ミキさんの告白1
高校一年の春に匠達と同じクラスになった。
仲良くなった皆と一緒に遊ぶようになった中にいたのが、端正な顔立ちに頭もいい目立つタイプの匠。
好きになるのに時間はかからなかった。
更に、一年一緒に遊んでわかった事。
見かけだけの人じゃなかった。
性格も盛り上げたり、皆を引っ張りするのに、さりげなく優しい。
時間がたつにつれ、もっと好きになっていた。
匠は告白されて、彼女が出来ても短いサイクルで終わっていた。
浮気や二股とかじゃなく、だいたいが匠が振られるらしい。
「あの人が私を好きでいてくれてるかわからない。」そう友達の友達が友達に話してるのを聞いた。
真相はよくわからないけど、私から見たら匠は彼女が出来ても友達を優先させてた。彼女がいても一人で、時には彼女と一緒に友達達と遊んだりしてた。
そんな彼女は、だいたい徐々に不機嫌になっていって別れてた。
けれど女の子達は毎日のように噂する。
昨日、匠達と遊んだの。
彼女じゃないと匠が二人で遊んでくれない。
あの子と別れたって。
匠と長く付き合いたい。
あの子、気に入らない。
など噂や話題はつきない。
そんな高校二年の秋頃に気が付いた。
匠がいつも見てる誰かに。
匠の目線の先には、サラサラの黒髪にメイクもしてない、ぽっちゃり地味な佐藤さん。そんな佐藤さんを遠くから見ている匠は、いつも目元を和らげている。
我慢ならなかった。
私は、メイクに髪型や体重や制服に私服、勉強は無理だけど匠が私を見てくれて好きになってくれるように頑張ったり気をつけていた。
匠と付き合えば人に悪く言われるのは避けられない。
けど匠が好きだから、少しでも近くにいたかった。
一番の女友達と匠は言ってくれる。
けれど、そこから出ようと何度も匠に身体と気持ちを寄せてアピールしていた。
気持ちは伝わっているだろうけど、友達から出さないとでもゆう様にかわされ続けてた。
そんなある日、匠が佐藤さんと、その友達と登校するようになる。
それから女の子情報はすごかった。
朝は手を繋いで、駅から三人で登校。など、すぐに色々な噂が駆け巡る。
事実、匠と佐藤さんが一緒にいるのをよく見かけるようになった。
どうしても負けたくなかった。
私の方を見て欲しくてお昼に匠を捕まえて遊びに誘ってみた。
けれど、私と話している今も、また匠は佐藤さんばかりを見ている。我慢ならない。
匠の目線を遮るような位置で聞いてみた。
「佐藤さんがそんなに気になる?最近、噂になってるし。」
やっと匠が私を見てくれた。けれど、私を見てしばらく考えて出てきた匠の言葉は残酷な物。
「近くにいてほしいとても大事な子なんだ。だから無理。断ってばかりでごめん。」
振られた。告白もする前に。わかってしまった。
ただ、「佐藤さんが気になるんだ。」の一言やごまかしでもすむはずなのに、告白も出来なくさせる匠の言葉。
そんな、匠の前に居たくなくて、捨て台詞を残して立ち去った。
立ち直るのに時間はかかった。けど、アピールは悔しくてやめられずに減らしたけど、諦めは出来なかった。
匠達と話が前の様に少しずつ出来るようになった頃、佐藤さんを観察してみた。
匠が佐藤さんに近付くと、話をして佐藤さんから離れる。
お昼も、匠より他の人との方が多い。
匠と一緒にいても、皆の話しで笑って匠に話しかけられて、何か答えて皆と笑って話すくらい。
帰りはいつも匠が誘い、戸惑う佐藤さんの手を匠から繋ぐ。
匠の視線の動き、表情、佐藤さんに近付きたい匠。
どれだけ好きか伝わってくる。
見れば見るたび、佐藤さんが嫌になった。出来る事なら佐藤さんみたいに、私の事を好きになって欲しい。
匠への想いはまだ消えてなかった。
そんな頃、放課後に違うクラスで友達と話して、喉が乾いたので一人自販機に行った。
横のベンチに誰か座っている。佐藤さんだ。
考え事をしているのか、俯いて人が自販機の前に立っても気が付かない。
話したりした事もない佐藤さん。
何もしなくても私の好きな匠に好かれてる佐藤さん。
いくら頑張っても匠の友達以上になれなくて、告白する前に振られたようなものの私。
嫉妬丸出しで酷い言葉をぶつけてしまった。
「あなた匠と不釣り合いすぎ。身の程しらずね。」
お金を入れながら放った私の言葉に、私を見た佐藤さんは、どこかぼんやりしてた。
けれど、ジュースを拾いあげて佐藤さんを横目で見たら、何故かすがるように私をじっと見ている。
酷い言葉をぶつけた私なのに。
後味の悪さを感じたけれど、それを気取られないように佐藤さんの視線を無視して背筋を伸ばし立ち去った。
翌日の土曜日、匠とショッピングモールで偶然会えた。
それが嬉しくて、友達と一緒に匠に纏わりついていたら聞こえた。
「匠。お待たせ。」
誰かが匠を呼ぶ声。
よくよく見ると佐藤さん。
いつもと違う緩いウエーブに、前より痩せて少しスッキリした顔に最低限のメイクもしている。
服までも頑張っている。
「悪いけど、もう行くから。せっかくのデートの邪魔しないでくれ。」
そんな佐藤さんをまじまじ見ていたら、匠が腕を離し佐藤さんの横に行った。
「なんで?」
デートだから行ってしまうのは当たり前なのに、思わず口から出る未練たらしい問いかけ。
「俺が付き合ってる子だから。じゃあ、また学校で。」
笑顔だけど、佐藤さんを守りたいのか尖る声で匠が答えた。
「あの匠の彼女があの子?やだ、信じらんない。」
友達がプリプリ怒りながら話すのを聞きながら歩き始める。
俯いたまま匠に手を引かれる佐藤さんの小さな背中が、自販機のベンチの佐藤さんを思い出させた。
そんな週も明けた月曜日。
匠と佐藤さんのデートに遭遇してからも、また失恋した気分に立ち直れなかった。
今も匠の近くで友達でいられるのは嬉しい。
けど、やっぱり自分の気持ちをちゃんと伝えないと、自分で気持ちの整理がつかない…。
自分の諦めの悪さにため息をつきながら、教室に向かう廊下に匠の友達の青井、柳、松山と佐藤さんがいる。
あの三人は佐藤さんと話たり、匠と佐藤さんの二人のお昼にも乱入してたりした。
通りすぎようとした何気ない光景に聞こえた匠の声に足が止まる。
「そう、普通に付き合う事になった。
そもそも、ここまでこじれた元と言えばお前らだ!
あの時、お前らが教室に来たから真美が変な誤解したんだ!」
匠の友達三人に珍しく険しい顔で噛み付く勢いで言う匠。
けど、隣にいる佐藤さんは、匠に嫌そうな顔を向けている。
普通に付き合う?
こじれた元?変な誤解?
匠の言葉は佐藤さんの為みたいなのに、なんで嫌?
昨日、会った佐藤さんも頑張っている外見とは違い、決して楽しそうには見えなかった…。
失恋の事を考えていたのに、聞き慣れない言葉の意味の興味に負けて状況に飲まれてしまう。
「え?だからちゃんと話せって言ってたろ?ただでさえ噂や絡まれたりで、まぁちゃん大変なんだからって。」
「お前が情けないだけだ。誤解させた上にお試し期間なんて貰っておいて、余計誤解させたままギリギリまで話さないし。」
「そうだよね。まぁちゃんに信用されなかったのも、匠の告白に問題あったんじゃない?もしかして、付き合おうの一言で終わりなんて馬鹿してないよね?」
匠の信用のない告白で、何かこじれの元があってまぁちゃんに誤解させた。
お試し期間があり、匠といて噂や絡まれたりしたまぁちゃんの誤解を匠が解けなかった。
けど、やっと普通に付き合うようにやった。
匠と佐藤さんに交互に目を向けながら予想を立てた。
訳わからないけど、匠を責めてる三人になおも言い返してる匠の隣で、佐藤さんが胸で祈るみたいに手を組んで頬染めてウットリして三人を見上げてるから、多分正解?
周りに人が増えはじめたのに佐藤さんか気付いて慌ててる。
子供みたいな匠達の笑える言葉の投げ合いをしてる匠達に佐藤さんが割って入った。
「あの…」
匠達が言葉を止めた
「青井くん。今日は桜ちゃんとお弁当だから無理なの。ごめんね。明日、ちゃんと持ってくるから良かったら柳くんと松山くんと食べて。三人ともありがとう。良かったら谷沢くんも。じゃあね。」
三人に笑顔を向けて、その場を離れるまぁちゃんを止められない匠。
あぁ…。むなしい…。
今日は、匠とまぁちゃんがムカつくくらいラブラブなら、嫉妬出来たり諦めつくかもと思ってたのに…。
結局、付き合ってても匠に厳しい佐藤さん。
やっぱり告白したい。綺麗サッパリ振られたい…。
朝からまた、失恋気分を深めながら複雑な気持ちで教室に入る事にした。




