地球Side未知
正午、政府から各報道機関へ一斉に通達が入った。
『本日午後六時より、政府から重大な発表があります』
ただそれだけだった。内容についての説明は一切ない。
それから数時間、各テレビ局の報道部は慌ただしく動き続けていた。
デスクの前で、若い記者たちが資料を抱えたまま呟く。
「重大っていうくらいだから、相当な事ですよね」
「昨日から関係各所に緊急招集がかかってますし。しかも官邸に入った関係者、まだほとんど出てきてないんですよ」
報道部長は腕を組み、考え込むように眉を寄せた。
「……官邸の出入りも明らかに増えている。周辺の警備も妙に慌ただしい」
「何か、大きな動きがあるんでしょうか」
「……田中愛子絡みというのも有り得るな」
報道部長は壁の時計に目を向けた。
午後四時。発表まで、あと二時間。
「……よし」
報道部長が顔を上げた。
「今日のトップ、全部空けろ」
「ぜ、全部ですか?」
「そうだ。何が来ても対応できるようにするぞ」
「分かりました!」
スタッフたちが一斉に動き出した。
会場には国内外の報道機関がひしめき、無数のカメラが壇上へ向けられている。
午後六時。政府による緊急記者会見が始まった。
永野官房長官が壇上に立つ。フラッシュが一斉に瞬いた。
「結論から申し上げますと――」
官房長官は、静かに会場を見渡した。
「日本政府は明日午前十時、田中愛子氏が滞在している異世界へ、五名の調査団を派遣します」
「「「…………」」」
場が静まり返った。誰も、すぐには反応しなかった。
「……今、何て?」
記者席の一角から、呆然とした声が漏れる。
「……異世界?」
「異世界って、あの異世界?ファンタジーな?」
「はい?ちょっと待ってください。今、何の話を……?」
「いや、そもそも田中愛子氏と連絡が取れたのですか!?」
ざわ……ざわ……。
会場のあちこちで声が上がり始めるも記者たちは互いに困惑した顔を見合わせる。誰もが同じことを考えていた。
――政府は何を言っているんだ?
だが、壇上の官房長官はいたって真剣な表情をしている。
「繰り返しになりますが、田中愛子氏は現在、地球とは異なる世界に滞在しています。日本政府は、御本人との直接の接触を通じて、その事実を確認いたしました」
その瞬間、会場が一気に沸騰した。
「それは異世界が存在しているということですか!!」
「本人と直接やり取りをしたというのは、具体的にどのような!?」
「異世界から、どうやって政府に接触したのでしょう!?」
「いや、待ってください! 人を派遣するんですか!? 異世界に!?」
「そもそも、どうやって異世界へ行くのですか!?」
「派遣する五名は、もう決定しているんですか!?」
「何を基準に選ばれたのでしょうか!?」
「安全性は確認されているんですか!?」
無数の質問が飛び交う。
しかし、官房長官は動じない。騒然とする記者たちを見渡し淡々と告げる。
「これは、日本政府としても初めての試みとなります。したがって、現地で何が起こるのか。どのような環境なのか。安全が確保されるのか。現時点では、詳しいことは分かっておりません」
会場の誰もが黙って耳を傾けている。
「だからこそ、慎重な対応が求められます。異世界の環境を調査し、必要な情報を収集するスペシャリストです」
その言葉に、何人もの記者が頷く。
「選定にあたっては、それぞれ異なる分野の専門家を選びました。現地での調査だけでなく、万が一の事態にも対応できるよう、十分な準備を整えています」
そこで官房長官は、静かに前を向いた。会場の空気が張り詰める。
「それでは、異世界へ向かう調査団の五名を発表します」
官房長官が手元の資料へ視線を落とした。
「まず一人目――
明日、日本人五人が、未知の世界へ向かう。
お盆で気疲れです……(´Д`)




