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異世界転移したら、地球を所有してました。その裏で、地球では大騒動が始まっていた。  作者: りどみ


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『異世界特番 1』

 土曜日の朝。

 テレビでは、昨日の政府会見を受けて急遽組まれた特別番組が放送されていた。


『改めて振り返りますとこの数日間、本当に色々なことがありましたね』


 スタジオには司会者と、ゲストの専門家たちが並んで座っている。


『異世界の存在が確認され、実際に調査団が現地へ。そして昨日の会見で、異世界との往来にはスキルを持つ田中愛子さんの協力が必要であることも発表されました』


司会者が隣の専門家へ視線を向ける。


『さらに本日正午には、異世界の国王陛下との公式会談が行われる予定です』


『……いやあ』


 ゲストが小さく息を吐いた。


『改めて聞いても、ファンタジーですね』


『本当にそうですね』


 司会者も苦笑を浮かべる。


『私も昨夜から何度映像を見返していることか。正直、情報量が多すぎて嬉しい悲鳴です』


『情報量が多すぎる?』


『はい。町の構造、衣服、食文化、文字、言語、さらには実際の生活の様子まで。たった数時間の映像の中に全部が詰まってるんですよ』


『なるほど……』


 専門家が苦笑した。


『もう徹夜です』


『徹夜ですか、それはそれは』


『中でも特に興味深いのが、田中さんと現地の方々のやり取りですね』


 司会者があぁと応じる。


『何故か言葉が通じている、不思議なアレですね』


『そうです、あれは本当に不思議です。田中さんのスキルによるものなんでしょうが……そうなるとスキルとは一体何ぞやという話ですよ。ただただ興味深いです』


『……こうして聞いていても、やはりファンタジーですね』


 専門家が小さく笑う。


『本当に、この数日で私たちの常識がいくつもひっくり返りました』


『はい。そして今日、さらに大きな一歩があります』


『異世界の国王陛下との公式会談ですね』


『ええ。歴史的な一日になると思います』


 司会者が頷きカメラを見据える。


『では、ここからは改めて、昨日公開された異世界の映像を振り返っていきましょう』







 スタジオのモニターが切り替わる。


『調査団が異世界の町を歩いている場面ですね』


 画面には、石造りの建物が並ぶ通りが映し出された。

 行き交う人々。いくつもの屋台。見慣れない道具や商品。


『こうして見ると、本当に普通に町なんですよね』


『ええ。外国の観光地のようです』


『そして、こちらが昨日からSNSで大きな話題になっている……』


司会者が振ると、停止画面に獣耳の人物が映る。


『いわゆる獣人の方、ですよね?』


『現時点では、そう判断するのが妥当でしょう』


 専門家が画面を指差す。


『尻尾らしきものも……わずかに確認できます。ただ、ほんの一部しか映っていません。これだけでは、どの動物の特徴に近いのかまでは判断が難しいですね』


『なるほど』


 司会者が頷く。


『ちなみにSNSでは、「猫なのか犬なのか」で大論争になっているそうです』


『……なるほど』


専門家は真顔で頷いた。


『次は、もう少し鮮明な映像が欲しいところですね』


『えーー続いてはこちらです』


 ソファに座り、空を進んでいく調査団と田中愛子の映像。


『いやぁ、ものすごい絵面です』


 スタジオに小さな笑いが起こる。


『これが異世界で魔道具と呼ばれている物です』


『これを見てまず驚くのは、操作の簡単さですね』


 専門家が映像を見ながら頷いた。


『座って、いくつかのボタンを操作するだけ。方向転換や高度の調整も、かなり直感的に行っているように見えます』


『調査団の皆さんも、すぐに乗りこなしましたよね』


『ええ。普通なら、空を飛ぶ乗り物には相応の訓練が必要です。ところがこれは、初めて乗った調査団の皆さんでも、すぐに操縦できている』


 専門家が画面を指差す。


『しかも航行自体かなり安定しています。上昇するときも急激な揺れがありませんし、飛行中の姿勢も崩れていない』


『たしかに、乗っている方も余裕がありますね』


『はい。つまり、操縦する側に高度な技術を要求しないよう、魔道具そのものが飛行を補助している可能性があります』


『なるほど』


『ただ――』


 専門家が少し考えるように画面を見つめた。


『肝心の飛行原理については、映像だけではまったく分かりません』


 画面では、ソファが悠然と空を進んでいる。


『私たちが現在扱っている仕組みとは大きく異なるでしょうね』


『なるほど……魔法、という感じなんでしょうね』


 専門家は苦笑した。


『実物を見れるなら徹底的に調べたいですね。浮力や推進の仕組みだけではなく、操作系統、素材、エネルギー源まで調べたい』


 専門家の目が、真剣になる。


『特にエネルギー源は気になります。日本はエネルギー資源の多くを海外からの輸入に頼っていますから』


 専門家は一度言葉を切った。


『もし、この魔道具を動かしている仕組みを理解できれば、将来的には別の分野への応用も考えられるかもしれません』


『エネルギー技術にも?』


『ええ。もちろん、すぐにどうこうできるという話ではありません。ただ、日本にとっては研究する価値の非常に高い技術だと思います』


『なるほど。空飛ぶソファが、日本の未来を変える可能性もある、と』


『……そこまで言うと少し大げさですが』


 専門家が苦笑する。


『可能性の一つとしては、十分に面白いと思います』




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