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天国から追い出されて不老不死  作者: ラムネ便
その敵は…
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緊急招集

比較的早めに書けましたのであげます。


 

 結婚式から3日目のことだった。朝の2時に誰かに叩き起こされ、屋敷にあるよれよれの普段着のまま、革ジャケットと一緒に拉致られた。その瞬間のことは寝ぼけていたせいでうっすらとしか覚えてないが少なくともクソ寒かった。空中を飛行しているような夢を見た。

 …いや、夢じゃなかった。俺は実際に今、何かに乗せられて飛行している。させられている。チキショウ。なんなんだ。悪夢すぎる。


「起きたっすね。おはようっす。ハインドさん」


「んぁ?お前は…誰だ?」


「あ!忘れてたっす!ちゃんと会うのは初めてっすよね!俺、アルス王国公爵の第4席のペンデュラムっす!よろしくっす!」


「はぁ。よろしく。ところでなぜに俺は空中にいるわけで?」


「緊急招集命令っす。馬よりドラゴンが早いんで。あとちょっと拉致したっす」


「緊急招集命令…?戦争でもおっ始めるのか?」


「戦争…ある意味間違えてはないっす…」


 軽い後輩っぽい口調のペンデュラム。だがそんな彼がピリピリとさせているということは、よほどやばいことが待ち受けているのだろうか…。


「ユキ以外の公爵は全員集合済みっす」


「ユキはどうしたんだ?」


「彼女は貿易船団護衛を請け負っているっす。5日は帰ってこないっす」


 船団護衛?そんなもんまで請け負ってんのか。ということはアルスの国家的なものだろうな。少なくともただの船団じゃあるまい。

 そんなことを考えている間に、俺達が乗っていたドラゴンはアルス城の見張り台に着地。近衛兵に敬礼されながらペンデュラムについていき会議室へと向かう。


「ハインド公爵をつれてきたっす!」


「ご苦労。ユキがいないのが心残りだが、そこは妥協するとしよう」


「何よ。よれた服に革の上着?あなたのセンスは0?」


「ベイル。黙れ」


「はいはい。お堅い結界師のノルゴル様」


 円卓に並んで座っていたのは4人の公爵達。一人一人に並々ならない覇気を感じる。まさに強者ってイメージがある。


「まずは俺からだな。初めまして、ハインド公爵。俺はギルドーザー騎士団の団長、第1席のギルドーザーだ。俺の騎士団は主に警備担当。国内の幾つかに分かれている警備隊の頂点でもある。故に事実上の前線部隊だな」


「ノルゴル騎士団団長。第2席のノルゴルだ。私の部隊は主に防衛。シールド魔法を操り、防御に特化した部隊だ。強力な結界を持つ者は、家族だけでなく国民を守っていく。それが結界師としての役目だ」


「私はベリア騎士団団長。第3席のベリアよ。私の騎士団は主に諜報。潜入任務とも言えなくはないわね。この国の外交だって、私の騎士団のエージェントがいてこそなのよ。忘れないことね」


「で、俺こと第4席!ペンデュラム騎士団のペンデュラムっす!俺の騎士団は召喚することで戦闘の補助をする騎士団っすね!」


「特にペンデュラムは俺達の要だ。彼がいることによる恩恵は大きい」


 ふむ。なんというか、全員濃いな。覚えられるほどインパクトはでかい。特にベリアさんの騎士団は異質だ。国交の基本は対話と圧力。そこに一番大切になるのは情報戦だ。大使館などというこの世界では大義名分しか存在しないようなものはない。やはり、そこはエージェントによる直接的な情報が一番頼りになるんだろう。

 ギルドーザーは普通にそれっぽいイメージがある。今でこそ装備を外しているが、大柄な体には幾分にも傷が目立つ。王とはまた違った強さを醸し出している。ノルゴルは何というか、職人気質かつ職業軍人っぽいな。己の力がどういうものに使うべきなのかをしっかり定義している。公私混同をすることはなさそうだ。ペンデュラムは変わらないな。何となくわかる。いわゆる縁の下で支えるタイプだ。


「さて。自己紹介したところで本題に移るとしようか」


 俺を含めた全員が円卓につくと、ギルドーザーは世界地図のような巨大な地図を数枚の書類と共に広げる。


「今回緊急招集したのは…」


「フォリエト国からの救援要請、でしょ?」


「そうだ。フォリエト国は我がアルスにとっても重要な国家だ。小さな島国ではあるが、その資源の豊富さや技術力は侮れん」


「そのフォリエト国から何で俺達に救援要請が来たっすか?」


「そこはベリアに説明してもらう。ベリア!」


 ベリアが立ち上がると同時にどこからか一匹の黒い鳥が現れ、肩に乗る。


「ハインド公爵は初めてよね。私の可愛い下僕よ。そういえば貴方の勲章も鳥ね?」


「ヤタガラスっつってな。神の御使だ」


「ふぅん。ともかく、私の部下が集めた情報を公開するわ」


 黒い鳥は口からその体に見合わない量の紙の束を出し、ベリアに手渡すとまたどこかへと飛び去っていってしまった。ベリアはというと、もらった報告書を円卓において何枚か連ねて説明を始めた。


「まず、フォリエト国から魔力を発する鉱石が見つかった。もちろん、フォリエト国からしか発掘できなかった特殊な鉱石よ」


「確かその鉱石の輸入を魔術開発室から許可要請が出ていたな」


「そうよ。だけど問題が発生した」


「問題って何っすか?」


「…その鉱石が発掘されてから4ヶ月後、突如として魔術研究施設が何者かによって破壊されたらしいわ」


「原因は何だ」


「最初は私の部下がどこかの国が起こした強硬入手かと考えたわ。だけど事実は違った。その日、不審な出入りは一切確認されなかったのよ」


「…つまり?」


「部下の報告によると…キラキラと光る人型の何かが動き出しているところを近隣の村人が見かけたそうよ」


「鉱石がひとりでに動き出すだぁ⁈そんなバカなことが…」


「あるのだよ。ハインド公爵。この世には奇想天外な物が所狭しと並んでいるのだ」


 ノルゴルは俺にそう語る。別にこの異世界に限らず俺がいた世界にだって訳がわからない、科学じゃ解明できないような事がある。

 世界とは謎に満ちたパンドラの箱だ。なんて誰かが言ってたな。あながち間違いではない。


「で、何で俺達が呼ばれるんで?」


「フォリエト国から直々に出兵の依頼が来たからよ。アルスが軍事国家時代からの付き合いというのもあるけど、何より秘密裏に処理したいからみたいね」


「裏があるのは間違いなし、というわけか。だがその様子から見ると…自分達じゃ対処出来なかったな?」


「みたいよ。ギルドーザー。最近冴えてるじゃん」


「はっはっは!92年生きているのだ!甘くみてもらっては困るな!」


「92年⁈」


「そうだったな。ハインドにはまだ言ってなかったが俺は鬼神族。寿命は900年以上はあったか。忘れてしまってな!」


 笑いながら言ってるが笑い事じゃない。92年も生きて40後半の姿でいるなんて信じられない。俺の母方の祖父さんだって戦争で生きてりゃそのくらいだったかもしれないんだからな。


「本題に戻るわよ。フォリエト国からの出兵依頼に我が王は承諾。ただし、隠密に件を処理する為に出撃するのは私達公爵のみ。という条件でね」


「簡単に言えば俺らだけで片付けろって話だろう?なら、さっさと行くに限る!」


「大方準備は終わってるわ。一人を除いてね」


 ベリア含む全員が俺に視線を向けた。俺が今着ている服は屋敷で借りた普通の黒いズボンによれたシャツ。そして革ジャケットの3つだけ。確かにこんな格好じゃダメだよな。

 そんなわけで、適当に今まで作ってきた武器を出して適当に装備した。持ち歩くには少々巨大な荷電粒子砲レーゲンベルグにHK417。トーラスレイジングブル。最後にそれらをまとめる為の防弾ジャケットと閃光手榴弾に破片手榴弾。イメージとしてはコ◯ンドーのデェェェン的なやつをやってみた。

 素早い装備、というかいきなり出てくる謎の装備に驚愕している他の公爵達を後に、俺は意気込んで言った。


「さぁ!とっとと片付けに行きましょうや!」


 我を取り戻した公爵達は円卓から立ち上がり近くに置いていた装備を持って再び城の屋上へ向かう。

 屋上に着くとペンデュラムが手綱をつけたドラゴンを人数分召喚。それぞれ乗り込んでいく。俺は乗り方はともかく制御する術を知らないと言うと、ギルドーザーは


「そんなものは乗れば分かる!気合いだ!」


 と笑いながら言って一気に全員飛び立ってしまった。俺も焦りながらも他の公爵達がやっていた行為を見様見真似でやってドラゴンを飛び立たせる。

 ギルドーザーを先頭にアルス王国の強者達が並びながら飛んでいる姿は、さながら映画のワンシーンにも匹敵する。俺もいるわけだがどうなんだろうか…?

 ドローンを再生成してドラゴンに追いつく速度で飛ばして自動撮影で後ろから撮影してみると、悪くない構図になっていた。うん。やっぱ俺もいないとダメだな。何となくだけど。ちなみにドローンは直ぐに回収した。


「各員覚悟はいいな!突入用意!」


「え?」


「ギルドーザーだけが持つ移動魔法だ。理論は不明だが、彼が作る穴に入ることで一度でも行ったことがある場所であれば瞬時に移動できる」


「もちろん俺達もいけるっすよ!」


「タイミングは俺に合わせてくれ!降下開始!行くぞ!」


 ギルドーザーが光る穴を創り出すと同時に俺のを含む全てのドラゴンが順に急降下を始めた。それも60度近いギリギリのラインで。気温低下はドラゴンが火属性なのか暖かいのが何とかなってるが、それでも寒いのに変わりない。

 これがレシプロエンジン付きでキャノピーありのWW2時代の戦闘機ならまだしも手綱のみともなるとめちゃくちゃ怖い!いや端的に言おう。普通に死ぬからなコレ!まさか毎回やってんのか⁈おかしいだろ!このドラゴンに450kg相当の爆弾を括り付けりゃSBDドーントレスの完成だぞ⁈そりゃドラゴンの骨格なら急降下にも耐えられるだろうがよ!


「異世界で急降下爆撃を体験するなんて聞いてねぇェェ!」


 叫んだ瞬間、俺の乗るドラゴンが最後に穴に突入すると同時にアルス王国上空から声は消え去った。


次は9時予定です。

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