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天国から追い出されて不老不死  作者: ラムネ便
恋と呪いは前世から
62/92

形見

あけおめそしてハピバレ!あとー…あーもうわけワカンねぇよ!全然書けませんでしたが、続きをどうぞ!

 

「遺体が…?」


「はい…兄様の遺体は、あの崩落現場からは見つからなかったのです」


 茶菓子と紅茶を飲みながらファローズの話を聞き始めたわけだが、それにしても興味深い話だ。人の遺体が消えるなんてな。そんな話は刑事ドラマの世界でしか聞いたことも見たこともない。まさか遺体が勝手に動き出してどこかへ歩き出すわけではあるまいし。


「自力で脱出したんじゃないのか?」


「その可能性もありますが…だとしたら、何故私に会いに来ないのかが分かりません」


「まあそうだよな」


「崩落跡はくまなく探しました。謎の小部屋も見つけましたが…あったのはこの武器だけでした…」


 そう言ってファローズが机の下から出して俺に差し出してきたのは、俺がジョシュアに渡していた高周波日本刀RE-キクイチモンジ。しかし渡していたはずの鞘はどこにもなく、刀身は既に半分に割れていた。高周波を生み出し制御する役目をしていた鍔と柄もひび割れて回路が剥き出しになっている。もはや使い物にはならないだろう。

 お返しします、とファローズにキクイチモンジを渡されたが俺自身は使えない。何せ近距離戦は一切出来ない身。銃での接近射撃ならともかく斬りつけることはおろか、組手をしたり敵を殴ることすらできないのだ。さてどうしたものか…?


「…ファローズ。剣使えるか?」


「私が、ですか?一応それなりにはですが使えます」


「なら是非とも使ってくれ。俺は剣を上手く扱えないんでな」


「え…」


「いや分かってる。壊れてる剣を渡されても困るよな。だから、今修理する」


 鑑定スキルでキクイチモンジの破損度を確認し、魔力補充で修復を開始する。いつもは自分の装備を魔力化させて収納・修復作業をするから時間がかかるが、現存している武器は直ぐに修理できるみたいだな。その代わり複数同時修復は魔力化させないとできない。ま、このくらいのデメリットがあって当然か。

 すると、いつのまにか1つの設計図が展開されていた。それはキクイチモンジの基礎設計データ。更にその横には『改装モード』と書かれた欄があった。試しに押してみると、数百に及ぶパーツが項目として出てきた。どうやら刀身だけでなく回路も自分好みに変えられるらしい。どこぞのゲームみたいだな。ただ、ひとつひとつのパーツにも相性があるようだ。刀身と高周波振動装置の相性が悪いと耐久性が下がる。重量の関係もある。軽く作れば取り回しはいいが耐久性は下がる。重くすれば斬撃力も上がるが取り回しが悪い。

 これは…中々やりこみ要素がある…。


「あの…ハインド公爵?剣が色々と変わってますがこれは一体…」


「これはアレだ。改良だ」


「えぇ…」


 刀身は専用の特殊ステンレス合金だと軽さはあるが斬撃力が低いな。その代わり高周波装置と相性がいい。対して昔ながらのたたら製鉄による刀身だと重量と斬撃力は上。もちろん高周波装置との相性は最悪だ。こんな組み合わせはできない。ただし…


「ファローズ。もし、これが許されるなら許してほしい」


「はい?何でしょう?」


「一振りで建物を軽く両断できる斬撃ができる剣にしたい」


「えっ…と?」


「つまり、そこらの石やら岩、レンガ程度なら切る事ができるようになるってわけだ」


「破砕ではなく…ですか?」


「ああ」


 ファローズが悩んでいるのは当たり前だ。レンガや石をスッパリと綺麗に両断できるような剣。しかも建物すら切断可能ともなれば異常にも程があるだろう。

 刀身は玉鋼を使って強度と粘りを増し、重量はある程度軽くするためにグリップの強度を増した分高周波装置は軽量化することにした。しかし、軽量かつ玉鋼ほどの刀を震わせる高周波装置は中々ない。しかし漸く見つけた装置でさえ、その斬撃力はあまりに高く人程度ならあっさりと切断することが可能だ。本来こんな攻撃性は要らないのだが玉鋼を使い軽量な高周波装置といえばコレしかなかったんだから仕方がない。


「重量はそれなりに軽いはずだ。まあ、持ってみてくれ」


「結局私に聞いたところで作ってるじゃないですか…」


 改良した高周波ブレードを手渡し、ファローズに振らせて見ると、軽々と降り始めた。どうやら重量は問題なさそうだ。取り回しも問題ない。あとは件の高周波装置。まだ起動はさせていない。もしやり過ぎていたら…いや、別に抑える必要はないな。もう改良すんの面倒だし。


「そんじゃ高周波装置を起動させっからな。気をつけろよ」


「剣から小さな音が⁈」


「最初は少し高周波装置が慣れない。しばらくすれば消えるさ。気にすんな」


「ハインド公爵…」


「ん?」


「貴方は…一体何者なんですか…?」


「…」


「こんな技術、他の国にあるわけがありません。剣の形状からして明らかに殺傷に特化させるように綺麗に湾曲してあります。ハインド公爵。教えて下さい。貴方は…」


「俺は俺だ。それ以上でもそれ以下でもない。そして俺は敵じゃない。今はそれでいいだろう?それに、この技術だって俺しか持たないからな」


「その技術さえあれば、他国にそれらを売り込んで戦争さえ出来るはずです。なぜ…」


「…昔話をしてやるよ」


 ある日、ある国に様々な沢山の研究者が集められた。各々がかなりの知能を持つ最強集団だ。

 集められた研究者は国の命令でそれぞれ指定された得意分野のものを作り、研究した。巨大な金属の桶。とある鉱石の精製。またそれらに必要な薬品の開発。数えればキリがない。だが、研究者達は知らなかった。まさかそれが人を殺す為の兵器の開発になっていたとは。

 そして作られたのは、人を何十回と滅ぼせるであろう最強最悪の兵器。その兵器は人だけじゃなく土地すらも殺す。草木すら生えない地にしてしまう。もしも人がそれを喰らえば…見た目が軽くても、患者は身体に重篤な病を、生きている間背負い続けることになる。

 その兵器が開発された当初は、それのおかげで5年以上にも渡る大戦争に幕がおりた。だが兵器の有用性に目が眩んだ国はその兵器の研究を続けた。スパイによってその技術は他国にも渡り、その兵器は拡散していった…。

 そしていつのまにか、その世界は自分で自分のナイフを突きつける羽目になってしまった。人は自分で作ったものでいつでも滅べるようになってしまっていた。


「それって…」


「自業自得ってやつさ。更にその兵器を開発していたということを研究者達は知らされていなかった。一部の上層部にしか知られないよう秘密主義を徹底していたんだ」


「その世界はどうなったんです…?」


「さあね…どうなったんだか。でも、研究者達はその兵器を知り、使われた現実を知って後悔した。そんなものを作っていたなんて、とね」


「…?」


「俺はそういう数々の技術を腐るほど持っている。特殊なスキルによってな。だが、このスキルを使う度に何故か頭によぎるのさ。もう、後悔したくない。この技術を使って人を無駄に苦しませるような真似はしたくないってな。だが科学者が言うそんなもんはただの…」


「何者です…貴方達は!」


「ファローズ?」


「ハインド公爵!後ろです!」


 俺が直ぐに背後を振り向いたが、そこには誰一人としていない。高周波ブレードの高周波装置のせいで何か幻覚を見ているのか?


「ファローズ。その剣、一度返せ」


「何故です⁈」


「その装置がお前に幻覚を見せている可能性が…」


「目の前に魔力反応があります!少なくとも幻覚ではありません!」


 どういうことだ?俺にはさっぱり見えないのにファローズには見える。まさか新しいイレギュラーでもいるのだろうか?だがマグノリア達は疲れているのか寝ている。何か感じたのなら、直ぐに気づいてもおかしくないはず…。

 ファローズ側に寄り、即座にNVGを再生成して装着する。するとどうだろうか。目の前には何人もの幽霊が俺がいた場所に佇んでいる。しかも一人一人が白衣を着ている。そう。この世界には本来ないはずの白衣を着ている。つまり彼らは…


「お前らは…いや。詮索するまでもないか。お前らがそうなんだな。俺が持つ技術を開発した…」


『我々に君を止める術はない。我々は君に伝えておきたい』


 声がいきなり俺の頭に響くように入ってきた。が、ファローズはずっと身構えたまま動かない。この声は俺にしか聞こえないのか?


『理念ある科学も、いずれは暴走する。君に限ってそれはないだろう。しかし、渡されたものを確かに扱ってくれるとは限らない…』


 わざわざ忠告しに来たってか。何ともまあ律儀な科学者だ。しかしなぁ。俺に限って科学技術の間違った利用はないって決めつけるのは少しばかりおかしい。俺をどこまで信頼しているつもりなんだ?

 まあ、考えてみれば科学者達の後悔、残留思念のようなものが頭に流れてくる時点で俺の技術による犯罪化は抑制されていると言えなくもない。別段何か起こす気は全くないが。だが良かれと思って渡した技術はどうなるかは分からない。と、彼らは言いたいのかもしれない。


『我々はいつも君を見ている』


『その力、間違った使い方をしないよう願う』


 そう言って、彼らは消えてしまった。ファローズはポカンとしたまま立ち尽くしている。緊張が切れたんだろう。

 それにしても、まさかの監視宣言ですか。一々見られてるとか勘弁してもらえないかね。俺は他人から見られるのはあまり好きじゃないんだ。模試とか定期試験も監督役の先公が二人の時は赤点ギリギリだったり赤点いったからな。待て、なぜ今思い出す必要もないことを思い出すんだ…。


「とりあえず危害を加えるようなこともなかったから良しとしよう。ところでどうだ?その剣」


「え、え?」


「今の構えまでのスピードはウチの部下に匹敵していた。多分な。その速さなら取り回しに問題はなさそうだな。あとは高周波装置か…いや、このままで行こう。なんかもうめんどくさいし」


「ハインド公爵…」


「ん?」


「意外と雑なんですね」


「雑よ雑。基本やることやったらそれでいいって人間だからさ。でもその武器は完璧だぜ?」


「そのあたりは信用するとしましょう」


「そうしてくれると有り難い。さて、と。お二人さん。帰るぞー」


 マグノリアとミーティアを起こして帰り支度を始める俺。ファローズは置いてあった残りの茶菓子を小さな紙包みに包んでミーティアとマグノリアに渡してくれていた。俺も一つ頼んで紙包みにしてもらった。きっとマリもこれは喜んでくれるはずだ。

 準備を全て終えたところで、俺はファローズに一つの通信機器を渡した。腕時計型の高品質ビデオ通話ができる最新型ウェアラブル端末。機能を使えばバイタルチェックも可能な軍用タイプだ。が、実はコイツを使うには基地局を作る必要がある。それはマリの件が済み次第、すぐに作る予定だ。それにこれさえあれば神花の巫女であるマリと会話もできる。どうしても渡しておきたかった。


「遠方との通信を可能にする、魔術式通信を行わないものだ。しばらくしたら連絡するから、その機器は外さないようにな」


「分かりました。それにしても…少し可愛いですね。小さくて」


「アクセサリーにもなるぞ。魔力は上がらんけど…」


「アクセサリーは可愛げがある方がいいですよ。それと神花の巫女との会話、楽しみにしてますからね」


「ああ。それじゃ、また後日」


「ファローズさん。お菓子ありがとうございました」


「また来るねー」


 ファローズの執務室から出た俺たちはそのままエヴィロイドから出国。近くにある滝壺まで移動し再び伯爵の魔法陣をミーティアに起動してもらってアルスにある屋敷へと帰った。



3話ほど溜めてありますので、またあとで今日に上げておきます。

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