席替え&リア友とライブ
ピピピピッピピピピッ...
ん?なんだ?...ああ、目覚まし時計か。
「んー...もう朝か...」
体感2時間くらいしか寝た気がしない。昨日は2時までやったからなー。疲れが残ってるな。さっさと着替えよ。
俺は着替えるついでに台所に行ってコーヒーをがぶ飲みする。目が覚めた。
「...朝ご飯何にしようかな。普通にトーストでいいか。」
高校に入ってから俺は一人暮らしだ。
なぜなら母が、
「あんた、高校から一人暮らしね。異論は認めん。」
と、卒業式の直後に言われた。その時はまだプロゲーマーでは無かったから、自分で稼いでいなかったけれど、親がマンションの一室を既に借りていたので、そんなの迷惑だと言って断れない状況になってしまっていた。
学校に行く準備をしていると、不意に玄関のインターホンが鳴った。
「はーい。どちr「おい!行くぞ!慧人!」...はいはい。」
昨日と同じテンションで叫んできたぞこいつ。
俺はさっさと準備をして玄関から出る。
♢♢♢
登校中、急に龍真が話を振ってきた。
「おいおい!昨日の配信やりすぎだろ!2時までとかw」
「しょうがねぇだろ。ドルフィーさんとの会話が弾んで、キル数も弾んでいくんだから。その流れのまま行きたいじゃん?」
「まぁわかるけどよー。そういや、次の配信、いつやるんだよ?」
次の配信というのは、昨日の配信で言った、「リア友とAP〇X」の配信のことで、こいつはそれが気になってしょうがないらしい。
「うーん。別に今日でもいいよ。」
「マジで!?よっしゃ!絶対だぞ!」
めちゃくちゃ喜んでる...そんなに配信に乗りたいのか...
♢♢♢
「はーい、新学期早々、席替えするぞー。」
ホームルームが終わったあと、先生から唐突に告げられた。当然のように教室がざわつく。
「はーい。くじ引きしてくぞー。廊下側からのやつから引いてけー。」
どこからともなくくじ箱を取り出した先生はどんどんくじを引かせていく。
「よーし、クジ引いてないやつはいないなー。はい、黒板に番号書いておいたから、自分の番号のところに移動しろー。」
俺の席は教室を上から見たとしたら左下、つまり端っこの方になった。「隣は誰かなー」と思っていると...ん?全然来ないぞ?
ん?あそこで立ち往生してる女子がいるな。あれか?
「手伝うか?」
声をかけてると、ビクッってしてこっちを見て驚いたような顔をしている。眼鏡してるのか。気づかんかった。
「...お願いできますか?」
「任されましたー」
ササッと運んであげる。
「...ありがとうございます。」
「どういたしまして。これからよろしくな。」
「...うん、よろしく。」
♢♢♢
1時限目
チラッ...チラッ...
「...」
♢♢♢
2時限目
チラッ...チラッ...チラッ...
「......」
♢♢♢
3時限目、4時限目、5時限目
チラッ...チ(ry
♢♢♢
「はぁ...」
帰る途中で思いっきりため息をついてしまった。
「ん?どうしたんだ?そんな疲れた顔して。」
龍真が心配そうに聞いてくる。
「いや、なんでもない。そういえば、今日、忘れるなよ。8時からな。」
「あたりめーだ!この日のためにAP〇Xのランクを上げてきたんだからな!お前とゲームするために!」
あっ、そっちの理由か。てっきり配信に乗りたいのかと。
「...お前、なんか失礼なこと考えてないか?」
「イヤ、ソンナコトナイヨ」
「...」
一発蹴られた。
♢♢♢
家に帰ってきた。着替えて掃除して風呂はいって飯食って...あっという間に7時50分になった。
「よーし、通話アプリ起動...龍真を招待...よし、キタキタ」
俺はvcを付ける。
『もしもしー?聞こえt『聞こえてるぞー!』...おけ。ゲーム起動してる?』
『おう!起動してるぜ!招待送るわ!』
『頼む。そろそろ8時だから。準備しとけよー。放送事故はほんとにやめろよ?名前とか呼ぶなよ?』
『流石にしないって!準備はバッチリだ!』
『んじゃ、放送始めるぞー。』
配信ON!
「はい!皆さんこんばんはー!レインです!今日はね、俺のリア友とAP〇Xやっていきたいと思いまーす!はい、ではどーぞ!」
「はい!どーも!レインのリア友のリューです!」
コメント欄がざわつく。「えっ!?レインに友達居たんだ!」とか、「え?学校でぼっちじゃないのか!?」とか、「俺をなんだと思ってるんだ」と口から出そうになるコメントで溢れかえった。
「おい、俺をなんだと思ってるんだ。ただの高校生だぞ?」
と俺が言うと、「いや、プロゲーマーがただの高校生はないわw」とコメントが帰ってきた。
「...確かに。まぁいいや、それじゃ!早速やっていきますかー!」
「おうおう!やったるぜー!」
ちなみに「リュー」とは、龍真からとった名前だ。
♢♢♢
やばい、何時間やった?うわ、もう4時かよ。今日学校休みでよかったー。
「おい!レイン!そっちに敵!」
「っは!おけ!」
ドパパパパ...ピチューン。あ、チャンピオンになった。
「ナイスー!」
何回チャンピオンとった?27回?やりすぎだろ。
「...やばい、寝落ちしそう。」
「んー?そうか。んじゃそろそろ終わるか。今日はありがとなー!」
「はい、てことで今日はこの辺で終わりますかー。さすがに8時間配信はキツい。それではー!また次回の配信も来てくださいねー!」
配信を切る。ふぅー。疲れた。
「あー疲れた。おい龍真。今日は落ちるぞ。」
「んー?そうだな。俺はまだ行けそうだけどな!」
「勘弁してくれ...んじゃまた来週。」
俺は通話アプリを落とそうとする。
「あ、ちょっと待て。1つ伝えておく。」
すると、急に龍真が真面目な声で話しかけてきた。
「...なんだ?」
「お前、中学の卒業式前に振られたろ?」
「うっ、それがどうした?」
「...あれな、お前に「さっき振られた。」と言われた時に、俺走ってどっか行ったじゃん?その時、霜月のことを探して、あとをつけて行ったんだよ。」
...何やってんだこいつ?後をつけたところでなにがあるってんだ?
「それでな、あいつがクラスの女子と話しているのを聞いたんだよ。その内容がな...チャットに送るわ。」
♢♢♢
クラスの女子『嘘コクお疲れ様ー。どうだった?』
望月『楽しかった。まだ一緒にいたかったけど、私には彼と付き合う権利はない。嘘コクだったからね。』
クラスの女子『でも、1年間付き合うなんて、結構いい感じだったんじゃないの?最初は1週間だけだったのに...』
望月『うーん。でも、俺が私のケジメだからね。』
♢♢♢
「俺が聞こえたのはここまでだ。どうだ?あいつに未練あるか?」
龍真はなんとも言えないような声で聞いてきた。内容が微妙な内容だからな。許せるか許せないか微妙なラインだ。
俺は衝撃を受けて...いなかった。
「...いや、実はさ、去年、罰ゲームで1年間付き合ったって言うのは、望月本人から聞いてたんだよ。謝罪と一緒に。」
「は?お前あいつの連絡先消してただろ?どうやって話したんだよ?」
「いや、街中歩いてたらばったりな。いやー、とんだ偶然だったよ。HAHAHA。」
「何笑ってんだよ。それで?お前はそれでいいのかよ?」
「うーん、嘘コクっていっても、悪気があったわけじゃなかったと思うし、振られたお陰で今があるし、望月に支えてもらってたのは間違いないなからな。でもあの頃の俺、メンタルクソザコナメクジだったからな。振られただけで心がポッキリ折れちまった。だから、『今後、罰ゲームだろうがなんだろうが相手を傷つけることはしない。』という約束とコーヒー1杯で許してやったよ。あ、あと、今の彼氏を絶対に幸せにすることもな。あいつの彼氏、俺に似てるらしいぞ。俺よりもあいつの方が未練タラタラじゃね?HAHAHA」
「...緩くね?」
「緩くて結構。これはあいつと俺の問題だ。その問題は俺達で解決する。」
「...はぁ、心配して損したわ。あの会話を秘密にしていた俺の1年間を返してくれよ。」
「いや、ごめんごめん。まさか後をつけてたなんてな。」
なんだかんだで龍真はとっても良い奴なのだ。ちなみに望月とは友人として連絡をとっている。
え?仲直りするの早すぎでは?だって?プロゲーマーになって、色んな人と接する機会が増えたことでメンタルが防弾ガラス並みに硬くなったのだ。振られたくらいでは動じない。
「なんか拍子抜けだわ。んじゃ、お前もいい人探せよ?」
急に爆弾発言ぶっ込んできた。
「は?なんでそうなる?」
「いや、だって、さっきの話だと、お前のことを支えてるの、ゲームだけだぞ?」
...いやいやまさか。そんなわけ...
「...善処しとく。」
「はぁ、期待しないどくわ。んじゃ、また学校でな。」
「ああ、今日はもう寝るわ。」
「またな!」
通話アプリを落とす。
いやー、まさか龍真が知ってたとは...まぁ、もう終わったことだったんだけどね。
...寝るか。今日は疲れた。