表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金が命の【贅沢勇者】と命が金の【節約勇者】~100億の資産運用について~  作者: てっぺい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/13

第7話 村人の不信

「ハジマリノマチ」の隣にある、少し活気のある村「ツギノムラ」


 その門番は、長年の勤務において、人生で最も理解不能な光景を目にしていた。


「おい、止まれ! 何だ貴様……いや、何なんだその引きずっているものは!」


 門番が槍を構える先には、顔を真っ青にし、全身から滝のような汗と湯気を出しながら、ズリ……ズリ……と地面を削りながら歩くゼニマルの姿があった。


 彼が肩に食い込ませて引きずっているのは、尋常ではない輝きを放つ「純金の縄」でぐるぐる巻きにされた、ぐったりとした山賊十数人の塊だ。純金特有のずっしりとした質量に加え、成人男性十数人の体重。その総重量は優に1トンを超えている。


「……はぁ、はぁ……。動摩擦係数……無視……。削れる……俺の資産が、アスファルトならぬ砂利道で削れていく……! これは、俺の、正当な報酬だ……」


「いや、どう見ても山賊を拉致している怪しい男にしか見えん! そもそもその縄、本物の金か!? どこの国に山賊を金で縛る勇者がいる!」


「ここにいるよ。かっこいいでしょ?」


 後ろから、ふかふかのクッションが敷き詰められた馬車からリッチーが顔を出す。彼は「一歩も歩きたくない」という理由で、高騰した15万Gをポンと支払い、再び馬車をチャーターしていたのだ。


「リッチー! 貴様は……はぁ……馬車代なんて、無駄な、ことを……。門番! この縄を、今すぐ一番高い質屋へ案内しろ! ついでにこの山賊どもも懸賞金に変えてやる! 漏れもなく回収するぞ!」


「あ、ああ……。わかった、とりあえず中に入れ。ただし、その縄で村の舗装を削るなよ。修繕費を請求するからな」


「……ッ!? 削れた分の金の粉を回収させろぉぉ!! 俺の時価総額が減るだろうが!!」


 ――数分後。村で一番大きな質屋『ガッポリ商会』


 ゼニマルはカウンターに「金の縄」を縛られた山賊ごと叩きつけた。

 あまりの重量に、オーク材の頑丈なカウンターがミシミシと悲鳴を上げる。


「店主! これを換金しろ! 純度100%の最高級品だ! 山賊の懸賞金と合わせて、即金で頼む!」


 店主は老眼鏡をずらし、まじまじと縄を見つめた。そして、ルーペを取り出して表面の細工を確認すると、深くため息をついた。


「ほう……。確かにこれは見事な純金だ。魔法による特殊コーティングまで施されている。……だがねえ、お客さん。これは『縄』だ」


「それがどうした! 溶かせば立派なインゴットになるだろうが!」


「それが問題なんだよ。魔法加工が特殊すぎて、溶かして地金にするのに莫大な専用魔力と手間がかかる。それに、今この世界は魔王軍のせいで深刻な物不足と不景気だ。みんな『金塊』より『今日のパン』や『実用的な鉄』を求めてる。こんな流動性の低い高価な装飾品、満額で買い取って在庫を抱える余裕はうちにはないね」


「……なっ」


「それに、この山賊ども。今は村の財政もカツカツでな。こんな小悪党に払う懸賞金なんて用意されてないよ。牢屋の飯代がかかるだけ迷惑なくらいだ」


 ゼニマルの顔からサァッと血の気が引いた。


「……で、では、いくらになるんだ」


「そうさね……加工の手間と在庫リスクを考慮して、手元に残るのは、ざっと24万Gってところだね」


「な……ななな、70パーセントの減損処理だとぉぉぉ!?」


 ゼニマルの絶叫が村中に響き渡った。

 80万Gの価値がある縄が、一瞬にして24万Gに暴落。山賊の捕獲にかけたカロリーもタダ働き。完全なる「キャピタル・ロス」である。


「冗談じゃない! 俺がどれだけのカロリーを使ってここまで運んだと思ってるんだ! 途中で削れた金粉の損失だけでも数千Gにはなるんだぞ!」


「じゃあ、売らないのかい? 持ち歩くには重すぎると思うけど」


「……う、うう……。リッチー! お前がナイルで買ったんだから返品しろ! クーリングオフだ!取り戻せ!」


「えー、ナイルは『お客様都合の返品』は受け付けてないんだよね。送料の方が高くなるし。……あ、そうだ。店主さん、この村ごと僕が買っちゃおうかな? 村の財政を潤せば、満額で買い取れるでしょ?」


「村を、買う……?」

 店主と、様子を見に来ていた門番が完全に凍りつく。


「やめろぉぉ! 根本的な解決になってない! 村を買う金があれば、俺のHPを1でも回復させる手段を探せぇぇ!!」


 結局、ゼニマルは経済の暴挙に屈することなく、意地でも資産価値を維持するため、その重すぎる金の縄を「自分の持ち物」として引きずって歩く決意をした。


 命よりも重い金の重圧が、物理的にゼニマルの肩にのしかかるのだった。


■贅沢勇者:リッチー

【所持金】9,975,394,520G


●本日の支出

 馬車 ──15万G


■節約勇者:ゼニマル

【HP】 9,999,999,999

【所持金】 100G

【装備】 銅の剣×99

【道具】 折れた剣の先、金の縄

【換金アイテム】合計時価総額──286G


●本日の収入

 無し


●本日の支出

 莫大なカロリーと精神力

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ