接敵
あと2つほどあげる予定です
移動魔法によってフォリエト国上空へと翔んで来た俺達。流石に到着先でも急降下することは無かった。時差的には1、2時間ほどありそうだ。アルスには出ていなかった朝日が昇りつつある。
ドラゴンの巡航速度が下がったところでベリアが黒い鳥…というかどう見てもカラスなのでカラスと呼称しよう。指示を出して対空・対地警戒を行なっていた。俺は俺でエヴィロイドで使用した警戒ドローンを10機ほど再生成して展開。対空・対地警戒陣を独自に構築して腕につけた空間仮想HUDで常に監視する。
「ベリア!周囲に何か反応は⁈」
「今のところは何もないわね」
「極力早めに終わらせたいところだ。白昼堂々とできる任務ではないからな」
「そうっすねぇ…誘き出せたりしたら楽そうっすけど」
「誘き出す、か…」
警戒陣地を構築してから15分。何もないままフォリエト国上空を飛んでいるのも何かと思ったのかギルドーザーが都市部の巡回から目撃情報を辿りながらの追跡に変更した。
そして最後の目撃情報があった場所で陣を組んで飛行していたところ、ベリアのカラスから何かしらの報告が届いた。ベリアのエージェントからだ。
「ギルドーザー。目標はこの付近に潜伏している可能性大」
「分かった!各員!警戒を」
ギルドーザーがそう言おうとした瞬間、俺のHUDから警報音が鳴り、攻撃感知システムが迎撃用意を推奨し始めた。
「北北東10km先から攻撃反応!超高速飛翔体接近中!残り9秒!散開しろ!各個撃破されるぞ!」
全てのドラゴンが散り、俺はドラゴンを林に一気に降下させる。2秒後には風切り音が上空を通過した。10km先から9秒程度で到達する…つまりはAPFSDS並みの速度を持った飛翔体を誰かが投げたってことか⁈
とりあえず今はどうするかを考えないと…。警戒ドローンは…全機まだ生きてるな。良し。敵の現在の位置は不明か。だがこちらにはレーダー以外にも予測システムがある。位置が予測できれば、あとはこちらから近づけばいいだけの話だ。
「ドラゴン。お前は待機しろ。自分で帰れるなら仕事はここまでだ。ありがとう」
グルゥと唸るとドラゴンは自分から召喚陣を作り出して帰っていった。
帰るのを見届けた後、抹消迷彩を発動して魔力反応を消滅させてレーゲンベルグを起動。チャージングを開始する。見つからないとまでは言い切れないが、無いよりは全然いい。
現在、ドローンの対空レーダーでは何も見られないことを考えると敵が飛翔することはないと見てもいいだろう。対地レーダーに反応は一切無い。が、敵位置の予測は可能だ。奴が撃ってきた位置と距離、更に俺が攻撃された地点から予測すればできる。
《レーゲンベルグ チャージ100%完了。スタンバイ》
《予測位置算出完了。北東37度、距離9.88km》
レーゲンベルグを構えて、予測位置へと銃口を向ける。他の公爵達は何をしているのかは知らないが、少なくとも動くことは避けている。ならば、撃つしかない。
「よくも俺に撃ち込みやがったな…後悔させてやる」
引き金を引くと水色の光を放ちながらタングステン荷電粒子は近くの木々を焼き尽くし目標地点へと進行していった。2秒後に全放射が終了し、レーゲンベルグは再びチャージングモードに移行。一度抹消迷彩を解除した。
と、ここで油断したのが間違いだった。敵も俺の位置が分からない限り『俺と同じ作戦をとる』ことくらいは考えて然るべきだった。レーゲンベルグ荷電粒子砲は強大な破壊力を持つ。だが、代わりに見つかりやすい。つまり、その穴から俺の位置は丸わかりだ。
《高速飛行体接近。接触まで4秒。回避不可。迎撃してください》
「しまっ…」
後悔の声と同時に現れたのは見たことがない強力なシールド魔法。それは飛んできた結晶でできたような鋭利な飛翔体を容易受け止め、完全に相殺してしまった。そして俺の横に降り立ったのは、ドラゴンから飛び降りてきたノルゴルだった。
「よくやってくれた。ここは私に任せろ」
続いて第2射、第3射と飛んでくる飛翔体も容易くシールド魔法で完全に防御しきってしまった。しかし何よりも特筆すべき点はその冷静さにあった。例え何が来ても落ちついて仲間を守るという任務に徹している。
防衛特化の騎士団を率いるだけはある、綺麗な仕事だ。全然無駄がない。逆に俺は無駄があり過ぎてまずいな。頑張らねぇと。
「林を抜けた先に草原がある。そこでギルドーザー達が先に迎撃を始めた。我々も向かうぞ」
「了解!」
少し走っただけで林をあっという間に抜け、広い草原に出る。そこでは、3人の公爵達が目標である人型をした動く鉱石に向かって猛攻を加えていた。
「さぁ行くっすよ!『我が命に依ってこれを許す。敵を確実に倒せ』!」
「はっはっは!流石に硬いな!だがどんなものであろうとも接合部は弱いものだ!」
「ギルドーザー!ペンデュラム!弱点は胴体中心部!狙っていきなさい!」
「了解っす!」
「なかなか難しいことを言ってくれる!」
俺から見るとベリアはオペレーター、ギルドーザーは前衛、ペンデュラムは中距離からの命令による召喚したであろう騎士の格好をした者を呼び出して前衛で戦闘、と言った感じで構築された戦いをしていた。更に各々にノルゴルによる防御魔法がかけられていた。
参戦したいところだったが、上手く連携して攻撃をしているので入らずに警戒ドローンで周囲の警戒を行うことにした。正直言ってサボってるようにも感じたのだがノルゴルは
「自らの得手不得手を自覚しているのはいいことだ。あの連撃を止めるのはよろしくない。君は君ができることをすれば良い」
と言ってくれた。
さて、人型の鉱石…鉱石生命体は3人に対してあまり有効打をとれてるとは感じなかった。しかしそれも2分程度。少しずつではあったが、徐々に3人が押されていきノルゴルの防御魔法も削られて行くのが見えた。学習能力も高いとは…なんつうバケモンなんだ⁈
更に悪いことは続く。朝日が昇りつつあったのだ。いくら草原とはいえ、こんな無茶苦茶な奴の目に誰かが止まれば何が起こるか分からない。下手したら二次被害の恐れすらある。こいつのおかげなのか周囲にモンスターが出ない。なのでハンターが近寄ってくることはないだろうが、他の人は必ず出歩くだろう。
「ノルゴル!朝日が昇りつつある!このままじゃ誰かの目につく!何か方法はないのか⁈」
「不可視の結界は不可能ではないが今はできん。私のリソースは全て彼らの防御に回している。そんなことをしてしまえば、ギルドーザー達はまともに戦えなくなる」
「そんな…」
「ノルゴル!やれ!やるんだ!」
「ノルゴルさん!やるっす!俺たちだって自分の面倒くらい自分で見るっす!」
「何馬鹿なこと言ってんの⁈アンタ達だって自分の魔力を攻撃に回すので精一杯じゃない!」
「ベリアの言う通りだ。君達を過小評価するわけではないが、解除してしまった場合の被害が大きすぎる」
こんな時にユキがいてくれれば…あいつの力ならせめて遠ざけることはできたろうに…。
いや…俺の力ならば、否!人類の科学力ならばできるはずだ!あいつを倒すことができるかはともかくとして、一部の空間のみをなんとかする技術があるはず…!
「鑑定スキル起動!技術検索!絞り込みは空間系技術!」
空間系技術をとにかく探しまくる、と言ってもやはりいくつもの並行世界の技術も出している為か類似しているものが多くおまけに技術体系自体がバラバラなものが多い。だったら…自分で作るしかないだろ!
「重力レンズ発生装置をベースに空間制御系統を統合…次元系技術を応用して並行世界との出力規格はMFOW-zを利用…中心部はあの技術を使って…」
そうして1分でなんとか完成させたのは新しい技術体系『インサート・コア系空間湾曲技術』だった。この技術は名前の通り世界の一部分に別の次元データを『組み込む』為に瞬間的に次元データを含んだエネルギーを放出。新たにフィールドを創り出す。こうすれば、わざわざ空間に穴を開けたりしなくても反動で戻ることはないし何よりも反動による爆発の危険もない。この方式いい点は、組み込んだ次元データはあとで消去可能だと言った点がある。なので組み込んだところから数秒で消えるように設定を変えれば、波を立てるように発生させて空間を湾曲してバリアのように使うこともできる。つまるところのプロテ◯ト・ウォールだな。
一応全く別の次元世界を局所的に発生・構築するマスクリング・コアもあるのだが、これは反動の他にも下手すると湾曲した空間が戻らなくなる可能性を秘めていた。更に維持するためのエネルギーも馬鹿にならなかった。
あとは形状を考える必要があったのだが、あまり暇はなかったのでここは我らが勇者王が使っていたあの形状を利用することにした。
「よし…完成した!インサート・ドライバーだ!あとはこいつを地面に打ち込むか空間にエネルギーを放出すれば…」
そういった瞬間、流れ弾が飛んできて俺は軽く吹き飛ばされた。もちろん問題ではなかったが、それだけ3人が押されているということ。
もはや時間はない。このシステムの構築はデフォルトモードではあるが終わっている。ならば、この瞬間を利用しない手はない!
「この野郎!やられっぱなしだと思うなよ!」
「何をする気だ?ハインド」
「大丈夫だ。軽く、君らを支援するだけだから。
衝撃波装甲、連続点火!」
足元で衝撃波装甲を何度も爆発させ、一気に上空へと向かう。これはエネルギーを放出している瞬間を奴に狙われないためでもある。仕方がないだけであって決して勇者王の真似ではない…1割だけ。
「座標軸仮固定完了!行くぞ!これが新技術で作り出した勇気の力!その一つだ!空間湾曲!インサート・ドライバァァァァァァッ!」
地面にブレード部が激突した瞬間、次元データを含んだエネルギーが解放され設定された半径5km圏内が静寂に包まれた。内部は見た目こそ変わってはいないが、ここは次元データにより新たに組み込まれた、また別の世界。更に言わせて貰えば、ここは無条件で俺達が有利に働くよう設定されている。
「何すか…この感じ…」
「不思議だ。魔力が外部から供給され続けている!」
「ほう…これか。ハインドが公爵たる所以は」
「すごい…鑑定スキルの詳細度が高くなってる。これならあいつの他の弱点もわかるかもしれないわね」
詳しく彼らに説明するわけにはいかないにしろ、これなら勝てる確率は格段に上がったはずだ。敵にはこちらの行動を読み込めないように妨害している。簡単に見切られてたまるか。
2分後、解析に成功したベリアがギルドーザー達に大声で伝えた。
「破壊方法が判明したわ。やり方はただ一つ。奴のコアを攻撃するだけじゃあダメ。『完全に一撃で破砕する』必要がある」
「無理っす!」
「こいつの体は異様に硬い!おまけに高い自己修復機能を持っている!奴の体に衝撃を伝える前に修復されて終わりだぞ!」
「ペンデュラム。召喚した者に戦闘を任せ、一度撤退する。ハインド。この空間はどこまでつづいている?」
「空間に気づくとは流石。空間自体は半径5km圏内まで作り出した。撤退自体は容易だぜ」
「よろしい。撤退を開始する。態勢を立て直す」
「頼んだっすよ!闇騎士サイム!」
《御意》
次は10時半を予定しています。




