ニャ~・・・218
ダグラスさんの家に着いたのは2日前、当日の夜には今までのシーラスの出来事を聞きたいとダグラスさん一家はミヤちゃん達と遅くまで話していた。
僕は先にレイちゃんと寝ていた、どうやらこの家でも赤ちゃんが居ると僕の寝場所はベビーベッドの様だ。
「レイちゃん、いい子ですね。良し良し、さあ、ママと言ってみようか、ママ、ママ、ママ。名前の方がいいかな、ミラ、ミラ、ミラ」
「アウ、アウ、キャキャウ」
まだ言葉を話すにはだいぶ早いよな、生まれてから約30日らしいからね。でも、話し掛けるのはいい事だから続けよ。
「ママはミラさんです、ママはミラ、ママはミラ、ママはミラ」
「アブー、ブブー」
どうなんだ、見えているのかな、僕の指を動かすと、若干遅れて付いて来る。まだぼやけているんだな。
僕の場合は音は聞こえない、物は見えないが少し続いたんだよな。暖かい温もりで何日も過ごしたんだよな。勉強はもう少し後でいいな、今は撫でてあげたり話し掛けた方が良さそうだ。ついつい焦ってしまうんだな。
「猫撫で撫で、気持ちいいよね。喉も撫で撫で、他にどこを撫でて欲しいかな。ヨダレが出てる、拭いてあげるね」
「レイちゃん、ありがとう、見てくれてたんだね。レイちゃんに見せたい物があるんだよ」
「何ニャンか?」
「行くよ」
レイちゃんが楽しそうだな、お腹は一杯、おしめも大丈夫、ミラさんが台所のドアを開けているから泣けば声が聞こえる。
ランドンさんは何処に行くのかな、家の間取りはハリーさんの家とほぼ同じ、全体の建物の大きさがダグラスさんの家の方が少し小さいようだ。
僕を抱いたランドンさんが階段を下りて行く、階段脇の右のドアの先が倉庫、倉庫の中にお風呂がある、倉庫からお店に出るドアは倉庫の真ん中ぐらいのところにある。我が家と本当に同じだ。
「ほらここだよ」
倉庫には向かわないのか・・・・・・外に出るドアの横に僕用の玄関がある。
「どうしたニャンか?」
「昨日、トントンと音がしてただろう、レイちゃんが出入り出来る様にして貰ってたんだよ」
僕はまたもや出入り自由にして貰えたのか、ありがたい事だな。
「ありがとうニャン、押してみるニャンよ」
「うん、どうかな動かせるかな」
久しぶりだなこの感覚、倉庫で荷物を押して移動している感じだ。動き出すと後はのんびりと押せば外にブロックが飛び出る。
「出れたニャンよ、ありがとうニャン」
「よし、今度は店の前だ」
僕の押したブロックを元に戻すと僕を抱き上げて店の表に向かった。
お店の前で招き猫をして欲しいのかな、1人で頑張るのも楽しいんだよな、猫だけに。
「ここにもあるからね」
「ここにもあるニャン、お店にも入れるニャンね、ありがとうニャン」
どれどれ、お店の壁に僕用の・・・・・・厚い壁に開けたんだね、鍛えているから押せるけど、お店の中に入るブロックが大きいお客さんが怪我しちゃうよ、勿論外に押し出したら、ブロックに足を取られる人がいて危険だ。
僕がその事を説明すると。
「問題ないよ、使わなければね」
問題ないようだ。ありがたいけど、僕の責任で怪我人を出すわけにはいかないので、動かない様に塞いで貰おう。僕以外には使わないからね。
「倉庫にもあるけど、中だと壁が薄いから大丈夫だよな」
「はいニャン、ありがとうニャン」
こんなに良くしてくれるんだ、最高のお辞儀をしとこう。僕の事に慣れているのでどんな仕草をしても驚かないようだ。
「僕は仕事に戻るよ、レイちゃんは外で遊んで来ると良いよ」
外で遊んで来るか、遊びに行きたいけど遊ぶようなところは在るのかな。海岸とか岸壁が在ったシーラスは街の外に出ないで色々な事が出来て便利だったんだな、体力作りも魔法の練習も岸壁だったな。
「ニャ~≪この街だと朝練が出来そうもないな、家の中は赤ちゃんがいるからドタバタするのは良くない、街の外は超危険だ。しかし、街の中の事を知るのは良い事だな。街の中を探索だ≫」
先行部隊はお菓子が販売されているお店に向かっている。合流は串焼きが食べたくなった時だな。
ミラさんが僕が来た時に教えてくれた。
『この街で生き物を飼っている人は少ないのよ、街の外が危険で、年々減ってきているの、レイちゃんの苦手な犬に会うのも難しいかもね』
凄くいい情報だ、犬さんと意思の疎通は人間の言葉でないと出来ないからな、街の中で話さなくてすむな。
犬さんと仲良くなるなら、僕が話す事を知っているお城が良かったんだな。
「ニャ~≪西の門の先は大森林だ、ここから見える範囲は森なんだな≫」
気軽に登れる城壁で良かったな、階段の横幅もあるから安全に上れた。
階段が城壁の中にないと誰でも上がっていいんだろう、僕以外誰もいないけど、反対側も同じ様な作りなんだろうか。
「ニャ~≪後ろを振り返れば街の中の様子が分かる、雰囲気は何処も変わらない、港街のシーラスだけが違う雰囲気だな≫」
外壁の外は街の外で何か作業をしている人がちらほらと見える、何をしているのかな。
西は危ない筈だけど、それでもしないといけないのは・・・・・・薪拾いだな。何か細い物を持っているから薪に決定。
何故か怒鳴り声が聞こえる、誰かが怒られているんだな。仕事を始めたばかりの見習いだな。
見習いか、エレノアさんは元気に仕事をしているだろうな、自分の街から何とか来れたんだから頑張っているよね。
最高のお菓子、僕はケーキの完成したのをお城で見た。だけど、最高のお菓子だと思っていたお城のお菓子職にさんが作ったケーキの上、もっと最高のケーキが有るのに気が付いた。
日本人の得意な真似、やってみた、そんな感じの物をミヤちゃん達が食べいた。それは大人の味だ、何でお城に居る時に気が付かなかったのかな、ケーキをチョコでコーティングしたらもっと美味しいケーキになるのに。僕の考える最も最高のケーキはチョコでコーティングされているケーキだ、もし僕の形のチョコが作れれば、ケーキの上に寝ているレイちゃんが出来る、流石に僕の形のチョコは作れないだろうけど、コーティングなら、塗り付けるだけで完成だ。最悪、形とか見た目は度外視だ。
甘い物をあまり食べないで来た僕だから気が付かなかったんだな。見た事あるよ、チョコでコーティングされたお菓子をそれも凄い数の種類を。
クルクルクッキーは軽い食感だから食べた事があったんだよな、あと周りがチョコのクッキーもそうだな。ポッキポッキのチョコは少しだから美味しく感じる。
グランカさん、質問です、ポッキポッキの類似品は出来ますか? ポキポキしたいです。
誰でも1回は食べた事のあるポッキポッキはチョコがあるのに作れないのかな。僕が食べているところを鏡で見たいよ。ナルシストと呼ばれてもいいから、面白い事をしているを見たいんだ。
ミラさんが羨ましいな、僕を見て楽しんでいる、それも、色々な仕草を僕が見せてあげるから、大喜びだよ。本当は僕が見たいのに。
違う、チョコの付いたケーキの事だよ、その機会が合ったら、2人の為に何とかしてあげよう。
憶えておこう、大人の味を使ったケーキ、大人の味を使ったケーキ・・・・・・エレノアさん達に教えるか、沢山クルクルしてくれたからな。
「ニャ~≪そうだよ、今は誰もいないなら、ここで体力作りだ。魔法の練習もここで出来る、僕の魔法はしょぼいからね、城壁の通路は長い、目の前で落ちるけど通路で練習だ≫」
先ずは走るぞ。
「ニャ~《・・・カトゥ・イフェクト(効果消去)、休憩ニャン》」
だいぶ走ったな、大きくなって走るのにも慣れた。
最初にここに来た時は走った後に魔法の練習をしてたけど、魔法の後に走る事にしたんだ。
逆にしたのはその方が魔法の練習に集中出来るからだ、魔法の成長が早いと僕は思っている。あの線香花火の様な現象から少し距離が遠くなったので・・・・・・落ちるのは一緒だけど、飛んでると認定した。一瞬だけ、ほんの一瞬。
「何度言ったら分かるんだ、こんなの誰でも出来るんだよ」
毎日怒っているのは30歳代の男性かな、怒られている人の声は聞こえないけど見習いの人。
どうして間違えるのかな、そんなに難しい事をしているのかな。
ここからだと大森林の木々の隙間から建造物が少し見えるだけ、怒鳴り声は屋外だ。
さて、この後はギルドに行ってみよう。
やっと冒険者らしき人が来たぞ。
猫冒険者はドアと同化する忍者猫になり待っていたのだ、この瞬間を。
「ニャ~≪ドアを開けてくれてありがとう≫」
どこのギルドも代わり映えしない風景だ、壁際をネズミさんの様にして受付の方に回り込もう。流石に受付に一直線に行くのは猫らしくない。
「西の大森林の魔物は強いな」
「生息している数も多いから気を付けないとな」
「魔物と戦う練習にはなるな」
「なるが、油断は禁物だ」
壁の横のテーブルで話している冒険者の会話か、耳が良いのでギルド内なら何処にいても聞こえてくるけど、盗み聞きをしているみたいだ。
この冒険者ギルドの受付カウンターは、遊園地とかの入場券を売っている売店と似ている、売店よりは大きいけど窓の様に空いている。その窓の前にギルドカードと依頼書を置いて職員さんが受け取っている。
酔っ払い対策で受け付けが窓の様になったのかな、タクシーもこんな感じで対策しているらしい。
凄い傷の数だ、ある意味良く凄い数の傷を付けられて戻って来られた。
傷だらけの男性の横にいる男性も傷だらけ、その後ろの人達も傷だらけ・・・・・・ギルドに居る人達全員が傷だらけ? 何が起きているんだろう。
誰も死んではいないのかな、そう考えたくなる程に傷の数が多いよギルド内の冒険者は。
「傷薬が高い、使い過ぎだな」
「痛い、治る前に次の傷が」
大変だな、討伐の依頼を何回も受けているんだな。でも、楽しそうだ。
僕も人間に産まれてたら冒険者になったのかな、それで何回も依頼を受けて装備を整えるのか。
なんだ、受付の裏側に行くのには荒野の酒場の開閉ドアが付いているだけだ、僕ならそのドアに触れないで中に入れるな・・・・・・荒野の酒場は何であのドアなんだろうな、荷物を持って入り易いからか、それとも風が冬も無いからか。不思議だ、あれは都市伝説の仲間だな。
ええっと、何でそんな事を考えたんだ、ギルドに付いているこのドアが不思議だからだ。
下を通ってギルドの職員のように振舞えば猫だって猫職員になれると思っておこう、猫職員はギルマスの部屋を探している。
声を出したいけど、忙しい他の職員の邪魔をしない様に静かに静かに、奥に在るのがギルマスの部屋だろうな。
あれ、ここのドアは開きません、僕が押しても開きません、誰か開けてくれないかな。
後ろにいる人達は忙しそうだな、ギルマスらしい人はいない様な気がするな。
そこにドアがるんだから誰でも知っているあれをしよう。
「トントン、トントン」
「開いてるぞ」
「トントン、トントン」
「誰だよ?」
「ギルマス、私も撫でたい」
受付のお姉さんの殴り込みだ、猫の鳴き声を聞きつけてギルマスの部屋のドアは大きな音を立てて少し傾いた。
「何で君はいつもエラそうなんだ」
「ギルマスが魔物に襲われた時に助けたから」
ギルマスは元冒険者、強い人もいるけど、強くない人もいるんだな。
「酒場で酒を奢っただろう、料理も沢山食べたよな」
「そんな昔の事はどうでもいいです、その子猫を撫でたい、ギルマス、受付代わってよ」
「何でだよ、ほら、冒険者が来たぞ」
「ええ、後で撫でさせて下さいよ」
そうか、受付のお姉さんはギルマスよりも強いんだな、僕に攻撃を当てられるかな。
「この毛並み、よくお手入れをしているんだな、しかし、こんなに小さい猫が居るとは、愛嬌のある顔だな、その手で顔をかく仕草可愛いな。ラナスタが撫でたがるのも分かるな・・・・・・俺を呼んでいるのか、手招きしてる様に見えるな」
「猫パンチ、連続猫パンチ、ギルマスに猫猫パンチ」
「お・お・俺を殴った」
「連続猫パンチ」
「避けれないぞ、痛くないけど、あ~~~~~~~~あ、子猫が話したぞ!」
「手配書が来ているよね・・・・・・報告書が来てるよね、シーラスから?」
「あ、あのか、便宜を図らないと国王様が怒ると書いてあった」
何で国王様? シーラスからの報告書ならソードさんだよね。国王様には猫冒険者だと話してない筈、あれ、どうなってるの。
「報告書を見せて下さい」
「本当に話しているのか? ラナスタが知ったら大変な事になるぞ、ここだけの話だが、珍しい生き物を家で飼うのが趣味らしい、ネズミにモグラ、亀に七色アゲハ、それと・・・・・・まあ、沢山だな」
もう死んでそうだな七色アゲハは、見たいけど生きてないよな。
それよりも知りたい事があるんだ、今は聞く方が大事だ。
「ソードさんの事は何て書いてあるのかな?」
「領主ソード・フォン・クライスト様は国王様の従弟で一番の親友・・・・・・報告書が2枚あるな。1枚はソード様からので、もう1枚が国王様? ・・・・・ところで何しに来たんだ。報告書の猫が話す事が書かれていた、勿論俺は信じていたよ。偽物だとこれっぽちも思ってなかった、その証拠に何でも聞いてくれ」
やっぱり僕が話す事は隠されていないのか、ギルドに行く度にギルマスが話し掛けてくるのは報告書を読んでいるからなんだな、信じるか信じないかはギルマス次第なんだな。
なら、冒険ギルドのギルマスに話し掛けてもいいんだな。
「手紙を出す時の料金を知りたいです、それと受取人のいない手紙がどうなるのか?」
「手紙の事か、大銅貨5枚だ。受取人に来ない手紙は保管する決まりだ、どの位保管するかは・・・・・・確か決まってなかったな、俺がギルマスになってからのは全部保管していると思うけど、手紙はそんなに来ないからな、まあ少しの手紙を保管していよ」
大銅貨5枚だと僕の感覚で5万円だ、凄く高い、気軽に出せる金額ではないよ。保管は長くしてくれそうだな・・・・・・出す人が少ないから、取りに行かないと読めないけど。
「そうだ、レイちゃんと呼ばして貰うよ」
「はいニャン」
「レイちゃんのギルドカードは特Sランクだ、Aランク以上は国に貢献している事になると考えているので、手紙を出すのは無料、後は何か大変な事が起きた時に情報を聞く事が出来る詳しく。例えば、村で火事が起きて数名の人が亡くなった、火事の事は誰にでも教えるけど、亡くなった人の名前と火事の原因は教える事が出来ない、Aランク以上なら原因と名前を聞く事が出来る。この位だなランクの違いで優遇されているのは」
どちらも優遇されている感じがしないな、手紙を配達してくれるならそうだけど、出すだけだと意味がない、有事の際の情報を聞けても嬉しくないな。
猫探偵になって依頼の情報をつかむ位しか役に立たないな。そこに謎が有っても謎のままで良さそうだしな。
聞きたい事は聞けたけど、わざわざ猫のレイちゃんがギルマスのところに来るまでもなかったな、話し掛けなくても良かったかも。
「帰るニャン、ギルドの外に出してニャン」
「まあ、急がなくてもいいだろ、撫でたいいんだ」
「いいニャンよ、帰る時にはドアを開けてニャン」
「ああ、ふかふかだな、娘にも触らしてあげたいな」
抱いていた僕を机の上に載せて、仕事の合間に僕を撫でて喜んでいたギルマス。
受付のラナスタさんは何度も訪れた、暇が出来れば来る感じだ。ギルマスは呆れていたけど人の事は言えないだろう。
お昼過ぎに解放された僕は街をふらつく事にした。街はそんなに変わらないけど、迷子にならない様に街の様子を観察する事にした。




