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天国から追い出されて不老不死  作者: ラムネ便
恋と呪いは前世から
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聖杯


 不可思議を出してアクセスポイントからアクセスし、ぶっ壊れた基礎から全て直しにかかる。元の術式と連結しなければならない為か、わざわざこっちのプログラムから互換性を持たせなければならないのが面倒だ。例えるなら、Wi◯dows10のOSに1.0の互換性を入れるくらい面倒極まり無い。

 だがそこは人類の英知、量子コンピューター。互換性の導入から術式の修正と復旧作業まで全てを7分程で終わらせてくれた。


「人類の英知に感謝しつつ、全体機能をシャットダウン、と。ついでに軽く上位管理に侵入して・・・」


 俺が大元の管理システムに侵入し、全ての警備システムをカットした結果、モヤの兵士達が消え始める。更に隠し扉が開きはじめ、光魔法の誘導灯らしきものが光る。


「さて。聖杯とやらを探しに行きますか」


「よぉしメフィスト。もういいぞ」


「割と食べさせてもらったよ!ありがとうねぇ!ではまた次の御機会に会おう!召喚師君!」


「はよ帰れや」


 メフィストと呼ばれるハイテンションな悪魔は煙と共に消え、その場から去った。

 俺はHK417を構えて隠し扉の先へと歩いて行き、リリスは俺に続いて後方警戒をしながらゆっくりと歩く。

 NVGを作動させ暗闇の向こう側を見つめながら、引き金に指をかける。一歩一歩がとても重く感じる。敵がいるか分からないという恐怖感が更に増す。対人トラップに注意しつつ、歩く。俺はともかくリリスはただの生命体に過ぎない。獣人族とはいえ、その身体つきは人間と酷似している。人間とほぼ構造は同じだと考えていいだろう。どこか致命傷を負ってしまえば、回復魔法など使えない俺にはどうすることもできない。

 そして、自分でも分からないほど恐怖しながら歩いた頃、ついに奥を見つけた。そこに敵がいる可能性を否めなかった俺はその場にリリスを待たせ先行突入。トラップや待ち伏せをまともに食らう覚悟でローリングしクリアリングする。


「っ!クリアー!ムーブ!」


「トラップ反応無し。周囲に魔力反応は・・・ないな。よし」


 周囲のクリアリングを常に行いながらリリスをこちらへ誘導し、神殿内部にある遺物を一つ一つ確認してもらう。


「何をそんな大袈裟に警戒してんだよ・・・」


「魔力反応がなくとも古典的トラップが無きにしも非ず。俺はともかく、リリスに死なれたら困るんだ」


「はいはい。全く、心配屋な上司だこって」


 リリスが様々な遺物を確認している間、片時もHKを手放さずサーマルモードに切り替えて急なトラップに警戒。いざという時に備えてPKMもリロードを行い、二丁体勢で迎撃準備をしておく。


「なんにもねぇな。遺物も古ぼけた石っころばかり。売ろうにも金になりやしねぇもんだ。何なんだよ。ココは」


「そんなこと、俺が聞きたいさ。俺は何のために呼び出され、何の為にココで探しものなんぞをしてるのか」


「罠にでも嵌められたか、それとも何か別の意図があるのか」


「それを知る為にも、もう少し付き合うしかなさそうだな」


 しかし探そうにも、俺から見ればこの奥の部屋以上は全く部屋もない。本当に古ぼけたものばかりで態々俺をここに呼び出す意味が理解できない。こんなことをして何になるのか。サーマルモードで周囲を見ても魔力反応は一切見受けられない。

 もしかしたら、俺はアレックドールの王ではない第三者によって遊ばれているだけじゃないのか?俺は、ただ誰かに空っぽの宝箱を見せ付けられているだけじゃないのか?そんな考えが頭に浮かんでは沈み、自分ではもはやどうしようもなくなっていた。

 いや、自問自答を繰り返しているより行動を起こすべきではないのだろうか?もしも仮に第三者の手ではなく本当に王の指示であれば、勝手に帰るとアルスの評価に影響を及ぼす。個人的依頼とはいえ、アルスの公爵が何の報告もせず帰ったとなれば俺を選んでくれたアルス王に迷惑がかかる。


 せめて、アレックドールの王に何の成果もありませんでしたと伝える他ないな。仕方ない。本当に何もないんだから。

 と、完全に帰宅部モードに入っていた俺だが急に不可思議に連絡が入る。コードE3を理解したマグノリアからだった。


 《ご主人!》


「マグノリア。コードE3は理解したな?」


 《イグザクトリー!》


「仮座標をそっちに送ったから、伯爵に頼んで転送、帰還援護を頼む」


 《え?でもコードE3ってボクによる高高度バンカーバスター爆撃じゃないの?》


「今遺跡内で石ころ遊びしてっから。爆撃されたら潰れる」


 《分かった。じゃあ伯爵に話してボクをそっちに転送してもらうね。他には何かある?》


「あー、今日の昼飯は?」


 《分かりません!》


「よろしい。じゃ、あとはよろしく」


 《はーい》


 マグノリアからの連絡が切れ、不可思議をベルトに引っ掛ける。暫くすればマグノリアが来るので遺跡内を歩き回らせてもらうことにしよう。


「それにしてもなんでこんな遺跡が・・・」


「そういやこの遺跡について何も聞かされてねぇな。何かあるから俺らを頼るんだろうが」


 誘導灯だけでは明るさが足りないので、強力な2015年にも普通に売っているフラッシュライトを生成。スイッチを入れて様々なところを明かりで照らして確認していく。リリスはリリスで明かりを出す光魔法を使って探索しているので、気にせず探索していくことにした。


「とはいえなぁ・・・何にもないんだよな」


 本当に何もない。砂漠みたいに何一つめぼしいものは見つからない。あったとしたら、足元に落ちていた燻んだ銀色の杯。それ自体に何かしらの価値があるのかとリリスに聞いてみたら、売っても二足三文にしかならないという結果が返ってきた。マヂカヨ。

 そして、10分ほど経った頃にマグノリアが転送されてきたので取り敢えず周囲の援護でもしてもらいながら帰ることにした。のだがマグノリアが遺跡を見たいというのでリリスに少し付き合ってもらいながら再び探索することになった。


「本当に何にもないんだね。ご主人」


「何にもない。マジで何一つない」


「マグノリアちゃん?もういいか?これ以上部屋は無いわけだしよ」


「え?この先に部屋あるよ?」


「マグノリア?何を言って・・・」


 マグノリアは壁に近づいて行くと、何と壁にめり込むように入り、スッと消えてしまった。俺とリリスと一瞬目を合わせたが、直ぐにマグノリアが壁から顔だけ出て来てこっちだよと言っているので覚悟を決めて壁に二人で突っ込んだ。

 するとどうだろうか。そこには光り輝く数々の鉱石が自然状態のままであり続け、俺ですら光の世界にいるような不思議な感覚になる小さな洞窟のようなものがあった。


「何なんだこれは⁈」


「ほーん。妖精の目には人間や他種族とは違う魔力の波長が見えているとは聞いたが、まさかこんな展開になるたぁな」


「リリス。どういうことだ?」


「妖精ってのはな。人間や獣人族に限らず凡ゆる種族には見えない魔力の波長を見ることができる。無論、人間にしか見えない波長だってある」


「つまり、今回は妖精には壁に見えなくて俺達には壁に見える仕掛けが施されていたってわけか」


「そういうことだ。それにしてもこの鉱石は中々・・・」


 リリスは何やら鉱石に興味を示し行ってしまった。しかし、俺はそんなことよりも奥にある魔力に釣られて無意識に歩き始めていた。マグノリアはそれを察知したのか、俺の肩に飛びながらの形で捕まりM60を2丁出して臨戦態勢に入る。

 ほんの数十秒で辿り着いたそこには入って直ぐそこらにあった鉱石とは違う、巨大な蒼く光る結晶体。そして、その中に閉じ込められている形で封印されたような、それこそレーヴェリーアに来る前の俺と大差ない年齢と思われる女性が安らかな表情で眠っている。

 これには俺もマグノリアも驚きを隠せなかった。魔術や魔法に詳しいあのリリスですら、これについては何一つ知ることなどなかった。だが、何となく俺は知らない気がしなかった。


「本当になんなんだよココは・・・⁈」


「落ち着けリリス。俺より魔術に詳しいお前が慌ててどうする」


「あ、ああ」


「でもご主人。こんなものを見たんじゃ・・・」


「分かってる。だがな、今こそ冷静になるべきだ。テスト前の学生じゃあるまいし」


「公爵!前向け!前だ!」


 マグノリアと話す為に横を向いていた俺。リリスの言葉に気づいた瞬間には、結晶体に亀裂が既に入り始め、数秒後には盛大に割れた。更に中に入っていた女性が思い切り俺の方に倒れて来たので、瞬発的にマグノリアの手を肩から払い俺がクッションになる形でなんとか受け止める。


「ゴファッ」


「ご主人!」


「だ、大丈夫だマグノリア。後頭部を強打しただけに過ぎない!」


「いや致命傷だろ。大丈夫か?」


「大丈夫だ。割と」


 大丈夫だとは思うが、ムチウチになってもおかしくないような衝撃をモロに食らった。リリスの手を借りて立ち上がり、女性を床に一度寝かせて次の行動を考える。


「で、これからどうするんだ?まさかこんなところに女性一人を置いて行くわけじゃあねぇよな?」


「当たり前だ。俺はそんな薄情もんじゃ・・・ない」


「今のご主人の微妙な間が気になるんだけど」


「気にするな。人生気にしてはいけないこともあるんだ」


 俺は首をコキッと鳴らし、パラシュートコードのみを生成。女性の体と俺に巻きつけ、リリスに手伝ってもらい背負う形にした。

 遺跡から出る準備を整えた俺達は、洞窟から出て先程の部屋に戻る。しかし魔力探知をしていたリリスが何かを感じた。


「・・・公爵。団体様の御到着ってやつだ」


「数は?」


「30前後ってとこか。どうする?いや、聞くまでもないか」


「よく分かってるじゃないか。強行突破しかない」


 マグノリアに光学迷彩と通信機、ありったけの弾薬を渡すと彼女は直ぐに敵のいる方向へ飛んで行く。俺達は敵の陣中を突破するべく、これまでにないような重武装で挑む必要があった。

 しかし、リリスのある機転により重武装ではなく速さを重視した軽武装で突破することになった。それをマグノリアにも伝え、全ての用意が終わったところで覚悟を決める。


「さぁて。手筈通りに行けば良し。いかなければそこまでだな」


「いや、何かあったらマグノリアとこの人を連れて逃げてくれ」


「あいよ」


「よし。撤退戦を開始する。冷静にいくぞ」


次の投稿は10月21日を予定しています!

いつも沢山のPV・ユニークをありがとうございます!

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