ビリビリになった服
池本君と僕は、放課後にラーメンを食べに行ったり、カラオケに行った。
池本君と喋っているうちにクラスにも馴染めて、僕の中学生生活も少しずつ楽しいものになっていった。
ゴールデンウイークに池本君おススメのつけ麺屋に行くと、小学校の友達の遊と会った。
「野島、元気か?」
野島遊は、驚いた顔をした。
「光、池本と仲良かったの」
その顔はあんまり嬉しいことが無い時の遊の顔だった。
「野島と僕はボースカウトで友達だったんだ!光!世間は狭いな!」
友達だった?引っかかるな。最も、その声を無視して遊は僕の方を向いた。
「光、俺んち来いよ、話したいことがある」
「僕も行っていいかな!」
池本君に游は笑って首を振った。
「お前は来んな、俺は光と二人で話がしたい」
冗談めかしていたけれど、真に迫った言い方だった。
「俺を受け入れないのか?」
池本君の横顔は物凄く怖くて、目が血走っていた。こんな人だったっけ……。
「そう、光は受け入れるけれど、お前は受け入れない、じゃあな」
そう遊が言うや否や、池本君は游を掴んで引っ張っていった。すごい力だ。
「どうしたの、止めようよ……」
僕が言っても池本君は聞かない。人気のないところまで遊を引きずり倒すと、大きな声を出して服をビリビリに破いた。まるで獣が叫んでいるような声だった。
游のお洒落な服装が無残に引き裂かれた後、池本君は僕を無理やり掴んで、池本君の住む高級マンションの自室まで連れていかれた。
「いいか」
池本君は息を荒くしながら話していた。
「俺に逆らったやつはみんなああなるんだ、俺があいつを倒してやったから俺の勝ちだ、あいつは負けだ、ダメ人間だ、俺の勝ちだ、勝つのはいつも俺だ……」
僕は薄気味悪くなって部屋を無言で飛び出した。
游の家に走って向かった。ベルを鳴らすと、游のお母さんの声がした。
「光くん……どういうこと?」
「游、様子大丈夫?」
「大丈夫なわけないでしょ?」
いつも仲良く話す游のお母さんの声が沈んでいる。
「ごめんね、光くん。光くんがこんなことしないの私は知ってる。知ってるんだけど今は游のことで精いっぱい。事情を聞くのも怖いの。だから今はそっとして。遊のことも、私のことも」
僕は、何も言えずに游の家に背を向けて、トボトボと歩いた。
そして、池本君の影をもっと知ることになるのだ。




