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水流士-因子を解く-  作者: 小野里
- 過干渉編 -

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第3話:新入社員の細かい業務把握




さて今日から業務開始が始まるんですが…




「なんですこれは…」




業務時間20分前に到着したはいいがエレベーターから

2階に上がりオフィスに入った途端、目の前に積まれた段ボール。




ガサガサと音がした先を見ると黒い白衣が見えた。

爽やかに段ボールを抱えている藤宮がそこに立っていた。




 藤宮が璻に気づくと話しかける。


「龍後さんおはようございます。無理やり入ると危ないので…退かすまで待ってもらえますか?」


藤宮は身体を回転させて周りながらオフィスの入り口にある段ボールを片付けてくれた。




 ……いや、なぜ回る。そして普通に片付けたほうが早くないか…




とりあえず、何があったかわからないけどテンションが上がっているのは確か。

ようやく足元が片付きオフィスに入れるようになった。



「ありがとうございます。藤宮さんこの大量の段ボールはなんですか。」




段ボールの中を不思議そうに覗き込む璻に藤宮に答える



「ああ、業務に必要な資料ですよ」



藤宮は段ボールの中身を少し開け璻に本や書類を見せた。


「もしかして必要な書類だったりしますか?でしたら私も片付けます」



璻は近くにあった段ボールを持とうとした。

藤宮は本や書類を段ボールに戻すと慌てながら璻に話しかける



「龍後さんの私物置いてから手伝ってもらえますか?その前に出勤記録‼︎」



璻は段ボールを持つのをやめると藤宮に聞く

「出勤記録ってどこにあります?」とオフィスをキョロキョロ見渡す




藤宮はオフィスの入り口まで歩くと壁にクリスタルが埋め込まれている。

面接の時は気づかなかったが手のひらサイズくらいの大きさだ。

藤宮は人差し指でクリスタルが埋め込まれてる壁をトントンと音を立てる



「とりあえず、ここオフィスの入り口にある正方形のクリスタルに手をかざして、出勤記録残してください。」


璻はクリスタルを凝視すると藤宮に返事を返した


「承知しました」



恐る恐るクリスタルに手をかざすと白色から緑色に変わった。

藤宮は出勤記録が出来たことを確認する。


「手をかざすと白色から緑色に変わるので変わったら手を離して大丈夫です」


璻はゆっくりとクリスタルから手を離す。

藤宮は璻に話しかける



「では荷物をテーブルに置いてもらって、一緒に段ボールを片付けていただけますか?」




棚に書類を戻し、段ボールを潰す事、1時間半やっと荷物が片付いた。



「藤宮さんちなみにこの荷物って私がこれから使う書類や本だったりします?」


藤宮は頷きながら璻の質問に答える。


「はい。龍後さんのもありますが、新しい資料とか一緒に届いてしまっていて。手伝ってもらって助かりました。ウチは隠者の称号なので極秘な仕事が多く一般コンシェルジュは入れないんですよね…コンシェルジュいると楽なんですけど」




藤宮は書類を確認し棚に戻すと璻もそれを見て作業を進める。




「そうなんですね。コンシェルジュちょうど家に置いてきて正解でした」




藤宮は棚にあった白い箱を取り出す



「はい。なので龍後さん専用の業務用のコンシェルジュを配りますね。これです」


藤宮は璻に渡すと璻はお礼を言う


「ありがとうございます。」



璻は白い箱を受け取り開けると青色の宝石で出来た卵が入っていた


「このコンシェルジュは使用者が見たいと思う形に変化します。オリハルコンを入れると浮きますし、姿が隠せます」

 

璻は驚きながら物珍しそうに見る


「形が変化し姿隠せるコンシェルジュって貴重ですね。水みたいです」


藤宮は頷きながら返事をする


「最初は卵型ですが使い続けると形が定まりますよ」




璻は藤宮が持っているコンシェルジュをそういえば見たことはなかった。



「ちなみに藤宮さんも同じの持ってるんですよね?どんな型なんですか?」



藤宮は黒い白衣から丸くなっているものを取り出す。

とぐろを巻いてるようにも見える


璻は驚きながら一歩後ろに下がる


「へっへっ蛇????私爬虫類は得意じゃ…」


慌てる璻に藤宮は驚くと声をかけた。


「落ち着いてよく見てください。ツノあるでしょ小型の金龍ですよ」


璻は藤宮の手に近づいてよく見ると金龍がぐっすりと眠っていた



「可愛い・・・」と璻は呟く


「こいつは滅多なことじゃないと使わないのでいつも仮眠モードにしてますね」


藤宮は黒い白衣のポケットに戻してしまう


「コンシェルジュの初期設定は済んでますからとりあえず書類だけ運びましょうか?」


璻に的確に指示をし段ボールから出してテーブルにあった大量の書類を分けていく。



30分後やっと書類も仕分けができてきた。




「龍後さんそのテーブルの上にある書類だけ棚にしまってください。龍後さんの部屋やロッカーはありますからあとで案内しますね」と書類を運びながら藤宮は璻に声をかける




棚に書類を入れる。




「藤宮さんその掃除機というので掃除するんですよね?」と璻は物珍しそうに藤宮に聞く


藤宮は掃除機を持ちつつ電源の入れ方を説明する


「このスイッチを押して押したり引いたりすると床が綺麗になります。」


璻は楽しそうに「承知しました」と返事をし藤宮から掃除機を貸してもらった。

埃がないよう隅々まで掃除機といわれる物を使いゴミを吸い込んでもらう。


璻は古い掃除機を使うのは初めてだった。


ー非常に非効率だけどみるみる綺麗になっていくのは楽しい!ー



2050年では部屋についてあるロボットに掃除してもらうのが普通で

大概綺麗になって過ごしている。


自分で掃除すると楽しい発見がたくさんあることに璻は気がつく。

ふと藤宮は掃除したことあるか気になった璻は藤宮に質問をする。


「藤宮さんは掃除機を使用した事ありました?」


唐突の質問に藤宮は驚くとうーんと考え込むと璻の質問に答えた。


「ここに入社する前までなかったですね。おばあちゃんの家に掃除用具であったのは覚えてますが…」


璻はふーんと答えると共感するように会話を続ける


「技術が発展してデータになったおかげで物が少なくなって整理整頓したりが無くなりましたものね」


藤宮も頷きながら答える


「はい。物があると税金がかけられたりしたので、その時以降に物自体少なくりましたね」


淡々とテーブルの上にある書類を片付ける

テーブルを拭きながら璻に声をかけた。



「あっ龍後さん掃除したらキッチンの左側に部屋があるのでそこのロッカーを荷物置き場として使ってください。とりあえず荷物置いたらテーブルに来て休憩しましょ」



藤宮は立ち上がるとゴミをまとめはじめた。



「はい。ありがとうございます」



璻は藤宮に指定された左側の部屋に行くとドアを開け、目の前にあるロッカーに荷物を入れた。

ドアを閉めて戻ると藤宮がキッチンにあるカモミールと書いてある瓶からティーポットにハーブを入れる。



「龍後さんそちらのソファで座ってて下さい。今お茶入れます。カモミール入れますけど飲みますか?」



藤宮はそう言うとかすかにカモミールの香が部屋の中に漂う。

璻はハーブの香に癒されながら「はい。お願いします」と笑顔で応えた。



キッチンの横にウォーターサーバーがあるのが見えた。

藤宮はポットの中に熱湯を入れ3分ほど蒸らす。

カモミールが入ったハーブティーのポットとカップをテーブルの上まで藤宮が運び璻が座ってる位置とは逆の対角線上に座る。



ポットに入ったハーブティーをカップに入れ座っている璻に渡す



「ありがとうございます。いただきます。」


暖かいカモミールに心がホッとする。


「カモミールのいい匂いですね」と璻は自然と笑顔になる


「はい。リラックス効果がありますね」ゆったりとした時間が流れる。


藤宮があっ……と何かに気がついた顔をした。


「仕事について説明しないといけないですね」と飲んでたハーブティーを机に置く


「そうですね。すっかりハーブティーを飲む事に夢中になってました」



璻も同じくハーブティーを置いた



「ゆっくり飲んでもらって構いませんよ。ざっと話すのでわからなかったらまた聞いてください。あと水流士の仕事は特に名前で呼び合うのが一般的ですので龍後さんが嫌でなければ璻さんとお名前でお呼びしてもよろしいでしょうか?」



藤宮は少し不安そうな表情で確認する。



璻はにこやかに答えた。

「問題ありませんよ。苗字呼びじゃないのですね。珍しい」


藤宮もなぜかニコッと笑って話し始める。


「はい。苗字は一族の名なので個人を特定する名前ではありません。水流士は個人の意見や名を大切にする職種なのと海外の方とも仕事するので」


璻はなぜだか軽く頭を下げた。


「名前で呼んでくれるってなんか新鮮ですね。よろしくお願いします」


藤宮は少し恥ずかしそうにしながらコホンっと言う


「まず璻さん。璻さんには助手という形で一緒に依頼主を見るところから始めて頂きます。わかりやすくこちらの映像を見てもらえますか」



机の端に置いてある六角形のクリスタルを藤宮が触ると3D映像が出てきた。

 

資料にはこう書かれていた。



 〜依頼主の手順〜


 ①依頼主から依頼を貰う

 ↓

 ②事前に依頼主からくる問題点や健康状態を把握

 ↓

 ③診察と軽いカウンセリング

 ↓依頼主の体内の水分子を観察

 ④水分子から記憶を読み取り原因になってる記憶の感情を探し因子を解く

 ↓

 ⑤その人に合うように水分子を構成。

 水道水に構築した水分子をスキャンさせて飲み水を変える

 


藤宮が書かれている内容を全て読み上げる



「ざっくり、こんな感じで水流士の仕事は進みます」



璻はゾッとする。


…やばい。かろうじて①②だけならわかる。でもあとがわからない…



璻が手を上げ恐る恐る手を挙げる。


「藤宮さん質問なんですが……」


「はい。璻さんどうぞ」


「①はわかりますけど②の問題点把握のところは藤宮さんと一緒に業務を行う感じでしょうか?」



璻は少し不安そうになっていた。



…一応聞くけど全部やれとか言って丸投げしないよね。きっと…




「そうですね。一緒に把握する事で璻さんの知見が広がるので一緒に業務を行います。④は璻さんと一緒にやり方を教えます。一緒に依頼主の記憶の感情を見つけましょう。⑤は璻さんには業務として難しいので俺が担当しますよ。初見で丸投げはパワハラだと俺は思ってます。施術台で依頼主の記憶を見るところまで一緒にやりましょう。」




ホッと心から安堵した璻は藤宮に話しかける

「よかったです。とりあえず全部丸投げされるかと思いましたよ」




藤宮は顔の前で手を左右に振り


「しません。しません。俺には思いつかない問題点や気づきをアドバイスいただけると嬉しいです」


璻は少しホッとする


…この人はいきなり無茶言わないんだな。そういえば今日は依頼主さん来るのかな?業務の内容を説明したってことはまさか…


璻の顔が少し険しくなる。


「わかりました。ちなみに今日は依頼主はいらっしゃいますか?」



璻は心の中で願っていた


…来ないと言ってくれた方が私的に嬉しいんですけど…


そんな璻の心の声が聞こえてるのか藤宮はニヤニヤしながら


「残念ながら今日は予約が入っていまして、お一人来られますよ。午後3時からですね。」


璻の嫌な予感は的中していた。

思わず心の中でツッコミを入れる。


…くっ来るんかーいい…



璻は右頬をピクピクさせながら

「まさか今日これから依頼主と問題点の把握から業務開始ですか?」


藤宮はハーブティーを飲み机に置く


「そういう事になりますね。飲みながらざっくり把握しましょうか」


璻は少しがっくりしたと同時に少しやる気と不安が入り混じる。


…初日だから説明聞くだけだと思ったけどちゃんと仕事させてくれるんだ…



藤宮は六角形のクリスタルに手をかざす。映像次から次に出てきた。

映像に指をかざして資料を選別する。

該当するプロフィールを発見すると藤宮は内容を読み上げた。



「今日の依頼主のプロフィールと依頼内容です。依頼主は狭山蘭という生物学的には女性の方で45歳、思想のチェック対象ではないです。またゲノム検査だとアレルギー体質で皮膚炎になりやすい遺伝子の持ち主。お仕事はコミュニティ運営とイベント会社をやられています。ご両親は5年前に病気と老衰で亡くなれてますね。プロフィールの内容はこんな感じですね。」




プロフィールが書かれているウインドウを小さくし依頼内容の資料を開いて画面を大きくすると続けて藤宮が読み上げる




「依頼内容は喉に何か詰まりやすく感じる。浮腫んでいて体温が下がりやすく常に寒い。肌が荒れる回数が多い。あと自分に合ってる水を替えたい。これらを引き起こしている根本的な原因を知りたい。どの病院の(西洋医学や東洋医学)に行っても改善されなかったとの事ですが……璻さんはこの方の依頼内容をご覧になって何か気になる事はありますか?」




璻は少し頭の中で考える。



この場合私が今の段階で藤宮さんと話し合える問題点は3つまで絞れる。



①喉に何か詰まりやすく感じる

②基礎体温が低く冷えやすい

③肌が荒れる回数が多い




…元々アレルギー体質ってことは炎症が起きやすい体質で腸内環境や血液が炎症して荒れてるのかもしれない。あとは体内の水のPHが酸性に傾いてるのかも。とりあえず藤宮さんに意見を言ってみるか…



「アレルギー体質の方は炎症が起きやすいため腸内環境荒れており、血液が炎症している可能性があります。あとは体内の水のPHが酸性に傾いている割合が多いとかですかね。一般的な私の情報だとこれくらいしか…」



璻は自信がないのか少し藤宮の顔色を伺う。




藤宮は思わす拍手をした。



「いい着目点です。つかみはOKですね。」



璻は褒められて嬉しくなったのかニヤッとするとすかさず藤宮は璻に対してアドバイスを言う


「大幅あっていますが、少し説明が不十分ですね。人間の身体は弱アルカリ性で出来ているので、酸性に傾きすぎると不調を起こしやすいですから弱アルカリ性の水が必要。この場合は具体的な解決策がある場合、問題点と解決策をセットに入れるとさらに良いですね。酸性の可能性はゼロじゃないですね。」


璻は藤宮の言葉が怒られている感覚になる。


…褒められたけどなんだろう心にグサグサと刺さる。確かに問題点しか言わなかったからね…


璻は藤宮の意見を聞きながら少し納得した。



「ありがとうございます。弱アルカリ性の水が必要までは考えてなかったですね。」


藤宮は璻を見ると続けて話しかけた。


「他の問題ではどうでしょうか?何か浮かぶことや気になることはありますでしょうか?」


うーんと璻は考える。



「喉のつまりはストレスで言いたい事が中々言えない環境かもしれません。依頼主にストレスはあるか自分に無理してないかをカウンセリングで聞くべき内容になりますかね。あとは食生活とか聞く事とか……うぬ……私の考えだとこれぐらいしか出てきませんね」



顔に手を当てて考える。璻はふと思った



…藤宮さんはいつもどういう観点で物事見てるんだろうか?…



璻は思い切って藤宮に質問する。

「藤宮さんはいつもどういう所に着目しながら問題点を洗い出してるんですか。お聞きしたいです!」



藤宮は少し考えてから璻の問いに答える

「俺の場合はこの方がいつからアレルギーが酷くなったのかと発症した時期が気になりますね。」


璻は藤宮の言葉が引っかかっていた。


(いつから発症したか?それってずっと前だよね?すぐ治ればいいってわけじゃないの?)



「いつ酷くなったかとか発症した時期って必要ですか」



璻には藤宮が言った言葉の意味がわからなかった。

藤宮はその場で座り直すと3D映像のプロフィールを見ながら


「重要ですし、必要です。それが幼少期なのか、小学生なのか中学生なのか?その時の感情がトラウマになっていまだに残っている事があります」



璻はさらに疑問に感じた。



「依頼主の幼い頃の記憶は必要になります?特にそんな重要ではないと感じるのですが」



藤宮は璻を見つめながら真剣な眼差しで語りかける



「アレルギー体質が発症した時の溜まっていた感情やフラストレーションは何に対して狭山さんが感情を強く感じていたのかを考えるべきですかね。でもこの場合下半身による水や血流が原因を引き起こしてる場合が多いです」



璻はそこまでの物事を考えたことがなかった。

藤宮がそこまで分析をしていることに唖然とする。



「下半身ですか…」



藤宮は続けて話しはじめた。



「基本、子供の時に強いトラウマがある場合は無意識の内に脳に刷り込んでいきます。それと似た出来事が大人になって起きた場合、たとえ本人が忘れても本人の潜在意識ではずっと覚えてる状態です。強いトラウマが癒えない場合大人になってある特定の感情を感じると、無意識に自分で出てきた感情を感じないように一瞬で蓋をするんです。まるでなかったことにするように。そのあと何事もなかったように他人に振る舞い。気づかないうちに精神的に参ったり、根本的に解決から目をそらしたりします」



璻は驚いて声も出なかった。



…幼い頃のトラウマってそんなに重要だって考えてこなかったけど依頼主本人にとっては根深い問題なんだ…




「では藤宮さんが考える問題点は依頼主が小さい頃に皮膚炎を発症した時に感情のトラウマを抱えていないか?根本の問題から目をそらし続けていないか?を依頼主本人の視点ではなく他者から見た考え方で見るってことで合ってます?」



藤宮は静かに頷くと璻の疑問に答える



「そうですね。でも大概カウンセリングで依頼主から聞いた内容と記憶を見た時の内容が相違することが多いですね。体内の水分子の記憶を探ると本人は特に気にしてもいない出来事だったり家族や友達、学校の先生からなんとなく言われた事に本人が無意識の中で深く心が傷ついてるパターンが多いです。」



璻は首を傾げながら質問をする

「ちなみになぜカウンセリングで聞いた内容と違うことが多いんでしょうか?」



藤宮ははぁっ…とため息をついた。




「それは依頼主本人のプライドとか見栄を張ってるのが本来の自分だと頑固に勘違いしているんですよ。大体が外面の本音です。内面を知られたくない方がほとんどなので常に本音を隠したいんですよ、あとは家族内のルールで無意識のうちに本音を隠してる方がいらっしゃいますね」




藤宮の話を聞きながら険しい表情をした璻は藤宮に言葉を返す



「そっか。大人になると責任とかありますね。私も藤宮さんから聞くまでそんなに深く考えた事なかったです」




藤宮は顔の前で手を左右に振る


「ごく一般の社会人は基本的にそこまで気がつきませんよ。ほんの20年前までお金主義、物質主義の社会でしたのでね。お金だけ稼げばそれでいいって人間は多くいましたし…」



璻はその言葉に頷く


「確かに物質主義の社会が崩壊してやっと精神面健康面を考える人たちが増えてきたからですかね」


藤宮は少し悲しそうな表情をする。


「人間は幼少期に起こった出来事や習慣また社会的な概念によって記憶に強く残ります。この業務は原因を起こしてる当時の記憶の感情に気づいてもらうこと。原因に紐付いてる感情から水分子を解読し正常な水分子の形を調整し水が定着するように支援すること。非常に繊細な業務ですがこの③カウンセリングと④水分子から記憶と感情を読み取る作業は水流士の要になる大事な業務です。」



璻は一瞬セラピストのような想像が頭の中に出てきた。


「業務内容がセラピーのような感じですね」


藤宮は璻の言葉にニヤッと笑う


「そうですね。ざっくり言うとそんな感じです。あとこの方が住んでる場所の水が身体に合わない場合もあるのでそこもお聞ききしたいところではあります。」



藤宮は六角形のクリスタルを触りながら再度プロフィールの映像を見直す

璻はまた藤宮に聞き返した


「なぜ住んでる場所の水なんですか?」



藤宮は璻の疑問に質問で質問を返す


「各地域で水のPHが違うのは璻さんご存知ですか?」


璻は自身を持って答える。


「はい。地域によって違いますね。」


藤宮は少し困った顔をしつつ続けて話す


「依頼主が住んでる地域で身体に合わない場合だったりまた最悪な場合は有害な有機化合物が溶け出している場合があります」



「えっ。それは違法行為じゃないですか!」


思わずソファを立つ璻に藤宮はふぅーと息を吐く



「はい。有害な有機化合物は世界法律でも違反にあたります。それも俺たち水流士が調べるのも業務になります。少し先の話ですがね…それも追々やりますよ。まずは依頼主を見ることが優先事後になります」




…なるほど。その作業も追々やるのか。仕事は思った以上にいっぱいですね…




「藤宮さんとりあえず承知しました。依頼主の業務内容結構繊細な判断が必要なんですね」


 璻が映像を見ながらポケットから持っていたペンを取り出す



「藤宮さん今の依頼主の内容を映像に書いてもいいですか?」


藤宮は璻の近場に映像を表示させると返事をする


「どうぞ」




「ありがとうございます。カウンセリングの観点と…」というと3D映像に璻は書き始めた



①現状の原因の把握と生活習慣聞き込み

②また幼少期に皮膚炎発症後にストレスだった事や似たような出来事があったか?

③感情を抑圧して育っていなかったか?

④家族内のルールがあったか?

⑤住んでいる水は身体に合っているか



映像に①〜⑤まで書き込みをする。



「これ事前にすり合わせして考え方合わせないと仕事しちゃうと大事故になりますね……」



璻はこの時間がなかったと想像するとゾッとする出来事になっていただろう。

容易に想像できる。


藤宮は六角形のクリスタルを触りながら



「そうなんですよね。カウンセリング作業はある程度問題点を絞り込んで事前にある程度想像できることを共有しそこから深掘りしないと大変なんです…」



そういうと藤宮の顔は少し絶望していた。

多分以前大変なことがあったんだろうと想像ができる。



「なるほどだからこの時間は大事なんですね」



藤宮は大事なことを言ってなかったことに気が付く。



「ああーそれと気がついた事があったら依頼主に質問していただいても大丈夫ですよ。ただし自然な会話の流れを読んで内容に適した質問してくれるとベストです。最初なので無理して質問しなくても問題はありません」




藤宮のその言葉には優しさを感じた。


…新人の私にちゃんとチャレンジする場面を作ってくれる。藤宮さんも依頼主も気づいていない箇所があるならそれは私の仕事だ…



璻は真剣に藤宮を見つめる


「わかりました。できる限りベストは尽くしますので」


藤宮は璻からその言葉が出ると思わなかった。

入社してすぐの新人だし、特にそこまで期待していないのになぜかその言葉を聞いた途端、藤宮はなんとなく思った。



…この人なら任せられると直感を感じる。今まで人は任せてもどうせ逃げるだろうと思ってたけど…



藤宮は不思議と少しニヤッとする



「ではよろしくお願いしますね。これから昼休憩になりますので1時間後に戻ってきてください。映像とハーブティーは俺が片付けますのでそのままで大丈夫です。」



よいしょっと立ち上がり藤宮は片付けようとする



藤宮に対して璻は声をかける


「1時間後ですね。ありがとうございます。お昼行ってきます」


璻はオフィスを出てエレベーター使い1階に降りた。

今日は何のお昼食べようかなと考えながらスタスタ歩く。

庭園を出るとすぐそばに和食のランチをやってる場所があった



店に入ると席に座りメニューを見てすぐに焼き魚定食を頼む。

今日の魚はタラだった。

白米が進み、お味噌汁が体に染みる。



その頃、ハーブティーと3D映像を片付け自分の椅子にようやく座る藤宮に喜三郎から連絡が入った。

音声をオンにすると元気そうな声が聞こえてくる。


「泉くん初日だけどどうよ?うまくやってるかい?」


藤宮は思わず…このクソジジィ…と思ってしまう。


喜三郎の声を聞いて藤宮は一気に不機嫌になった。


…今日出勤する予定だったのにあの人たちに呼ばれて初日に俺に丸投げって…


藤宮はボソッと呟く


「喜三郎さん……心配なら一旦出勤すればいいのに」


喜三郎は藤宮に対して謝る。


「心配だよ。でもね。今日はクニトコタチのガイアから直々にお呼び出しがあったの!ごめんて」



通話先から車のエンジン音が聞こえる。

車に乗っているんだろうか。


藤宮は喜三郎文句を言う。


「それはもう俺がどうこういう立場ではないので頑張って早めに帰ってきてくださいよ」


「話が早く進めばね。ところで璻さんどうよ」



 喜三郎は璻の様子が心配らしい。



それもそうだこの業務は繊細な作業が多く過去に3回ほど勤めた人が消えた。

喜三郎は璻さんが辞めないか心配するのも無理はない。


「段取りの把握もいいです。あぁ〜しいて言うと記憶や感情の問題点洗い出し所が少し乏しい感じしますけど」


藤宮はふぅーとため息を出すと喜三郎はフォローするように話を返す。


「それぐらいなら問題ないね。また依頼主が来てカウンセリング終わったら連絡するから報告してくれる?」



「わかりました。それにしても喜三郎さん、いつこっちに出勤するんですか?」


藤宮の声は少し怒っているように喜三郎には聞こえていた。


「拗ねないでよ〜早ければ明日そっちに出勤するけど、会議の内容が石屋の内容みたいだから時間かかるかもしらないね」


喜三郎から石屋と聞いてなぜか険しい顔をする藤宮はボソッと呟く。


「石屋関連ですか…少し厄介ですね」


喜三郎は少しやる気のない声で言葉を言い放つ


「これ長引かなけば明日出勤だし、長引いたら明後日以降かな出勤」



それを聞いた藤宮は右顔をピクピクさせながら少し怒り気味に文句を言う



「はあっっっつ?来週来るとか言わないでくださいね。こっち仕事溜まってるんですから」


喜三郎はちょっとふざけながら藤宮に対して答える


「大丈夫。俺がいなくて仕事溜まるし、悲しくて仕事進まない気持ちはわかるけど。文句言っている状態で仕事してもいいパフォーマンスは出ないぞ」



藤宮は喜三郎の言葉を聞いた瞬間なぜかグサッと胸に刺さっていた。


喜三郎の言ってることはよくわかる。

ごもっともだ。



「そうでしたね」と藤宮は口をアヒル口にさせながら言う


喜三郎は笑いながら答える

「変顔はいいからね。笑わせないでよ。」


すると藤宮はちょっと気持ちがスッとしたのか真剣に喜三郎に語りかける


「この仕事は水を通してして依頼主や水の滞りを流す仕事。問題を聞く側の我々がクリアな状態ではないと依頼主自身も改善点を素直に聞いてくれなくなる。新入りだった頃によく言ったの覚えてない?この仕事は相手や自分に愛を持って業務にあたるこれ鉄則って」



…懐かしい…




藤宮はその言葉に聞き覚えがある。

耳にタコができるくらいに喜三郎に言われ続けた言葉だ



「すみません。そうでしたね。愛を持って業務にあたる。これすっかり忘れてました。」そう答えると藤宮は少し笑う。



「龍後さん君とは性格は真逆だけど行き着く先は同じなんだよ。最初は緊張するかもしれないけど、泉くんとは絶対にいい仕事すると思う。大事な血縁者だ。我々でしっかり育てていこう」


少し落ち込む藤宮は喜三郎に返事をする


「はい……本人は気づいていませんがね」


喜三郎は笑いながらフォローする。


「あははそのうち気付くって。じゃぁまた連絡するから」


「はい。承知しました。では」


喜三郎の通話をオフすると椅子から立ち上がり藤宮は背伸びをする


「はぁ……昼飯やっと食えるよ。依頼主くるから早めに準備しよ」



藤宮はオフィスを出ると璻と同じ定食屋に入る

璻は食べ終わったのか定食屋にはいなかった。


店に入ると席に座りメニューを見てすぐに焼き魚定食を頼む。

今日の魚はタラだった。

白米が進みお味噌汁が体に染みる。


藤宮はふと食べながら喜三郎の言葉が気になった。



…でもなぜ璻さんと行き着く先は同じと言っていたけど、何が同じなんだろうか……



藤宮はいまいち理解出来なかった。急いで食べるとオフィスに戻り、依頼主の個人情報と資料を確認する。


オフィスから足音がする。1時間経って璻が帰ってきた。


藤宮は璻がお昼何食べたか気になっていた。


「おかえりなさい。璻さんお昼何食べましたか?」


「戻りました。焼き魚定食でタラ食べました。近くの和食屋で……」


 同じ内容だった事に非常に驚いた藤宮は話を返す。


「偶然だね。俺もタラ定食食べたよ」と話しつつ依頼主が来るのを今かと待っていた。




 ……この事言ってたのかもしれないな喜三郎さん……




その頃喜三郎は盛大にくしゃみをした。畳の上を静かに音を立てず歩く。


隣で扇子を持った青年が心配しながら覗き込む


「喜三郎さん風邪ですか?」


喜三郎は一歩下がると返答をする。


「いや、違いますよ。ただ勘違いしてる部下がいるようで……」



「そうですか。喜三郎さんの部署に新しい方が入社されたとか私もお目にかかりたいですねぇ」


そう言いながら扇子を開いて上品に笑う青年に対して喜三郎はハハハと軽く笑い応える



「新人なのでもう少し仕事に慣れたらご紹介いたしますよ」



「それは楽しみです。」と笑顔を向ける青年に少々苦笑いで喜三郎は応対した。


青年が少し前を歩いている姿を後ろで喜三郎はじっと見つめる


…このすらっとしている姿はさすが海神族の末裔と言うべきか…


青年は喜三郎に向かって振り返る

「ではこちらで。今回の件は石屋と深く関わりがあるそうで」



そういうと青年は襖をゆっくり開けた。

喜三郎はゆっくり中を見渡すと何人か待っている様子だった


「今回は隠者にあたる皆様に石屋の情報について共有いたします」と女性の声が聞こえた


青年は喜三郎が部屋の中に入ると周りを確認し青年自身も部屋の中に入り、襖をスッと閉める。


喜三郎は空いてる席に座ると青年は奥にいる女性の隣に立つ

青年は扇子を開きニヤッと不適な笑顔を浮かべた。


扇子で表情を綺麗に隠すと隣に座っている女性の方へ耳を傾けると次の言葉を待った。



。:*:★。:*:★━━補足ポイント━━★:*:。★:*:。


・水流士の業務手順


最初に水流士同士で依頼主の打ち合わせとすり合わせをします。すり合わせをすることで何を目的にやるかを明確にします。これはどの仕事でも一緒ですね。すり合わせ後にカウンセリングをします。カウンセリングで依頼主の困っている認識などを確認するためです。人の心を第一にする仕事なので基本は話し合いをします。


 

。:*:★。:*:★━━━━━━━━━★:*:。★:*:。

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