救出
一ヶ月近く更新を止めてしまい、申し訳ありませんでした!待って下さった皆様には感謝致します!
俺達がアルスを出てから15分。森の中に入ってから9分ほど経つが、コレンの示したジャイアント・アントの巣の近くにまで行ってみても人ひとりいない。逆にモンスターだけはわんさかいる。後方から追いかけられたりもしたが、後方警戒組のマグノリア達が圧倒的火力で葬ってくれた。
それから更に5分、時速50kmで走行しているにも関わらず、アナトリアの魔力探知に引っかかるのは雑魚ばかり。
仕方なくコレンのナビゲートで近くのセーフティーゾーンに移動し、装甲車を止めて背後の人員用の部屋でコレンの持っていた地図に、目視確認して異常がなかったところに一つずつ羽根ペンでバツをつけていく。
「か、かなり奥に、き、来ましたね・・・」
「残る巣は4つ。逆にこれ以上いけば」
「Cランクレギオンの範囲に入り、余計発見する確率は低くなる、か?」
「よく知ってますね。その通りです」
「書いてあるし」
「ハハハ。これは失礼しました。ハンター時代に書いたものを何回も使ってますから。10年は世話になってる地図です。ただし、中の情報は数ヶ月前のものですから精度はそれなりに高いです」
「物持ちいいんだな。お前は」
「ありがとうございます」
だがこんな談笑をいつまでも交わしている暇はない。
コレンの地図が正しければ残る巣は4つ。どれも巨大な巣らしく、時々駆除の依頼が入ることもあるらしい。まあ広い森とはいえ、蟻は短期間に大量増殖するからな。小さければまだ可愛いもんだがデカイとなると、どこぞのフ◯ーリナーになり兼ねない。流石にマザー◯ップとアー◯イーターはいないだろうがね。
取り敢えず今現在分かっていることは、今まで通過してきた巣は人間の魔力は一切無く、対象は森の奥にまで進行している可能性がある。で、残るデカイ巣が4。小さめの巣が5。
再び装甲車に乗った俺達は、小さめの巣にも向かうことにした。ただ、コレン曰く小さめで終わっている巣はクイーンがハンターや冒険者に倒されたか自然死した場合が多く、行っても無駄骨に終わることもあるという。だがそれでもいかなければならない。俺達を待っている人がいるかもしれないのだから。
それと何が起きるかわからないので、出発する前に先にスネークバンダナを巻いておこう。
《ご主人。ご主人。応答して下さい。オーバー》
「こちら運転席。オーバー」
《後方警戒組から報告。ローディーさんの探知に反応あり。オーバー》
「対象数報告を求む。オーバー」
《えー・・・そうそう。人数。え?1人⁈》
「早急に対象数報告を求む。オーバー」
《こちらローディー。人数は1人。敵数20。距離1200。方角は4時。繰り返します。人数は1人。敵数20。方角は4時。作戦指揮を請います。オーバー》
1人?1人だと⁈ジャイアント・アントを1人で倒してるってのか⁈こんなの頭おかしい奴しか絶対やらないだろ!どっかのドMとか変態とかその辺しか思い付かねぇよ!
いや、もしかしたらめちゃくちゃ強い人で歴戦の戦士的なアレなのかもしれない。知り合いだったら知り合いだったでまあそこは何とか対応しよう。
「各員に伝達。これより救出行動に移る。戦闘配置に着け!」
《《了解!》》
エンジンをかけて、ハンドルを回してローディーの方角に合わせながら道無き道を走る俺。よく見るとその先では既に爆発やら煙やらが立ち込め始めており、どう見てもただ事ではないと感じた。
更に無線通信で入ってくる撃破報告の数々。妖精警戒組だけでなくコレンやアナトリアによる攻撃が行われている。前方に現れた鳥系モンスターを一撃で吹き飛ばしてミンチにしたのもコレン。ちらっと見るとミンチどころか羽しか残ってない。ミンチよりひでぇな。
5分ほどかけて、何とか例の場所に駆けつけた俺達は装甲車から降りて直ぐに周囲のモンスターを撃破しながら進んでいく。
「数は多い。だが、この散弾の雨を避けられるか⁈」
今、俺が使っているのはAA-12と呼ばれるショットガン。装甲車を運転している時に鑑定スキルを起動させて適当なフルオートショットガンを探し、動きやすさを優先する為に通常タイプの弾倉を予め生成して助手席に置いといた。
先にスネークバンダナを巻いておいたおかげで、わざわざドラムマガジンにする必要がない。なのでいきなり二丁持ちして迫り来るモンスターを穴あきチーズにできる。だが、ジャイアント・アントだけは別ものだった。
とにかく視界に入り込んできた敵を撃破しまくっていた俺は、一匹のジャイアント・アントがこちらに突っ込んできた際にショットガンを確実に頭部に当てた。だが12ゲージはジャイアント・アントの甲殻を前には無力だった。貫通どころか跳弾し、弾が跳ね返ってきたのだ。
「12ゲージが跳弾された⁈」
「っ!ご主人!危ない!」
牙で捕まるところを、すんでのところでマグノリアから放たれた銃弾に助けられた。マグノリアの方を見て思い出したのだが、彼女に渡していたのはM82バレットだ。12.7×99mmNATO弾を放つアンチマテリアルライフル。
しかし残念なことに助けられたと同時に、あの蟻野郎の甲殻にはアンチマテリアルレベルの弾薬でなければ破壊不能だということが分かった。
「バレットでチマチマ撃つ暇はない・・・。もうこうなった限り、コイツを使わせてもらうぞ!」
妖精専用兵器の開発の傍ら、こんなこともあろうかと開発しておいた既存の未来兵器。それは2099年に自衛隊によって開発されていた歩兵用対戦車兵器。その名も『99式貫徹炸裂弾』。
敵装甲にAPFSDSのように食い込んでから改良型サーモバリック爆薬を利用した時限式信管が爆発し、内部にダメージを与えるというものだ。
住み分けとしてはグレネードランチャーに属しているのだが、発射機構が専用のものとなっており貫徹力も劣化ウラン装甲4枚を貫通するほど高い。
このような兵器故の単発式・高反動・大口径ではあるが、歩兵用とだけあってアルミ軽量化は抜群。しかも内部構造がシンプルだけに整備性も高い。俺のスキルで弾薬も生成可能。
「吹き飛べぇぇぇぇ!」
片手で99式貫徹炸裂弾砲を持ち上げ、ジャイアント・アント目掛けて放った。ジャイアント・アントは炸裂弾を食らうと同時に空中に思い切り飛び、上空でサーモバリック爆薬で消し炭になった。
俺は俺で無理をしたせいか、反動がデカすぎて後ろへ吹き飛ばされてしまった。それも腕ごと。激痛が走った直後に光が腕の形を形成していき、次第に本物の腕が再生していき事なきを得た。
とりあえず後ろに転がっている99式貫徹炸裂弾砲は、流石に持って使うものじゃなかったな。うん。
直ぐに回収し、アンダーバレルに装着されていた二脚を地面に突き刺して排莢。自動的に弾薬が装填されたところでスコープを覗いて狙いをつける。
《各員に通達。これより俺は援護射撃に移行する。だが一撃の爆発がデカイ。俺の射線上に入らずに相手を倒せ》
《こちらコレン。射線の指示を頼みます》
「マグノリア。やれるか?」
「信号弾?」
「探照灯で。雷撃装甲は俺が展開する。奴ほどではなさそうだからな」
「よく分からないけど・・・お任せあれ!」
俺の射線に合わせて探照灯が照らされ、雷撃装甲をマグノリア含めた半径20mに展開。銃口だけ覗かせて探照灯をマグノリアに照らし続けてもらう。探照灯をつけた時点で分かってはいることだが、こんな行為は『敵さんこちら』と言っているようなものだ。
その代わり、それなりに暗い森だから探照灯の光が分からなくなる事はないだろう。
《こちらコレン。射線視認しました。離脱します》
《こ、こちらアナトリア。り、離脱します!》
《こちらレムレム。視認しました。ローディーと離脱を開始します》
全員が離脱開始したところで、予め固まっているモンスターの集団に狙いをつける。モンスターの集団と言っても、弱いモンスターはいなくなって残った奴らはジャイアント・アントか、それに似た甲殻生物しかいない。
弾薬を完全に薬室にセットし、トリガーに手をかける。引けばいつだって貫徹炸裂弾が放たれるだろう。引けばいつだって敵を倒してしまえるだろう。だが、その瞬間が訪れることはなかった。
その代わり、俺に訪れた運命はとても数奇なものだった。
「邪魔をしてくれるなよ。我が忠勇なる騎士よ」
少しだけ豪華な鎧に身を包み、俺の目の前で敵を蹂躙していくその姿はまさにバケモノ。だがそんなバケモノが俺の知り合いにいたような、いなかったような・・・。
いや、1人だけいた。俺の上司にして一国の王。初めて会った時から強そうなイメージがあった、あの人物。
決して筋肉質ではなかった。だがあの身体から出る覇気だけは・・・本物だ。
「全ては我にアリィィィ!」
「ご主人・・・アレは何?」
「気にするな。ただの俺の上司だ」
見ていて此方も爽快になるなんてことはあまりない。だが王の戦いは爽快だった。
攻撃を食らっても立ち上がり、己の血を撒き散らしながら殴り、吹き飛ばし、倒す。その背中に今は王の肩書きはない。
・・・正直に言わせてもらうと、本当にこの人人間なのか?そりゃ魔法が支配する異世界で亜人とかよくあるけど、見た目完全に人間でしかも正気がある状態で『奴』の全盛期と同じ魔力がある。それも俺の魔力の感覚が間違ってなければ、明らかに魔力を使用していない。あれは殆ど、その肉体からくる純粋な『力』だ。
あれほどの力を持ちながら、何故こんなクエストに参加しているんだろうか・・・。
「む、仕事が欲しいようだな。第六席ハインド・ウォッカ。我の邪魔になる小物を排除せよ」
「はぁ。残業か・・・」
「この前の覇気はどうした?それでも国を覆した反乱兵の1人か?」
「確かにそうですが・・・」
「なら報酬をくれてやる。可能な限りでな」
「援護はします。報酬は要りません」
「よろしい。では、我に遅れを取るなよ」
スコープを再び覗き、周囲に固まっているモンスターめがけて貫徹炸裂弾を撃ち込む。放たれた炸裂弾は、俺の敵意と共に甲殻に侵徹し内部の時限信管がサーモバリック爆薬を爆発させる。
排出される薬莢を後ろに新たな弾薬が瞬時に装填され、薬室に入る。トリガーが引かれ貫徹炸裂弾が敵を爆散し、再び排莢される。
その間、王の一撃が主要だと思われる敵に向かって放たれる。
衝撃波と共に吹き飛んでいくジャイアント・アント。俺はすかさず炸裂弾を撃ち込む。
こんなゲームのような戦法を取っていたが、これがなかなか敵の陣を破壊するのに有効なやり方だったりする。
まだまだ俺の分からないことだらけだな。この世界は。
《こちらローディー!ジャイアント・アントの巨大ワーカーが接近!指示を!》
「ここいらが潮時か。各員に伝達!撤退せよ!繰り返す!撤退せよ!」
「む?帰るのか?」
「これ以上は消耗戦になりかねません。撤退を進言します」
「ふむ・・・。仕方あるまい。今日はここまでにするか」
「マグノリア!ありったけのフラッシュグレネードを出せ!アリどもを混乱させるぞ!」
「いえっさー!」
マグノリアがありったけのフラッシュグレネードをさながらグレネードランチャーのように敵に向けて発射し、俺は爆破数秒前に耳と目を塞げと無線で通知。王にも何とか伝わったようで、背中で少し熱を感じるその瞬間まで、塞ぎ続けた。
6秒後、熱を感じなくなった俺は背後を見る。そこには、閃光にやられたジャイアント・アントと閃光と轟音にやられた他のモンスターが混乱を起こしていた。
今の奴らは音が聞こえず目すら見えない。ジャイアント・アントは蟻なので大した効果はなかったが、その代わりに木の上や他の場所にいたモンスターが同士討ちを始めてジャイアント・アントもそれに巻き込まれる形で妨害を受けていた。
俺はこの隙を逃さずに王を肩に抱える形でその場を離脱。火事場の何とやらが発動したのか、一人で装甲車まで戻りハッチを開けて王を雑にではあるが格納した。
側から見ればやってることはただの拉致に近い。
「各員に伝達!予定ランデブーポイントに集合!とっととこの地獄から抜け出すぞ!」
《飛び乗ってもいいのなら乗りますが?》
「コレンか!構わん!飛べ!」
俺がそう言った瞬間、装甲車の上部ハッチからドゴンと大きな音が聞こえた。嫌な音だなと考えていたら、普通に後ろから声が聞こえてきた。
「あんな無茶をするなんて・・・」
「それが俺だ。多分怒られるが、仕方ない」
「ま、まあ昔からコレン君はこういう性格だし・・・」
「上部ハッチ破損。さて。先生になんて言われるか。ちょっと胃が痛くなってきた・・・」
上部ハッチ破損?装甲車の上部ハッチを飛び降りて破壊して内部に入ってくるとかどうやったんだコレンは?
つかどうやってあの狭いスペースにアナトリアを入れた?人工妖精のレムレムとローディーはともかく、人二人分も入れる隙間なんかあったか?
・・・深追いは止めよう。この世界に俺のいた世界と同じ物差しを使っちゃあ駄目だ。ここは魔法が支配する地。科学じゃできないことが出来る。
その後、何の問題もなく森からの脱出に成功した俺達はギルドに戻ることにした。
あと、休憩している時に王に貸し借りという名の口止めを食らった。ギルドで彼が王であることは公言してはならない。それとさりげなく闇属性の魔法であるという変装魔法を使って子供の頃から世話役を騙していた過去も教えてもらった。
この王様とは、何だかこれから先もずっと仲良く行けそうな気がした日だった。
次の更新は5月20日を予定しています!




