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フラグブレイカー

俺は見えてる物がゆっくりに見える事を二人に話した。


「それは身体強化の一種でいいんですよね?」

「そうだにゃ。」

「じゃあついに洋平殿も身体強化が出来るようになったのですね」

「頭だけだにゃ。戦闘では使い物にならないのにゃ。」

「それを他の部位に移動させれればいいのですが」

「まぁ特訓あるのみなのにゃ。」


セリーヌとアイヴィが話とまとめている。どうやら俺は頭の身体強化が出来たようだ。厳密に言うと思考能力の強化とか処理能力の強化だと思う。一歩前進したのは間違いが無い。


「でもあの変な動きは説明出来ませんよね?」

「よーへーは気持ち悪いにゃ」


どうやら俺が読書をしている時の話のようだ。アイヴィに聞くと俺が本を読んでる動きはものすごい勢いでページをめくっているらしい。それが早く同じ動きを繰り返すので、気持ち悪いらしい。俺は本を読むのが好きなので今まで1万冊は読んでいる自信がある。マンガを含めるともっとだろう。

今までの話を整理してみる。俺は魔力操作をし頭の身体強化には成功している。これはもう自在に出来る事実だ。しかし体が思うように動かない。ついてこないのだ。しかし、読書をしているときは凄い速さでページをめくっている。ということは無意識のうちに腕の身体強化も出来ているということである。だが狙ってやろうと思うと出来ない。それは何故か。意識の違いか。もっと明確なイメージが必要か。指先なら力をあつめようとする事は出来る。体内の魔力は動かすことが出来るのだ。しかし指先が光るまでには至らない。精神力。つまり体の魔力が多すぎて制御出来ないのだ。ではなぜ頭は出来るのか。


「なるほど。そうゆうことか」


俺は一つの結論に至った。


「アイヴィさん。ちょっと実験に手伝って下さい。」

「はい。喜んで」


二人揃って家から出る。セリーヌも着いてくる。


「見ててくださいね。」


俺は歩き出した。湖の周りを一周する。そして戻って来た。


「どうだった?」

「凄い!出来てますよ!」

「気持ち悪いにゃ」


だろうな。競歩を超えてるだろう。アイヴィが抱き付いてきてるのを無視して俺は話を続ける。


「とりあえず今はこれくらいしか出来ません。コツは掴めたんで後は応用ですね。これは慣れるまで時間がかかりそうです。」

「とりあえずアイヴィ離れるのにゃ!」


俺が何をしたのか説明しよう。俺が読書をものすごい速さで出来るのは単純に慣れだ。体が動きを覚えているのだ。慣れている動きの中で集中をする。いつも通りにやるのだ。読書は集中力を結構使う。だから出来た。歩いたのも慣れだ。歩くことは人間にとって毎日行っている行為の一つであり、体がそれを覚えているのである。俺にとっての読書と同じ事だ。何度も繰り返した動き。それが身体強化の秘密なのだ。慣れない動きをしようとすると体の動きが鈍くなる。滑らかに動く、それに合わせて魔力も動く。至極単純な事だ。なんども繰り返した動き。意識しなくても出来るような動き。そのなめらかさが必要だったのだ。

歩く事を繰り返す中で一つの事に気が付いた。腕も振って歩いている。腕も出来ている。これは足だけでは無い。体全体を身体強化しているのだ。徐々にコツが掴めてきた。多くの魔力を使おうとすると爆発する。今は満足に使う事が出来ないが、それも慣れだろう。今はなるべく自然体で出来る動きしか出来ない。力を込める動きが難しいのだ。慣れていない動き。例えばパンチとかキックだ。今の俺には出来ない。


俺がこのセリーヌの家に来てから三週間が経った。俺はめまぐるしい成長を見せていた。身体強化によって走れるようになったのだ。頭と足が出来た。それによってキックも出来るようになった。パンチはなかなかうまく出来ないが日常生活レベルの事なら自然と身体強化を出来るようになった。コツはリラックスすることだ。余り他に力を入れない。自然体でいると身体強化もやりやすい事にきづいた。そしてまた新しいイメージを発見する。伝達能力の強化だ。頭に意識が常に集中しているので。頭、脳か。脳から手足に出す信号を強化するような感じだ。伝達能力の強化によって反射神経と動体視力が強化された。

特訓の方もメニューが変わった。午前中に剣術の稽古と体術の稽古。アイヴィやセリーヌとの組手も毎日やる。アイヴィは寸止めしてくれるのだが、問題はセリーヌだ。俺は頭と足が特に魔力操作しやすいので、セリーヌの攻撃ですら当たる気がしないと思ったのだが。セリーヌは早い。俺が身体強化しても目で追えない速さを出せるのだ。それに慣れようと徐々に力の入れ方も増えていってる。だが毎日殴られる。殴られるとアイヴィが治癒魔術を使ってくれるのだからいいのだが。アイヴィは治癒魔術はあまり得意ではないらしい。直接触れないと使えないし痛みは引くが血は止まらない。一応風系統の魔術だ。火系統の治癒魔術もある。もちろん水と土にもあるのだ。

午後は俺の授業。現代科学について俺の知っている情報を二人に教える。シルバーの原理をセリーヌは完全に理解したようだ。しかしガソリンが無いとエンジンが動かないので、魔術で爆発させるような構造を作り動かせるようになるのではないかという議論が出された。魔道具の一部。俺のリューター等は緑色の魔法石がはめてあり、魔力を込めると動くのだがこれは単純な魔道具では無く魔法石に込められた魔術を魔法陣で制御しているということらしい。シルバーを動かすことが出来るようなエンジンの代わりになる魔道具をセリーヌは開発しようとしている。この頃にはドライバーとスパナも作っていてシルバーをちょこっと分解もしてみた。

俺の創造も順調だ。元々読書よりも創造作業の方が身体強化が先に出来ていたみたいなので。こちらの作業も急ピッチで行われている。まず石を真っ二つに割る。そして中をくり抜き溝を作り二つを合体出来るようにする。そしてくり抜いた中に小さいモンスターを入れる。これでガチャガチャの完成だ。中に入ってるのは俺が作ったオリジナルモンスターだ。まぁ丸いスライムみたいなやつなのだが。この世界のスライムは居るかわからないが、このキュートなスライムは居ないだろう。あとはマトリョーシカ的なものも作ってみた。石だけでこれだけ創造出来るなんて、俺はやはり創造師だ。

その日の夕食の時、セリーヌが切り出した。


「そろそろよーへーもギルドの依頼をこなさないといけないのにゃ。」

「おぉ!ついに!」

「もう8日程で期限が過ぎるのにゃ。」

「まじか!まぁ一日一個やればランクは上がるか。ポータルストーンでちょちょいっと行ってやってきますね?」

「ポータルは貸さないのにゃ」

「え?」

「歩くのにゃ」

「馬車で5日かかったんですよ?」

「それは遅すぎだにゃ。三日もあれば余裕で着いてたはずだにゃ」

「歩いたら8日じゃ足りませんよ」

「じゃあ走ればいいのにゃ」

「無茶な!」

「僕は行けると思うが、アイヴィはどう思うかにゃ?」

「私も歩いても1日で洋平殿はつけると思います。」

「アイヴィさんまで・・・」

「今回はアイヴィも一緒についていくのにゃ。」

「お!アイヴィが居れば100人力!」

「アイヴィは洋平が町に着いたらすぐに帰ってくるのにゃ」

「わかりました」

「Eランクになってくるのにゃ。Bランクにならないとアイヴィと一緒に依頼を受けれにゃいから、頑張るのにゃ。」


そうやって俺はついにギルドの仕事をすることになったのだ。

次の日の朝俺はアイヴィと一緒にセリーヌに見送られながら家を出た。持ち物は少ない。一日で行ける距離なので昼食の弁当と作った石と作業用道具位しか俺は持っていない。一週間も創造をしないと腕が鈍りそうというのと、余り身軽でもよくないと思った見栄だ。あとはアイヴィからもらった剣だけだ。アイヴィは道案内役と護衛だ。モンスターも出るので、危なくなったら手を出すらしい。危なくなったらだ。つまり基本一人でモンスターを倒せと言う事になるのか。途中でポグに出会った一匹だ。アイヴィに聞くと群れから離れてちょっと凶暴になってるらしい。俺はゆっくり剣を抜きポグの前に出た。ポグも俺を確認し手に持った棍棒で襲い掛かってくる。が、遅い。俺は剣を両手で持ち思いっきり袈裟に切り抜いた。ポグが肩から二つに裂け倒れる。


「ポグを倒したら男として認めてくれるんだっけか?」

「洋平はもう十分強いですよ。ポグじゃ相手にならないでしょう。」


その後もポグを何体か倒しながら先を急ぎ昼食をとることにした。


「依頼ってどんなのがあるんですか?」

「Fランクだと犬の散歩とかですかね」

「楽勝じゃん。」

「今の洋平ならすぐにでもBランクになれる実力はありますよ」

「そしたら一緒に仕事が出来るんですね?」

「そうですね。頑張って下さい!」


よし!決めた!俺は頑張る!愛の為に!!


「ところであとどれくらいで着くんですかね?」

「まだ半分も来てないですね。午後はスピードをあげますよ。敵も無視していきましょう。」


どうやら俺がポグとの戦闘を楽しんでるので時間を食ったらしい。午後は頑張る!


「ふぅふぅ」

「お疲れ様でした」


やっとウィンストハイム城下町に着いた。辺りはもう暗くなろうとしている。アイヴィマジで早すぎる。


「ではこれを」

「これは?」

「この世界のお金です。銅貨が100枚と銀貨が1枚入っています。滞在費に使ってください。」

「わかりました。ありがとうございます。」

「あとはこれも渡しておきますね」


と言ってポータルストーンをもらった軽く念じるとセリーヌの家が浮かんだ。


「帰りは自力で帰って来いって言ってましたけど。もし道に迷ったら使ってください。私も8日で戻らなければ探しに行きますので、なるべく心配させないでくださいね」


そう言ってアイヴィは来た道を戻ろうとする


「アイヴィ!」


と言って俺はアイヴィの背中に抱き付く。


「必ず戻る。心配するな。」

「・・・はい」


といってアイヴィに背中を向け町へ入って行く。ちょっとかっこつけすぎたか。でもまぁこれでフラグは立っただろう。このまま振り返らずに町に消えれば完璧だ。

と思いながら振り返る。アイヴィが居た。俺が手を振ると振りかえしてくれた。もう振り向かないぞ!俺はアイヴィの為に頑張る!それを二度三度繰り返した。フラグが折れる音がする。



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