最終話 「脳・悪玉キング6」
アナタは『自分の体の中を冒険した』ことがありますか?
ドドドドドドド……
凄まじい爆音と、凄まじい衝撃が、辺りを包む……
たもつとメンバーは? そして悪玉キングは……?
煙が晴れる……
立っていたのは……たもつだった。
地面に降りた悪玉キング、ガックリ腕をつく
背中の漆黒のオーラでできた腕が、グズグズになり、空中に霧散していく
その顔は、さっきまでの若々しい顔ではなく、老人の様な顔に……
たもつが、ゆっくりと悪玉キングに近づく
「悪玉キング、やっぱり相当無理をしていたんだな。
さっきまでの凄まじい威圧感が、今はもう微塵も感じられない」
ヨレヨレの悪玉キング、震えながら口を開く
「たもつ、お前が日に日に健康になっていったおかげで、我の力はどんどんと弱まっていった……我の望みを叶えるには、今しかなかったのだ。
だが、それももう後の祭り……我の……負けだ……」
「やったーーーーっ!」
たもつの後ろから、メンバーたちが駆け寄る
「たもつくん、よくやってくれた!」
「ボクは信じてましたけどね」
「たもつさん、さすがです!」
「お、俺ってそんなに凄い……?
ま、まあね、ほら、俺って伝説の『最高のヒーロー』だからさ、これくらいチョチョイのチョイだよ、ナーハハハハ!」
その時、たもつのおしりに激痛が!
「イダダダダダーーッ!」
ピンクがたもつのおしりをつねっている
「まったく、すぐ調子に乗るんだから!」
「そんなぁ……」
「あはははは……」
悪玉キングが、たもつのそばに
「この戦闘で我は敗北した、勝者はお前だ……さあ、我を『消滅』させるがいい」
悪玉キングは目を閉じ、覚悟を決める
「悪玉キング……俺は、お前を『消滅』しない」
「なに!?」
「たもつくん?」
「お前も俺の体の一部だ。
それに、俺は知っているよ、お前が、体に悪さをするだけの存在じゃないってことも」
『悪玉菌』……
『大腸菌』『ウェルシュ菌』『ブドウ球菌』などと呼ばれる、体内に元からいる常在菌。
増えすぎることで、腸内で有害物質を産生したり、自分たちが住みやすいようアルカリ性にしようとする。
でも実は、肉や脂肪などの動物性たんぱく質を分解して、再利用したり、便として排泄する役割も持つ。
「お前も、俺の体からいなくなって、ゼロになったら困る。
要は、『善玉菌』『悪玉菌』、そして『日和見菌』が、バランスよく存在するのが一番いいんだ」
「たもつくん、その通りです!」
グリーンも感激して、コクコク頷いている
たもつは、膝をつき、悪玉キングと目線を合わせて話す
「悪玉キング、お前の言った通り、『愛』で腹は膨れない、『想い』で飢えは凌げない、『奇跡』で不幸は止まらないかもしれない」
「たもつくん……」
「でも、『愛』で人は笑顔になり、『想い』で人は繋がり、『奇跡』で人は変わることができる。
これから先、これを忘れなければ、人間もいつか必ず変わることができると、俺は信じている」
「『笑顔』と、『繋がり』と、『変化』か……」
「今は確かに、人間たちは食べ物を粗末にしたり、健康に気を遣わない人も多いかもしれない。
でも、俺が変われたんだ、きっかけがあれば人間もきっと変われる」
周りで話を聞いていたメンバー達も、全員頷いている
「俺が『手本』になって、俺の周りの人たちから、少しずつ変えていくよ。
だから悪玉キング、俺が調子に乗って、また健康状態が悪化したら、お前が俺を諫めてくれよ」
「フッ……わかった、お前の好きにするがいい」
たもつは、そのまま、空を見上げる
「善玉キングも、それでいいよな?」
「……この体は、たもつくん、キミの体だ。 キミの思うがままに」
善玉キングからの念話が入る
「よし、これで一件落着だーーーーっ!」
*****
〇――
『善玉菌』VS『悪玉菌』……
召喚され、『異世界転生』だと思ったら、実は自分の体の中で、
糖尿病になりかけている自分の体を救うため、『味覚戦隊デリシャスファイブ』とともに戦う……
誤解から始まった、この冒険も、こうして一つの区切りを迎えました。
もしかしたらこれは、たもつの『妄想』、もしくは本当に『夢』だったのかもしれません。
でも……『想像』してみてください。
アナタの体の中で、アナタの『デリシャスファイブ』が、アナタのために、今日も戦っているということを。
ほら、聞こえてきましたよ――
〇善玉キングの城――
「よし、みんな今日もよろしく」
たもつとメンバーが、善玉キングの城から出てきた
薬味ちゃん、醍醐味くん、カルシウムナイト、アレルポーンが送りに来てくれた
「回復はバッチリです」
「メンテナンスもバッチリでごわす」
「バフもかけたでござるよ」
「遠くへ行くときは声をかけてYO~」
たもつとメンバーは、4人に手を振り、先へ進む
「よーし、今日も頑張るぞー」
「たもつくん、張り切っているねー」
「今日は何を食べたんだい?」
「ずっと我慢していたハンバーグ! うまかった~」
「強敵だな」
「なーに、私たちなら大丈夫さ」
話している最中、たもつとメンバー達の前に、大量の『食材モンスター』が!
「ブヒッブヒッ……」
「クエーーッ!」
「来たな……みんな、行くよ!」
「おう!」
「テイスティング!」
ジャキィーーーーンッ!
全員、ヒーローに変身!
「かかってこい、食材モンスター、『消化してやるぜっ』!」
……今日もたもつの体を守るため、
戦え、デリシャスファイブ!
進め、デリシャスファイブ!
◇今回の健康カルテ
体重: 68キロ→64キロ
BMI: 23・3→21・5
血圧: 150/98→130/82
中性脂肪: 220→185
LDL: 180→161
HDL: 31→34
尿酸値: 8・0→7・2
γ-GTP: 189→176
血糖値: 140→121
ストレスレベル: 高め→良好
END
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。
この後、また違うジャンルのラノベを執筆予定なので、この「異世界転生だと思ったでしょ?」は、いったん完結とさせていただきます。
次、余裕ができましたら、『ワルオ編』、『タカオ編』、『あいり編』なども書いてみたいと考えています、よろしくお願いいたします。




