表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水流士-因子を解く-  作者: 小野里
- 過干渉編 -
5/47

第4話:原因はすべてあなたの中にある




駅から歩くなんて久々。





今日はこれから水流士とかいう方に会いに行く。

その後きっちり仕事をする。じゃないと立て続けに仕事がくる。



…仕事しなくちゃ…



歩いても足が重いけど気のせいだろうと足を一歩前に踏み出す



…しっかり歩かなきゃ。目が眩む…


歩いて10分くらい歩くあの角を曲がったら目的地のビルだ。


コンシェルジュが即反応する。


「こちらが目的地になります。夕方から会議がありますので再度リマインド致します。」


コンシェルジュに向かって「ありがとう」とお礼を言う


ビルの中に入るとハーブと花がたくさん育ててあり綺麗な水が行き渡っていたが。


……綺麗とかあんまり感じないし匂いを感じない……



スタスタスタと早足で歩きながら時計を確認する



…全てにおいて時間がない。急がなくては……



 エレベーターで2階まで行く。


上がるとすぐにオフィスに着いた。

エレベーターが開くとそこには男性が立っていた。



「初めまして。狭山さんですね。藤宮です。よろしくお願いします。」



隣の女性がすかさず頭を下げて挨拶をした



「藤宮の助手、龍後璻と申します。よろしくお願い致します。」



…私も挨拶しなきゃ、声がぁ…うまく出ない…しっかりしなきゃ…



「初めまして。狭山蘭と申します。よろしくお願いします」



狭山は深々と頭を下げると藤宮は狭山に話しかける


「さて、立ち話もなんですから早く入りましょう。璻さんあと頼みます」


そういうと藤宮は璻にオフィスの中を案内するように頼むとサッとその場から歩いていなくなってしまった。

狭山が靴を脱ぎスリッパに履き替えると璻は中を案内する



「ではどうぞ」


少しふらつく狭山を心配そうに見つめながらソファに璻は案内する。


「こちらのソファにお掛けください」


狭山がソファに座ろうとすると横から藤宮歩み寄り声をかける


「あの狭山さん水かお茶かハーブティーか白湯ありますけど何飲まれますか?」


狭山は藤宮の発言にふと考えがよぎる。


…何を飲む?むしろなんでもいいけど、なんでもいいと言った瞬間嫌な顔をされるかも…


狭山はふと自分の手を握ると冷たいことにようやく気がついた。

そういえばここ最近歩いてもなぜか身体が温かくなっておらず、疲れ切っていたことが多かった。

ここで狭山はなぜか母親の顔が浮かんだがすぐ頭の中からいなくなってしまった。


何かに躊躇う狭山をじっと藤宮は見ていた。


…暖かいお湯が飲みたい。でもそれ言っていいかな?お母さんに怒られないよね。きっと…



「あの白湯お願いします。ちょっと身体が冷えてるので」


藤宮は何かを感じ取ったのか笑顔で狭山に対応する。


「承知いたしました。すぐご用意しますね」



藤宮はティーカップに白湯を注ぐと璻にティーカップとポットを持っていくように頼んだ。

璻は狭山にゆっくりと近づき白湯が入ったカップを置く。



「どうぞ。お熱いので少し冷ましてからゆっくり飲んでください」



笑顔で白湯を渡しキッチンに戻る。



狭山は出された白湯の温度を感じながらゆっくりと口へ運ぶ

藤宮と璻はキッチンからソファに戻ると狭山の目の前にあったソファに座った。

狭山が白湯を少し飲んだのを確認すると藤宮が優しく話し始める。



「狭山さんでは不調のカウンセリングからはじめて行きます。」



藤宮は狭山に頭を軽く下げた。




「はい。よろしくお願いします。」


狭山は白湯を飲んで少し落ち着いた様子に見えるが藤宮には狭山の顔色が非常に悪く見えた


「では、今回の不調について狭山さん自身がいつそうなったのか?教えて頂けますでしょうか?」


狭山は少し声を震わせながら藤宮の質問に答え始める。



「はい。半年前から喉に何か詰まりやすく感じる事が多くあり、一般医療に行き検査をしても特に問題はないと。セカンドオピニオンをしても同じ事を言われて。ほっといておいたんです。そうしたら私の運営してるコミュニティ会社が忙しくなり2ヶ月前から急に肌が荒れる回数が多く一般医療に行っても治ったりひどくなったりを繰り返していまして、根本的な原因が知りたく…知り合いに相談してやっとお伺いしました。」



狭山は深く頭を下げる。


藤宮は狭山の言葉と表情を見た瞬間、なぜか悪寒が身体中に走った。

気のせいだろうと思い藤宮は笑顔で狭山に対応する。



「お話くださりありがとうございます。私の方でいくつかご質問させていただいてもよろしいでしょうか」


狭山は頷くと藤宮に答えた。


「はい。問題ありません。」


藤宮は狭山に対して質問をし始める


「狭山さんはコミュニティ会社やイベント運営をされていますが、日々の睡眠を取る時間ご自身で把握されていますか?」



「睡眠時間ですか……」




狭山は不思議そうな顔をする。



(睡眠時間なんて聞いても解決になるのかしら?)


「確認しますので少しお待ちください」というと狭山はコンシェルジュを起動し睡眠記録を確認すると藤宮の問いに答える。



「4時間くらいしか睡眠は取れてないです。夜もイベント運営や資料の確認や各予算チェックをするので」



藤宮は少し困った様子で狭山を見つめる。


「そうですか……4時間だと少ないですね。食事はバランスよく取れていますか?」



狭山はここ1週間の食事を思い出す。

ここ最近揚げ物しか食べていない事に気がついく。



「そういえば油っこいものをよく食べますね。野菜は一週間に一回くらい」



「ありがとうございます。よく飲む水はありますか?」



狭山は水の質問には自信がある様子で笑顔で答えた。



「時間がないと家の水道水を飲んでます。たまにペットボトルが買えるとペットボトルの水を飲んでます。水は少しこだわっています」


藤宮は笑顔で相槌を打ちながら話をする


「狭山さんは意識が高いのですね。飲んでる水を選ぶのは大事ですよね。狭山さんこれからセンシティブな質問をしますが、答えたくない場合は仰ってください。それ以上はお聞きしませんので」




真剣な藤宮の表情を見ながら狭山は何を聞かれるのか少し不安でたまらなくなった。

狭山は小声で返事を返す


「はい……」


藤宮は優しく質問をする


「狭山さんご両親は狭山さんが幼い頃から完璧を求められたり、また厳しかった家のルールなどありましたか?」



藤宮の問いに狭山の表情が変わった。

今までスムーズだった生活の質問とは打って変わって家族の話になると狭山の表情はだんだんと曇り始めた。


「完璧ですか……私の父母はいつも結果に対して完璧を求めてきました。お受験やいい大学に行くように求められてましたし、交際相手になる方や友達になる子さえ必ず紹介し親の判断を得てから友達や恋人になるのが家のルールでした」



璻は狭山のその言葉を聞くと脊髄から冷たい感覚が走りゾッとするのを感じた。

璻はその瞬間なぜか疑問が出てきた。


…この人、何かおかしい…


藤宮は表情を変えずに淡々と狭山に質問する。


「ありがとうございます。狭山さんは家のルールに関して疑問を持った事などありませんか?例えば…他の家族と何かおかしいなとか」



その質問に狭山は一瞬で不機嫌になった。

狭山は藤宮を睨みつけた。


なぜか狭山の中で少しイラっとした家族を馬鹿にされたような感じに聞こえた。

少し低い声で狭山は藤宮に言葉を放つ


「考えた事はありません。親が一番正しいと思ってきました」



璻は狭山の話を聞くたびに背中全体が凍るような感覚を覚える。




……狭山さん自身のを話しているんだよね?すごく違和感がある。親と絡めた話になると自分の意志を1ミリも感じない……



藤宮はその違和感をひしひしと感じていた。


「物質社会が崩壊した2025年以後に苦しいと感じた事はありますか?」



狭山は藤宮の質問にハッと何かを思い出したのかなぜかボソボソと答える始める。


「ちっ、父と…母は…物質社会が崩壊したのちにっ…生活費を私に頼るようになりました。べッ…ベーシックインカムなどは幻だから使うなと…それが少し私の中で苦しく感じました。」



狭山の顔色が段々と暗く青ざめていた。

藤宮は狭山の回答からなんとなくどういう幼少期だったのか目に浮かんだ。



(この感覚、この自分に対して自信のない言葉、両親が全て自分たちの都合のいいように全部決めてきたのか。この感じだと自分の意見を言うのも止められてきた感じに見える)


藤宮は狭山に軽く頭を下げる。


「それは辛かったですね。お話頂きありがとうございます。」


狭山の様子を見ながら質問の内容を変えることにした藤宮は質問を続ける


「では次に狭山さんは昔楽しかった思い出などありますか?」

 


狭山は目を瞑って手を顔に当てながら。


昔を振り返った。


笑顔になった時の両親の顔を思い浮かべると狭山は少し優しい気持ちに浸っていた。

目をあけ藤宮の質問に答える


「楽しかった事は親が成績がいい時に褒めてくれる事が何より楽しかったんです。私が色々決められない人間なので勉強をして進路を全て決めてくれる親がいて初めて生きがいを感じました。」



自分の発言に狭山はふと疑問が浮かんだ。


…私、勉強以外に楽しいことや褒められたことがなかった。何が楽しかったんだろう…


ボソッと狭山は藤宮に呟く


「勉強以外に楽しいは……」



狭山は顔を下に向けると自分の意見を一瞬考えた。


今考えてる感情を言おうとすると母親や父親の顔が浮かびなぜか首をゆっくりと絞められいるような感覚になる。

呼吸が浅くなるのを感じるが狭山は自分でも何が起きてるのかわからない。


…息がっ…


狭山は突然前傾姿勢になると胸を抱え始めた。


「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」



ふと頭の中で突然亡くなった母親と父親の声が突然聞こえる。

母親の声が聞こえるとボソボソと何かを言ってきた



「蘭。自分の意見を言う必要なんてないわ。結果を出せばいいのよ。私たちの言う事を聞けばお金が入ってくるもの。結果を出さない人間はいなくたって同じだもの。」


狭山はこの光景に見覚えがあった。


…また過去の記憶か何度目だろうか…


次は父親の声がはっきり聞こえる


「蘭。母さん父さんが出来なかった事をお前は絶対叶えてくれるよな。自分のやりたい事や意見は二の次だ。俺たちの生活費を稼げ」



…いつもそう言ってたな。なんで今考えてるんだろうか……



藤宮はすぐに狭山の呼吸が荒くなっていることに気が付く。


狭山が俯いてほんの20秒の出来事だった

藤宮は狭山が座っているソファに駆け寄り、狭山に目線を合わせ肩を叩く



「狭山さん、狭山さん、聞こえますか??」



藤宮が必死に狭山に呼びかける。

狭山は目が霞み藤宮がぼやけて見える。


…また過呼吸になっている。まただ。どうやったら治るんだろう…


藤宮の声が大きく聞こえる。



「大きく深呼吸しましょう。10秒で吸って20秒で吐いて。いきますよ。吸って……吐いて……」



狭山は藤宮の声に合わせて呼吸をする。



「すぅーはぁーすぅーはぁーすぅーはぁー」




息の指導をしている最中に頭の中でずっと狭山は考えていた。



…毎回なんで自分の意見をいうたびに息が浅く呼吸が出来なくなるんだろうか…


4回繰り返すとやっと狭山の呼吸が安定し始めた



「ゴホゴホッツ…」


藤宮は心配しながら狭山を見つめる



「狭山さん無理せず、今日はご自宅に帰られますか。」



狭山少し慌てながら藤宮の黒い白衣に縋るようにしがみつく。



「いえっっつ!今日しか時間取れないんです。藤宮さんなら体内の水を見て根本的な不調の原因がわかるって。言われてやっと出会えたんです。お願いします」と目に涙を溜めながら訴えた。



藤宮は少しため息をつく。



「はぁっ…わかりました。では狭山さん少し休憩しましょう。施術台があちらにあるので10分ほど横になって下さい。10分経ったら起こしに伺います」



藤宮の黒い白衣にしがみついた手を離すと狭山は手に顔を埋め


「すいません。時間押してるのに」


藤宮は落ち着きながら狭山の肩にふれ宥めた


「気にしないでください。狭山さん少し仮眠を取りましょう」



藤宮は立ち上がると施術台に案内し狭山を横たわせ大判のタオルをかけた。

藤宮は璻の隣に座り、テーブルに置いてあった白湯を片付けキッチンに持っていく。



璻は唖然とただ見ていただけだった。



この仕事は想像していたのとだいぶ違う事にやっと気付く。



片付け終わると璻は藤宮に静かに駆け寄る。



「藤宮さん少し質問があるの隣の部屋で聞いても問題ありませんか?」


 藤宮はなんとなく璻の言いたいことを察している雰囲気だった



 「はい。問題ありませんよ」


藤宮と璻は面接で使った試験管や本が置いてある部屋に移るとドアを締め藤宮に疑問をぶつける



「藤宮さん狭山さん身体だけ不調じゃないですよね?」


璻は確信をついた質問したことに藤宮は少し驚く



(どこまで気がついたのか気になるが新人にしては感がいいな)



藤宮は少し悲しい顔をしながら狭山の様子について詳しく語り始めた。



「そうですね。あの様子を見る限り両親に対して高い共依存を感じます。狭山さんの話を聞く限り自律神経が正常的ではないですし、血液全体のめぐりがよくない感じはします。血液は水分子の構造を変えると身体はよくなりますが……話を聞く限り今の状態だとまた不健康な身体すぐ戻りますね」



璻は藤宮の意見に質問をする


「すぐ戻るって事は身体を整えても考え方や自分の行動が変わらなければ根本的に変わらないという事ですか?」


藤宮は頷くと続けて話をする


「はい。狭山さんの問題は過去の記憶と感情です。基本的に人間は過去の記憶の感情が変わらないと行動は変わりません。いくら体内の水を綺麗にしても行動が変わらないとまた似たような不調が山ほど出てきます。これは水以外のことにも言えますが変化させて安定させないと根本となる本質の問題は変わりません。水分子をまだ見ていないので憶測になりますがご両親の”過干渉”が原因じゃないかと考えています」




璻は過干渉という単語なのは初めて耳にした



「過干渉ってなんですか?」



藤宮は言わなくても通じると考えていた自分を浅はかに感じた。

ふーっと少し肩の力を抜くと璻を見ながら丁寧に説明する




「過干渉は自分の意見を相手に言えずに両親や周りに育てられてしまう教育方法です。長期間この方法で育てられてしまうと無意識のうちに自分で決められなくなり、自分は他の人より目下だと思うように過ごしてしまいます。自分で行動することを避けつつ生きるようになるので大人になった時に自立が難しくなります」



それを聞いた璻は親に全て決められ選択の自由もない狭山の気持ちを考えると深い海の中を沈むような重たい感覚になる。


璻は狭山の立場になって考えた時にどうやったら変わることができるのだろうか。


…誰もがそうだが自分の人生にとって親の教育は自分の基礎になる部分、これは抜けるの難しいでしょ…



心配になり藤宮に思い切って聞く



「それって幼い頃だから教育されているから変えられないんじゃ……」



「いや、変えられますよ。」と藤宮は言うと笑顔を見せた。



璻は安堵した「本当ですか!よかった。」



藤宮は険しい表情をしつつ



 「ただし本人次第です。本人が過去の感情を認識し逃げずに認める事と不健康な行動を自ら選択しているので自分で健康な行動を変えるしか方法はありません。」

 



藤宮の言葉は45年間狭山が必死になって生きてきた社会的概念または親に植え付けられてきた固定概念を全部捨てる覚悟があるか狭山自身、厳しい選択を迫ることを意味する。



無意識に行っている執着を捨てることの悲しさと捨てることで楽になれる楽しさを天秤にかけるとどっちを選択するのかはもう本人も答えはわかってるはず。


璻は狭山の45年間を思うと苦しく息もできないくらい自分を抑えられて過ごしていたことを考えると居たたまれなくなっていた。



「狭山さんは大人になっても子供の頃の社会概念や親のルールに今でも無意識で苦しんでいたんですね…」

 



 藤宮は少し悲しい顔をする



「こういう方はまだ世の中にごまんといます。狭山さんだけではありません。育った時代背景や親の経済状況また住んだ地域やその人のゲノムにもよります。」



璻は未だに物質社会が終わってもこんなに苦しめられてる方がいる事に悲しさがこみ上げてくる。

藤宮はそんな璻の様子を察するように答える



「狭山さんの場合周りの両親に都合よく育てられた事を自覚出来ない状況にいました。狭山さんがここに来てくれたという事は狭山さん自身に知る覚悟が出来たという事です。我々水流士は水分子の記憶を読み解き、本人が気づいて立ち上がり体内の水を滞りなく流れるようサポートするのが仕事です。璻さんはどうしたいですか?狭山さんの記憶を見る事が辛ければ……」




璻は少し考えた。

水に対して今まで勘違いをしていた。



…私は水が好きで大学まで綺麗な水分子の形しか知らなかった…



現実は綺麗な形ばかりではなくてさまざまな人間の経験を経て水分子が歪んだり、それによって感情を水分子が記憶することで過去のことで苦しめられたりすることを今日実感しやっと理解した。



困って助けを求めている狭山さんに対して今の私にできる事は


"目の前の現実から1ミリも目を逸らさず狭山さんサポートすることだ"



璻の決意は固まった。

真っ直ぐブレない視線で藤宮に進言する


「藤宮さん。狭山さんのサポートさせてください。ここまで来たんですから中途半端に投げるのは私の理に反します」



璻の熱意に応えるように藤宮が少し頷く


「わかりました。それでは狭山さんと約束した10分経つので行きましょうか。あっその前に……」



藤宮は床に置いてあった段ボールをあけ何か服が入ってるビニールを璻に渡す。



「これ喜三郎さんから、施術するようなら渡してくれと頼まれまして。」


璻は頭を軽くさげお礼を言った。


「ありがとうございます。」



璻は藤宮からビニール袋に入った服を受け取った。

璻はビニール袋から服を取り出すと中身は藤宮と同じ新品の黒い白衣だった



璻は嬉しくなり思わず黒い白衣を羽織る。


「わぁーっこれサイズぴったりですね」



璻は藤宮に「藤宮さん似合いますか?」と聞くと



「はいとっても。でもこれ仕上げが必要なので。すみません璻さん襟少し触りますよ」


藤宮は璻が羽織っていた黒い白衣の襟に触れたると「今回は竜胆でいきましょうか。」そう言った。


璻は???が頭に浮かぶ


藤宮は璻が着用している黒い白衣の襟を右手で触り左手で指パッチンするとおもむろに藤宮は何かを唱えた。



「竜胆来たる」


藤宮はそう言葉を放つと今まで無地だった璻の襟に重ね竜胆の和柄が浮かんだ。


「藤宮さんこれは?」


璻が不思議そうに藤宮を見つめる。


藤宮が部屋のドアまで歩きドアのぶに手をかけると振り向いた。


「今回の施術で使うんで。璻さんとりあえず黒い白衣来たまま狭山さんに声かけてもらえます?」


璻は藤宮に軽く頭を下げた。


…やっと仕事するって感じが出てきた…



「はい!藤宮さんありがとうございます」


藤宮は笑顔の璻の表情を確認すると藤宮もなぜかニコッと笑い表情が柔らかくなっていた。

藤宮は部屋を後にすると璻も藤宮の後から部屋を出ていく



藤宮の背後を見つめるとなぜか凛々しく感じた。

部屋を出ると狭山が横になっている施術台に行く。



璻は狭山に声を掛ける



「狭山さん、狭山さん」




狭山は目を開け気がつく



「私眠っていていましたね。すみません」



狭山は施術台から身体を起こすと藤宮は着ていた黒い白衣のポッケから小さい竜胆の組子細工を持つと藤宮は狭山に近づき跪く。



「狭山さんこちらの竜胆の組子細工を診察が終わるまで手に握って頂けますか?寝ている状態で問題ないので診察をはじめさせて頂きますね」




狭山は眠たい目をこすりながら


「はい。よろしくお願いします」



少し眠っていて回復したのだろう。

顔色が来た時より良くなっていた。



藤宮は棚にあった大判タオルを再度狭山に優しくかけると狭山が寝てる施術台から2〜3歩歩き少し離れてたところに立つ



璻を見て手招きする藤宮は小声で「璻さんはこっちに移動して俺の隣に居てもらってサポートをして頂けると」


璻はサッと藤宮の隣に向かった


「はい。承知しました。狭山さんの状態は私が見ますね」


「はい。よろしくお願いします。」


藤宮は璻に真剣に答える


藤宮は寝ている狭山を確認すると優しく静かな声で宣言した。


「では準備が整ったので狭山さんこれから見させて頂きます。」



 だが、これから狭山の残酷な過去を見てまさか璻自身が対処することになんてこの時は考えてもなかった。



。:*:★。:*:★━━補足ポイント━━★:*:。★:*:。


竜胆リンドウ


竜胆文様を使うにはきちんと意味があります。

竜胆模様を繋げていくと大きな輪が出来上がります。

物事と物事、人と人とを結ぶ縁が繋がっていくことで、日本では良縁祈願の意味が込められています。

藤宮や璻は組子細工の竜胆をメインに使います。それは人と人を繋げるという水流士という仕事だからという意味もありますが。竜胆の花言葉は「悲しんでいるあなたを愛する」という意味や「勝利」「正義感」「誠実」という意味もあります。


優男な藤宮にピッタリな花だなということで採用しました。


。:*:★。:*:★━━━━━━━━━★:*:。★:*:。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ