13
どうしよう…。
その言葉だらけの夜でも自然と朝はくる。
無理にご飯を食べて用意を始めた。
桜ちゃんに教えてもらって練習した髪も上手くできて嬉しくなる。ちゃんと用意も出来た。
11時にいつもの玄関の外に匠が迎えに来てくれる。時間の10分前に家を出たら匠がいた。
「おはよう?」
返事がない…。
毛先がクルンとした緩やかウエーブの髪に、胸元が深めに開いたニットとミニスカートに可愛い感じのコート。
薄手のタイツにブーツ。
お洒落の好きな桜ちゃんが選んでくれた服。少し痩せたし変じゃないよね…。
慣れないメイクもファンデとアイラインとグロスだけだし。練習もした。やっぱり変だったかな…。
匠をちらりと見るとカジュアルな服装で制服の時より格好よく見えた。
頼む。何か言ってくれ。
「なんかびっくりした。いつもと全然違う。可愛い。」
よしっ。良かったぁ。桜ちゃん、ありがとう。
「いつも家でジーンズにトレーナーとかだもんね。服とか桜ちゃんが選んでくれたの。」
軽く腕を組む。
「え?」
「行こう。」
戸惑う匠を促し歩く。今日は、ちゃんと頑張るんだ。
駅前のファーストフードでお昼を済ませ、駅でバスに乗りショッピングモールの中にある映画館に着くと、お昼にたくさん話をしてしまい予定の映画は始まっていた。少し遅くはなるけど次の上映時間を待つ事にした。
時間もあるので、ショッピングモールを手を繋ぎブラブラ歩く。
少し雑貨が見たくて私が匠と離れた時だった。
「匠じゃない!きゃあ。偶然。」
嬉しそうな女の子の声が聞こえてきた。
見れば匠の腕に纏わり付くミキさんとその友達。
「匠がいつまでもあんたの相手してる訳ないだろうけどね!」
「あなた匠と不釣り合いすぎ。身の程しらずね。」
悪意を固めた言葉が蘇り、胸を深く突いた。手にしていた雑貨をそっと戻し、匠達の方に歩き負けるものかと名前で呼びかける。
「匠。お待たせ。」
匠が勢いよく振り向き、私に気が付いたミキさんと友達に睨まれ顔が強張りそう…。嫌よね。
「悪いけど、もう行くから。せっかくのデートの邪魔しないでくれ。」
スルリとミキさんに取られた腕を離し私の横にくる匠。
「なんで?」
「俺が付き合って子だから。じゃあ、また学校で。」
切なそうなミキさんの問いに、いらついたような声ながらも笑顔の匠が答え手を繋がれる。
「ごめんなさい。」
誰にも聞こえ無いような小さな声で言い私は、匠に手を引かれ歩いた。
「ごめんね。まぁちゃん。」
「なにが?全然大丈夫。たっくん、もてるね。」
微妙な空気のまま着いた映画館。上映が始まっても全然あたまに入らない。ただ悲しいシーンに周りも泣いていて、怪しまれずに涙を流せて助かった。
映画のエンドロールも終わり外にでると冬の夕暮れ時は過ぎて暗くなっていた。
広場に大きなツリーが飾り立てられて点灯している。
「すごく大きいな。」
見上げた匠が嬉しそうに言う。今日は、初めて匠の顔をしっかり見た気がする。
ツリーを見上げても、違う時なら綺麗に見えるだろうに今の私には全くそう見えなかった。




