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勇者モモコと魔法少女アンベールのぼうけん  作者: s_stein
第四章 最終決戦

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99.天空の城の崩壊

 小部屋も秘密の通路も、すでに崩落が始まっていた。


 1秒たりとも猶予はない。


 テラの明かりを頼りに、雨のように破片が降り注ぐ中を全員で通路を突っ走る。


 途中、ゼプトが転んだ。そこへ大きな破片が落下し、彼女の足に当たった。


 悲鳴で気づいたアンベールは、後ろを振り返り、彼女の元へ駆け寄った。


 テラが遠ざかるので、みるみる暗くなる。だが、ゼプトの位置はわかっている。


「大丈夫か!」


「もう走れない」


「諦めるな!」


「もう行って」


「仲間を置いて行けるかよ!」


 アンベールは暗闇の中でゼプトを抱きかかえる。そこへさらに大きめの破片が落下した。しかし、すんでの所でアンベールはそれを回避し、足を機関車のようにして走った。


(そうか。俺はこんなに力のあるアンベールに戻ったんだ)


 彼は、自分の力を知って、体が元に戻ったことを改めて実感した。


 頭上に破片が落下する。額に頬に、細かい破片が当たる。だが、そんなことには構っていられない。


 様子がおかしいことに気づいたテラが、明かりを揺らして待っていてくれた。


「わりぃ! 待たせた!」


「いいわよ! 私の後ろに付いて来ないと、あの壁は抜けられないから!」


 大きな破片が、背後でドスンドスンと落下する音が聞こえる。それにせき立てられるように、みんなは走り出した。


 壁を抜け、左を曲がって走り抜ける。


 すると、トンネルから一瞬にして荒野の世界に変わった。


 先頭を走っていたテラは、足がもつれて倒れ込む。他のみんなも、互いにぶつかったりして倒れ込んだ。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ


 地鳴りのような不気味な音が辺りに響き渡る。


 城を見ると、全体に無数の亀裂が入って、破片が雨のように落下している。


 やがて、城自体もゆっくりと降下し始めた。


 バランスを失い、徐々に傾いていき、真横になってついに地面に激突する。


 その衝撃で地表は波のように揺れ、城は爆発し、粉塵が吹き上がった。


 その光景を見ながら、アンベールがゼプトを抱えて立ち上がる。


 モモコも立ち上がる。


 テラもフェムトもガリカも立ち上がった。


 アルバンは立ち上がりながら「終わったな」とつぶやいた。


 アンベールは、アルバンの横に立った。


「ここまで達成した勇者は?」


「モモコが最初だ」


 アンベールはニヤッと笑い、「確かに、モモコが最初だ」と言った。



   ◇◇◆◆◇◇



 約束通りに村まで戻ったモモコたちは、村民全員の歓待を受けた。


 すでに剣から外に出ていたヨクトは、村長に抱きしめられた。


 魔王討伐成功の噂が各地に流れていて、村では勇者一行をねぎらう宴の用意までしていた。村長の話では、行く先々で歓迎されるだろうとのことだった。


 女の勇者を褒め称える村民は、モモコに握手を求めた。アンベールに目配せする彼女は、顔を赤らめる。



 夜中まで続いた宴は、飲めや歌えやの大騒ぎ。


 と言っても、飲めないモモコとアンベールの目には、自分を肴に村民が飲み食いしているのではないかと映っていた。


 村長が千鳥足でモモコのそばにやってきた。何やら、手に木箱を持っている。


「約束通り……ですな。宝物を……渡しますですな」


 酔っ払った村長が、ふらつきながらモモコに木箱を差し出す。


 受け取ったモモコの横で、アンベールが「これは何でしょうか?」と知っていて尋ねた。


「これか? 願い事を……何でも一つ……叶えるものじゃ」


 すると、アンベールが横を振り向いて「おい、アルバン」と声をかける。


「何だ?」


「最初の頃に、お前たちの願いを一つ叶えてやる、って言ったよな?」


「ああ。ただし、二人いても一つだ」


「じゃあ、俺たちを元の世界に戻してくれ」


「よかろう。で、そっちの宝物はどうする」


「決まってんだろ」


「……なんか、さっきからモモコっぽい話し方だが」


「ゲホゲホ……。

 こっちの宝物で叶える願い事は一つ。

 二度と魔王を出現させないこと」


「な……!」


「そうだ。ディフェリタ国で行われるこのゲームは、ここで永遠に終わらせる」


「ゲイムだ」


「こだわるなぁ……」


「正しくは、ゲイムではなく、ミッションだが」


「魔王はゲイムって言ってたぞ。本当はゲイムじゃないのか?」


「うむむ……」


「ま、どっちでも俺には関係ない。とにかく、今回で終わらせる」


「そうか。終わらせるを選んだか……」


「何だよ。寂しいのか?」


「いや。勇者なら金品を望んだり、力を望んだり、独裁者を望むのかと思っておったが」


「どういう偏見だよ……。

 自分だけ裕福になったり、最強の力を得て自己満足に陥っても、この国の人々は喜ばないだろう?

 喜ぶのは、みんなが魔王からの脅威に解放されること。

 だから、ゲームを終わらせる」


「ゲイムだ」


「はいはい」


「なら、最初に出会ったところまで戻るぞ」


「ああ」


 二人は笑顔を交わした。


 モモコは村長からもらった宝物を使い、アンベールの願いを叶えてもらった。


 ゲイムは永遠に終了。


 もう魔王はいなくなる。それを討伐する勇者も当然いない。


 異世界から召還されて、勇者になることはないのだ。


 ただし、勇者にはならないが、開拓民になるという選択肢は残された。そのことに気づいていたのは、アルバンだけだった。



   ◇◇◆◆◇◇


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