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「さてと。帰りますか。これで賭けも大丈夫だよね。」
自分の言葉に自分で何を言ったか気が付き、思わず口を手で押さえた。
「何それ。どうゆう事?」
私の勢いでポロリと出た言葉を聞いた匠の目が細まっただけなのに、楽しかった今までの空気までもがガラリと暗く重い物に変わり言葉を出しにくくなる。
「話してくれない?」
口から出てしまった言葉は、戻す事は出来ない。悔やんでみても遅すぎた。
ごまかす言葉を探してみても、慌てている私の頭に浮かんでくる訳もない。
匠が何でそんなに怒るかわからなくなり、昨日から開き直り白状してしまった。
「何か大事な事を賭けてあるから私なんかに告白して、お試しまでつけたんでしょ?」
何でも無いような振りで普通に聞こえるように言ったら、匠の眉が見る見るうちに下がり情けない顔になった。
「違う。そんなんじゃない。」
「もう、本当にいいから。そんな事を言うのやめて。」
ピシリと返した。
もう、振りを続けて欲しく無かった。諦められるように賭けの事を匠の口から言ってほしかった。
けれど、悲しげに言った匠の情けない顔を見たら、その言葉を信じてしまいそうになるので視線をすぐに外す。
鼻の奥がツンとしてくる。
頑張れ私。計画をダメにしたら何にもならない。
「だから…」
匠が始めた言い訳すらも聞きたくなく、気持ちが揺れないように自販機を見ながら話し続ける。
「あの朝、初めに聞いても否定しなかった。ずっと聞けずにいた私も悪い。
けど、教室で賭けの話をしてたのを聞いたの。匠いってたじゃん。勝つって。今日が期限で勝負で本当に付き合えば勝ちなんでしょ?」
今日一日は、最後だから楽しく過ごして匠が賭けに勝つように付き合う告白をすると決めていた。
「まぁちゃん。俺は…。」
なおも悲しげな声で話そうとする匠に、蓋をしていたものが一気に吹き出し言葉をまた遮る。
「だから!こんな私を相手に嘘の告白して付き合う振りを一ヶ月も続けられるくらい、頑張る大切な賭けなんでしょ?
少しでも本当に付き合ったから匠の勝ちじゃん。ギリギリだけど良かったじゃん。
これから私なんかじゃなくて、釣り合う綺麗な可愛い本当に好きな女の子と付き合えば良いでしょ!」
噂話や呼び出しで更に卑屈になっていた私は、自分の自信の無さを言葉だけじゃなくバックの中から手紙を出して押しつけてぶつけた。
そのまま帰ろうとしたら、匠に腕を捕まれ足を止め向き合わされる。
その足元には手紙。
付き合いを申し込んた数時間後に別れを告げるのは、理由はどうあれ残酷なもの。匠の顔を見て言う度胸は、いつまでたっても出なかった。
けれど、携帯番号もメアドも知らない。別れ際に渡そうと思い何度も書き直して書いた、別れを告げる内容の匠に嫌われるように気持ちを込めた手紙。
それを見たら止まらなくなった。もう、私はこれ以上に辛くなるのは嫌だった。
「お願いだから。もうこれ以上、疑ったり賭けに振り回されて付き合うの本当に無理。ごめん。もう私を賭けに巻きこんで遊ぶのやめて!」
「真美!」
腕を振り払おうと動いた途端に怒鳴られ、捕まれた腕に更に匠の力がこもる。男の人に怒鳴られた事も無い私は、ビクッと体がすくみ動きが止まった。
「お願いだから…。頼むから話しを聞いて。」
さっき怒鳴った声は泣きそうに変わっていて、捕まれたままの両腕に伝わる匠の力が痛みになり私は少し冷静になれた。
匠はそのまま深呼吸をして掴む力をゆるめ、屈んで私と目を合わせてきた。
「ちゃんと落ち着いて聞いて。真美を好きな気持ちに賭けも何もない。嘘じゃない。絶対に俺は真美にそんな事をしない。」
無言の私の目を強く見て、一語一語ゆっくりと話し続ける。
「何で誤解したかは知らないけど、真美に告白する前からこれまで賭なんて物は絶対に存在していない。もちろん、これからも。」
匠の言葉が頭をグルグル回る。
嘘だ。
誤解?絶対に存在しない?どうして?ちゃんと聞いたのに…。
「教室で奴らとしてた賭けの話は、俺が二回目に告白した時に真美が賭けか罰ゲームかと聞いてきた事を話てたから、ちゃんと誤解を解いたのか聞かれていただけ。
本当に誤解。賭けなんて存在しない。」
どうしても今まで聞く事も出来ず、頭から疑いが消え去らなかった賭け。
その時間は私の中では長く、最後に賭けも存在した。
なのに、その賭けを匠は誤解と存在しないと何度も繰り返し話す。
匠の言葉を信じたいはずなのに、混乱した私にはどうすれば良いのか分からなくなってきていた。
「けど…だって…。」
信じたくない訳でも無いのに、口から出る言葉は匠の言葉を疑う。
「なに?ちゃんと言ってみて?」
さっきより優しい声で匠に先を促される。そうされても、小さく途切れがちにしか聞けなかった。
「今日が期限…勝負だって…。勝つって…。」
「今日の初のお休みデートで真美が喜ぶようにして、一緒に楽しんで、いい雰囲気にして落ち着いてちゃんと告白。
この一日と告白が俺の勝負。
もう三回目だから弱気にもなるだろ?勝負のつもりにでもならなきゃ出来そうになくてさ。
真美にOKを貰うってゆうのが勝つの意味。期限は、今日までのお試し期間の事。
わかった?まだ何かあるなら言って?」
優しくゆっくり話されてきた匠の言葉の数々に、だんだん私の勢いも力も頑張りも抜けてきていて、涙がにじんでくた。
そんな私の背中を匠がゆっくりと優しくなでる。
「じゃあ…一人で賭けって誤解して騒いでたって事?私って凄い恥ずかしい奴じゃない…。」
震える声で言ったら、こぼれ始めた涙を微笑みを浮かべた匠の指先で拭われ言われた。
「そうだね。けど、初めに誤解させて今まで解けなかった俺の方が、もっと恥ずかしい奴だよ。
本当にごめん。誤解なんかさせて。」
言葉と共に抱きしめられ涙が止まらなくなる。そんな私の背中を黙ったまま匠がゆっくり撫でてくれていた。
「こんな俺だけど、真美を好きな事に絶対に賭けも嘘もない。お試しじゃなくて付き合ってくれる?」
その言葉には、もう頷くしかなかった。
「言っておくけど他の女の子と付き合いたいなんて事は、カケラも思ってないから。」
拗ねたように言われて頬にキスをされ、匠の胸に抱きしめられ服を濡らし続けた。
いつも読んでくれてありがとうm(_ _)m
次がまたドタドタして最終回になります。




