師匠
今回は短め。
土日は更新できるかなぁ?
学院へと帰ると、学院長が解散を告げる。
「では教師陣の皆、生徒たちの救出お疲れ様。今日はもう解散とする。書類などまとめて帰っていいぞ。」
先生方はいそいそと職員室へと向かう中、学院長が俺たちを呼び止めて。
「シュウ君、カナデ、君たちはちょっと待て。精霊祭の運営と軽く話をつけてくるから、客間で待機しててくれ。それに、リュナくんとソフィアくんも待ってくれてるだろうよ」
と、いう訳なので校長室の客間へ。ドアを開けると、そこでリュナとソフィアがくっついて座っていた。まるで仲良し姉妹さんみたいだな。
「おかえりシュウ。大丈夫だった?」
「まぁ少し厄介事があったが問題無いさ。あと、学院長が戻ってくるまで待機だそうだ」
「分かったわ。で、一つ聞きたいんだけど、あの人は誰?」
そういえば師匠ってリュナたちと初対面か。
「どうも。シュウ君の師匠やってるカナデです。よろしくね。」
そういって師匠は人柄の良さげな笑みを浮かべた。いや、実際良いんだけれど。
「シュウの師匠!?シュウの魔法技術をここまで鍛え上げた張本人だわ!」
「でも師匠と言っても、シュウ君の実力はほとんど彼自身の努力の賜物だから、あんまり過大評価しないでよ」
それを本人がいる所で言うから俺が恥ずかしくなるじゃないか師匠!てか師匠は自分を過小評価しないで下さい!
「今の俺は、師匠からの指導あってこそです。拾って貰えた時から師匠に感謝を忘れたことはありません」
「シュウ君……」
何だろう。凄く恥ずかしい事を言っている気がする。
「あ!そうだ!カナデさん、私たちに精霊の扱いを教えてくれませんか?」
「ソフィアさん、かな。私は別に構わないけれど、ここの教師から習っているんじゃないの?」
「確かにそうですが、もっと精霊と仲を深める方法とか、より連携をスムーズにするやり方とか、細かい所を教えて欲しいんです!」
珍しくソフィアのテンションが上がり気味だ。確かに、精霊を交えた模擬戦とかはしたが、細かい制御まで教えてくれなかったもんな。俺が魔法を教えて時から、実力の向上に貪欲になってるのかもしれない。
向上心を持つのはいいことだ!
…とはいえ、俺も制御や連携に関してもう少し師事を貰いたい。
「師匠、それは俺も参加していいですか?久しぶりに師匠の授業を受けたいですし」
「私も参加するわよ!ヨルの扱い方は正直難しいし」
「ふふふ。分かった!三人、まとめて教えて上げよう!日程はシュウ君を介して伝えるよ」
『俺は伝書鳩かなにかかっ!』と心の中でツッコミを入れつつ、学院長が戻るのを待った。
30分ほど経っただろうか。雑談に花を咲かせていた時、ドアを開けて学院長が戻って来た。
てか学院長も大分無理してるよなあ。だってこの人、数時間前まで気絶してたんだぞ?怪我人だぞ?
「やぁただいま。精霊祭の運営たちと話をつけてきたよ。報告しよう」
「例の誘拐騒ぎにより、祭は一時休止。上への報告も含めて、それらが終わり次第再開するそうだ。まぁ、明日の午前中には再開出来そうだと言っていた。何とかなるだろう」
なるほどな。今日はもう夕暮れ時だし、今一時休止しても大した影響も出ないだろう。これで諸先輩方の試合を観戦できるもとい、祭りを改めて楽しむことが出来る、ってことだな。
「意外と再開早いんだね。なら私もちょっと見て回ろっと」
「でも私は明日も学院の書類仕事があるんだよなぁ」
「と言うかセリスは今日は疲れてるだろうし、休んだ方が良いよ」
「そうする。では今日は解散だ。お前らもゆっくり休めよ」
学院長は人の心配してる場合じゃ無かろうに。ゆっくり休んでくれることを祈るばかりだ。
「ねぇねぇシュウ君」
「ん?師匠、どうかしました?」
「久しぶりに夕食、行かない?」
「いいですね!師匠と外食は楽しみです!」
てか久しぶりと言っても数ヶ月程度なんだけどね。それでも、わざわざあんなに楽しそうな師匠に水を差したりはしないけどな。
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「ここが私のおすすめだよ」
師匠に連れて来られたのは、『鶏の冠』亭。ちなみに冠とはトサカのことである。
その名の通り、ここは鶏肉を使った料理で有名だ。酒のツマミになりそうな唐揚げとかもあるらしく、人気店のようだ。
ま、俺は酒飲めませんけどね。未成年だし。
「いらっしゃっいませー!何名様ですか?」
「二名で。カウンター席良いですか?」
「承りました。ではあちらの席へどうぞ」
隣合わせのカウンター席に座り、料理を注文して食事をとる。
「ん!これは美味しい!」
「でしょでしょ〜」
この店の看板メニュー的存在らしい味唐揚げがめっちゃ美味かった。思わず声が出るくらいに。てかレモンかけたら酸味もあってより美味しい。
とそんな酒のツマミ感満載の美味しい唐揚げを食べつつ、師匠と色んな話を交わす。
俺からは、入学試験の時のこと、初授業でちょっとやらかした事、実地試験での戦闘や、先生との模擬戦など学校での出来事を主に。
師匠からは、俺が入学してからまた料理が上達したこととか、ご近所さんが俺を気に掛けてくれてた事とか。
楽しい時間ほど早く感じるっていうのはこう言う事なんだろうな、と実感する程、時の流れは早かった。
店への客足もまばらになってきた所で、そろそろ帰ろうかと師匠に声を掛けようとしたら、
「んーむにゃむにゃ、」
師匠が机に突っ伏して寝ていた。確かに酔いが来ている兆候があったとは言え、寝るまでの工程が一瞬すぎてびっくりした。
「よいしょっと」
代金を支払い、師匠を背負ったまま店を出る。幸いにも、師匠が宿の整理券みたいなのを持っていたので、その宿へ向かう。
「あの〜、すみません」
「何でしょうか?」
「ししょ、…いや俺の友達が、店で酔って寝ちゃって。この宿をとっているらしいので、部屋の鍵を貸していただけますか?」
「分かりました。えーっと、その方は201号室ですね、この鍵ですね。どうぞ。」
「ありがとうございます」
宿の受付で鍵を受け取り、201へ。そこで師匠をベッドに寝かせてあげて、俺は寮へ帰ろうと思ったら、
「シュウ〜、一人は寂しいよぉ〜」
酔いのせいか幼児退行しかけている師匠が俺の制服の袖を掴んで離さない。いや、師匠と同じベッドで寝るとか、あの時を思い出すから無理だ。色々と保たない。主に俺の心臓が。
なので師匠の幼児退行を一瞬で収める方法を考えついた。それは……
「ひゃうっ!シュウ君、何するの!」
小さな氷を作って、首元に当ててやった。これで大丈夫だろう。
「いや、師匠が一人は寂しいとか言い出すからでしょう。では俺は帰ります。おやすみなさい」
「あ、待って!」
「シュウ君、ありがとうね」
その言葉は、何に向けられた言葉だったんだろう。俺が運んで行った事?夕食に付き合ったこと?それとも他?と、まあ何に向けられた物でも、師匠に感謝されたのだから、素直に嬉しい。
今日はいい夢見れるかもな。
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翌朝。俺は同室のエリクを問い詰めなければならない。昨日は寝ていたからしなかったが、起きている時なら話は別だ。
「おいエリク」
「な、なんだい?シュウ。」
「お前、貴族なの黙ってただろ?」
「う、それはすまん。ただ話すタイミングが無かったんだよ」
「まったく…身分のことぐらいは教えてくれないと、正しく接せないだろ?貴族なら、もっとしっかりしろよ」
「その通りだな……」
まぁ反省したならいいのだ。
「さて、朝食は今日はエリクか。任せたぞ」
「任された。昨日迷惑かけた分、腕によりをかけるぜ!」
是非いつもそのやる気でいて欲しいものだ。
朝の支度を済ませ、教室へ向かう。寮の各部屋の机の上に、明日は一度教室にくるようにと連絡が来ていたのだ。知らせ方が昔ながらだけど合理的だよな。
ホームルームの時間になると、いつも通りな学院長がいた。火傷の方はもう大丈夫そうだ。
「皆おはよう。さて、昨日から休止している精霊祭だが、今日の午前には復旧するそうだ。なので、我が学院はその手伝いだ!特に一年生はな。その後は各自自由行動をしてくれて構わない。まぁ、試合の観戦ぐらいはして欲しいけどな」
復旧作業。とはいっても、今日の午前中には再開できるとか言ってたし、大したことないだろう。
取り敢えず、復旧作業の手伝いしに行くか。
少しでもおもしろいと感じて頂けたら、
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作者は狂喜乱舞します。
ちなみにこの後書き部分は、毎回手打ちしているので、たまにアレンジが入ったりします。