あの人は、今
また遅れました!執筆スピードがあまりに遅いので、なんとかしたいんですがね・・・
遺跡から離脱し、なんとか屋敷に戻ってこれた俺達。エアバイクから降りてすぐに使用人達をリリスに呼んでもらい、女性を空き部屋にある小さなベッドに寝かせるよう頼んでおいた。一方俺はというと、こんな特殊戦闘は初めてでしかも思い切り逃げてくる形での撤収だった為か、かなり疲れてしまい自分の部屋のベッドで直ぐに寝転がる。
「あぁ〜・・・」
そらみたことか。やっぱりアレックドールに絡むとロクなことがねぇじゃねぇかよ。『奴』といいエヴィロイドの『神花の巫女』といい、おまけに今回の依頼。俺にアレックドールとの変な縁が出来ているような気しかしない。
だが、そんな妄想よりも彼女について思い出さなければならない。彼女の顔を見たからではないが単純に直感でどこか別の場所で出会っているような、懐かしい感じがする。少なくとも俺が生きていた時の高校とは違う・・・。中学か、或いはもう少し前か・・・?
・・・いや、単に疲れているだけなのかもしれないな。デジャヴってやつだ。シラルの件以降1ヶ月も休暇をもらっていながら、エヴィロイドに行って国家転覆をして派手にやらかした。自分から厄介事に首を突っ込むのは前世からの悪い癖だ。きっと気のせいだろう。うん。
そうだ。何も考えずに寝よう。そもそもこの世界に来て日が浅いというのに国家転覆をやった時点で、すでにやり過ぎているんだよ。何も気にしないで寝よう。宿題あるわけでもないし・・・。
「・・・zzz」
「ご主人ー?昼ごはん・・・」
「・・・」
「パパ。お疲れ様。ゆっくり休んでね」
マグノリアの声が聞こえたような気がした。ただ、寝たかったからか俺は聞こえないフリをしてそのまま眠りについた。
「・・・ぼぅ?」
眠ってすぐ夢か。かなり疲れていたんだな。俺。
「一緒に・・・」
マグノリアか?いや、違う。こんな声じゃない。たしかに幼い声だ。だがマグノリアじゃない。
「一緒に遊ぼぅよ!」
「いいよ!何して遊ぶ?」
「うんとね・・・」
霞んだ記憶。どこか、遠い場所。夕陽に照らされた小さな公園。あれ?どこかで見たような気がするな・・・どこだ?ここ。
「あ!忘れてた。名前教えて!」
「僕はすぎたけい!みんなケイって呼ぶんだよ」
懐かしいな。自分の本名を聞くなんて。ただ・・・
「私は・・・っていうの!」
「じゃあ・・・ちゃんだね!よろしくね!」
「うん!ケイ君!よろしくね!」
思い出せない。誰だこの少女は?いや、知っている筈だ。この夢、この記憶が正しいのは分かる。
あの少女がいなくなって以降、俺はこの小さな公園のある街から両親の仕事の都合で引っ越した。だがそれから再び戻ってこの街の高校に進学。一人暮らしを初めた。気が晴れない時は少女と遊んでいた公園のベンチに座り込んで、周りの遊んでいる子供達を見ていたこともあった。地味にサッカーに付き合ったこともあった。俺自身、あまり上手くはないのだが。
だが、どんなに公園にいてもやはりあの少女に似た人すら見かけることは遂になかった。俺がその人に見えなかったか、忘れられたか、俺自身が別の記憶と勘違いしているのか、又は街にすらいなかったのかもしれない。いつもそんなことを考えながら過ごしていた。
そうでありながら、未だにあの少女の名前を思い出せない。自分の少ない脳みそにイライラする。誰だ?お前は誰なんだ?
「お嫁さんごっこしよ!私が奥さんで、ケイ君が旦那さん!」
思い出せ思い出せ思い出せ!もう消える!ここから先の記憶はあやふやなんだ!彼女と出会った瞬間だけが一番の記憶だった!ここで思い出さないと二度と分からない!チクショウ!このポンコツ頭!早く思い出せよ!
「あ!そうだ!ケイ君が旦那さんなら、私は旦那さんの名前に変えなきゃいけないんだ!」
「え?そうなの?」
「うん!だから、今から私の名前は・・・」
杉田真里になるねーーーー
「マリ!」
ベッドから飛び起きて、周囲を見渡す。机の上には無造作に工具が散らばっている。自分の部屋だ。顔を触ると冷や汗が噴き出ていた。時計を見る限り、寝ていた時間は4時間。かなり長かったみたいだな・・・。いや、とりあえず冷静になれ。なるんだ俺。
・・・思い出したぞ。彼女の名前は真里だ。アレ以降会えていない理由はともかく、彼女は真里にかなり似ていた。これだったんだ。妙に引っかかって捨て置けない理由は。いや、だからといって似ているだけの別人に過ぎないかもしれない。それに彼女がこの世界に来る確率なんて万が一にも無いはず。
・・・難しいことは考えない方がいい。余計混乱するだけだ。単純に彼女に会えばそれでいいはず。あと彼女がなぜあの隠された場所にいたかも知りたい。ああ、そこは伯爵の専門だったか?
意を決して彼女が寝ている部屋へと出向く。廊下を歩く一足一足がいつもより重く感じる。戦闘でよく感じる重さより、格段に重い。『もしそうであったなら』彼女は死んでいることになっているからな。いつ死んだかはともかく・・・ん?
待て。『いつ死んだか』だと?なら、俺があの街から去る時にはまさか・・・いやまさか。そんなことはあり得ない。事故にあったりしたなら、ネットニュースや新聞、テレビに出ていてもおかしくないはず。行方不明ならなおテレビに出ていてもおかしくないはず・・・?
もう、全く分からない。ただ彼女が気になって仕方がない。廊下を走って人目を気にせず彼女を寝かせた部屋へ向かう。
「ハインド君。彼女のことなんだが」
「伯爵すいません。後でお願いします」
「は、ハインド君?彼女は既に起きて」
「あ、先生!あの人起きて先生のこと」
「ミーティア。その話は後で聞く」
「いやそうじゃなくて・・・」
とにかく話しかけて来る人達を後に早足で向かう。正直言って、もう誰の話も聞く気なんて全くなかった。自分の目と耳で確認すべきであると、ただその一点だけ考えていた。そして頭の中が真っ白になりそうな、こんな状態下で歩き続ければ起きる事はただ一つ。目的の部屋へ歩き続けていたおかげで己の覚悟が決まらないまま扉の前に来てしまっていた。
世の中には一生そのままでいい疑問もある。だがこの疑問だけは駄目だ。解消しないといけない。しなければならない。なのに、何故俺は躊躇しているんだろう。知るべきだ。知らなければ。確かめなければ。勿論、予想が違えばハイ終わりで済む話になる。済む話になって欲しい俺がいる。そうであれ、そうであれと。
だがもし予想が当たっていたら?元の世界では既に彼女は死んでいて、俺は彼女の死すら知らなかったことになる。更に同じ世界に来ているなんて有り得ない話だ。もしウラルが嫌がらせでこんなことをするとしても、こんな遠回しにやるわけがない。
手が震える。それでもドアノブに手を掛けて扉を開く。俺の変な想像が間違っていることを信じて。俺が狂っていることを信じて。
「失礼する、ぞ」
目の前には、既に起きてベッドから窓の向こうにある庭を眺めているひとりの女性。俺に気づいたのか、こちらを向く。
「えー・・・」
聞きたいことが口から出ない。しっかりと聞いておかなければならないのに、頭が回ってくれない。情けない話だ。
「ケイ君?ケイ君でしょ?やっと会えたー!」
彼女はベッドから出ると、俺に抱きついて来た。勿論だが俺は全く状況が理解できるわけがなかった。かつての俺のあだ名を使い、そしてなによりも気になった『やっと会えた』の一言がとにかく気になって仕方がない。
だが、これで一つの結論だけが出た。マリはこちらに来ていた。少なくとも、俺と同年代近い姿で。
「ま、マリなのか・・・?」
「やっと、やっとだよ!私会えたんだ!ケイ君に!」
どういうことだ?やっと会えた?俺を探し続けていたというのか?意味が分からない。マリは結晶の中に閉じ込められていたんだぞ。それも人間の目には見えないよう巧妙に細工された洞窟の中で。探せるわけがない。
いや、それより聞きたいことを聞こう。あまりいい質問ではないことは分かっている。ただやはり知っておきたい。何故ここにいるのかを。
「なあマリ。聞きたいことがあるんだ。どうやってこっちに?まさか俺のやったことに巻きこまれて?」
「んー?違うよ?私、ケイ君と会ったあの後、心臓の病気で死んじゃったんだよ。でも、ウラルって人がケイ君に会わせてくれるって言うから」
死んだ?死んだって?俺が一緒に遊んだあの後に?
「でも、会えて良かった。だって初恋の人は忘れられないもん」
ああ・・・。何となく思い出した。俺は次の日もマリと遊ぼうとあの公園に行った。だがそこにマリの姿はなかった。何日か行ったが、結局会うことは無かった。母親はきっと引越してしまったんじゃないかと答えていた。
それで仕方なくこう思うことにしていた。彼女が遊んでいたのは、最後の思い出にしたかったからだと。俺が会えたのは奇跡みたいなものであったのだと。
いや、仕方なく思い込んでいた部分は間違ってはなかったみたいだ。きっと、マリにとってあの公園での出来事は最後の思い出であり、そして俺があの時間に遊びに来ていたのは奇跡だった。
待てよ?俺の今の身体は当時のものでもないし、完全ではないとはいえこの世界の人間のものを使わせてもらってる。面影は無いはずだ。
「なあマリ。昔と違って俺は顔が全く違うだろ?なんで分かったんだ?」
「むー!酷いよ!ケイ君だって私のことマリって呼んだでしょ?私の名前を知ってる人は、ケイ君しかいないもん!」
「そうか、俺だけ・・・。は?」
「私が生きてた頃の下の名前で呼んでくれる人は私の初めての友達で初恋をくれたケイ君だけなんだよ?」
なんだ。そういうことか。しかし、俺の予想は残念ながら当たっていたようだ。マリは既に死んでいた。幼い内に。それも心臓に関する病気で。
俺は何も知らずに過ごしていたのか・・・。
「ごめんマリ。今の今まで、死んだなんて分からなくて・・・」
「仕方ないよ。あの公園で遊べたのだって、先生がもう私には少ない命しかないって分かってたから。でも、ケイ君はこんな場所に来て、10年以上も前なのに私のことを覚えててくれた。それだけで十分だよ」
大きくなったマリの身体は、それでもやっぱり細くて不安を覚える。しかし昔だったらこんな抱き合うなんてことはできていないだろう。それに自分を初恋の人だと言われると・・・なんというか照れてしまう。
それにちょうど俺好みな身長と身体つきになっている。このまま嫁にしても構わないくらいだ。
「ケイ君、ちょっとエッチなこと考えてたでしょ?」
「いやいや・・・」
「嘘つき。ずーっとドキドキしてるもん。でも好きー!」
こんなに好かれて、俺は幸せ者だな。とても幸せだ。多分、この先悪いことしかないような気がしてならないのだが、そんなものは俺がこじ開けて押し通すだけだ。俺にならできるはずだ。必ず。
それからベッドに座って色々と話し込んだ。高校までの生活、マリが居なくなってからの俺の性格、学校でできた友人達。マリにとって俺は尽きることがないネタの宝庫だ。なにせ学校なんてものは彼女は無縁だった。行く前に死んでしまった。だから聞きたいんだろう。どんなに楽しくて、どんなところであるのか。
話をして40分。マリは眠たくなったのか、うとうとし始めていた。
「マリ。眠いなら寝た方がいい」
「ん・・・でも、ダメだよ・・・ケイ君と寝る」
「分かった。一緒に寝よう」
眠い目をしているマリをベッドに寝かせ、俺はマリの隣に入り込んで布団を掛ける。
てっきり後ろを向いていると思っていたのだが、寝返りをうっていたのか顔が間近になっていた。甘い吐息に一瞬頭が真っ白になった。マリは再び俺の腕を組んで、そのままぐっすりと寝てしまう。俺は俺で消えそうな理性を保ちつつ、睡魔に襲われて一緒に寝てしまうのだった。
次の投稿は11月25日を予定しています!
いつも沢山のPV・ユニークをありがとうございます!
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