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天国から追い出されて不老不死  作者: ラムネ便
人工妖精の力
52/92

流星となった妖精

段々遅くなってきていますが、執筆の暇が中々ないだけで、ネタ切れしたわけではありません。

そこだけはご安心ください!

 

 ギルドに帰ってきた俺達は、直ぐにあのリザードマンのいるカウンターで報酬金を受け取った。中身は大した金ではなかったが、山分けということで参加した全員に渡した。

 原因となっていた彼ら、あのDランクレギオンはどうやら王とグルだったらしい。金や金品に目が眩んだような事態になった訳でもなく、自分達が死にそうだった訳でもない。王がそう望んでいたからだった。

 被害状況としては、王がワザと潜入したEランクレギオンは全員無事。Dランクレギオンに至っては実力者揃いだったのか撃破報告まであったという。

 何にせよ、このようなことはもうしないでほしい。俺の残業と口止めすることが増えるだけだからな。


 その後、王は変装魔法で歩いて王都の市場を見ながら人混みに消えていった。俺は装甲車の上部ハッチを修理し、次は後方ハッチから全員乗せて屋敷への帰り道についていた。

 次からコレンに飛べとは言わない。絶対に。


「今日のは中々歯応えのあるクエストだったわね。ハインド公爵様がくれた、このウェアラブル端末とかいうのも良かったし。通信魔法なんかより聞こえやすいし、音の遅延もない。これ私にくれないかしら?」


「それは先生に聞いてみないと分からないかな。私もこのウェアラブル端末は良かったと思うよ。扱いやすいし動きを阻害しないし」


「ご主人の作るものに、そんな失敗はないからね!まあ時々浪漫語られて疲れるけど・・・」


「確かにこれは良かった。このようなものを公爵様が作れるとは・・・」


「こ、こんなのが、み、皆にあったらいいかなぁなんて」


 皆が背後で話している話題。これは出発前に俺が渡した通信魔法に代わる科学技術。ウェアラブル式の無線機だ。いや、無線機というのは間違いか。実際には2960年代辺りの技術を利用して創り出した最新型の通信機だ。無線というよりかは高音質・高画質のビデオ通話に近い。

 システムの拡張プログラムと拡張機器さえ使えば、バイタルチェックから武器弾薬の管理まで様々なことに応用可能。もしやろうと思えばCPUの負荷を考えてシステム制限がかかるが、那由多並みのスパコンを搭載できる。

 しかし、更にこのウェアラブル端末に集合化させた管理機能を搭載させるとなると、それはもはや第三者が個人を管理するプライベート侵害に他ならない。つまり、使い方次第というわけだ。


 科学者がよく語る詭弁ではあるものの、事実間違っているわけではない。


「さて、皆。お話しはそこまでだ。そろそろ着くぞ」


 目の前に見えてきたのは、俺の帰るべき場所。ウェスター伯爵の屋敷。ただ、少しだけ怖い気がしないでもない。その理由は、庭にある小さなロータリーに存在している朝出た時はなかった馬車。

 ウェスター伯爵は馬車を所有していない。ローディーの姉妹とも言えるナーリェさん達がローディーを置いていくとも思えない。と、なると考え得るのはただ一つ。ウェスター伯爵が帰ってきているということだ。

 思い出せる悪事はこんもりとあるが、一番嫌な予感がするのはやはりレムレムだ。あんな性格にして、ウェスター伯爵になんて言われるか分かったもんじゃない。

 か、覚悟を決めるしかない。仕方ないことだ。過去は変えられない・・・!


 俺は装甲車から出てすぐに屋敷の扉を開ける。早く過ちを詫びなければ。ただそれだけを考えて挨拶を交わしてくる使用人を後に、ウェスター伯爵の部屋へと向かった。


「ウェスター伯爵!」


「そんなに息を巻いて・・・どうしたというのかね?」


「いや、そのですね。実は・・・」


「父上!レムレム!ただいま帰陣致しました!」


「・・・」


 いつだ⁈いつからいた⁈俺が階段を駆け上がる時か⁈こんなことにならないよう、先に謝罪しに来たというのに!レムレムさん!頼むからもう少し遅くても良かったんじゃないんですかね⁈こんな早くなくてもいいんじゃないんですかね⁈皆とお話ししていれば良かったんじゃないんですかねぇ⁈


「レムレム、なのか?」


「はい!父上!先生から私は様々なことを学び、私は恥じない妖精として鍛えあげて頂きました!」


「恥じない妖精、だと?」


「社会の基礎ルールから魔法まで!私は学ぶことができました!私は、私は父上と同じ立場で話したかった!母上を守りたかった!」


「そうか。立派になったな。なら、もうレムレムの名は要らないな」


「名が要らないとは、一体どういう・・・」


「レムレム。これはお前が成長する前の名だ。成長し、私と対等になれた今、その名は不要だ。ハインド公爵様に、本当の名前をつけてもらいなさい」


 俺はその時思い出した。使用人達から聞いたことがある。このアルス国含む幾つかの国には、最初は親から名を貰い、親から離れて恩師に鍛えられ成長した暁には恩師からも名を貰う風習がある。どちらかの名前を名乗るもよし、セカンドネームにするもよし。二つ名にするもよし。名をどうするかは与えられた者の自由だが。


 レムレムは俺を見て、ずっと名を貰うのを待っている。しかし急いでつける必要はないだろう。適当な名を与えて後悔するのは俺だからな。そんな名で喜ばれても、心に罪悪感が永遠に引っかかったままになるだけだ。

 そうだな・・・かっこいい名前がいいな。女にも使えるような名前が。別にこの世界じゃあキラキラネームなんてお守りがわりになるくらいだ。おかしいとは思われないだろう。


「ミーティア。ミーティアだ」


「ミーティア・・・」


「異国の言葉で流星を意味する。ミーティア」


「私は、流星・・・?」


「そうだ。ミーティア。駆け抜けろ。流星のように。火のような熱さを持たずとも、水のような潤いを持たずとも、風のような速さを持たずとも、土のような大地を持たずとも、闇のような夜を持たずとも、光のような癒しを持たずとも。人々のように求めるのではなく、自身が孤高の雷神となれ」


「私達は、希望の光とは無縁。そう先生は仰っていましたね」


「ああ。だが俺達は、大地を一歩一歩踏みしめる神の足音だ。大地を濡らす中、大地を揺るがす雷だ。空をかける一筋の龍でもある」


「なんか、かっこいいです!」


「だろ?さて、これからお前がミーティアを名乗るもレムレムを名乗るも自由だ。好きにしな」


 レムレムは暫くの間、悩んでいた。別に俺がつけた名前はハンドルネーム扱い程度でいいというのに、彼女は態々悩んでくれた。

 5分ほど悩んだ末、レムレムは心の中で何かを決めたようで、一度巨大化して机の上にあった羊皮紙に羽ペンで何やら書くと俺と伯爵に見せた。


「私は今日から、ミーティア・グロムメントとして頑張ろうと思います!レムレムの名前は忘れません。だけど、グロムメントだけは外したくありませんでした。私はグロムメント家の一人として暮らしたいです!」


 名は俺で、姓は家族か。よく選んでくれた。レムレムの名をつけたのはジュリアさんだが、彼女なら成長したレムレム、もといミーティアのことを見て喜ぶだろう。

 しかしその後、ジュリアさんに何かを言われる前に、ウェスター伯爵に今までの悪事を知られ、厳重注意を受けた。ゲロったのはもちろんエーキル伯爵だった。許さねぇ。

 しかし結局そんな怒りも時間と共に過ぎ去っていった。俺が本当に許さないと思うのは、破壊された時に直せない物と誰か友人とかが自分の目の前で殺された時くらいだ。

 それにエーキル伯爵には、人工妖精の件や悪事について協力してもらった貸しがある。イージスシステムの構築から人工妖精のシステムについて、などなど複数存在している。


 ちなみに明日にはローディー達は帰ってしまうらしい。だがこのまま帰らせてしまうには惜しかった俺は、夕食後に来るよう渡したいものがあると頼み込んでおいた。

 そして夕食後、一人で来たローディーに俺は小さなマグカップにハーブティーを差し入れる。


「今日はお疲れ様。ハーブティーだ」


「ありがとうございます・・・」


「あの時見せた性格はどうしたんだ?ローディー」


「い、いえ。私も調子に乗ってました。すいませんでした」


「うん。ではマグノリアに向かって本音を」


「私はまだ負けたわけじゃない!」


「ほう?」


「あ、いや、これは、その」


「ははは。まあ気にするなって。俺が一緒にいると、気が休まらないだろうからな。それより、これをプレゼントしようと思ってな」


 俺は作業用の机の上に置いてある、妖精サイズの武器をいくつか展開する。

 一つ目はムーンライト。人工妖精のマジックブレードを模して作成したレーザーソードだ。魔力の消費が簡単に行われるように脳波信号による発動システムを搭載している。

 二つ目はリヴェル。マグノリアが対ローディー戦で使っていたあのオールレンジ兵器。

 三つ目は人工妖精用に調整した高機動パワードスーツ。人工妖精自体の体格やサイズは殆んど変わらないから、ミーティア用のタイプをコピーして2号機を造った。


 どれも妖精サイズに合わせたとはいえ、技術自体は西暦2800年代のオーバーテクノロジーを多用している。舐めてもらっては困るね。


 これらを俺は、全てプレゼントするつもりでクエストに行く前に準備させてもらっていた


「一つ一つは大したもんじゃないが、受け取ってくれ。戦闘時には気休め程度には役に立ってくれるはずだ」


「気休め程度・・・なの?これ・・・」


「取り敢えず簡単な説明から行こうか。これはムーンライト。異国の言葉で月光だ。マジックブレードに似て非なる物だな」


「ムーンライト・・・」


「リヴェル、はもう見たか。ローディー。マグノリアが君を追い詰めた時に使っていた遠隔兵器だ。今回は出力強化と省エネ化を施した改良型を作成しておいた。好きな時に使ってくれ」


「・・・」


「最後に高機動パワードスーツ。バッテリーはプリズム式アウォードを組み込んだ。まあ簡単に言うのであれば、エネルギーが自動回復するシステムだ。さて、ここまでで分からないことは?」


「ええ・・・分からないこと・・・」


 いや、まあなんとなく分かっていたことではあるからな。ローディーは多分、何が分からないのかすら理解出来ていない。

 当たり前か。いきなり強力な兵器をプレゼントされて、しかも使い方もよく分からない。オマケには意味不明なシステムの数々。

 だが、暫くは会うことが出来なくなる。後から送るより今渡した方が出元がしっかりしてて疑われるような真似はされないだろう。


「取り敢えず、装着してみて分からないことがあったら後日手紙を送ります。それでいいでしょうか?」


「ああ。大丈夫だ」


 ローディーはそう言うと、俺が渡した兵器をアイテムボックスに入れて自分の部屋に戻っていく。

 俺は俺でベッドに横たわり、電気を消して直ぐに眠りにつくことにした。

 明日も休日だが、夕食の時にエーキル伯爵に研究の手伝いを依頼された。大した用ではなさそうだし、多分大丈夫だろう・・・。

次の投稿は6月9日を予定しています。

いつも沢山のPV・ユニークをありがとうございます!

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