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勇者モモコと魔法少女アンベールのぼうけん  作者: s_stein
第二章 レベルアップの旅

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65.スキルの偽装

 モモコは、老人も含めた男全員のレベルとスキルを瞬時に把握した。全員LV1である。スキルの数値も低い。


 これでは、LV4のモモコからすれば肩慣らしにもならない。


「そんな物をか弱き乙女相手に振り回すとは、なんという人々でしょう」


 あくまで芝居を続けるモモコは、自分でも吹き出しそうになる。


「ええい、小(こ)賢(ざか)しい奴め! いつまでも隠し通せると思うなよ!」


 老人以外の三人は抜刀してモモコに迫る。だが、威勢がいいのはそこまでで、体力消費が20と一番低い武器である鎖を取りだしたモモコの前に、三人が同時に白目を剥(む)いて倒れた。


 これで体力は290から270になった。なお、温泉で300だった体力が290になったのは、徒歩で移動したからである。


「ご老人。これは誰の差し金ですか?」


 モモコは、まだ芝居を続けている。この言葉遣いで女だと思い込んでいる老人が、拳法の構えを取った。


「わしは、これでも達人でのう」


「あらまあ。LV1で達人とはお見(み)逸(そ)れいたしました。

 そんなことより、誰の差し金で――」


 モモコが言い切らないうちに、老人の体がフッと消える。


 次の瞬間、モモコはただならぬ殺気を背後に感じたので、体を後ろに回した途端、側頭部を強打された。


 蹌(よ)踉(ろ)めくも踏みとどまり、蹴りの方向から老人の位置を推測したが、姿はない。


 また背後に殺気を感じると、今度は後頭部を強打された。


 地面へうつ伏せに倒れたモモコは、苦い土を舐(な)める。


「ほーほっほ。だから達人と申したではないか」


(嘘だろ!? LV1のじじいだぜ! LV4の俺がなんでこんな奴に!?)


 背筋に悪寒が走り、血の気が引く。あり得ないことが起きているのだ。


 上半身を起こしたモモコは、老人のスキルをもう一度確認する。


 ――――――――――

 ステイタス

 職業:モンク僧

 LV:1

 経験:50 知能:80 攻撃:85 敏捷:80

 体力:5 耐久:35 魔力:20

 :

 ――――――――――


 7が1に見えているかとも思ったが、見間違いではない。明らかにLV1だ。


 だが、体力が異様に低いのが気になる。あの数字なら、ヘロヘロになっているはずだ。


 なのに、ピンピンしていて、拳法の構えを取りながら足で前後に跳んでリズムを取っている。


「おいおい。本当に、てめーはLV1かよ!?」


 唇を拭きながら、モモコは地声に戻った。


「いよいよ正体を現しおったか。LV4の勇者殿。すでに体力が210になっておるが、大丈夫かのう?」


「ちょっと待て! なんでLV1の奴が俺のステイタス画面を覗き見できんだよ!?」


「おっと、口が滑ったわい」


(こいつ、もしかして……)


 モモコは、もう一度老人のステイタスを確認する。LVの真下のスキルを飛ばし、その下にある「特殊」に目を向ける。


 すると、そこに「偽装(+60)」という文字が見えた。


 次の瞬間、モモコの顎に老人の蹴りが入る。目から火花が出るほどの激痛が走った。


「ひよっこの勇者は、まだまだ尻が青いのう」


 それから、老人の正拳突きが腹に何発も入れられた。地面に転がったサンドバッグが連打されているみたいに。


 これでモモコがぶち切れた。老人が腹に目をやっている隙に、こめかみへ左右のワンツーパンチを食らわす。


 これで老人がひっくり返った。


「ステイタス画面を偽装するたあ、卑劣極まりない奴め! 絶対に許さん!!」


 老人相手に本気を出すのは本意ではないが、この姿も偽装しているかも知れない。


 そう思ったモモコは、老人に馬乗りになって、顔に拳を雨のように降らせた。


「剥(は)がれろ! 化けの皮め!」


 拳の勢いで左右に大きく揺れる老人の頭。モモコの拳が容赦なく降り注ぐ。


 頬が、瞼が、みるみる腫れていく。口から出血し、歯も折れた。


 と、突然、老人の顔が、いかつい青年の顔に変化した。


「やっと正体を現したな!」


 モモコは、偽装が解けた男がLV4であることを確認し、ニヤッと笑った。


 そして、締(し)めのつもりで、鼻をへし折るほどの正拳突きを食らわせる。男の後頭部は地面にめり込んだ。


「エスカ! こいつのスキルを奪え!」


 馬小屋から矢のごとく飛んできたエスカは、ぐったりと動かない男のスキルを全て奪った。


「そっちの雑魚のも、口直しにくれ!」


 三人のスキルも奪ってもらい、モモコは自分のステイタス画面を確認する。


 ――――――――――

 ステイタス

 職業:勇者

 LV:4

 経験:330 知能:399 攻撃:399 敏捷:399

 体力:285 耐久:399 魔力:350

 :

 ――――――――――


「やっぱな。ことごとくLV4の数値を偽装してやがった。油断させるためだ。

 エスカ、見て見ろ。奪ったら、軒並みMAXだぜ」


「なぜ、気づいた?」


「こいつが、体力の偽装をミスっていてな。

 ヘロヘロの数値のくせに、ピンピンしてやがって」


「なるほど。

 LV1の三人は、ホント、口直し程度しかスキルを持っていなかったぞ」


「いいって。パンチの嵐でかなり減った体力の回復に役立っている。

 ……経験は30アップか。魔力は、こいつら、あまり持っていなかったな」


「でも、偽装を奪ったから、これは使えるぞ」


「おおっ! 棚ぼたでラッキーだったな」


「これで経験さえアップすれば、LV5の賞金稼ぎとやり合えるよな?」


 モモコは、女のスキルを思い出す。確か、LV5の後半だった。


「今は、たぶんとしか言えない」


「弱気になるなよ」


「わかってるって」


 モモコは、拳をエスカの前足と突き合わせた。


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