強行突破
また遅れてすいません!
HK417の安全装置を解除していることを確認し、近くの壁に隠れながら移動する俺達。リリスの魔力探知に俺自身に抹消迷彩を用いた二重の安全を確保しているが、安心はできない。見つからないという保証も一切ないからな。
リリスによると敵のほとんどはホムンクルスと呼ばれる人工生命体であるらしい。魔力が指揮官らしき一人を除き、全て平均化されているからである。
「いいか公爵。このパターンの場合、まず指揮官を潰さない限りは勝ち目がない。俺の身代わり魔法も使ってはみるが、釣れるのは近くの奴らだけだ」
「となると煙幕も必要か・・・。指揮官は?」
「近くにいることだけは確かだな」
「マグノリアに任せてみるか。マグノリア?」
《話は聞こえてたよ。どうすればいい?》
「敵の装備や状況が分からない。音を出しても構わないから、対物で片付けろ」
《でもどうやって?》
「マグノリアちゃん。俺が誘導するから、位置は任せてくれ」
《そんなことなら、ビデオ通信の方が早いよ》
マグノリア目線からのビデオ通信がホログラムで目の前に表示された。武器を所持している人型の敵は、殆どが不気味な仮面をつけツギハギのようなボロマントを羽織り、質素な西洋風の両刃剣を一本だけ腰に携えている。しかし、バラバラに動いてるように見えて隙がない巡回ルートを通っていた。かなり統率がとれているな。
軍には『士気があり統率が取れている軍隊に攻め込むべきではない』という戒めがある。士気はともかく、統率がある彼らに無策に攻め込めば袋叩きに合ってしまうだろう。
更に悪いことに、マグノリアの映像の中には死体が既に幾つか見えてしまった。遺跡に入ってきた時にいた傭兵二人の姿も、死体としてそこにあった。
「アイツら・・・見境無しかよ」
「こりゃ早いとこ逃げないとまずいな。マグノリアちゃん。敵も似たような格好の可能性が高い。俺の探知魔法の頭ン中のイメージと掛け合わせて指揮官を教えるから俺の言葉に従ってくれ」
《はーい》
リリスが目を閉じて完全に瞑想モードに入り、マグノリアに敵の位置の確認・指示を始めた。俺は取り敢えずスモークグレネードを幾つか用意して銃もアサルトライフルのみにし、不可思議やフラッシュライトなどの他の装備は全て一度魔力化しておく。
更に雷撃装甲を全身に展開。彼女に何かあったら困る。俺はどんなに傷ついても構わないが。
「右、そうだ。更にそこから4人。左から・・・今向いている方向は?」
《目の前に一人だけ動いてないのがいるよ》
「そいつの左から5人目、更にその奥にいる奴だ」
《いた・・・。ご主人》
「発砲を許可する。fire」
「fire」
対物ライフルの発射音が響き、歩き音が完全に消えその後は静寂のみが残る。マグノリアの映像をサーマル解析モードで見たところ、予想通りというか、派手に倒れて色々なものが飛び散っていることだけはわかった。
リリスはすかさず身代わり魔法を放って俺はスモークグレネード5個を投入して煙幕を展開しNVGゴーグルを装着した。あとは、行くだけだ。
「今しかないぜ!煙幕に身代わり魔法、そして指揮官の排除!こんな好条件はない!」
「GO!GO!GOォォォ!」
「走れェェェェ!」
全力で煙幕の中をまっしぐらに突撃する俺とリリス。近くにいたマグノリアをラリアットに近い形で少し乱雑になってしまったが回収し、急いで外の光へ向かって走る。グエッと言っていたが、この場合仕方がない。出口へ向かう一本道にも何人かホムンクルスがいたが、襲ってくる前にリリスが魔法を放ってガンガンゴリ押しで吹っ飛ばして行く。
息苦しくてもはや何も考えずに全力疾走で階段や廊下を走り抜けて見えた先は、外に繋がる出口。しかし、気づかれていたのか背後を一瞬振り向くと相当数のホムンクルスが後ろからすでに来ていた。
「ご主人の邪魔をォォォするなァァァ!」
「マグノリア⁈一体何を」
なんとマグノリアは俺が渡していたバンカーバスターをその場に出し、背後のホムンクルス達に向かって思い切り吹っ飛ばしたのだった。バンカーバスターとはいえ、爆発だけでなく単なる物理的衝撃なら普通に鈍器としても使える重さ。ホムンクルスは重さによってバタバタとドミノ倒れして行く。
だが、この後が問題だった。出口を無事に出れたのはいい。だがバンカーバスターが問題だ。マグノリアがホムンクルスに向かって放ったこのバンカーバスターは俺が開発した専用のセンサー弾頭を備えているオリジナルタイプ。もし発射から10秒以上経ってセンサーが地中を貫徹している様子が無いと判断した場合、不発処理として威力は低めになるが自爆するよう設定してある。しかし低めとはいえ、家一つ吹き飛ばすなど序の口な威力であり元はバンカーバスターの爆薬であると言うことを甘くみてはいけない。
つまり、俺が取るべき行動はただ一つ。
「リリィーースッ!そのまま走れェェーッ!」
「は、ハア⁈」
「いいから走れェェ!遺跡が吹っ飛ぶぞォォォ!」
何か嫌な予感を感じたのか俺より先にいたリリスは再び、それもさっきより速く走る。
そして、10秒後には見事にバンカーバスターの自爆炸薬が起動。派手な爆発音を背後に俺とリリスは走り続けた。後ろをチラリと見ると、赤い炎に大きな黒い煙。だが、追いかけてくる人影は一切見えることはなかった。
数分以上走り続けていたが、流石に疲れきってしまったのでリリスと近くの切り開かれていた森で一度止まり、近くの岩陰に女性を下ろして俺はリリスに水を貰い、飲ませてもらう。
「プハァァ!死ぬかと思ったァ!」
「ハアハア・・・フゥ・・・」
「あの爆発は一体何だってんだ・・・?い、いや、今はいい。今は落ち着きを取り戻さねぇと・・・」
「ご、ごめんなさいご主人・・・」
「あぁ?」
「ヒッ」
「あ、いや、アレは仕方ない。指揮官を失ったはずなのに追いかけて来たんだ。あの時、あの人数を制圧できる武器はなかったから、仕方ないことだ・・・」
そう。アレは仕方ないことだった。マグノリアに渡していた武器の中には、追ってきていたホムンクルス達に対して止めることができる兵器は殆どなかった。唯一バンカーバスターだけが足止めかつ、奴らを殲滅させうる唯一の兵器だった。
そんなことより、あの爆発をもし真正面からカメラで撮影していたらインディンジョー◯ズやコ◯ンドー顔負けのシーンになっていたことだろう。・・・何が酷いって、こんな状況でよくもまあこんなことを考えることができるなってところだ。だがそれくらい今の俺には精神に余裕がある。次にやることを考えなければ。
と、そんなことは既に決まっている。先程まで背負ってきた彼女を何とかしなければならない。とはいえ未だに目を覚まさないあたり死んでいるように見えるが、身体は有り得ないほど体温を保持しているし脈もある。
それに、どうも俺には彼女を捨て置けないような感情がある。優しさ、などというものではない。前に一度どこかで出会っているような気がしてならないからだ。
「さて。これからどうするよ?公爵、アンタが決めてくれ」
「・・・一度帰投する。報告は手紙でも多分大丈夫だろ。それに、今は彼女をなんとかしないと」
「はいよ」
エアバイクを出してマグノリアを肩に乗せ、女性はリリスのエアバイクに乗せて伯爵の家への帰路につく。エアバイクの速度は自動制御で調整し、リリスについていく形にした。
遺跡の中とは違う綺麗な青空。俺がいた世界なら飛行機雲くらいあってもおかしくないのだが、それすらない空を見るのはこれまでなかった。空気が澄んでいるからだろうか。霞むような物もなく太陽が出ている。
久しぶりにしっかりと空を見た気がした。今まで目の前のことに忙し過ぎて、空を見てゆっくりするようなことは無かったからな。
「ご主人が見る青空は、もしかして線がなびいている雲がある景色?」
「そうそう・・・ん?何でお前が分かるんだ?」
「ご主人に言い忘れてたけど、実はボクを起動した時にボクはご主人の意識と少しだけ繋がってるんだよ。だから、どんな景色か程度なら簡単に分かるんだ」
「ああそうか。つまり、お前は俺の夢すら見ていたってことか」
「意識的にやらないといけないから、夢までは見てないかな。その代わり、ご主人がよく使うあのスキルは知ってるよ」
「忘れ去られた智慧、か」
「うん」
「今まで、俺に新しい武器をねだらなかったのはそれが理由か?」
「・・・ご主人はボク専用の武器を作らなくても大丈夫だよ。既製品で十分対応できるから」
「そういうところは俺に似るんだな。変なところで頑張ろうとしている。なあ、マグノリア。お前にはこれからも俺の娘として居て欲しい」
「娘かぁ。確かに、ボクも恋人ってよりは娘みたいだなぁって思ってたんだ」
「じゃあ、今日からはマグノリア・ウォッカだな。なら俺は父として娘に危険な目に合わせないためにもやる事がある」
「妖精用の兵器開発?」
「これから、おそらくマグノリアには戦ってもらうことも増えるだろう。だが娘にそんな危険は負わせられない。だからこそ、お前を守る為に兵器を作る」
「例えば?」
「世界を8回滅ぼす最弱兵器とか」
「取り敢えず、ご主人の過保護さを直さないといけないことはわかったよ・・・」
苦笑いをするマグノリアを見て、俺はとりあえずあのキナ臭い戦闘から逃げられたことに安堵する。しかし俺はまだ知らなかった。彼女の、あの遺跡に封印されていた女性の正体に。
次の投稿は11月4日を予定しています!
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