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水流士-因子を解く-  作者: 小野里
- プロローグ編 -
3/47

第2話:2度目の気まずい再会

      




久々に行政のビル来た。




2年ぶりになる。




ビルの中に入ると芝生に森と滝が広がっていた。

行政のビルはエントランスは人工森になっている。

人間のストレスを極力溜めないための空間になっている。





璻はビルの中を歩くと受付が見えた。





受付の人型コンシェルジュがにこやかに声をかける。



「2階に上がって頂きご自分でコンシェルジュを設定後に手続きをお願いします」と言うと




璻は「ありがとうございます」と言うと頭を下げた




歩き出すとオリハルコンという鉱物が装置されている透明なエレベーターに乗った。




このエレベーターは1人用のエレベーター





行政のエレベーターはパーソナルスペースエネルギーという人間から出る微量のエネルギーを図る機能が搭載されている。



パーソナルスペースエネルギーは別名:人間の波動測定と言われている。

人間の周りにはエネルギーが流れておりひと昔前だとオーラとも呼ばれていた。

スピリチュアルが化学で証明されるようになって人間の誤解を解くのにだいぶ時間がかかったらしい。


今では普通に認知されるようになった。




計測した本人のエネルギーによって行政エレベーターの大きさが変化する。



パーソナルスペースエネルギーが狭ければ狭いほど本人の理解度や認識力が浅いということがわかる。



15年程前からパーソナルスペースエネルギーを測る事が可能になったが健康評価とパーソナルスペースエネルギーはベーシックインカムに直結するため今の時代には欠かせない重要な役割を担っている。





璻は人よりエネルギーが大きくこのエレベーターに乗ると普通の人よりエレベーターが広く膨張するため




以前から非常に目立っていた





璻は恥ずかしそうにしながら顔を赤らめ下を向いていた





…これに乗るのは好きじゃないの‼︎みんなアイツだけエネルギーでかいなってなるじゃん…




2階に向かうと案内役の人間のホログラムが出てくる。


案内するコンシェルジュのタイプを性格と容姿と声を設定し自分で選ぶ事ができる。




璻はため息をつくと。




「はぁっ……何に考えずに選んでもいいけど、言い方キツイコンシェルジュだと気分が萎えるから丁寧なコンシェルジュで仕事案内してくれるように設定してこれで決定っと」




コンシェルジュは一瞬で璻が選んだ人に構成した。


高く柔らかい声で目が優しい女性の見た目を頼んだ。



璻はコンシェルジュに向かって

「仕事を探しに来たんですけど」と言うと



コンシェルジュは顔色を変えずに言い放つ


「生命コードの表示をお願いします」



璻は自分の生命コードが振られているコードを表示すると




「ありがとうございます。龍後璻様ようこそお越しくださいました。まず貴女様の思想を確認。思想チェック対象ではございません。健康状態は良好です。パーソナルスペースエネルギーの領域も変動はございませんでした」




…長いなぁ。だから行政に行くのが気進まなかったんだよな…





「璻様お疲れでしょうか?休憩されますか?」



心配するコンシェルジュに璻は少しムッとする。



…こいつらは平気で思ったことが秒で伝わるように設計されているから嘘ついた段階で全部丸わかりなんだった。すっかり忘れてた…



璻は嫌な顔をしながらコンシェルジュに文句を言った



「毎回考えてる事読むのやめてよ。」




コンシェルジュはただ淡々と話す



「貴女の頭から発する微量な電波を読み取り思考等も読み取れますがそちらの方が口を動かさず会話ができますよ。いかがされますか?」



璻は不機嫌になる。




…なんでいつもそうなの。なんのために口がついてると思ってるの?…




「それしなくていいの!みんな喋らなくなって口動かさないで考えただけで意思疎通できたら、口なんて喉なんていらないでしょ?私はちゃんと自分の足で歩いて地面の感触を感じたいし、顔周りの筋肉を動かして口使いたいのよ!私は生きてるって感じんのよ。コンシェルジュが発展しすぎてすぐその機能使うけど、私には必要ない!結構です」






不思議そうな顔してコンシェルジュは答える


「私たちを過大評価してくださりありがとうございます。ではお話を続けますね。貴女様の個人評価の内容に問題はありませんでした。では本題に入りますね。龍後璻様のゲノムコードから適正な職業を検索中です。確認が取れました。」



コンシェルジュがホログラムで仕事の内容を表示する。


「次のお仕事はこちらになります」と言うと。




璻は職種内容を見た瞬間目を丸くした。




ホログラムには2年前と同じ"水流士"と書かれていた。



 …またか……デジャブなの……




「2年前と同じ職業が書いてあるんだけど」




 コンシェルジュは表情を変えずに璻の疑問に答える。





「そちらは2年前も同じ質問を受けましたが。こちらの仕事はゲノム適正職種は90%になります。こちらの職種に関して詳しく説明はお答えできかねます。大変申し訳ございません。説明欄の内容も2年前と変わりません。璻様の才能を十分に活かす事が可能ですがいかがいたしましょうか?」




璻は言葉に詰まり思考を巡らせる。



迷った時は頭の中で小さい璻を当時させる事にしている。


頭の上でゴロゴロしながら小さい璻は




「1回くらい信じてみてもいいんじゃないかなぁ。」



なぜか耳元で囁く。



「でも私前回みたいに就職で失敗したくないし……」




小さい璻に不安をぶつける


…また退職させられたら嫌な気持ちになる…




小さい璻は眉毛を寄せながら呆れた顔をした



「まだそんなこと言ってるの?適合率が90%は多分この先中々ない職業だと思う。水の仕事に就けるならやる価値が絶対にあるんじゃない?」



…言ってることはごもっとも。水の仕事に就きたい気持ちは諦めていない…



なんだか気持ちがスッとした。



「確かに。1度や2度失敗してもまたやり直せばいいしね」


小さい璻はやる気になり手を出してきた


「それでこそ私よ」


なぜかハイタッチをして小さい璻は頭の中から消えた。

 

妄想から抜けるとコンシェルジュが話しかけてきた




「璻様お決めになりますか?」



璻は腹を据えてコンシェルジュをまっすぐ見る



「水流士やってみたいです。承諾書に生命コードの記載をお願いします」




コンシェルジュは丁寧に確認すると

「承知しました。ご確認いただき内容に不備はございませんか?」




璻も内容に目を通す不備は見当たらない。

「問題ありません。よろしくお願いします」



「本件の内容は受理されました」


ホログラムに受理しましたと表示が出る


璻はホッとした。


……よし帰って準備しょう。この場合3日ぐらいかかるかな……


コンシェルジュはすぐに璻に声をかける


「今先程、企業様から返信が来ました。3日後に面談の通達が来ました。今ご返信されますか?」



璻は目を丸くする



「早くない?3日後ですか?うーん」




璻は自分のコンシェルジュに話しかける



「3日後は予定組んでたっけ?」




即座に反応し「3日後のご予定はありません。」



璻はホッとしながら「予定は何もなかったから大丈夫ですよ」と言うと



コンシェルジュは検索しながらホログラムで地図の画像を出しつつ


「承知しました。3日後にこちらのビルで面接になりました。案内は貴女の専属のコンシェルジュに送りますので道案内はお任せくださいませ。また採用通知が来た際は個人業務許可証をお送りしますのでこちらも行政の方にお送りください。璻様他にご質問等ございますか。」




璻は特に質問することが見当たらなかった。



「面接に関して問題ありません。」



「こちらで以上になります。本日はありがとうございました。またご相談がありましたらお気軽にお越しくださいませ。」




コンシェルジュはそう言うと小さい粒子になり一瞬で消えた。




璻は頭を下げて「ありがとうございました」と呟いた。



そそくさと歩いてエレベーター向かい1階に降りた。

璻は早く帰りたくて仕方なかった。


歩きながら頭の中でツッコミをいれる


 …3日後に面接するって早くない?レスポンス早すぎ。びっくりしたわ。

とりあえず家帰って準備しょう。仕事内容聞いたり、業務時間聞いたり、福利厚生とか聞く事まとめおかなきゃ……



その日は寄り道せずまっすぐ自宅に帰った。




━━━━━━━━━━━━3日後の朝━━━━━━━━━━━━━━━




目が覚めるとすぐに着替えて準備をするコンシェルジュを起動すると璻は話しかける



「今日は問題なく起動してるから動いてくれるはず…おーい。返事して。」


そういうとちょっと気怠るい声で


「おはようございます。璻。本日の予定は面接日になります。あと3時間で面接が始まります。」



璻はちょっと拗ねながら答えた



「コンシェルジュなんだから気怠るそうにしなくてもいいのに」




「人間ぽく設定したのは貴女ですよ。」と捻くれながら応えた



璻はキッチンに立ってお湯を沸かしながら話を続ける



「私は個性的で対等なコンシェルジュがいたら嬉しいじゃない!人間だろうが機械だろうが上下関係とかないから」


コンシェルジュは少し照れながら「ありがとうございます。」と小声で呟く



璻は不思議と人間と喋っているみたいな感覚になる。




一人で暮らしててもあまり寂しさは感じない。



「どういたしまして。2年前の就職の手続きもこないだの退職届けも行政に連絡してくれたのもやってくれたじゃない?気遣いの天才だよ。本当」



璻はコップにお湯を注ぐ残ったお湯は茶碗に入れてインスタント味噌を入れてテーブルに置く。



「今日は和食食べたいの。温泉玉とご飯と納豆と味噌汁食べるんだけど、栄養素とミネラルは足りてるかな?」



コンシェルジュは食事内容を確認する



「野菜が足りないです。栄養補強ドリンクか野菜サラダのどちらがいいです?」




璻はすぐにサラダが頭の中で浮かんだ



「野菜サラダをチョイス!」



なぜかテンション高く強く主張をする。



コンシェルジュは怠そうに「はい。今注文したので5分後には玄関にサラダ届きますよ。」




璻は急いでトレーに箸を置き冷蔵庫にある温玉と納豆を出してテーブルに向かう。



玄関からピンポンと言う音が鳴り響く玄関のドアを開けると竹の籠にサラダが入って届いた。




玄関のドアを閉めてワクワクしながらテーブルに戻るとサラダを開ける




「今日はパプリカとトマトそれにレタスと水菜とカットした林檎のサラダ!素敵な組み合わせ!」


璻は手を合わせて合掌をしきちんと「いただきます」と言うとご飯をぺろりと食べ、食器を洗い面接の準備をする。



化粧をしバックを持って玄関を開けて外に出ると

再びコンシェルジュを再起動し璻の石オリハルコンを入れて宙に浮かせる。



オリハルコンは5年前に見つけられ非常に優秀な鉱物として非常に話題になった。

重力比率が少し軽くなる鉱物だとかで今では結構な物にオリハルコンを搭載している。

オリハルコンは地球の地殻の反発する石でもありこれに気づいた人たちがあらゆる物を開発し世の中に広く知れ渡った。

 



翠はコンシェルジュに笑顔を見せる


「面接先のビルまで案内を安全な道でよろしくね」


すかさずコンシェルジュは宙に浮きながら


「案内を開始しますね。」



面接の場所まで徒歩でゆっくりと案内してくれた。



大通りを歩いて20分ぐらいのところに着く。


コンシェルジュは止まる



「目的地はこちらになります。2階が今日の面接会場です。面接中は仮眠状態になるので必要な時はまたお呼びくださいね。」



璻はお礼をいう


「ありがとう」


コンシェルジュを璻の手元に戻す。



面接するビルの中に足を踏み入れると中は植物庭園になっていた。





花壇にはハーブが育ち、マーガレットやガーベラなどの花が咲いていた。




…季節が違う花が何種類も咲いている…



行政のビルの中にある人工森とは違う本物の森に入ったかのような静かで神秘的な空気



奥に進むとガラスのエレベーターがあり2階のボタンを押すとすぐに扉が閉まり、動き出した。




璻はドキドキしながらエレベーターが開くのを待つ。




2階に着きエレベーターが開くとウッドデッキが広がっていた。




木造で作られたオシャレなログハウスのようなオフィスがそこには広がっていた。




オフィスに一歩入ると木々の香がした。




ドアにある呼び出しチャイムを押す


深呼吸をしながら璻は大きな声で


「本日15時から面接を予定しております。龍後璻になりますが、担当の藤宮様いらっしゃいますでしょうか。」



というとゆっくりと扉が開いた。



一瞬顔を確認する璻は驚愕した。



開いた口が塞がらない。


見覚えのある顔に戸惑い一歩後ろに下がる



男性は鼻が高くシャープな印象で目は二重で大きく遠くから見ても健康的で品がありそうな見た目で珍しい黒い白衣。襟には竜胆の和柄、指にはネイル。




間違いない二度と会う事はないだろと思ってた。





璻は思わず口に出してしまう。



「あの時の顔だけイケてる残念な男性…公園で女性にビンタされて口から血を流した人」




藤宮は璻の言葉が少し気に入らなかったんだろう

眉間をぴくっとあげると思わず



「あっ……あの時の」




璻は絶望した。




オッ...オワッタ。




…初対面でのっけから悪口をぶっ放してしまった。

思ったことが思わず口に出てしまう悪い癖をここでも発動してしまった。

もう面接受からない。しかもまた今日も若干頬が腫れてるけどこの人大丈夫なのかなぁ……




「とりあえず中に入って面接しましょうか」と藤宮はいうと


璻は「はい。」といいオフィスの中に一歩入ると新緑の匂いがした。


藤宮は璻の様子を確認する




…絶対落ちたって顔してるな。とりあえず温かいハーブティー入れるか…





藤宮は優しく璻に声をかける


「そこのソファとテーブルにかけてお茶何飲みます?緊張してるからレモンバーベナーで大丈夫ですか?龍後さんアレルギーありませんでしたよね?」



璻は緊張しながら藤宮の質問に答える。


「はいアレルギーないです。お気になさらないでください。面接なのにわざわざハーブティー入れてくれるんですか?」




…面接の時にハーブティー出すって聞いたことないけど…





藤宮はそんなことを聞いてくる璻を不思議に思いながら



「とりあえず立って面接はしないので、あそこのテーブルのソファにいてもらえますか?」



璻にソファに座るように言うとソファまで移動する



小さなキッチンに立つと鍋に水を入れて沸かし始める。



藤宮は手を動かしながら璻に語りかける



「ハーブティーを入れるのは面接だろうとお客様ですからね。リラックスして話してくれると私もあなたも嬉しいですよね。ホスピタリティってやつですよ」


棚からガラスビンを取り出してレモンバーベナーをガラスのポットの中に入れる。


お湯が沸いて鍋のお湯をポットに入れるときれいな緑の葉がぷかぷかと浮きお湯が少しずつ黄色に色づき始める。




木のトレーに龍型の置物とレモンバーベナーのハーブティーが入ったガラスのポットとティーカップを置き、璻がいるテーブルに向かう。




龍型の置物をテーブルの隅に置くと璻の目の前にカップとポットを置いた。



璻は驚いた表情を浮かべた。



…その龍型の置物は指摘するべきか、いやいや、もう無駄に口を開くと余計なことしか私は言わない。やめとこ…



ハーブティーを注ぐと藤宮は璻に


「どうぞソファにかけてください。こちら下の庭園で取れたハーブです」


璻が座ろうとしてる場所にカップを渡す



璻はソファにかけお礼を言った


「ありがとうございます」


藤宮は璻と反対側のソファに座り対面する形になる。


ふと何か大事なことをやってない事に気がついた藤宮は




「大変失礼しました。その前に自己紹介忘れていましたね。藤宮泉と申します。32歳の魚座で水流士は6年目になりました。よろしくお願いします。」と頭を下げ一礼する。




璻も慌てながら自己紹介をする


「自己紹介頂きありがとございます。私も自己紹介させて頂きます。龍後璻と申します。26歳、射手座です。本日はお時間を頂きありがとうございます」



「いえ、こちらこそ。お時間頂きありがとうございます。」


藤宮は優雅にハーブティーを飲み始める。




「さぁ。よければどうぞ」と言われ

璻はハーブティーが入ったカップを持ち上げ香りを楽しみ




「いい香りのハーブティーですね」と話すとゆっくりハーブティーを飲んだ。




 (おっ…美味しい今まで飲んだことないハーブティーなんだけど、水の味が全然違う。何だこれ)



 藤宮は璻の顔を見ながら少しニヤニヤした。



「水の味違うの気づきました?これは水の分子から調合してハーブティーに合う水に調合しました」と藤宮は微笑む。


璻は前のめりになり藤宮に近づく



「どうやって調合したんですか?そもそも水の調合できるのですか?」



藤宮は少しびっくりしながら顔を赤らめる



「龍後さん顔近いです。びっくりしちゃうので」



璻は我にかえりソファに座り直すと



「すみません。大変失礼いたしました。」


藤宮から一旦離れた



何もなかったように藤宮はハーブティーを飲み続け少し璻に微笑む



「いえ、そんなに興味あります?知りたいですか?」



「知りたいです!この仕事と関係ありますよね」


目をキラキラさせながら璻は応えた。




「もちろんあります。この仕事は水を扱う仕事になります。龍後さんには私の助手として水分子の調整と記憶を紐解く業務を一緒にこなして頂きます。」




璻は久しぶりに水に関われる事に興味が湧いたが、冷静に考えて




…いやいや、水の調整と記憶を紐解くってどうやってやるんだ?まず詳しくどういう仕事なのかを聞かないと……





「もう少し具体的に説明して頂けますでしょうか?まず水流士という職業に関して検索かけても情報は一切なく世の中に出回ってないので何の仕事なのかわからないです。行政のコンシェルジュに聞いても説明できないと言われ、なんの職業に就くのか少し不安です」




藤宮は璻の言葉を聞くと笑いながら応えた。



「それもそうですね。説明不足で大変失礼致しました。そもそもこの水流士の仕事が隠者という称号がある仕事だからですね」



璻は頭の上に大きく?がついた。




璻は「隠者って何ですか?」というと言ってる意味がわからないように見える。



それを聞いた藤宮は一般的ではないことを璻の発言で改めて認識した。



「隠者は表に出ない世界政府の仕事のことを指します。隠者の称号にあたる職業は世界で数百名と言われています。」



「と言うと世界政府の秘密な職業だったから検索かけても出ないと」




「はい。その解釈で合ってます。納得して頂けましたか?」




「はい。いや、そうですね。というかそれを聞いて驚いしまって……私は世界政府に関わる仕事の面接を受けている訳ですね。」




藤宮は淡々と説明をする




「そうなりますね。では次に業務内容からきちんと説明しますね。まず水流士の業務内容は主に2つあります。

1つ目は依頼が来るので依頼主の体内の水を変えること。弊社は一見さんお断りシステムなので以前いらっしゃった方に紹介して頂き新しい依頼主が尋ねてきます。」






「体内の水?はよくわかりませんが人を見る仕事なんですね。しかも一見さんお断りシステムって少し面白いですね」



藤宮はふふふと笑うと仕事について丁寧に説明を始めた。



「この仕事は依頼主の過去の出来事を体内の水分子を通してみる仕事です。まず依頼主と軽いカウンセリングを行い体内の水の状態と記憶を見つつ本人の希望に寄り添い正常な水分子に少し調整していきます。」




「内容だけ聞くと予防医療に近い内容ですね」



璻は藤宮に尋ねると藤宮は頷きながら答え始める



「そうです。一般医療は緊急性が高く今すぐ治療しないと命に関わりますが予防医療はその人のなんとなく感じる不調や生活習慣を見直すきっかけにする事がメインになりますね。」



璻はうーんと言うと少し悩み




「カウンセリングはなんとなくわかるんですが、依頼主の体内の水を調整して記憶見るってどういう事でしょうか?さっぱりわからなくて」




「そうですよね。最初依頼主にも説明するんですけど、毎回皆さんそういう反応されます。よく魔法か錬金術かって言われますよ」




 璻は思わず藤宮のふわっとした内容に即座に突っ込んでいく。



「いや、その説明ですとそう思われますよ!記憶を見るのは正直わかりませんが……水の調整はなんとなく想像がつきます。」




藤宮は璻の考えに非常に興味を持ったのでその考えを聞いてみたいと思った。



「そのなんとなくの想像が非常に気になります。聞かせて頂けますか?」




璻を見ると少し緊張しながら説明する




「はい。まず水を作る際に水分子をつくる必要があります。一般的に水を作る際に酸素と水素が共有結合して水が構成されます。まさか結合する時に発生する微量の電気を調整するって考えで合ってます?」




藤宮はニヤリとしながら「大当たりです。」と拍手をする




まさか予想した内容の回答だった事に驚いた。




「分子レベルの話ですよ。目では確認できない仕事になりますよね?」



璻は藤宮を少し疑った。



…そんなことできる人聞いた事ないけど…




「そうです。目に見えるものしか信じない社会的概念、物質概念に囚われてる方と脳内器具を埋め込んでる方はこの仕事は出来ません。感覚と経験が頼りになります。幸いにもゲノムの配列や現状の健康評価から非常に健康的な方を探し尚且つ水に知見がある方を探していました。」



璻は脳内器具をつけていないが森に引きこもり仙人みたいな暮らしは生まれてこの方今まで一度もしていない。なぜ自分が選ばれたのか疑問が湧いた。




…深読みしても面接では答えてくれなさそう…



あまり深く考えるのをやめて璻は能天気に笑った。


「なるほど。私健康ですものね。それで私に白羽の矢が立ったわけですか……」



璻は自分に指を刺すと藤宮はまじまじと見つめる



「そうです。貴女は水の研究も大学でなさってらっしゃったと拝見しご連絡させていただきました。それは通常業務になりますが水流士にはもう一つ大事な仕事があります。どっちかというとこっちがメインになりますね。」



真剣な目つきで璻に話しかけた。



藤宮はハーブティーを一口飲みカップをテーブルの上に置いた。


「2つ目の仕事は自然にある水路や水脈の調整です。出張で水を調べに行きその地域に合った水に調整をします。こちらは経験を積んでからになりますが…」



璻は静かに手を挙げてながら藤宮に聞く

「質問があります」



「はい。龍後さんどうぞ」と藤宮が答える



「最初は依頼主の水の調整と記憶を見つつ仕事をこなして仕事が出来てきたら出張で自然な水を調整すると」

 


「はいその順番で合ってます。俺の上司は上田喜三郎さんという水の研究の第一人者でその方の評価で2つ目の仕事に行けるか判断します」





聞いた事がある名前に璻は耳を疑った。



「上田喜三郎……」と小さく呟いた。




藤宮はすっかりいい忘れていた事に気付く。



「あ。喜三郎さんはあとから来るようですのでお会いになるといいです」



璻は思わずソファから立ち叫んだ




「思い出したぁぁぁぁぁぁ」




藤宮はその様子を見て唖然とする。



璻は早口で藤宮に上田喜三郎という人の説明をする


「えぇぇぇー⁉︎上田喜三郎さんって水の研究の第一人者で世界で飛び回って大学で講義しつつ本も執筆して書いててダンディーで鍛えててスマートなおじ様のあの?あの方ですかぁぁー‼︎」



声が大きすぎて外に聞こえるレベルだった



藤宮は思わず耳を塞ぐとすぐさま注意をする



「龍後さん落ち着いて近所迷惑です」


璻はシュンと落ち込んだ


「すみません。つい……」



璻は一呼吸しソファに座る



藤宮はふっと笑うと



「喜三郎さん好きなんですね」




「本は何回も読みましたよ!講義も2回ほど受けました」と自慢げに藤宮に言う



藤宮は「そうなんですか……それはもうファンですね」とくすくすと笑った。



璻はすこし恥ずかしくなって座り直す。

そういえば面接以外に試験があるのか聞くのを忘れていたことに気がついた。



「ちなみに今日の面接以外に入社試験ありますか?何も聞いていないので準備せずに来てしまったんですが……」



ハーブティーを飲みながら藤宮はカップを置いた。



藤宮は少し慌てながらソファから立ち上がる


「楽しくてすっかり忘れていました。今から入社試験をしますね。場所を移しましょうか?」


璻は思わず立ち上がると藤宮の後ろを璻はトボトボとついていく。



…いや試験あるんかーい。というかどこに行くんだろうか…


璻は思わず頭の中でツッコミを入れるとなぜか冷静になった。




キッチンから右にあるドアを開けて中に入ると部屋の中に観葉植物が天井からぶら下がっていた。




机の上には空のフラスコと試験管立ての中に2つ試験管が置いてあり液体が入ってのが見える。



組子細工の竜胆1個と組子細工の竜胆同じ模様が机の上に書いてある。




藤宮は振り返り璻を見る



「ここです。今から2つの水分子見せるのでどんな形に見えるか?と水分子の中にある記憶がみえたら詳細に教えてください」




……いや、まずどうやってみるのか教えてくれ‼︎…




璻は恐る恐る藤宮に聞く


「普通に見るだけでいいのですか?あのぉ〜コンシェルジュ使いながら見るのは……」



「絶対にダメです。普通に肉眼で見てください。使用は禁止です。」


藤宮は少し怒ったように見えた。



璻は胸に手を当て深呼吸する。



 ……落ち着いて、私。今ちょっとでも焦ってる自分がいた。この人は私が水分子を見えると信じてくれてるから今のベストを尽くそう。ダメならまた考えればいい……




璻は息を吸って大きく吐いてから。




「承知しました。始めてください」


藤宮はにこやかに「では、始めさせて頂きますね」というと水が入った2つの試験管立てを机の中央に置くと2つの内の1つの試験管のふちを叩き藤宮は手を合わせボソッと一言言葉を放つ。




「払い給い清め給う」




試験管から水が勝手に出て水が宙に浮き始めた。



璻は驚いて声も出ない。





……なんだこれ、オリハルコンも無しに水だけでどういう仕組みで浮いてるのか……





藤宮は合わせていた手を解き、手の上に宙に浮いた水を見せる。



「今液体の状態なので、見やすいと思います。さて、俺の方で液体を広げるので龍後さんは水分子の形を教えてください」


藤宮はまた手を合わせて水を見ながら




「水面よ記憶を開示せよ」




静かに唱えると宙に浮いた水を藤宮自身の手で広げ始める。



璻の目には水がキラキラと輝き見える。


目を凝らしながら水を見ていると小さい丸がくっつき六角形に見えた。


璻は驚きながら藤宮を見た


「わあああ本当だ。水分子が六角形に見えます‼︎」と藤宮の嬉しそうに語る


「ちなみにこの六角形に触れて見えるものはありますか?」


璻は少し不安になりながら「これ触れるんですか???」と藤宮に確認を取る



「はい。触れられます。触れると記憶が見えるので教えてくださいね」



璻は六角形に見える水分子に恐る恐る人差し指を近づけ少し触った。




璻は思わず目を瞑った。




ポッチャンと音がした




目を開けると次の瞬間ザーザーと川の音がする。


大きく深呼吸すると森の匂いがした。

蝉が鳴いているのが見える




…山と森の情景だ。ここはどこだろう…





川に手を触れる子供笑いながら母親と父親だろうか?一緒に川に入っているのが見える。



「お父さん〜魚いるよ〜」っと子供の声がした




……なんだこれ、ちょっと怖い……




璻がそう思った瞬間、水分子に触れてた指を離した。


不安そうに藤宮を見ると「何か見えましたか?」


「山と森、場所はどこかわからないです。川に触れてる子供と母と父がいる家族で笑っていました」


それを聞いた藤宮は「そこまで見えるとは上出来です。喜三郎さんと獅子子さんの言った通りですね。」



璻はポカーンとした。


なぜ見えているのだろうかわけがわからない。

思わず藤宮に疑問をぶつける。



「どういう仕組みで見えるんですか?」



藤宮は少し考えて突然笑い出した



「あははは。そりゃそうですよね。普通の人がこの状態で見えるってすごい事ですよね。ポカーンとするのもわかります。」


何がおかしいのか璻には全く理解できなかった。



「すみません。突然笑い出して。これはあるゲノムがある人間しか見えない構造なんです。ゲノム配列にも寄るんですけどね。貴女はあまり動揺せず水の記憶が見えてることに驚いてしまって。」



「いや動揺してますけど、どういうゲノムとどういう仕組みか気になります」



璻の目には興味あります‼︎ワクワクします‼︎と藤宮に訴えかけるように見える



「今から説明しますからね。この特殊なゲノムはだいぶ昔に水軍と言われた一族しか持ってないゲノムなんですよ。ただ欠点があってこのゲノムがある人間は特にコンシェルジュがよく調子悪くなったり不具合起こしたりするんですよ」



璻は思い当たる節がいくつも出てきた。


「そういえばよく調子悪くなったりしましたね。そういう事だったんですね。」


なぜか納得をした。



璻は一瞬ふと考えがよぎった。


「ちなみに水分子が見えるのは祖先とか関係ありますか?」



「そりゃゲノム検査だから祖先は必ず関係ありますよ」

藤宮は当たり前だろうと言わんばかりの顔をする。




「そっ……そうですか……」


璻は一瞬母親の顔が浮かんだが、すぐ考えるのをやめた。



藤宮は少し顔を歪めながら悲しそうな声で語る。

「形に触れて記憶が読めるのはその体験や記憶がある人間しか読めない。俺にはその記憶は見えないんですよ」




今の璻にその言葉の本当の意味は理解できなかった。


…なんで藤宮さん少し悲しそうなんだろうか…




藤宮はさっきの発言と気持ちを切り替えたのか璻に少し微笑む




「そういえば以前公園でお会いした時に龍後さんが水は記憶するものだと言ってましたね。あれは水の中に他の水分子と結合時する際複数の水分子が微量の電気が発生し六角形になります。」




璻は頭の上にH2Oを6個合わせる絵を頭の中で描く





「六角形になると結合した他の水分子と微量の電気で情報を交換するように出来てます。」



璻はH2Oが頭の中で手紙交換をしてる姿を妄想してふふふふっとにやけてしまった。



「非常に興味深いですね。水分子それぞれ手紙交換するんですか?」



璻はにやけながら藤宮に嬉しそうに話した。



「手紙交換するってなかなかレトロな発想ですね。そんな感じですね。交流する際に微量の電気が発生するんですがその水分子が持っている記憶が流れ六角形の中に映し出される事がわかってます。そしてなぜか特定のゲノムを持ってる人間だけ見れる。それが水流士になれる条件になります」




藤宮は宙に浮いた水を一箇所に集め空の試験管の中に戻した。



「もう一つもあるんでそちらも見ましょうか」と璻を見る


「2つ目の試験管の方ですね。承知しました。」


先程とは違う2個目の試験管のふちを指で叩くとまた藤宮は手を合わせる




「払い給い清め給う」




また試験管から水が出て宙に浮き始めると

藤宮はさっきと同じ手順で手を合わせる




「水面よ記憶を開示せよ」





宙に浮いた水を藤宮自身の手で広げ始める。


その水を見た瞬間、璻は嫌な予感を感じた。


…さっき見た水より何故か輝きを感じない…


水を見ていると小さい丸がくっついて六角形になっていたが形自体が歪に見える。


「藤宮さんこの六角形ですけど先程のと違って一辺の長さがそれぞれ違います。さっきは一辺が同じ長さでした。」



藤宮はニコッと笑う


「報告ありがとうございます。では、その六角形に触れて見ましょうか」




「はい。」というと恐る恐る人差し指を六角形に触れる





璻はまた目を瞑った。





ジャボンとさっきとは違う雑な音が耳の中まで響き渡る。





工場の近くを水道管を通して水が運ばれ、蛇口をひねって水道水をコップに注ぐ。

コップが机の上に置かれるとそこには子供と母親だろうか?話しているのが見える。




母親は子供の頬を叩く

バチンッと音が部屋に反響する。

「なんでこんな事もできないの!」と叫び頭を抱える倒れ込む母親。




それを見た子供は「ごめんなさい」と母親に駆け寄る。




母親は「生活するにはお金がかかるの!あなたは払えるの?」と叫んだ



激怒しているのが見える。子供が震え泣くのが璻には見えた。




藤宮はさっきより長い時間見てる事に気がつき璻の肩をゆらす。



璻はハッとし意識を戻す



「璻さん大丈夫ですか?」と声をかける


璻は少し落ち込みながら「ありがとうございます。声をかけてくださって」


璻は藤宮に記憶の内容を元気のない声で報告する



「工場の近くにある水の記憶でした。水道水からコップに入れ子供と母親がいて、

こんなこともできなの‼︎と母親は激怒し子供に手を上げてました」




藤宮は「はい。ありがとうございます。この水は工場の近くの家庭の水道水から取りました。辛い記憶を見させてしまい気分を害してしまってすみませんでした。」




というと藤宮は水を集め試験管に戻し試験管立てを机の隅に置いた。



璻には衝撃的な記憶だった。



「このような記憶も水は写し出すのですね。知りませんでした」




藤宮はふぅーと息を吐くと少し背伸びをした。



「とりあえず終わったのでこの部屋を出てソファに戻りますか」



藤宮が歩くと璻も藤宮の後ろをついていき部屋から出るとドアを開けハーブティーを飲んでいたソファに戻り座る。




「では採用試験と面接は終了になります。お疲れ様でした。さて。」




藤宮がテーブルの上に置いていた龍の型置物に向かって



「喜三郎さん今リアルタイムで見てるんですよね?龍後さんの能力いかがですか?」



璻は急な藤宮の行動に驚くと確かに“喜三郎さん”と言ったのが聞こえた。

こんなにも推しおじぃの名前を聞き逃す璻ではない。





「喜三郎さん⁈どこですか?」

ワクワクしながらあたりを見渡すと顔を左右に振る




渋く透き通る芯のある声が聞こえた。



「いや〜面接終わってからこっちから話しかけるつもりだったのに」


机の上に上がってあった龍の型の置物がゆっくりと動き上を向くと口をパカっとあけると口から光が出てきて映像が映し出された。


動作が1テンポ遅く鈍臭いように思えた。

これも龍の型の置物の愛嬌なのかよくわからない



…ダァ…ダサい。なんだろう。この面接が疲れたのかわからないが、もうこれ以上無駄に驚きたくない…




気にせずに見続けると小さいサイズの人間が映し出された。



白髪が少し混じる黒髪で渋めな顔つき着ている服の袖が少しパツパツに感じる筋肉の多さ、毎日鍛えてるのがわかる。



「なんで話しかけちゃうのかなぁ。藤宮くんのいけず」



「俺サプライズ嫌いって知ってますよね。龍後さんに嘘付き続けるのもどうかと思いますよ」


藤宮は呆れながら話を続ける。


「嘘はついてないよぉ〜言い方に気をつけてよ。そんな事言ってる場合じゃないね。初めまして龍後璻さん。私は……」




璻は龍の置物に向かって前のめりになりながら

「上田喜三郎さんじゃないですか‼︎ずっーとこちらにいらっしゃったんですか!」




藤宮はため息をついて頭を下げる




「璻さんすいません。私から説明します。喜三郎さんは別の仕事で立て込んでまして今日は遠隔3Dで対応していました。」


喜三郎は頭を触りながら申し訳なさそうに話す


「そうなんだよね。急に仕事が入って今移動中。面接キャンセルしようかと思ったけど、これなら可能かなと。直接出向けなくて申し訳ない」



喜三郎は頭を下げて謝っていた。



璻は少し困った様子で聞き返す


「じゃあもしかして最初からいらっしゃっていたんですか……」



「はい。騙すつもりはなかったんです……言い出すタイミングが掴めなくて」

と申しわけなさそうにする喜三郎に対して




璻は恥ずかしそうに喜三郎に笑顔を向ける


「おっおっ…お会いしたかので最初からいらっしゃってたら緊張して藤宮さんともお話が出来なかったかも知れません。サプライズありがとうございます。嬉しいですっっ」



 喜三郎は笑いながら藤宮を見る



「怒ってるのかと思っちゃっておじさんヒヤヒヤしたよ。だってよ藤宮くん」




藤宮は少し頭を抱えた。

中年のムキムキおじさんと若い俺と明らかに態度が違う


…俺の時と対応が違うぞ…


藤宮はため息を出す


「はぁっ…俺はサプライズ苦手なんです。龍後さん本当に喜三郎さんのファンなんですね……」



璻はアイドルを見るような眼差しで喜三郎を見ていた。


ニヤニヤしながら藤宮に璻は話しかける


「はい。嬉しかったですが、これは内定になるかわかりませんが……」



自分で言って置いてなぜか落ち込む璻に



藤宮と喜三郎は顔を合わせ手を左右に振った


藤宮は小声で喜三郎に話しかける

「明らかに落ち込んでるんですけど喜三郎さんなんとかフォローしてくださいよ」



藤宮は喜三郎に助けを求めると



喜三郎は淡々と璻の疑問に答える



「いや、龍後さん内定だよ。ねぇ?藤宮くん異論はないでしょ。」




藤宮は顔を指で少し掻きながら



「あるわけないじゃないですか。龍後さんは貴重な人材です。それに記憶をしっかり見れるタイプですし水分子の記憶を見た時に俺が見えなかった記憶が見えました。記憶を見た時の感情も穏やかですし、固定概念に縛られず自分の意見を言える素直さを見るといい水流士になると思います。多面的に見る能力は必要不可欠な仕事ですので」



璻は驚きながら

「藤宮さんは私の感情の動きがわかるのですか?」



 喜三郎はすかさず藤宮のフォローを入れる


「藤宮くんは感情が読み取れるゲノムを持っていてね。他の人の感情を無意識で読み取るんだ。なんだっけ……そういうの……」というと腕を組んで何か思い出そうとする。




あっと言うと喜三郎は




「思い出した。一般的に超感覚と言う能力だね。すごく繊細なんだよ。本人も疲れきってしまうからあまり多くの人は見れないんだ」




「藤宮さんすごいですね」



璻は思わずその場で拍手をし褒めた



藤宮の顔が少し嫌そうな顔をした。





「いや幼い頃から今までこの能力で苦労した事がいくつもありますよ。龍後さんは気持ち悪いとか思いませんか?仕事一緒にやっていけますか?」と俯く藤宮に




璻は堂々と「そんな事思わないです。素晴らしい才能じゃないですか」




藤宮は今まで言われたことがなかった言葉だったのでつい、ふっと笑い。

「ありがとうございます。純粋に褒めて頂けると嬉しいですね」




喜三郎は少し安心した。




……藤宮くんとは仲良くやっていけそうだな……




「君たちはバランスが取れそうなコンビだね。よかったよ。龍後さん行政に内定通知提出するから個人業務許可証にサインして行政に送ってね。一様再来週からこちらで勤務という形でよろしいかな。」



璻はその言葉を聞いた瞬間なぜか身が引き締まる気持ちになった

希望が璻の中で生まれはじめた瞬間だった。


しっかりと喜三郎に向かって応えた。


「問題ありません。こちらこそよろしくお願いします。」



璻は頭を下げると喜三郎は手をバシっと叩き




「ではこれにて面接は終わり!龍後さん今日は来てくれてありがとうございました。」と喜三郎は翠に一礼をする




喜三郎は藤宮に「藤宮くん龍後さんを一階の入り口まで送って行ってあげてください。あとで業務連絡があるのでまた連絡してくださいね。


「承知しました」


藤宮は喜三郎を見つめる



「では龍後さん失礼します」



喜三郎は一礼をするとすぐ連絡を切った



藤宮は璻に話しかける



「とりあえず忘れ物がないか確認して1階までお送りしますね」


「はい」


璻はソファから立ち上がると忘れ物がないか確認した。


…多分大丈夫…


璻は藤宮に「大丈夫です。1階までお願いします」というと


藤宮は優しく微笑み



「喜んでお見送りさせていただきますね」



エスコートするように藤宮は歩幅を合わせて歩いてくれる。



オフィスを出てエレベーターに一緒に乗り込むと璻は藤宮にずっと聞きたかった事を聞いてみる事にした。




「藤宮さん。お聞きしてもいいですか?」


「はいなんでしょう」


「今日の藤宮さんの頬が少し腫れてるのですが大丈夫ですか?」


 藤宮は一瞬驚いた。


……いや、朝頬治したのになぜわかったんた?まだ腫れてたのか?…


藤宮は少し動揺しながら

「そうですね。一昨日ちょっと人と喧嘩をして怪我しました。困ったもので…」




璻はハッとした。




遅いのかもしれないけど

これは聞いてはいけなかったのかもしれないと感じた。




璻は藤宮に気を遣いながら



「すみません。余計な事を聞いてしまって。さっきの相手の感情が読めるって話だったから藤宮さんきっと相手のやりたい事を先に読んで動いてそれで誤解されたり怪我してるのかなと」




藤宮は璻がここまで無意識で把握してることに驚いてしまった




エレベーターの中は無言になった



……やっちまった。私、きっ聞かなきゃよかった……



エレベーターが開くと藤宮が扉に手を置きながら璻を先に出るように促す。



庭園を歩きながら藤宮は璻の疑問に答える


「大当たりですね。その人の背景や感情も考えながら動く癖があるというか無意識なんだと思います。相手を思って行動したのに違ったみたいな事は多々ありますね。最近結構多くて。全てしょうがないってなります」




璻は恐る恐る藤宮を気遣いながら


「やっぱり……藤宮さんは相手に感情移入しながら相手の助けになるために行動する人なんですね」


あっという間に出口にたどり着いてしまった。



璻は藤宮に微笑むと嬉しそうに話す


「ありがとうございます。藤宮さんの事少し知れてよかったです」



藤宮は璻の考えが不思議でたまらなかった。


「なぜそう思ったのですか?俺の人柄をよく知らなくても仕事は普通に出来ますよね?」



璻は少しむすっとした。



…なんでそういうこと言うんだろうか?…



「どういう人か知らずに一緒に仕事をしたくないだけですよ。それに仕事だけするために私は生きてませんから。」



元々お金を稼ぐために仕事をしているという感覚ではないことがなんとなく感じた。



仕事という体験を通して自分が得られる経験に価値があると思っているタイプの人間。今が楽しく自分が生かされているから人にプラスになるような仕事これまで選んできていることがなんとなく言葉の雰囲気で伝わる。


藤宮はその言葉を聞いた瞬間なぜか胸の中が温かい感覚になった。



…龍後璻という人間は一般的な人間と少し違うんだな…




璻は藤宮に陽だまりのように温かい笑顔を向ける



「ただ藤宮さんが人に対して真剣に向き合える方で愛が溢れてる上司だなとわかって少し仕事が楽しみだなと思っただけです。本日は面接いただきありがとうございました。再来週からご指導ご鞭撻の程よろしくお願い致します。」




深く藤宮に頭を下げる。




藤宮は真剣な面持ちで一礼をする


「こちらこそ再来週からよろしくお願いします」



璻は「ではこれで失礼します」というと出口まで歩い行った


藤宮は璻が見えなくなるまで深く頭を下げる。


振り返ることなくオフィスに戻る途中に


藤宮は自分の頬をさっと触れた。


さっき璻が指摘したことを思い出し晴れてる頬に手を添える



「朝少し治し忘れてたんだな。言われるまで気がつかなかったけど。今治すか……」



自分の頬から手を離すと手を叩き合掌し言葉を放つ




「キラナ」




藤宮の頬の腫れは一瞬でなくなった。


来た道を戻りながら庭園を歩く。


庭園の花やハーブの様子を確認しゆっくりとオフィスに戻る。


璻は歩きながら面接を思い出しニヤニヤしていた。



「面白くなりそうな仕事だな」


業務開始時を想像して緊張しながら一歩一歩歩き出す



なぜか少し回り道をして



いつもとは違う景色堪能しながら帰宅した。



。:*:★。:*:★━━━補足ポイント━━━━★:*:。★:*:。


【登場人物紹介】


・藤宮泉

3月7日生まれ30代うお座男性。

上田喜三郎の弟子でもあり優秀な水流士

優しく穏やかな性格だが受け身で断ることが苦手。非常に繊細で傷つきやすいが本人はそのことに気づいていない。

若干悲観的でロマンティスト。顔が整っているので女性が群がって来やすいことが少し悩み


・上田喜三郎

68歳には見えない筋肉ムキムキなおじちゃま。

水流士のトップでもあり水の研究の第一人者でもある。

大学で講演活動なども継続して行っている。既婚者、妻と娘が大好きないいお父さんでもある。


藤宮はなんというか・・・優しくなるべく悲観的に書いています。

上田喜三郎はある人物を参考にしていますね。

この二人は水流士の中でも群を抜いて優秀な人材です。


。:*:★。:*:★━━━━━━━━━━━★:*:。★:*:。

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