第1話 「コンビニの豚丼弁当」
一日目
アナタは、『異世界転生してみたい』と思ったことはありますか?
剣や魔法を使ったり、モンスターを倒して経験値を手に入れたり、
もしくは、異世界のヒロインと恋に落ちてみたり……
ここにも一人、そんな『異世界転生』に憧れる青年が。
「平 均{たいら たもつ}」、35歳、男性。
日本のごく平均的な、中肉中背の、普通の青年。
一人暮らしを始めて15年、自炊が苦手な彼は、毎日外食とコンビニ弁当ばかり。
しかも野菜(特にピーマン)が嫌いで、肉料理とラーメンが好物。
彼は今日も一日、仕事を終え、コンビニの『豚丼弁当』を食べながら、大好きな『異世界転生のラノベ』を読んでいる。
パタンッ
「いや~、やっぱり『異世界転生』モノはいいよなぁ、夢とロマンがあるよ」
たもつは本を閉じてそう言うと、天井を見上げ祈りだす。
「神様、お願いします、どうか俺を『異世界転生』させて下さい……」
深夜になり、布団に入り、電気を消す。
もう眠りに入りそうと思っていると、頭の奥で小さな声が響いてくる
「たもつくん、この世界が大ピンチじゃ、キミの助けが必要じゃ……召喚!」
*****
「ムニャムニャ、ふあぁぁ……」
目覚めると、そこはなぜか外? しかも見たことのない風景?
「えっ、これは……?」
たもつは、自分の手を見る、明らかにいつもの自分の手じゃない。
近くにあった川を覗く、そこには若々しい10代の少年の顔が!
たもつはブルブル震える、そして――
「やったーーっ! 異世界転生だーーっ!」
両手を上げてガッツポーズ!
「神様が、俺の願いを聞いてくれたんだ! ありがとう神様!」
たもつは涙を流しながら、天に祈りを捧げる。
「待てよ、ということは……」
そう言いながら、たもつは叫んでみる。
「ステータスオープン!」
ピコンッ
たもつの前には、ゲームのようなステータス画面が現れる。
「やった、ホントに出た! スゲー!」
名前: たもつ
レベル: 5
HP: 65
MP: 15
力: 15
賢さ: 10
体力: 10
素早さ: 10
健康状態: 最悪
「ゲームの名前はひらがなで『たもつ』か、もっとカッコいいのにしたかったけど、まいっか」
たもつの目線はステータスの下の方へ
「ん? 『健康状態:最悪』?」
あまりゲームでは見ないパラメータ……
「ま、これもいっか」
ガサガサッ――
茂みが揺れる……
奥から現れたのは、ブタの顔をした、小さめのモンスター!?
「ブヒッ、ブヒーー!」
「おおう、さっそくモンスターが現れた! ステータスは……?」
ピコンッ
モンスターの前にもステータス画面が現れる。
名前: ポォーク
レベル: 2
HP: 30
MP: 3
力: 10
賢さ: 2
体力: 8
素早さ:3
「おお! 出た! ん? 『ポォーク』? 『オーク』じゃなくて……?」
「ブブヒーーッ!」
ブタ顔の「ポォーク」が襲ってきた!
「よ、ようし、やってやるぜ」
シャキーン
たもつも、装備していた剣を抜き、「ポォーク」を攻撃!
ズバッ
「ブ、ブヒィ……」
ドサッ
「やった、倒したぞ」
パラパラっパラ~!
「レベルまで上がった、本当にゲームの異世界に来たんだ、俺!」
……歓喜していたのもつかの間、奥からさらに巨大なモンスターが。
名前: ポォークキング
レベル: 20
HP: 100
MP: 30
力: 100
賢さ: 25
体力: 100
素早さ: 15
名前: コメットマン
レベル: 18
HP: 100
MP: 90
力: 40
賢さ: 100
体力: 40
素早さ: 30
「うわわわ、俺よりも、ずっとレベルが上!?」
ズシン、ズシン、ドガーン!
ポォークキングの攻撃を、間一髪よけたたもつ。
地面がえぐれている。
「こんなの食らったら、死んじゃう!」
逃げたいが、足がガクガクして立ち上がれない。
「ち、ちくしょー」
やられた! っと思ったその時――
「一味ブレード!」
ズバァーーッ!
「ブビブヒィーーッ!」
ズ・ズゥン……
たもつが目を開くと、真っ赤なスーツを着たヒーローが立っていた。
「た、助かったよ。 キミは……?」
「私か? 私たちは……」
そう言ってそのヒーローは、後ろにいた他の四人の仲間のもとへ。
五人そろったヒーローたちが、名乗りを上げる
「『辛味レッド』!」
「『苦味ブルー』!」
「『酸味イエロー』!」
「『旨味グリーン』!」
「『甘味ピンク』!」
「五人そろって、『味覚戦隊 デリシャスファイブ』!」
ドカーン!
なぜか後ろのほうで爆発が起こる。
「『味覚戦隊』……? この世界には、戦隊もののヒーローがいるのか」
たもつは、最初少しあっけにとられていたが、すぐ正気に戻った。
そして、また辛味レッドがたもつに近づいてきて、手を差し伸べる
「キミが『平 均{たいら たもつ}』くんだね? 話は聞いている、一緒に『善玉キング』様のところへ行こう」
「善玉、キング……?」
*****
デリシャスファイブのメンバーたちに連れられて、『善玉キング』の居城へ来たたもつ。
ギィィ……
巨大な扉を開けると、そこにはまさに『ザ・王様』の格好をした『善玉キング』が、玉座に座ってたもつを待っていた。
「ようこそたもつくん、ワシがお主をこの世界に召喚した、『善玉キング』じゃ」
「アナタが、俺を、ここに……?」
「そうじゃ、今この世界は未曽有の危機を迎えておる、このままではこの世界が崩壊するのも時間の問題じゃろう」
(この展開、まさに『異世界転生』ものの王道! 俺、ワクワクしてきた!)
「この世界を救うため、たもつくん、お主の力が必要じゃ。
ワシが作ったこの『味覚戦隊 デリシャスファイブ』とともに、この世界の平和のために戦ってくれ!」
「お任せください善玉キング、俺が必ず、この『剣と魔法の異世界』を救ってみせます!」
「ん?」
なぜかその場にいる全員がキョトン顔……?
「『剣と魔法の異世界』? 何を言っているのじゃたもつくん。
ここは、ワシが『夢の力』を使ってキミを召喚した、『キミの体の中』じゃ」
「え?」
たもつもキョトン顔
「でも、さっき、『オークキング』ってモンスターが……」
「あれは『ポォークキング』、キミが食べた『コンビニの豚丼弁当』が擬人化したモンスターじゃ」
「『擬人化したモンスター』って……じゃあ『コメットマン』は、白米の『擬人化モンスター』だったのか」
たもつは、頭が混乱しそうになる。
「キミの体は、長年の不摂生のせいでもうボロボロ。
味覚障害を起こしかけ、糖尿病になる一歩手前じゃ。
このままではさまざまな病気の弊害が起こり、二度と元の生活には戻れなくなる」
「え、ウソでしょ!?」
善玉キングは立ち上がり、全員に檄を飛ばす
「さあたもつくん、自分自身の体を救うため、『味覚戦隊 デリシャスファイブ』とともに、戦うのだ!」
「え、えええーーっ!?」
◆現実世界・布団の中のたもつ……
「ムニャムニャ、んなアホな…… Zzzz……」
◇今回の献立
「コンビニの豚肉弁当」(総カロリー: 約850)
ポォークキング(100)×4
コメットマン(100)×4
ポォーク(30)
タレ(20)
◇今回の健康カルテ
体重: 67キロ
BMI: 22・9
血圧: 145/95
中性脂肪: 210
LDL: 178
HDL: 35
尿酸値: 7・8
γ-GTP: 185
血糖値: 135
HbA1c: 6・2
ストレスレベル: 標準
※GW期間中は毎日投稿予定です




