デブリーフィング
1日遅れての投稿です!申し訳ありません!
ダイニングで鳴り響く食器の音。
今日の昼食は異世界には無いと思っていたカレーライス。俺のラノベ知識による展開予測なんてアテにならなかった。
しかも俺が作るより明らかに美味い!市販の安カレールーがゴミのようだ!
「この市販とは違うスパイスの配合!野菜の甘みと見事に協調している!2日間寝かしておいたであろうカレー独特の旨味!野菜の大きさ!肉の量!あらゆる面でこれほどの完成度を誇るカレーを食べたことなど俺には無い!しかもこのターンで舌の抹殺コンボが完成しようというたった一度のチャンスに・・・俺の隣に料理長を召喚したというのが⁈」
「いますが。何か?」
カレーが美味すぎて作り方を教えてもらうためにわざわざ厨房から料理長のユアンさんに出てきてもらった。
来たばかりの時、手伝いをさせて貰っていたのだが、格好と髪型が女性か、男性か判別がつかなかった。分からないほど中性的で、アニメのような美顏だったからだ。
その時は結局分からなくて、自分で自分を誤魔化してた。でも何回も見てると気になって仕方ない。
で、思い切って聞いたら女性だと笑顔で答えてくれた。髪が長ければ女性と分かっていたんだけど、料理人である限りは難しい。
「神の料理人か・・・⁈」
「当たり前だ。ユアンは王都が開いている料理選手権を5連覇した猛者。そこらの料理人とは格が違う」
「伯爵様。そこまで私は大した者では・・・」
「そこは普通、嘘でも見栄を張るのだよ」
嘘でも見栄を張る、か。
見栄を張る、ということを知らないことは時に自分を過小評価することに繋がる。あまり自分を信じていないと、あとで迷いが生じてしまった時に優柔不断になる。
人間とは傲慢である。だが人間は、その傲慢さ故に自信を証明することが出来る。道を示し、歩き、後世に何かを残せる。
何と愚かなことか。まさかと誰もが思うだろう。己が傲慢により、他人に認められていることを。
なんて、俺らしくないな。
こんな哲学臭い人間にはなった覚えなんぞ一秒たりともない。ゼロコンマ数秒ならあったかもしれないが。
「それにしても・・・いつ食べても飽きないものだな。このカレーは」
「先代のレシピを参考にしていますが、やはり先代のカレーには程遠いのです・・・」
「誰もが同じ味など作れんよ。料理とは、個性が出る。このカレーこそが、君の味だ。と、何回言えば分かるのかね?」
「申し訳ありません・・・」
「む、そういえばハインド君」
「なんです?」
「王都に報告には行ったのかね?」
「報告?あぁ・・・ヤッバ、してねぇ!ユアンさん!ちょっと王都に報告だけしに行くんで、戻ったらカレーの作り方教えて下さい!」
「はい。いつでも大丈夫ですから、お早く」
カレーを平らげて部屋に戻り、洗面台で歯を磨いてから屋敷から出た。
出たのはいいのだが、足がなければ王都に行けない。ということを道に出てから気づいた。
「落ち着け俺!落ち着いて素数を数えるんだ!」
2.3.5.7.11.13・・・待て。素数を数てる場合なんかじゃない。
今はとにかく王都に行くための脚を探さないと。
とは言ってもKLXは絶賛故障中だし、73式トラックシリーズでも悪くはないんだが・・・人混みに行くわけだから四輪より二輪の方がいいんだよなぁ。
前回みたいにお呼ばれされてるわけでもないし。
「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない!バイクがないなら己の足を使えばいいじゃない!つーわけで動力は自分!生製品はアメリカ軍の空挺部隊用折りたたみマウンテンバイク!名前は忘れた!」
他の自動車などと違い、ものの数十秒で生成されたマウンテンバイク。
ペレなんとかっていう名前だったような気がするが、忘れたことはもう気にしてはならない。
ペダルに足をかけ、一気に王都へとこぎ出す。自転車とはいえ、そこはマウンテンバイク。あまり舗装されてない道でも速さを失わずに安定した走りを見せてくれた。
また思い出してしまうな。あの学校の懐かしい日々を。
遅刻すると思って全力でいったら日曜日だったり、平日にガチで遅刻だったから学校に突っ込む勢いで行ったら途中、信号無視の車に轢かれて自転車が中破したけど何とか学校に行ったり。
あの時は頭から血が流れてるのが分からないまま学校に向かったから、担任も俺を見た時は絶句してたのを今も覚えてる。
「そういえば中破で思い出したけど轢き逃げされたの忘れてたわ。もう二度と会わないだろうけど」
代役の俺が信号無視に轢かれないことを祈りながら道をスイスイと走っていくマウンテンバイク。
周りにいる滞在中の冒険者達は俺の自転車を見て変態を見るような目だったが、気にせず王都までノンストップで走る。
途中、輸送用の馬車や行商人とすれ違いつつ、体感で40分かけて王都に到着。自転車はパクられても困るので魔力化しておく。
公爵の勲章を門番に見せて城へと入り、前回伯爵と俺が歩いて玉座に行った道を辿る。
玉座の間に着くと、そこに王の姿はなく白髪で髭の生えた爺さんがいた。
「報告、かね?」
「はっ!ハインド・ウォッカ公爵、任務を遂行してまいりました!」
「よろしい。では口頭で報告せよ」
「はっ!」
リビングデッドの任務で起きた事柄を全て爺さんに話す。
ルーメルの元お抱え占い師。その目的、最期。シラルで発生してしまった被害や問題点。兵士の魔法使用許可について。
これらだけに限らず、経費や請求書の申請から全て任務において出てきた関連性があるものは全部一字一句漏らさずに報告した。
「以上です」
「この報告は私から王に伝えておく。ハインド公爵殿。私は左大臣のククルス。以後、覚えていてくれると嬉しい。すぐ忘れられるのでな」
「はっ!よろしくお願いします!しっかり覚えておきます」
「うむ。それと君に追加報酬と休暇を出したと王からの伝言を承っている。財政管理室に向かいなさい」
「はっ!失礼します!」
玉座の間から出ていき、財政管理室へ向かう。
が、結局迷ってしまったので中にいる近衛兵に話しかけて財政管理室にまで案内してもらう羽目になった。
やっぱ勝手気ままに動き回っちゃあダメだ。昔デパ地下で試食だけで夕食済ませたら変なところ行ってしまって1時間迷った覚えしかない。
報酬金と給金を貰ったら次は騎士団の申請室に案内してもらい、コレンとリリスの登録証書を作ってもらった。ついでにハインド騎士団の設立証書も作り、登録しておいた。あとで証書を渡しておかないとな。
近衛兵と世間話をしながら廊下を歩いていくと、一人の女性がいた。
その女性の胸には俺と同じ、公爵専用の勲章が飾られて真ん中の絵は花輪飾りが描かれている。
「あの・・・」
「・・・誰?」
「俺はハインド・ウォッカ。貴方と同じ公爵です。よろしくお願いします。失礼ですが年齢はお幾つですか?」
「13歳・・・」
「俺より年下ッ⁈お名前は?」
「ユキ。ユキ・ファロンスト」
「ファロンストさん。これからよろしくお願いします」
「・・・同じ。あなた。私と同じ」
「は?」
「私、風。あなた、雷。よろしく」
「え、あ、はい。よろしくお願いします」
よく分からないまま握手して彼女は何処かへと行ってしまった。
不思議に思って近衛兵に聞と、元ユーロン出身の冒険者で誰にも分からない魔法を使い、その魔法というのがまた厄介らしい。
それは”音を絶つ”という魔法。通り名はシャットアウター。
まさにシャットアウトという言葉に似合うあだ名だ。
真空状態にするのかどうかは俺もさっぱり分からないが、少なくとも使いようによっては凄い魔法になる。
敵の連携を阻止する。足音を消す。竜に乗る、いわゆる竜騎士がいるんだとしたら翼の音を消して上空から音もなく攻め入ることができる。
ただ、こんな魔法が彼女だけしか使えないということより最期に言っていたことが一番気になる。
『私、風。あなた、雷。よろしく』
「俺は確かに雷だけど・・・『私、風』?得意な魔法のことでも言ってんのか?」
どんなに考えても分からないので、財政管理室で追加報酬と通常の給料を皮袋で受け取り何も考えずに城を出た。
自転車を再び生成し、ゆっくりとしたスピードで屋敷に帰った。
いつもPV・ユニーク、ありがとうございます!
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