第107話:自分の感情を認める
急に石を渡されて困惑する璻は八剱に声をかけた
「?なんで石を私に渡したんですか?」
璻の質問に八剱は応える。
「すんません。説明してなかった!足元に石が集まっているでしょ?石を地面に置いたら、共鳴して識別ができなくなるんです。誰かが持ってもらえると水分子の動きがわかりやすくなるんですよ」
璻は八剱の質問に返す
「とりあえず石持ってればいいんですね。持ってれば」
八剱は頷くと手に持っている音叉を黒い石に近づけると璻に声をかける
「さて、鳴らしますよ」
そういうと八剱はポケットからクリスタルを取り出しクリスタルで巨大音叉を叩いた
鈍い音が辺りに響き渡る。
八剱は真剣な顔で黒い石をずっと見続けた。
音が鳴り終わると八剱はポケットにクリスタルをしまい顔を傾げ璻と藤宮を見つめた。
「ありゃ?」
八剱の声に疑問を感じた藤宮は声をかけた
「どうしましたか?」
八剱は藤宮に問いかける
「いや、反応がないんですよ。普段なら高濃度のフッ素化合物につけている石は基本表面だけつけていて。割れている片面から音叉に反応して水が出てくるはずなんですが……全然この石出てこなくて」
璻は不思議そうにしながら八剱に質問をする
「石の中の水分子もこれで見れるんですか?」
八剱は璻の質問を返す
「この場合は石から水が浮き出てきて確認するんですけどね?おっかしいな?」
藤宮は八剱の話を聞きながらある仮説を八剱に問いかける
「なんらかの原因で石の中まで撥水加工が浸透してるとか?別の汚染物質があるとか可能性としてはどうですか?」
藤宮の発言に八剱はやけに納得した表情を見せた。
「そうですね…ううううん。考えたくなかったんですがその可能性はありそうですね。石の中まで撥水加工が浸透したか?もしくはこの石だけが撥水加工が強く残っているか?こりゃっ……他の石も見てみないと」
そういうと八剱は周りをキョロキョロと見ると急に近くの土砂崩れに向かって歩き出した。
何かを見つけしゃがむと石を2つ拾い藤宮と璻が待っている場所まで歩いて戻ってくる。
八剱は握っている手を広げると灰色の鋭利な石と角張っている黒い石を持っていた。
「これで見るんで龍後さんが持っている石、地面に置いてもらってもいいっすか?」
八剱の指示に璻は思わず返事を返した。
「はい」
璻は八剱に言われた通りに石を地面に置き八剱の指示を待った。八剱はそのまま璻に声をかける。
「じゃあこの灰色の鋭利な石を持ってもらっていいですか?」
璻は不思議そうな顔をすると立ち上がり「はい」と返事をし八剱から石を渡された。
八剱は急に周りをキョロキョロする。
不自然に思った藤宮は八剱に声をかけた。
「八剱くん、拾った石俺が持つんで全部ください。両手塞がったままだと音叉使えないですから」
八剱は嬉しそうに藤宮に応えた。
「ありがとうございます。藤宮さんって洞察力高くて助かります」
藤宮は八剱に言葉を返す
「いや、このままだと終わらないでしょうが……さっさとやりましょう」
八剱は嬉しそうに返事をする
「はい。では、この子お願いします!」
八剱は藤宮に石を手渡すと璻に渡した石をじっと見つめた。
「龍後さん少し音叉に近づいてもらっていいですか?」
璻は八剱の指示に応える。
「はい」
璻は手を八剱の胸あたりに近づける。
「これでいいですか?」
八剱は「はい」と返事をすると巨大音叉を石に触れるか触れないかの距離で近づけ璻に言葉を返した
「鳴らしますよ」
そういうと八剱はポケットからクリスタルを取り出し巨大音叉に近づけると石を音叉に叩き鳴らし始めた。
鈍い音が辺りに響き、璻の手にのっている石が揺れ始めると石から少量の水が出始めた。
璻は驚き声を上げた
「えっー!!」
石から水が浮き始め八剱は嬉しそうな表情を見せ応える
「さて、水が浮かびましたね。じゃあ水分子の構造見て見ますか?」
冷静な八剱に対し璻は少し考えた。
……待って。水分子の構造見るって言ったっけ?確か高濃度フッ素化合物を含んだ物って水分子の結合部分が少ないんだっけ……
水の構造はH2Oだが、元々は水素と酸素が共有結合する事で水の中にある現状の状態や過去の情報を交換している。人間の依頼主の場合、水分子を記憶を見る時は水分子の形が五角形や六角形で固まっている状態から水流士は指先を入れて依頼主の記憶に触れトラウマを探すが…環境業務の場合、自然に思念などない事を璻は懸念していた。
……この場合、八剱さんは石にある記憶を見るのだろうか?……
疑問に思った璻は八剱に聞いた。
「八剱さん水分子の構造って言ってましたけど。この場合何を見るんですか?記憶じゃないですよね?」
八剱は鼻で笑いながら璻の質問に応える
「記憶は見ないですよーやだなぁ?石の記憶なんか見た日には莫大な量になるじゃないですか!高濃度のフッ素化合物が入った自然物を見る場合、水分子の共有結合率を見るんです」
璻は八剱の言葉に驚きながら応える
「共有結合率って……そんなんどうやって見るんですか?共有結合率は分子レベルですよ!一般人なら無理ですって」
璻の言葉に八剱は笑いながら応えた
「なっ……何言ってんですかね!そりゃ一般人なら無理な話ですね?一般人ならね〜」
藤宮は呆れながら璻に応える
「璻さん…八剱くんは一般人じゃありませんよ。八剱くんに失礼です」
璻は我に返って思い出した。
……そうだった。この人は一般人の感覚じゃなかった……
八剱は煽るように璻に言葉を返した
「いや、龍後さん面白い冗談言うなーって……つか、ダメですよ。自分の事を棚に上げちゃ!龍後さんも水分子が肉眼で見れる時点で一般人じゃないですよね?我々は素人や一般人でもないんですから〜龍後さんは自分が"一般人"だと思っている感覚は早く捨ててください。じゃないとこの仕事は務まらないですよ」
璻は八剱の言葉を聞き妙な焦りと怒りを感じていた。
……一般人って言葉はまさに私を基準に考え発した言葉だったけど、八剱さんからしたら、もはや”一般人”と言う言葉は彼の中でその基準からはみ出した考えを持って欲しいと提案しているのかもしれない……
ほんの少しだけ八剱の言葉を聞いてから璻は八剱から責められているような感情が自分の中にあるのがわかった。この無意味な被害者意識はどこかで昔、記憶の中で味わった経験に似ていた。だが…それがどこだったかパッとすぐ思い出せない。
……自分の中にまだ一般人でありたいという考えが色濃く残っていることにも腹立つし、今の言葉ですぐ責められたと勘違いしているこの被害者意識をしている自分がいる事にも腹が立つ……
璻がぎゅっと石を握ると顔を下に向けて少し黙った。
藤宮は八剱に声をかける。
「八剱くん、ちょっと言い方厳しいですよ」
八剱はニヤニヤしながら応える
「嫌だな〜わかってないから的確に指摘しているだけで特に深い意味はないですってば」
璻は自分の中を整理し結論が出ると納得したように話し出す
「まだ私自身一般人だと思っていました。新人だから出来ないって責任転嫁をしたかったんです。でも八剱さんが言ったように…すでに水分子が見えている時点で一般人ではない。イコールとりあえず理由をつけて無理って言うんじゃないよって話ですよね?」
八剱は嬉しそうに話す
「そぉ!そういう事!わかってもらえればいいんですよ!龍後さん急に自分の感情を冷静に語り出すから聞いてるこっちはびっくりしましたよ」
璻は八剱に言葉を返す
「いや、誰かに話さないと冷静に感情を観測出来ないんですよ。水流士ってどんな時も自分の心を見るのも仕事じゃないですか?自分が心が動いた瞬間、どこに引っかかっているのか瞬時に認識し理解しないと水分子の記憶は見れないですし、人とのカウンセリングなんて出来ないですよ」
八剱は璻の言葉に関心すると言葉を返した
「瞬時に感情を認識するねぇ……仙人みたいな事やってるんですね」
藤宮ははぁっとため息を吐くと呆れながら八剱に説明をする
「超感覚の能力は感じる能力が基本です。璻さんも俺も自分の感情を瞬時に認識するこの能力を日常から癖にしていますからね。その経験を通して水分子が肉眼で見えているんで。この仕事している内はずっとやり続けますよ」
八剱は藤宮の言葉を聞き妙に納得した様子で言葉をつぶやいた。
「へぇー超感覚っておもしれぇ〜俺にはない感覚だ」
そういうと八剱は石から浮き出た水分子をじっと見つめ観察し始めた。
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・共有結合率
共有結合はH2とOが伸び縮みすることで他の水分子と結合し情報を得ます。共有結合率が多いほど六角形や五角形などの水分子につながり情報も多いです。共有結合率が少ないと情報が少ない傾向があります。
・高濃度のフッ素化合物が入った自然物を見る場合、水分子の場合は水分子の共有結合率を見る。
フッ素化合物は撥水加工で使用されるため共有結合した水分子を散らす役割があり水を弾いてます。
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