真美の彼女心*おまけ2
匠の身体の温もりにドキドキしながら、何を言われるのかとヒヤヒヤもしてしまう。
「あのね、内緒の話にしても近すぎない?」
離れようとすると、匠の腕の拘束が強まる。
「まぁちゃん…。あんなに必死に探したのに嫌がらないでよ。」
匠が私の耳に触れるか触れないかで低く囁き耳裏をゆるゆる舐めあげた。
「ん…。」
身体がビクリとして小さく声が洩れてしまう。
「こんなにまぁちゃんが好きなのに、どうして俺が悪魔であいつらが天使なんだ?」
そのまま、耳元で低く囁き続けられた。
それか!すっかり忘れていました。
顔を赤くして耳を手で抑えて匠から少し離れた。
「あの…。だって、手紙の事でたっくんが私が恥ずかしくなるような事ばっかり言うから。」
「あの時は、恥ずかしがってるんじゃなかっただろう。
それより、まぁちゃんが勝手に一人で誤解して自滅して取り乱して泣いた方が恥ずかしくない?あんな手紙書くくらい俺の事を好きだったくせに。」
私の忘れたい過去に触れるな。
厳重に包んで封をして、箪笥の奥底の服の下にしまってある手紙の事まで思い出すじゃないか。
いたたまれずに、匠の胸を手で押して逃げようとした。
「そんな事をしていいのか?今から、またあの手紙を暗唱しようか?まだ全部覚えている。」
甘い響きの嫌な言葉にピタリと動きを止めた私。ゆっくり匠を見上げると、そこには甘く微笑む悪魔の匠がいた。
こんな予定は私には無かった…。私を心配してくれただけの匠だから、お弁当を食べたら帰ってもらうはずだったのに…。
怒っている訳じゃなさそうなので、ヒヤヒヤは無くなりお願いしてみる。
「暗唱はしないで欲しい…です。手紙は誤解のせいだから。」
「じゃあ、まぁちゃんからキスして?」
「え?なんでそうゆう事になるの?
誤解は、たっくんも悪いって謝ってくれたじゃん。」
「まぁちゃんに、悪魔呼ばわりされて俺は傷ついたなぁ。桜ちゃんには、魔王とまで呼ばれるし。天使のような俺の繊細な心は、ボロボロになりそうだよ。悪いと思うなら、なぐさめて欲しいなぁ。」
驚く私に、悪魔の匠は大袈裟に白々しく言って大きな溜息まで落とした。
人前で視線を集めている事を分かっていながら、私が恥ずかしくなるような事を堂々とハッキリ話した、悪魔の匠。
可愛い高田さんをブス呼ばわりして、混雑する改札口で魔王になった、匠。
そんな匠の心が繊細で、私が悪魔と呼んだくらいでボロボロになりそうになる訳がない。ましてや、天使な訳もない。今も意地悪な悪魔に見える。
けれど、どこにいるか分からない私を皆をまとめて、探し続けてくれてくれた。息を切らせて、大きな騒ぎになる前に私を見つけ出してくれたのも匠だ。
偶然、佐藤さんに会えた事もあるけれど…。
私の知らない所で高田さんと決着もつけてくれていた。
いつも、私の事を考えてもくれているとは思えた。
少し考えて視線を匠に戻すと、悪魔じゃなくて少しだけしゅるんと眉を下げた匠がいる。
「一回だけなら…。倉庫の事といつものお礼込みで…。」
途端に匠は、嬉しそうな顔になった。
「目はつむっててね。」
私の言葉にすぐに匠が目を閉じたので、深呼吸をしてゆっくり匠の綺麗な顔に近付け唇をそっと触れて離した。
「まぁちゃん?俺を焦らして遊んでる?」
半分目を開けた匠は、不満そうな顔をしている。
「遊んでない。あれが限界だよ。」
やっぱり、頬じゃ駄目か…。
いいじゃないか、私は初心者なんだから。
「ちゃんと俺の口に、まぁちゃんの唇でして。待ってるから。」
私が限界じゃない事がばれていたらしく、腕と身体の温もりが離れ匠はベッド座り目をつむっている。
本当ち待つの?
どうしよう…。
匠は、じっとそのままの姿勢でいる。私は、諦めた様にゆっくりと匠が広げた足の間に立った。
いつもは分からなかったけど、匠の睫毛は長いんだ…。
匠を見下ろし余計な事を考えながら、少し震える手を匠の頬に添える。
いつも匠にキスをされる時よりも、大きく胸がドキドキしてしまう。自分からキスをする恥ずかしさで、自分の顔が赤くなっていくのも分かる。
ゆっくり顔を近付け、掠めるように匠と唇を合わせ顔を離す。すると、匠に両腕を私の腰に回された。
匠は目を閉じたまま、切なそうにねだられる。
「もう一回…。」
ドキドキしながらも、素直にさっきより少しだけ時間を長く唇を合わせ離す、私。
「まぁちゃん…。まだ、足りない。」
そのまま、薄く目を開いた匠の片手が私の後頭部に伸びて来て私を引き寄せる。私は、バランスを崩しそうになり匠の両肩に手を置いた。
「まぁちゃん…。」
艶めいた顔の匠は、私を見上げ優しいキスを何度も繰り返して、そのままベッドの上に誘導させて仰向けに寝かせた。
けれど、うっとりしそうになっていた私は、それに慌ててしまう。
「あのね…。」
今日は、そんなつもりが私には無かったので身体を起こそうとした。匠は、もう私の上にまたがるように乗っいて、私の浮いた肩を優しくベッドに押し戻した。
「キスだけゆっくりさせて。絶対に最後まではしないから…。」
そんな事を艶っぽい声で言われても緊張するし、お腹のお肉も気になってしまう。女の子として何の用意も出来ていない。
一番に心の準備が出来ていない。
「いや…ちょっと。無理無理無理。」
首を横にふり、片手は匠に繋がれていたので自由な手で匠の胸を押して抵抗した。
匠の胸に置いた私の手を、強く握りベッドに押さえつけた、匠。
「キスだけでもゆっくりさせて…。脱がさないし、まぁちゃんが嫌がる事はしないから…。」
私の方に身体を倒してきた匠は耳元で甘く囁き、ゆるゆると耳を舐める。そして、瞼や額や頬にくすぐったくなるようなキスをあちこちに降らせてくる。
キスだけならいいかな…。
そう甘く私が流されかけると、何度も唇を食まれ匠の舌先で舐められる。私が息苦しさで薄く開いた唇から匠の舌が入り込んできて、逃げる私の舌をやすやすと捕まえ絡め、すり合わせるようにしながら深めはじめた。
今まで、匠と深いキスは何度かした事があった。けれど、ベッドの上で楽な姿勢での匠のキスは、今までのキスは遊びだったのかと思うくらいだった。
私は、そのキスに夢中にさせられてしまい、だんだん身体に力が入らなくなってきていく。
匠の手がそっとワンピースの上から私の胸のふくらみに置かれただけで、身体がピクッとしてしまう。
「少しだけ触っていい…?」
もしかして、このまま…。
不安が過ぎりはじめた私に匠は、何かに耐えるような顔をしてハッキリと言う。
「最後まではしない。触るだけ。」
何か答える前に、匠が胸の手をゆっくり動かし始めた。匠から目が離せない私の様子を伺いながら、動かされる匠の手から起きた刺激にビクリと身体が動いた。
「…ん。」
小さく声が出たのが恥ずかしくなり、目の前の匠から顔を反らした。
「可愛い…。まぁちゃん、大好き。」
胸を触わりながら、匠が掠れた声で耳元で囁き耳や耳裏を何度も音をたてながら舐めるので、背中に何かが走り声が漏れてしまう。また、声が出そうになるので、耳をかばうように顔を匠と向き合わせた。
すぐに匠は、私に唇を寄せ舌を絡み合わせてくる。ワンピースの裾からは、少し冷たい匠の手が入り込んできて脇腹や背中をそっとなで続けている。
唇は離されて、赤らむ顔を匠から背けても言葉は出てこず、身体をよじるだけの弱い抵抗しか出来なかった。
匠の片手は下着の上から胸の先を撫でるように軽く優しいはずなのに、私は与えられ続ける始めての緩い刺激から逃げられずにいた。
もう片手は脇腹や足を下から上に撫であげていた。そちらに気を取られていたら、フッと胸の締め付けが無くなり私の胸に匠の手が直に軽く触れる。
「ちょっと…もう無理…。」
身体をよじっても匠に、上擦った声で言われた。
「まぁちゃん…。もう少し触るだけ…。可愛いくて、たまらない。」
妖しい吐息交じりの匠の言葉に顔がますます赤くなり何が言い返えそうとした間に、大きな手が私の胸を包み込みゆっくりと撫でていき軽く揉まれ弄られはじめる。
匠の深いキスや、耳元で囁かれ舐められるのも、あちこち触られるのも、私は恥ずかしい。
なのに私は何度も、身体をピクッとさせたり、声を小さく漏らしながらも匠の手を軽くしか止められない時間を過ごしていた。
その時、携帯の着信音が鳴り響く。
初め、私は何の音かわからなかった。しばらくして着信音と気が付き、急いで匠から身体を離した。
匠に背中を向け、匠以外に誰に見られている訳でもないのに、自分の服と髪の乱れをだけを慌てて直し、ローテーブルの携帯に手を伸ばすと着信音が止まってしまう。
「あ〜あ。もう少ししたかったなぁ。」
後ろから聞こえた匠の残念そうな呟きに、顔を赤らめながら履歴から電話をかける。
「も、もしもし?」
電話は、母からで後一時間程で家に着く。あと、私の心配とお風呂の用意をしておいて欲しいとの内容。
電話を切り携帯を握りしめると大きな溜息が出た。
どうしよう…。さっき…私も残念なような気がした…。
「まぁちゃん?」
急にまた恥ずかしくなった私の後に、足で囲むように匠が座り抱き寄せられた。
「たっくん…。一時間でお母さん達帰って来るって。」
手にある携帯を見つめたまま呟いた。
「そう…。じゃあ、触れるだけの約束を頑張って守ったからキスさせて…。まぁちゃん。俺の方に向いて…。」
抱き寄せられたまま匠に後ろからの言葉に、私も匠の方を向いてしまい深く長くキスをした。
そんな甘い時間がたつのは早いもので、時計を見て別れの名残惜しさに負けないように、匠に帰るように言った。
「まぁちゃん。好きだよ。いつか最後までしようね。」
玄関まで見送りにいった時に、匠は普通の様子で微笑み、私が赤くなるような言葉と一緒に頬にキスを落として帰っていった。
一人寂しく寒いお風呂で掃除しながら、部屋で慣れた様子で余裕のある匠の態度に気が付いた。
それも、匠の過去の彼女達とあんな経験があるからなのかと思うと、仕方ないと思いながらも、悔しさや嫉妬や寂しさが少しずつ混ざりこんで上手く割り切れなかった。
もし、あのまま続いてたら…。
あれは、ゆっくりキスとか触るだけのレベルじゃなかった気がする…。
明日、どんな顔してたっくんに会えばいいんだろう…。
結局、一人でまた想像力を豊かに膨らませてしまい、顔を赤くして急いでお風呂の用意を済ませた夜だった。




