る4人をヘリ内部に勢いで押し込んで荷物を貨物室に入れ、乗員用の座席に座った4人に椅子の説明をしたあとヘッドセットを手渡す。こいつがないとうるさくて他人との会話すらできないから仕方がない。忘れ物がないことを確認したあとは扉をしっかりと閉めた。
様々な調整や点検をした後、異常がないことを確認。俺はメインコックピットに乗り込んでキャノピーを閉じ、ヘッドセットをつけた。
《えー、この度はMi-35.Mk-Ⅲにご搭乗頂きありがとうございます。当機は…ペンデュラム。どこ行くんだっけか》
《フォリエト国の本国っす》
《当機はフォリエト国、本国行きでございます。まもなく離陸致します。シートベルトを着用し、気圧の変化にご注意下さーい》
操縦桿と各種コンソールをいじってスーパーハインドを一気に離陸させる。そのあとは外の景色と地図を合わせているであろうペンデュラムに道案内もとい空路案内をしてもらいながらフォリエト本国へと向かった。
また出来上がり次第あげます。その時までよろしくお願いします。




