クリスマス
とある友達達とのお昼休み。
クリスマスの話題になった…。
普通にお仏壇に手を合わせお経に馴染んで育ってきたのに、何か心がウキウキするクリスマスシーズン。
今までは、彼氏彼女と子供がやけに色々と盛り上がるのだと思っていた。いない私には無関係だった話。
好きな人もいなかったし、私とクリスマスを過ごしてくれる彼なんて夢の夢だと思っていた。
イヴはだいたい、家族と過ごしたり友達と軽食パーティしてケーキ食べてプレゼント交換して楽しんでいたし。
それが普通と思っていたけれど、彼氏とゆうのが出来た今は何かした方がいいんだろうか?
妙に落ち着かない、私。
この前の匠のお宅訪問で
「クリスマスかイヴはデートしよう。」
そう言いだされて約束した。
イヴは土曜日、クリスマスは日曜日。そして、普通のお付き合いの初デートになる。
とりあえずプレゼントは用意した。
私は、バイトもしていないので誰かに相談する余裕もないくらい資金が少ないので、あちこち見て周り買ったマフラーにした。
ほぼ毎日一緒に登下校している匠の首周りが寒そうで気になっていたから。
けど…。
「真美ちゃん。クリスマスどうするの?」
「…みんなは?」
「お昼の友達と誰かの家に集まろうかって話してるよ。パジャマパーティも今年は出来るしね。」
いいなぁ…。
去年もみんなで集まって楽しかった。クリスマスの盛り上がりにケーキに楽しいおしゃべり。
ぜひぜひ私も。
「いいなぁ。私も行きたい。」
「無理だよ。谷沢くん燃えてたもん。」
なぜキッパリ無理と言い切るんだ、桜ちゃん。
匠が燃えてるなら小悪魔桜で消火して落ち着かせてよ…。
「なんで無理って…。」
「デートでしょ?谷沢くんが、あれこれ考えてたもん。真美ちゃんがどうしたら楽しめるかオロオロしてたよ。」
いつもの三人とミキさん達とお昼を食べる匠に目線を送り、私を見てニッコリ笑う桜ちゃん。
「クリスマスにデートなんていいなぁ。」
誰かが楽しそうに、うらやましそうに言うけれど私は、デート自体した事がない。
前回のデートは、賭けの事で頭が一杯だったから悲しい事に参考にならない。
それが、実質初のデートがクリスマスになり、テレビや雑誌の情報に思い切り振り回されていた私は、ただで緊張してオロオロしていた。
それが匠もオロオロしながらデートに燃えているらしい。
前回のお宅訪問で、匠が私を好きでいてくれるらしい事はわかった。物好きだ。
私も匠が好きになっていたので気持ちは伝えたつもりだ。
キスをされて部屋の隅に逃げて距離をとったまま…。
あの手紙を何故書いたか聞かれた流れから…。
「なんでこの手紙を書いたんだ?」
「あの〜。私、賭けと決めて本当の付き合いを、期限内にしたら勝ちと決めたじゃないですか。
だから、あの手紙で嫌われたら谷沢くんも変な同情もなく振りを止めて別れられて、私も振りをされて辛くないので良いかなと思いまして。」
誤解はもう嫌なので思いきって顔をあげて、小さなテーブルに頬杖ついた匠を見て言った。
「あの…お試しの途中から賭けとか関係なく好きになっての手紙です。今では疑いも無くハッキリ好きですよ?」
言い切って顔を隠していたら、気が付いたら目を光らせた匠が近くにいて距離を縮めようとしてきた。
「近い。近い。近い。連絡先いらないの?」
なので、卑怯にも携帯をチラつかせて気をそらせた。自分で思い出しておきながらため息が出る。
「ほら。幸せ逃げるよ。吸い戻さなきゃ。」
桜ちゃんの声に思いっ切り息を吸い込みむせた。
匠が好きだけど、匠の勢いについていけず、飲みこまれてしまいそうで怖かった。
そうゆう事は、まだ先に進みたくない。
匠とは好きになった時期が違うからだろうか…。
気持ちの大きさが違うんだろうか…。
好きは好きだけど、迫る匠に追い付けない気がする。
考えてもわからないまま、クリスマスで周りはラブラブに盛り上がり更についていけない私がいた。
そんなこんなの匠と二人の帰り道。
今日は、匠の家でCDを借りて帰る事になっていた。匠の家まで行き、ドアを開けると匠母が玄関まで来た。
「あら、まぁちゃん。いらっしゃい。」
「お邪魔します。」
匠の家は、この前のお宅訪問以来だ。匠母の顔を見て「良かった。」と思った、私。
「部屋に行くから。」
そうゆう匠に手を引かれ、バタバタと部屋に入っ途端緊張する。
「適当に座ってて。何か持って来るから。」
匠が部屋を出てほっとした。
一ヶ月以上の期間に二人きりには、何回もなったのに…。手も繋ぐのにも慣れてきたし、頬にキスも少しずつ慣れてきた。
けれど部屋となると話しは別だ。
はぁ…。どうしよう。
「まぁちゃん。俺の部屋でなに落ちこんでる。」
耳元で囁く匠の声に身体がビクゥとした。
クスリと匠は笑って立ち尽くしていた私の横を通り過ぎ、テーブルお茶を置いた。そのまま、手を引かれて一緒に座る。
なぜに気配を消して入ってくる…。いけない…。
よし。楽しい事を考えよう。
美形と言われる程の整った顔の匠にハゲずら被せて、レンズに怪しい目を書いてある眼鏡をかけさせて、チョビヒゲ書いて頬にも赤でグルグル丸を書いて…。
よし。
俯いて考えて少し緊張が解けたので、顔を上げると不思議そうに私を見るキラキラの匠。
ちっ。私の想像ぶちこわしじゃん…。
はぁ…。
「まぁちゃん?」
「CD見ていい?」
匠の近くにいる緊張に堪えられそうにないので、質問に質問を返し返事も待たずにズリズリ四つん這いでラックの方に行く。
「まぁちゃん。パンツ見えそう。ギリギリで残念。」
谷沢くん。そうゆう時は見て見ぬ振りをするものだ。
私だって乙女。恥をかかせてはいけない…はず。
慌ててスカートの後ろを押さえて正座する。
じっと私を見てニヤニヤ笑う匠を見返していたら、じわじわ顔が赤くなってくる。
「そ、そんな言い方しなくても良いじゃん。」
「ん?じゃあ、スカートもう少し短くしなよ。」
「足が太いのに出来る訳ないじゃん。」
「そんな事ない。この前のミニスカート似合ってた。俺、大好き。」
「そうですか…。ミニスカートが好きな事はわかりました。」
適当に返事を返して匠に背を向けラックを見る。
もっと痩せて可愛かったらミニスカートをはけたかもしれない。ミキさん達みたいに…。なんで匠は私なんか好きなんだろ。
目についたCDを手にとり見てる振りをして、猫背で暗く考えていたら背中に温もりとお腹に長い腕が二本ぎゅっと回りる。
うわぁっ。
これは、誰にも知られたくない秘密のプニプニのお腹なんだ。あばいちゃいけない乙女の秘密なんだぁ。
腕の中シダバタしてたら、私の頭に多分頬で擦り寄る匠。
「ん〜。良い匂い。気持ちいい。」
柔らかな声まで降っててくる。
だんだん顔が赤くなってきたので、匠の腕を外すそうと手をかける。
「まぁちゃん。やっぱり可愛い。好きだよ。」
「可愛くないし。どこがいいの?」
常々の疑問がこぼれ出し、ピタリと匠の動きが止まり頬が離れ少し固い声が降ってきた。
「どこって…。まぁちゃんは、もしかして俺の外見が好きなのか?」
匠は美形だと思うけど小さな頃から見慣れていた。母の入院中支えてくれたり、私を気遣かってくれた辺りから意識し始めた。そして、いつの間にか好きになっていた。
すぐに首を横にふる。
「俺にとって、まぁちゃんは可愛い。好きなのは、まぁちゃんだけ。
いっつも誰かをさりげなく助ける所も。一緒にいて癒される所も。俺の顔ばかり見ない所も。どこがって聞かれてもわからない位。全部が好きだよ。」
「でも…。」
私の手の中を匠の手が摺り抜けていき、私の隣に向き合うように立て膝で座った。
「まぁちゃんは俺のどこが良くて、いつ好きになってくれた?」
「…わからない。いつの間にか…。」
俯く私は聞かれて素直に答える。
どこが?とかいつ?とか考えてもわからなかった。
「だろ?どこが何がなんて分からない物なのかもな。小さい頃から知ってるし。
俺が誰と付き合うかは、俺が決める。それで俺は今のまぁちゃんが良かった。特別なんだ。」
ストンと匠の言葉か胸に落ちて顔を上げた。じっと微笑みながら見つめられる。
「そうなのかぁ。ありがとう。」
今の私が良くて、特別とまで言って貰えて嬉しくて自然と笑顔になれた。
すると、匠が私の耳元に顔を寄せ囁いた。
「俺の方がきっと、まぁちゃん好きだけどね。」
その一言に妙な色気を感じてしまい、ズザッと身体を引いた。
「逃げなくても良いだろ。」
足を延ばしお尻の後ろに手をついた、私の両側に匠が手をつき笑みを浮かべ跨がりのしかかる様に近づいてくる。
そして、匠が私の頬に唇を寄せた所で自分を支える腕が痛みに負けて背中を床についてしまった。
そのまま匠は切なげな眼差しを私を見つめ、唇に優しいキスを何度もしてきた。
「まぁちゃん…。」
うっとりしかけて匠をじっと見ていたら、だんだん顔が近付き唇を寄せられヌルリと舌が入っきて絡め取られてしまう。しばらくすると匠の手がまた胸の下辺りを動きはじめる。
もう無理…。怖い。
ペシッと匠の腕を叩くと脱力した私から離れてくれた。
そして、私の隣に寝転び抱き寄せられる。匠の胸がドクドク早く音を立てるのを聞いて、匠もドキドキしてるんだと分かって少し落ち着けた。
「まぁちゃん。俺、進学しても近くにいられるように頑張るから。言われたようにスロゥにもするから。だからキスはさせて。」
そんな言葉を聞いて突然思い出した。
「嫌。ダメだよ。こんなの。」
素早く匠から身体を離し座って、手で髪を整える。
いきなりの私の行動に匠の眉がシュルっと下がり身体を起こした。
「嫌か…。」
「だって下におばさんいるし。ダメだよ。」
情けない顔していた匠が急に笑い出した。
「なんで笑うの?」
少しムッとして聞くと
「いない。飲み物取りに行った時、まぁちゃんにご馳走作るって買い物に飛び出してった。おばさんに了解もらう電話もかけとくってさ。」
おばさんの料理は美味しい…。けど、いて欲しかった。
けどキスだけなら…。
「ちゃんと、まぁちゃんが嫌じゃなくなるまで待つから。まだ時間あるから少しだけ…。」
私の心を見透かした様に少し掠れた声でそう言いながら匠は私を抱き寄せ、私に何も考えられなくさせるキスをくれた。
そしてその後、匠を見るのが恥ずかしくなりCDを選ぶ振りをしている私の後ろからは、匠の呟く円周率が聞こえ続けた。
全然クリスマスじゃなくてすみませんでしたm(_ _)m




